第22話 心配、そして想い。

裏門でエルと別れたあとリュースティアは再びギルドに来ていた。

そのまま屋敷に帰ってもよかったのだがリズとシズを表示している点が未だにギルドにあったので気になり寄ってみたのだ。

ギルドの中に入ると受付の人と何やらもめてる二人の姿があった。


「だから、何度も言ってるじゃない! リュースティアの馬鹿がボルボリンの森に行っちゃったから連れ戻してほしいんだって。」


ん?


「お言葉ですがシズ様。何度も申し上げておりますが現在、ボルボリンの森を探索できるほどのパーティがいないのでその依頼は受理できません。明日になればAかBランク冒険者のパーティーが戻ると思いますので心苦しいかもしれませんがお待ちください。」


「明日まで待っていたらリュースティアさんが死んでしまします!ギルドマスターとあなたなら二人でもあの森に入れますよね?」


ん?


「そうは言いましてもただいまマスターは不在でして、、、。それに冒険者であるならば危険は覚悟の上でしょう。」


「確かにそうかもしれないけど、レベル1のリュースティアが生き残れる可能性なんてないじゃない!」


ん?

もしかしなくても俺のせいだよな。

あそこの森ってそんなに危険だったのか。

てかそれよりもあの二人に俺が無事な事を知らせないと。


「あのーシズさん?」


「うるさい!リュースティアは黙ってなさい!、、、、、、、、、、えっうそ、リュースティア?」


「おう。なんか心配かけたみたいで悪いな。けどこの通り無事だから安心してくれ。」


シズは目の前に俺がいる事が信じられないようだ。

何かを言おうとしたがそれは彼女の横から飛び出してきたリズに阻まれる。

リズは俺が無事な事を確認すると目に涙を浮かべリュースティアに抱き着いた。

予想外の出来事に固まるリュースティア。


「リュースティアさん、リュースティアさん!」


リュースティアの名前を呼びながら泣き続けるリズ。

こんなに心配させていたことに罪悪感がこみ上げ、どうしていいかわからなくなる。

だがさすがに泣きじゃくる女の子をそのままにするわけにもいかないのでリズを軽く抱きしめる。


「リズ、ごめんな心配かけて。どこもけがしてないしこの通りピンピンしてる。だから安心してくれ。」


「も、もうか、勝手にい、いなくならないでください。」


声を詰まらせながらもリズがそんなことを言う。


「ああ、約束する。もう二度と何も言わずにリズの前からいなくならない。心配させない。」


リュースティアは腕の中で泣きじゃくるリを抱きしめながら落ち着かせるようにやさしく耳元に語り掛ける。

その様子はまるで愛を誓いあった恋人のようだ。

シズがそんな二人の桃色空間にあてられて頬を赤らめている。


「えっと、とにかく無事でよかったわ。二人とも少しは落ち着いたかしら?」


コホンと軽く咳ばらいをしてシズが二人い問いかける。

誰かが止めないと永遠に続きそうだったので仕方なくシズが仲裁役に入る。


「えっ、ご、ごめんなさい!」


リズがようやく我に返ったのか顔を真っ赤にしてリュースティアから離れる。

だがそのあとに自分がしたことを思いだしたのか、リュースティアと目が合うとそのまま走り去ってしまった。


「俺なんかしたか?」


訳がわからないといった様子でリュースティアがシズに問いかける。


「はぁ、ほんとにわからないの?まぁいいわ。とりあえずここは出た方がよさそうね。」


そういってシズも外の通りに出る。

リュースティアはシズになぜ呆れられたのか全くわからないのでそのままにする。

屋敷に戻ってから本人に聞けばいいか、そう思いシズの後を追う。


「シズも俺の事心配してくれたんだろ?ありがとな。」


通りを歩いていたシズに追いつき後ろから声をかける。


「あんたがいないとすいーつっていうの?それが食べられなくなるしねー。それにあんたは一緒に旅した仲でもあるし。」


「食い物目的かよ。まあそれでもありがとな。」


食べ物優先とはいかにもシズらしい。

だが心配をかけたことは事実だし一応仲間として認めてもらえているらしい。


「でさ、それよりも何であんた無事だったの?あの森は高レベルの魔物が多いから下級冒険者は生きて帰れないって有名なのに。」


そんなに危険な森だったのか、、、、、。

今さらながらリュースティアの背に冷や汗が流れる。

知らなかったとはいえ、襲われたのはヘルハウンドだけだったしエルグランドとあってからは魔獣に襲われていない。

考えてみればこっちに来てから異様に気がする。

気のせいかもしれないが前の世界では異様に不運に見舞われていたから普通はこうなのかもしれない。

そういう事にしておこう。


「多分、運がよかったんだろ。それに一応シルフもいたしな」


「ふーん。まああの子も一応四大精霊だしね。」


何となく納得していない様子のシズだが事実なので仕方ない。

別に俺がめちゃくちゃ強いわけでもないしね!


「ま、無事だったしいそういう事にしておくわ。それより暇なら少し付き合って。ちょっと新しい武器を見たいの。」


特に予定もないのでシズの武器選びについていくことにした。

少し気になることもあったのでちょうどいい。

シズに了解の意を示し二人はシズのおすすめの武器屋に向かう。




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