第20話 無双
グルルルル
薄暗い広場に不穏な唸り声が響く。
15体のヘルハウンドが獲物にとびかかるタイミングをうかがっている。
もちろんその獲物と言うのはリュースティアである。
「あー、これもしかしなくてもまずい?」
「大丈夫なの!リューはきっと強いの!、、、、、多分。」
おいっ!
多分ってなんだよ。
内心そんなことを思いつつも逃げ場はないと覚悟を決める。
そしてそんなタイミングを見計らってかヘルハウンドの1体がとびかかってきた。
身構えるリュースティア。
しかしそこでなにか違和感があることに気づく。
ヘルハウンドが飛び掛かってくるのだがその動きが遅いのだ。
これならよけられる。
それを確信したリュースティアは向かってきたヘルハウンドを少し大げさな動作でよける。
戦いに慣れていないので動作が多少大振りになるのは仕方ないだろう。
問題はレベル1のリュースティアがレベル30の攻撃を見極められているということだ。
これはリュースティアの常人離れしたステイタスのおかげなのだがもちろん本人は知らない。
「リュー、これ使うの!シルも手伝うの!」
そういってシルフが先ほど創造した片手剣を渡してくれた。
言葉を聞く限りシルフも戦ってくれるらしい。
精霊と契約したもののいまいちどうしたらいいかわからなかったのでちょうどいい。ここで戦い方の基盤を作るのもいいかもしれない。
、、、もちろん生きていられればの話だが。
「サンキュ。じゃあそっちの半分は任せるぞ。」
「はいなの!」
任されたことがうれしいのか返事がいつもより元気だ。
無邪気っていいね。
今にも死にそうなのにそんなこと微塵も感じさせない。
あっでも精霊って死なないんだっけ?
「あっぶな。っと、余計な事考えてる場合じゃないよな。」
つい邪推をしていたばかりに飛び掛かってきたヘルハウンドへの対応がおろそかになってしまった。
できれば魔法で一層したいけどまだ正確に狙い打てる自信もないし、外したあとのカウンターが怖い。
剣の使い方なんて知らないけど動きが見切れるならかわしたところを切り付けていけば何とかなるだろう。
シルフ方は特に心配する必要はないだろう。
彼女の魔法は身をもって体験済みだ。
よし、そうと決まればやる事はさっさとやらないとな。
リュースティアは片手に剣を構えたまま大木を背にするような位置に陣取る。
いくら攻撃を見切れるとは言え背後からの同時攻撃などをされるとさすがにさばききれない。
なので正面から来た敵を確実にカウンターで仕留めることにしたのだ。
戦闘未経験のリュースティアが取った行動にしては上出来だった。
だがそれでしのぐには相手の数が多すぎた。
「くそが、何体いるんだよ。シルフそっちはどうだ⁉」
「おかしいの。みんなリューの方に行くの。」
いくら魔獣でも精霊を食べる趣味はないらしいくシルフの方を襲っていた集団がこちらに戻ってきたらしい。
それか四大精霊であるシルフには敵わないと悟ったかだ。
だがそれはこちらからしたらいい迷惑。
一気に一人で15体相手にしないといけなくなった。
もっともシルフが2体、リュースティアが1体倒したので残りは12体なのだが。
「つかよけんのはいいとして、この剣切れ味悪すぎんだろ!」
リュースティアがそう叫ぶのも無理はない。
リュースティアの剣、等級Ⅱというのは一般流通レベルなので高レベルの魔獣の表皮を切り裂くには力不足なのだ。
それでも何とかなっているのはリュースティアがステイタスに任せた力押しで傷つけているからだ。
だがそんな戦い方では剣が持たない。
その証拠にさっきから嫌な音が剣から聞こえてくる。
「シルフ!このままだと持たない。一瞬でいいから隙を作ってくれ。」
「はいなの!」
そう言ってシルフは自らが発光しヘルハウンドの視界を奪う。
そしてそれはリュースティアも例外ではなかった。
そういうことは先に言ってよ。。。。。。
だが一瞬とはいえ相手に隙ができた。
リュースティアはこの隙に広範囲の魔法を使おうとしていたので目が見えなくても方向さえ間違えていなければ問題ない。
広範囲の魔法であれば狙いをつける必要がないので今のリュースティアでも十分にあてられる。
「シルフ、離れろ!【ショック・ボルト】」
リュースティアが放ったのっは雷魔法、ショック・ボルトだ。
これは雷魔法の中でも比較的殺傷能力が低いもので相手を感電させるものだ。
殺傷能力の高い魔法でもよかったのだが制御できなかった時のことも考えて使わなかった。
だがこれなら簡単に制御できる上に相手を殺せなくても動きを封じることができる。
もちろん効かないと困るので込めた魔力は最大だ。
「なに、これ、、、、。」
魔法をはなったリュースティアが目を開けると目の前には体から煙を上げたまま事切れているヘルハウンド達がいた。
周囲には肉が焦げたようなにおいが立ち込める。
そして足元を見ると同じように体から煙を上げているシルフがいた。
足がぴくぴくしているところを見ると死んではいないみたいだ。
「、、、、、。感電するだけの魔法じゃないの?逃げよう。バレないうちに。」
そしてシルフを抱え、脱兎のごとく現場を去ろうとしたリュースティアの目の前に黒い影が降り立つ。
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