第16話 チート顕現


あれ?

石って破裂するもんだっけ?


「す、すいません!少々ここでお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」


そういって青ざめた顔でギルドの奥に走っていってしまったラニアさん。

なにか不味かったかな?そう思って二人の方を振り向く。

するとさっきのラニアさんに負けず劣らずな表情をしている二人がいた。

うわー、デジャブ、、、。


「なぁなんかまずいことしたかな?」


「「・・・・・・・。」」


あれ、無視ですか。

あからさまな敵意より無視のほうがダメージでかい。

それより、口が開いたままになってるぞ?

かわいいけどさすがに自重した方がいいと思います。

本人たちの名誉の為に。


(なぁ、なんかまずいのか?)


二人の思考が正常に戻るにはもう少しかかりそうだったので念話でシルフに聞いてみる。


(んー、わかんない。でもリューの魔力量はすごいの! 精霊たちにも負けないの!。)


(なるほど、精霊たちにいも負けない、、、ってそれ不味くない⁉それ普通の人が持てる魔力量じゃないってことだよね?)


(リューはすごいの!だからいいの!)


やばい、シルフが最初にあった時とは比べ物にならないくらいに幼稚化してる。

全く参考にならないけどとりあえずまずいことになりそうだっていう事だけはわかった。

どうやってごまかすか考えているとラニアさんがいかついおっさんを連れて戻ってきた。


「ほう、お前がこの鑑定石を壊したやつか。どんな奴かと思ったがガキじゃねーか。お前みたいなガキがそれほどの膨大な魔力を持ってるとはおもえないんだが?」


「ギ、ギルドマスター!さすがにここでは。えっと、すみませんがこちらに来ていただいてもよろしいでしょうか?お連れの方もご一緒でかまいませんので。」


どうやらあのいかついおっさんはギルドマスターらしい。

二人の雰囲気からして断れそうにもないので黙ってついていく。

もちろん思考停止している二人を後ろから押していくことも忘れない。


二人の後について廊下に出ると奥のこじんまりとした部屋に通された。

どうやらギルドマスターの執務室らしい。


「よし、ここなら問題ないだろう。俺はここのギルドマスターをやってる“ドゥラン・オリビアーク”だ。で、お前は?そっちの嬢ちゃんたちはポワレのガキだろ。」


「初めまして。俺はリュースティアと言います。つい先日メーゾル領に来まして、縁あって伯爵家にお世話になってます。」


「ふん。お人良しのポワルのやりそうな事だな。で、リュースティアっつたか?俺にはこの鑑定石の測定値以上の魔力がお前みたいなガキにあるとは思えん。小僧、吐くなら今の内だ。」


口がわるいなこのおっさん。

さっきから思ってたけど伯爵家に対する言葉遣いじゃないよね?

そう思ってこっそり二人に聞いてみたらどうやらポワルさんとドゥランさんは幼馴染らしく、そのつてで二人も冒険者登録をしてもらったらしい。

それはいいとしてあの人と幼馴染とか想像できない。

どう考えてもガキ大将といじめられっ子の構造が出来上がってしまう。


「で、どうなんだ? 伯爵家の懇意の人間ならあまり手荒いまねはしたくないんだが。」


ヤバイ、どうしよう。

完全に疑われてる。

必死に言い訳を考えて、思い出した。

シルフは確か精霊にも負けないと言っていた。

ならばすべて精霊の、シルフのせいにすればまるく収まるのではないか?


「じつは精霊と契約してまして。魔力を流すときにその精霊がいたずらで自分の魔力を流したみたいなんですよ。」


これでどうだ!

実際に精霊が魔力を流せるかなんて知らないがそもそも精霊と契約できる人間が少ないらしいから審議の確かめようなどないだろうし。


「お前みたいなガキが精霊と契約だと?小僧の言葉だけでは信用できんな、小僧のいう事が本当ならばここにその精霊を召喚してもらおう。」


「わかりました。おい、聞いてたろ。シルフ、出てきてくれ。」


精霊を召喚しろと言われても特に困ることもないのでとりあえずシルフを起こしてみんなの前に出てきてもらう。

どんな姿で出てくるのか若干不安が残るが、、、。

アルミラージの姿になられたら速攻で隠そう。


「んー、呼んだ?」


何とも眠そうな声と共に現れたのは四大精霊の一人、風と森の精、シルフだった。

シルフ、だよな?

その姿は今までリュースティアが一回も見たことのない姿だった。

少女であることに変わりはないのだが前みたいなどっかの部族の少女などではなく、緑色の髪に、金色の瞳、そして薄緑いろの肌。

驚くべきことに羽まで付いている。

サイズは手のひらサイズ、なのか?

疑問に思って念話で聞いてみるとこれが本来の姿らしい。

特に隠す気もないのとギルドマスターには見せておいた方がいいと思ったらしい。


「その姿は、、、。小僧どこで? お前みたいなガキが四大精霊と契約しているなんてしれたら国がひっくり返るどころか戦争が起きる。どっかに取られる前に俺の直属にならんか?」


なにその怖い脅し。

なんかフラグ立ててません?


「リューはシルフのなの!誰にもあげないの。」


シルフがそんなことを言ってるけどキャラ作ってたの覚えてます?

完全に素が出てるので最初の威厳などもうないだろう。

その証拠にリズたちのシルフを見る目が可愛いこどもを見守るようなあたたかい視線になってる。


ですよ。俺としてはめんどくさい事には関わりたくないし別に名声とかいらないんで。冒険者登録だけお願いします。」


「けっ、欲のないガキだな。気が変わったらいつでも言ってこい、こき使ってやるからよ。とりあえずもっかい鑑定のやり直しをする。ラニア、あれ持ってこい。」


指示されたラニアさんが一瞬ビクッとし、マスターに意味ありげな視線を送る。

だがマスターの視線をうけ、すぐに席を立つ。

ラニアさんを待つ間シルフに色々聞いておこうと思ったが、シルフの視線が机の上の卵にくぎ付けになったまま動かない。

ドゥランさんに聞いたら卵の燻製らしくお茶請けの定番らしい。

さすが甘味がない世界、お茶請けに燻製卵とは、御見それいたしました、、、。

シルフの目が合い変わらず食いついたままなので1つ殻をむいてやる。

自分の頭と同じくらいの大きさの卵に必死でかぶりつく様子は何とも微笑ましい。

そうこうしているうちにラニアさんが先ほどの石よりも1回りほど大きい水晶のようなものを持ってきた。


そして先ほどと同じ要領で石に魔力を流す。

もちろん流す量は先ほどの半分以下だ。

そしてその結果をラニアさんが書き写して俺のギルドカードを作ってくれた。

魔力を抑えたおかげかまずい結果にはならなかったみたいだ。

それでも適正ジョブが7つあってラニアさんが驚いていたけど。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【名前:リュースティア】

【レベル:1】

【所属ギルド:メーゾル】

【冒険者ランク:E】

【ジョブ(仮):魔法使い、錬金術師、剣士、双剣士、射手、召喚術師、聖者】

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ちなみにリュースティアのギルドカードはこんな感じだ。

所属は冒険者ランクが上がって国の専属になったりどこかの家なり集団に属することで変わるらしいが初心者は登録したギルドになる。

ジョブに関してはスキルを獲得すると(仮)マークが取れるらしい。

とまあ一通り説明を受けて俺たちはギルドをあとにした。


帰り際にドゥランさんが色々と忠告してくれた。

どうやらリュースティアが鑑定石に流した魔力が全力でないことを見抜いたらしいく世話心からかいろいろ教えてくれた。

非常時の駆け込み寺として活用させてもらおう。


色々あったがとりあえずこれで職を見つける事は出来た。

安全に稼げるかは別として。


とりあえずここから始めるんだ、俺の第二の人生。

平穏無事。

今度こそ普通の人生を歩んでやる!




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