第45話 源泉の主
「ここか?」
マップで確認した限りではここで間違いはないのだが念の為ウンディーネにも確認を取る。
試食会の後すぐに準備を済ませここにはウンディーネとシルフの三人で来ている。
リズたちも同行を望んだのだがわざわざ危険な場所に2人を連れて行くつもりもないので置いてきた。
シルフの転移魔法を使い、近くまで転移してきたのだがそこからは徒歩だった。
シルフの転移魔法は近くに森さえあればどこにでも移転できるらしいが他人の支配領域には直接転移できないみたいだ。
シルフに言わせると他人の家に土足で踏み入る行為らしい。
「うむ。ここはすでに妾の支配領域に入っておる。普段は妾の承諾がなければ踏み入ることもできぬはずだが、、、。」
「やっぱそれってウンディーネの力が使えないのと関係してんの?」
さっき調べた時に魔族に支配されていた魔物がいたしもしかしたらこの件には魔族が関わっているのかもしれない。
魔族は表に出てくることはないんじゃなかったっけ?
なんか雲行が怪しくなってきたよ。
「わからぬ。妾達精霊は地脈を流れる魔素から力を得ておる。そして四大精霊とはその魔素が多く溜まる地、源泉と呼ばれる場所の守護でもあるのじゃ。じゃから妾が力を使えぬという事は源泉に何か問題があるのかもしれぬ。」
「じゃあシルフも源泉ってやつを預かってるのか?」
そんな話初耳だよ。
魔素も初めて聞く言葉だ、帰ったらラニアさんにでも聞いてみよう。
「はいなの!リューと会った森にも源泉があってシルはそこを守ってるの。」
出会った森ねぇ、、、。
ってあのバカでかい森をか⁉
シルフが?
「シルフ、嘘はよくないぞ?お前にそんな事できるわけないだろ。」
「嘘じゃないの!でも今はあそこの森も源泉もリューのなの。」
はい?
どういう事だそれは。
シルフの説明だと全く意味が解らなかったのでウンディーネに代わりの説明を求める。
ちなみに変態行動をしたら速攻帰ると言ってあるのでウンディーネはおとなしくしている。
「聞いておらぬのか?源泉の主、つまり妾達精霊を服従させると源泉の主が変わるのじゃ。お主がシルフと契約したのが事実なのであればその源泉の支配権はすでにお主に移っておるはずじゃ。」
「何そのめんどくさいシステム、聞いてないんだけど。源泉の主をシルフに戻すのはどうすればいい?」
源泉の主とか全力で遠慮したい。
普通の市民には必要ない称号だし何より騒動がセットでついてきそうだ。
「無理じゃな。契約解除、それはどちらかの死を意味する行為だしの。しかしなぜ拒むのじゃ?源泉を支配するという事はその地の魔素を好きに操れることは言うまでもないが源泉の恩恵に与るもの全てを使役できるのじゃぞ。」
うわ、なにその特典。
ますますいらない。
それにそんなにたくさんの生活なんて背負いたくない。
「でもリューが守護になってから森は平和だってエン爺も言ってたの。でも守護の任がどうとかって怒ってたの。」
シルフが嬉しそうにそんな事を言ってくる。
エン爺とは前にシルフから聞いた精霊の事だろう。
シルフから話を聞いただけだがおそらくシルフのおじいちゃん的なポジションの精霊だったはずだ。
いつかあいさつに行こうと思ってはいたがなかなか時間が取れずに未だ行けていない。
源泉の事も含めて早めに会いに行った方がよさそうだ。
「守護の任?俺、なにかした覚えなんてないぞ。」
「守護の任は源泉によって異なるので分からぬが源泉の主が強ければ強いほど支配領域を守る力は大きくなるのじゃ。おそらくお主が主になったことによって守護の力が大きくなったのであろう。あのエントが認めるとはお主の力はなかなかなようじゃ。」
なるほど、よくわからないが色々な理由があるのか。
それよりそれだと俺の力の方がシルフより強いってことにならないか?
四大精霊 ≤ 俺っておかしくね。
「ってそれならここはもう俺の支配領域になってるってことか?」
ウンディーネの話を聞いて思ったことだ。
源泉の主である精霊と契約をすることが新たな主になる条件だとすればすでにここはリュースティアの支配領域になっているはずだ。
「言われてみればそうなるはずじゃな。しかしこの地の主はお主になっておらん。それどころか妾でもない。どういう事じゃ?」
そういう事か。
どうやらこの地を現在進行形で襲っているであろう魔族はこの地にある源泉が狙いのようだ。
おそらくなんらかの方法で源泉とウンディーネの繋がりを断ち切って源泉を支配しようとしているのだろう。
源泉を支配することが何になるのかはわからないが魔王を操るようなやつらだ、きっと碌な事にはならない。
「俺の索敵によるとこの事件には魔族が絡んでる。どうやら源泉を支配したいらしい。」
「なんと!魔族が絡んでおったか。」
リュースティアの発言に驚きを隠せない様子のウンディーネ。
四大精霊でも魔族は脅威なのかな?
「どうする?その魔族は魔物のリーダーを支配することでこの大軍を率いてるみたいだな。だから魔族に支配されてる群れの頭を倒せばある程度は数が減ると思うけど。」
「それはそうじゃがどうやって頭か見分けるのじゃ?」
確かにこれだけの魔物の中から10匹くらしかいない頭を探すなんて不可能だ。
そう、普通なら
「そんなん簡単だ。
リュースティアはマップに表示された情報をもとに状態が支配になっている魔物をマップ内で指定し、雷で作った矢を放つ。
これはリュースティアの魔法と固有スキルのマップ機能を連動させた合わせ技だ。
多少威力は落ちるがこれなら外す心配もないのでなかなか重宝している。
「あれ、何匹かに
顎が外れそうなくらい大口を開けて固まるウンディーネを気にすることもなく第二射を放つ。
今度は
そして近づくだけで焦げそうなほどの熱量を持った雷の矢が轟音と共に放たれる。
「やべ、やりすぎたか?ありゃ近くにいた奴らもみんな消し飛んじゃったなー。」
などと抜かすリュースティア。
エルのおかげかだいぶ戦闘行為に慣れたらしい。
少し前まではまともに剣すら振れなかったのに今ではレベル20以上の魔物なんて瞬殺だ。
まあ自分の力の異常さには全く気付いていないところは相変わらずだが。
「よし、そろそろ魔族も出てきそうだし、水の祠ってとこに行ってみるか?」
あれ?
振り返りようやく大口を開けたまま固まっているウンディーネに気づく。
おーい。
いくら呼び掛けても全く反応しないので仕方なく小さい雷を放ち強制的に戻す。
「あばばば!」
「いつまでも大口開けてないで水の祠ってとこまで案内してくれよ。」
「お、お主一体、、、?それよりも妾への罰はもう少し強くてもいいのじゃぞ?」
最後の言葉は聞かなかったことにしよう。
うん、聞こえてない。
*
「ここが水の祠の入り口じゃ。ここの奥にある主の間が魔素の吹き出し口とでもいうべき源泉の心臓部じゃ。」
魔族に支配されていた魔物を一層し、ウンディーネの案内で一行は水の祠の入り口まで来ていた。
ここに着くまでもおそらく魔族にけしかけられたであろう魔物を倒してきた。
倒しても倒しても湧いてくる魔物たちに辟易しながらもようやく入り口についたわけなのだが。
「入れないの!」
そう、シルフが言うように入れないのだ。
見えない壁のようなものが入り口をふさいでいる。
軽く魔法をぶつけてみたのだが見えない壁が壊れることはなかった。
備考欄の情報を見る限り範囲結界とかいうものらしい。
もっとも範囲を指定して張る結界なので防衛力は集中結界や条件結界などより劣るそうだ。
それなら風神で壊せるんじゃ、、、、?
「【吹き荒れろ、風神】。一刀両断。」
物は試しとばかりに風神を使う。
だが斬りかかった瞬間あれ?と思った。
それもそのはず、魔法では傷すらもつかなかった結界がいとも簡単に切れたのだ。
なんの抵抗もなく。
そしてリュースティアが切った部分から結界が崩壊していく。
「あー、なんかあっけなかったな。まあとりあえずこれで先に進めるな。」
「もうお主が何をしようとも驚いたりはせぬ。」
若干、諦めた様子のウンディーネの発言をスルーして最奥へと進んで行く。
その反応はシズでもう慣れたからね。
きれいだ。
思わず感嘆の声を上げる。
水の祠は一言で言うと地底湖だ。
普段なら透き通る水の青さや水の輝きを反射してきらめく鍾乳洞がより一層この景色を引き立てることだろう。
だが今は暗く淀んだ空気が充満しているため本来の美しさなど見る影もない。
魔族め、美を汚すとは許せん。
そんな事を思いながら再びマップで周囲を調べる。
だが、祠の中には外と違って一匹も魔物がいなかった。
奥に上級魔族とやらがいるだけで他には誰もいない。
怪しげな
源泉とか言うからもっと大層なものがあると思っていたがそうではないらしい。
まあこの祠だけでも十分神秘的な空間なんだけどさ。
「で、ここからはどうしたらいいんだ?」
源泉を取り戻すにしても何をすればいいのかわからないのでウンディーネに問いかける。
そしてウンディーネが答えようと口を開いたとき、リュースティアの危機感知が働いた。
「あぶない!シルフ、下がれっ!」
間一髪ウンディーネを崩落してきた岩石から救う。
シルフには特に危険はなかったが一応下がらせておく。
「ソレを防ぐか。ニンゲン。」
暗闇からそんな声が聞こえてきた。
いよいよ黒幕の登場か、そんなことを思いながら声のする方を見る。
あれが魔族。
魔族、なのか?
リュースティア達の目の前に現れたのは全身に黄色い毛をまとった着ぐるみ。
その姿は前の世界の国民的アニメキャラクターを連想させる。
ピ○○ュ〇だ。
えっと、ふざけてる訳じゃないよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます