第23話 風神
「こんにちわー。おじさんいる?」
ここはシズのおすすめの武器屋。
ここはラクス通りに面するお店で小規模ながらも商品の質が良く値段もお手頃らしい。
「よう、シズの嬢ちゃん。今日は彼氏と一緒か?」
そんな軽口を叩きながら店の奥から出てきたのは筋肉隆々のガタイのいいおっさんだ。
この店の店主だろうが剣を振り回しながら出てくるのはやめていただきたい。
普通に店の壁に当たってますからね?
「違いますよ。俺はシズの友人でリュースティアと言います。」
なぜか彼氏と聞いて顔を赤らめテンパっているシズに代わってリュースティアが友人であることを説明する。
俺が彼氏とかシズがお気に召さないだろうし早めに誤解をといとかないとね。
「そうかい。そんなかたっ苦しい言葉なんて使わず気楽に接してくれや。俺はルモンド、ここで武器や防具を売ってる。で、今日は何しにきたんだ?」
かたっ苦しいと言われても普通の敬語なんだが。
自分の歳の倍以上ある人にため口はどうかと思うがシズもそうだしまあいっか。
「俺はシズの付き添いできただけだよ。せっかくだし色々見させてもらうね。」
「小僧は買ってかんのか?まあ気が合うやつがいるかもしれねえし色々見てみろ。で、嬢ちゃんは何だ、また剣でも壊したか?」
お言葉に甘えて色々見させてもらうことにしよう。
試したいこともあるしね。
「そんな頻繁に壊さないわよ。今日は新しい剣を見に来たの。」
シズとルモンドさんがシズの新しい装備について話を始めたのでリュースティアも店内の商品を見て回る。
リュースティアが試したいこととは自身が持つ創造特権というスキルの向上だ。
このスキルは確か創造できるものはリュースティアの想像力と知識に左右される。
だから武器屋に行けば武器の知識がつくのではないかと考えたのである。
だが、どうやればスキルの練度が上がるかわからないのでとりあえず剣を手に取ってみる。
「えっと、とりあえずここら辺で一番高い剣はこれか。等級Ⅰ⁺、最高ランクか。」
剣を手に持ちながら備考欄で詳細を確認する。
だがそこにはこの前リュースティアが作った剣と同じような情報しか載っていない。
「さすがにそうそううまくいかないよなぁ。」
だけど本物の剣の重さとか形は見るだけでも勉強になるはず。
見るのも勉強、そう思って剣を熱心に見つめたり試しに剣を振ってみたりする。
するとなぜかログに変化があった。
》創造特権、派生技能:
》等級Ⅰ⁺の剣の解析が終了しました。
》創造:等級Ⅰ⁺の剣を習得しました。
「はい?」
思わず声が漏れてしまった。
持つだけで作れるようになるとかチートにもほどがある。
だがさっきまで何もわからなかった等級Ⅰ⁺の剣が今は使われている鉱物の比率から作成方法まで手に取るようにわかるようになった。
おそらく
そしてそのおかげで創造までできるようになったらしい。
いまいち実感がわかないがログの通りに解釈するのであればそういう事だろう。
ならばやる事は一つ。
片っ端から解析してやる。
リュースティアの口元にニヤリと悪い笑みが浮かぶ。
「どうだ、なんかいいやつあったか?」
どうやらシズの武器選びが終わったらしくルモンドさんが話しかけてきたようだ。
この店にある武器は解析済みなのであとは材料さえあれば作ることができる。
なので武器を買う必要はないのだが何となく盗みをしているような気持になってしまう。
無断で商品を盗作する気はないがさすがに何も買わないのは気が引ける。
「もう少し軽いのない?」
なのでこの店で剣を買う事にしたのだが、リュースティアには重くて扱えそうになかったのでもう少し軽いものがないかと尋ねる。
「ずいぶん非力な冒険者だな。ちょっと待ってろ奥に丁度いいのがあるから取ってきてやるよ。」
そういってなにやら店の奥に剣を取りに行く。
「おう、小僧。これなんかどうだ。」
そういってルモンドさんが差し出してきたのは装飾が何も施されていない真っ黒な短剣だった。
いい感じだ、手によく馴染むし重さも丁度いい。
とりあえず剣の詳細を調べる。
>魔剣:風神(風属性)
>等級:不明
>製作者:グリード
「もしかしてこれ、魔剣ですか?」
リュースティアの言葉にシズも驚いているところを見るとこちらの世界でも魔剣は珍しいみたいだ。
「よくわかったな。だがこいつは誰が魔力を流しても反応しなくてな。それに
ルモンドが魔剣だと気づいたことに関心していたがリュースティアには気になることがあった。
「
「
真の力とか言われてもよくわかんないが某少年漫画の卍解的なものかな、などと検討をつける。
「なあ、おっちゃん、魔力流してみてもいいか?」
「いいぞ。どうせ無理だと思うがな。流す分には好きにしてくれ。」
どうして魔力を流そうと思ったのか説明しろと言われても難しい。
何となく剣に呼ばれた気がしたのだ。
「サンキュ。」
そういって剣に魔力を流し始める。
どうやら魔力は問題なく通るようだが通るだけで何も起こらない。
そこでリュースティアは流す量を増やしてみた。
リュースティアの魔力の半分ほどを流したところで剣が輝き始め、頭に言葉が流れ込んできた。
「吹き荒れろ、風神。」
頭に流れ込んできた言葉をそのまま唱える。
すると輝きが増し、剣の形が変わる。
短剣だった剣が伸びで、日本刀のような形になっていた。
魔力を流すのを止めると剣の輝きは止まったが形が戻る事はない。
「こ、小僧。どうやって?」
ルモンドさんが驚いた表情でこちらを見つめている。
どうやら本当に魔剣を解放できるとは思っていなかったらしい。
「どうやってって言われても。何となくできる気がした。」
リュースティアにしてみればやったらできたくらいの感覚なのでいまいち何がすごいのかわからない。
「なるほど、剣がお前を選んだってことか。おい小僧、その剣はやる。大事に使え。」
なぜか納得したらしいルモンドがとんでもない事を言い出した。
魔剣として効果を発揮した以上この剣の値はとんでもなく上がるはずだ。
それをタダで渡すとか正気じゃない。
「なに言ってんの?これ売ったら相当な値段になるんじゃないの?」
さすがにシズもその提案はバカげてると思ったのか口をはさんできた。
「この剣が小僧を選んだ以上、他の奴には使えん。それにもともと倉庫の肥やしになっていたやつだから気にするな。」
ルモンドさんはそういってくれたがさすがにタダとはいかないので同じような短剣分の値段を支払った。
ついでに剣帯と新しい鞘を買う。
「剣の整備が必要になったらまた来いや。嬢ちゃんは剣を壊すなよ?」
「うっさい、そう頻繁に壊さないって言ってるでしょ。それより次来る時まで潰れないでよね。」
そんなやり取りをし、二人は武器屋を後にした。
ログに新たな言葉が刻まれる。
》魔剣:風神を手に入れた。
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