第35話 リュースティア、パパになる?
シルフの魔法は成功し無事に女の子から魔王の娘という文字も消え、間違ってシルフが消してしまったその他のステイタスも元に戻っていた。
そこまではいい。
だがなぜか新たな保護者という欄ができていてそこにはリュースティアの名前があった。
「リュースティアさん? この子に何かしたんですか?」
リズが笑顔で、そうあの笑顔でそんなことを言ってくる。
普通に怖いです。
何度見ても耐性ができない。
へたな魔法なんかよりもよっぽど脅威だ。
それよりもずっと一緒にいたんだから何もしてないのはリズが一番知ってるよね?
「何でそうなるんだよ?何かしたとしたら俺じゃなくてシルフだろ。」
断じて俺は
だから声を大にして身の潔白を叫びたい。
「で、シルフ?お前何したんだ?」
「ちゃんと直したの!でもこの子寂しい?だからリューの子供!」
なるほど。
って、納得できるか!
いやそんなことしなくても普通に仲良くするからな?
この年で娘ができるなんて思わなかったよ、、、。
「でも案外これでよかったのかもしれません。家族のいない亜人の子だとそのまま奴隷にされてしまいますから。暫定的でもリュースティアさんが親となってしまえば奴隷にされることもないと思いますよ。」
「そりゃ奴隷になんてさせたくはないけど、さすがに抵抗があるぞ?」
そんなことを話していると女の子が目を覚ました。
体力などは回復しているが空腹だけはどうにもならない。
女の子のお腹から可愛い音が聞こえる。
「気分はどうだ?いきなり重いものはまだ無理だろうからこれでも食べてくれ。」
そういってシズが皮をむいてくれた果物を女の子に渡す。
だが女の子は人見知りなのか布団に隠れてしまう。
「男の人が怖いのかもしれませんね。リュースティアさんは少し下がってここは私たちに任せてください。」
変に怖がらせたくもないしここはリズの言う通りにする。
「怖がらなくていいわよ。私はシズ。お腹すいてるんでしょ?はい、これ。」
シズが優しく語り掛けリュースティアの作ったスムージーを手渡している。
男性が苦手かもしれないというリズの指摘は当たっていたらしく女の子はシズの手からスムージーを受け取る。
だが、やはり警戒しているのかなかなか口にしない。
そのせいでさきほどから可愛い音が鳴りまくっている。
いや、可愛いけどなんかいじめてるみたいだから早く飲んでくれ。
「大丈夫ですよ。毒なんて入っていませんから。私はリズって言います。」
リズが女の子の手からコップを取り目の前で一口飲んでみせる。
そしてそのコップを女の子に返してやると女の子はスムージーを一気に飲み干した。
やはりお腹がすいていたのだろう差し出された果物を口いっぱいに頬張っていく。
その姿はどこか必死だ。
けど、そんなに慌てて食べなくても誰も取らないぞ?
ほら、のどに詰まらせた。
「大丈夫ですか?慌てなくても誰も取りませんからゆっくり食べてくださいね。」
リズが背中をさすって飲み物を飲ませてあげながらそんなことを言う。
背中に触れられたときに一瞬ビクッとしていたが何もされないと分かったらしく今では気持ちよさそうにしている。
どうやらリズになついたみたいだ。
女の子の食欲が落ち着くのを待ってからリズに目くばせをする。
リズはそれだけでわかってくれたらしくリュースティアが聞いてほしい事を聞いてくれる。
「君、名前はなんていうの?」
「・・・。」
女の子は答えず首を横に振る。
もしかして言葉を話せないのだろうか?
「もしかしてないの?」
「・・・・・。」
「えっと、じゃあお母さんとかお父さんにはなんて呼ばれてたの?」
「・・・・お母さん?」
どうやら言葉を話すことはできるみたいだ。
それにしてもお父さんやお母さんという言葉に首をかしげているあたり両親を知らないのかもしれない。
なんだかかわいそうだな、、、。
「リュースティアさん、この子に名前を付けてあげてくれませんか?」
他人ごとのように2人の会話を聞いていたリュースティアだったがリズの一言で現実に戻される。
いつの間にかリズは女の子を膝の上に抱えていた。
目元が少しうるんでいるところを見ると女の子がお母さんを知らないという事に同情したのかもしれない。
「いや、なんで俺が?そういうのは2人の方が向いてるだろ。」
「何でってこの子の親はあんたじゃない。子供の名前を付けるのは親に決まってるじゃない。」
そう言われると反論できないんだが。
だが名前を付けるのはいいとして女の子の方はそれでいいのか?
「・・・誰?」
「この人はリュースティアさん。あなたのお父さんになる人です。とっても優しくて美味しいものをたくさん作ってくれるんですよ。」
「・・・痛い事するの?」
「大丈夫。リュースティアはヘタレだからそんなことできないわよ。リュースティアはあんたの為にあのすむーじーを作ったんだから。」
シズ、フォローしてくれるのはありがたいんだけどヘタレ呼ばわりはちょっと、、、。
それにしても女の子が痛いことをするのかと聞いてきたその表情は見ていてつらかった。
過去にそうとうひどい扱いを受けたことがあるのだろう。
ひどく怯えた瞳をしていた。
なのでリュースティアはなるべくゆっくりと女の子に近づくと優しい表情で女の子に約束をする。
「安心して。君に痛い思いは絶対にさせない。約束する。それにそのスムージーを気に入ったのならいくらでも作ってあげる。」
「・・・・・約束?」
「ああ、約束だ。俺の娘になったからには君にもうそんな顔はさせない。君が心から笑えるように努力する。だから安心していいぞ。」
そう言って女の子の頭を撫でてやる。
手を伸ばすと体に刷り込まれた恐怖からか体を強張らせたが特に拒絶されることもなかった。
とりあえずは第一歩ってところかな、などと思いほっとするリュースティア。
だが気が緩んだせいで手の触れる最高の感触に意識を向けてしまった。
獣耳だと、、、⁉
こ、こんなに触り心地が良かったのか。
獣耳ファンの人達、今まで馬鹿にしていてすまなかった。
「ちょっといつまでそうしてんのよ!」
リュースティアのお楽しみは問答無用のシズの脳天突きであっけなく終了された。
せっかくのお楽しみを邪魔されてしまったリュースティアは不貞腐れながらも女の子の方に視線を戻す。
するとそこには顔を上気させ全身の力が抜けてしまったかのようにくて―とした女の子と例のごとく目が笑っていないリズの姿があった。
あれ、俺なんかした?
全身を冷や汗が滝のように流れる。
「リュースティアさん?」
「は、はい!なんでございましょうか、リズさん!」
「今何をしていたんですか?」
「女の子の頭をなでていました!耳のさわり心地がよくつい、、。」
このモードのリズの怖さは身をもって知っているので素直に話す。
「それは耳族の子たちの耳が鋭い感覚を有していると知っての行動ですか?」
「な、、、なんだと⁉」
それじゃああれか、俺は女の子のその大切な場所を撫でまわしていたという事か?
うわ、最低じゃん!
「すんませんでしたー!耳族の子の耳にそんな特徴があるなんて知らなかったんです。」
知らないで済まされる問題ではないかもしれないがここは最終奥義“土下座”にかけるしかない。
「はあ、リュースティアさん?無知も度を超すと犯罪ですよ?気を付けてください!、、、、、、、まったく、そういう事をするなら私に、、、。」
「まじですか!っと悪い最後はなんて?」
リュースティアは無罪放免を勝ち取った安堵からか最後の言葉は聞こえていなかったようだ。
「なんでもないです!それよりこの子の名前、どうするんですか?」
リズもこう言っているんだしこれ以上追求するのはやめよう。
きっと世の中には知らない方が幸せなことがあるはずだ。
「君は俺が名前つけていいの?何か希望があれば聞くよ。」
今だに顔が赤いままの少女に名前の希望を尋ねる。
一生の物だからなるべく本人の希望を聞きたい。
「・・・・うん。」
「そっか。とは言っても名前なんて付けたことないしなー。スピネル、、、てのはどうだ?安直かもしれないけど君のその赤い目が俺の知ってる宝石みたいにきれいだったから。嫌なら別のを考える。」
「・・・・スピネル?スピネル、スピネル。きれい。」
どうやら気に言ってくれたみたいだ。
嬉しそうに名前を唱えているところを見ると思い付きでつけただけなのでなんとなく申し訳なくなる。
まあ本人が喜んでることだし気にするのはやめよう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
>狼人族の娘を養子しした。
>スキル:
>スキル:始まりの魔法を手に入れた。
>称号:救済者を手に入れた。
>称号:幼女の父を手に入れた。
ログを見るとそんな言葉が並んでいた。
始まりの魔法を手に入れたはいいが使用条件があるのか今の時点では使用することはできなかった。
最後の称号は、気にしないことにしよう。
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