第15話 冒険者ギルド
結論から言うと俺は伯爵家に居候させてもらえることになった。
対価は当然“プリン”。
プリンを毎日作ってくれるなら食事付きで部屋を貸すと言うのだ。
リュースティアからすればありがたい話なのだが、対価がプリンって安くない?
しかも毎日作れって毎日食べたら飽きるよね?
飽きられたら俺いらない?
そもそもレシピあげたよね?
とか疑問はたくさんあるのだがとりあえずは好意に甘えさせてもらう。
だからといって働かないわけにはいかない。
ニートは素晴らしいが異世界に来てニートをするのはさすがにはもったいないと思う。
という事でリズとシズに仕事の相談をしにきたのだ。
「というわけでさー、楽でたくさん稼げて自分の都合で働きたいときに働ける仕事ってなんかない?」
この発言を地球のハローワークの人が聞いたら激怒すること間違いない。
働くことを舐めているとしか思えない発言だ。
ろくに働いたことなどないであろう伯爵家令嬢の二人ですら呆れている。
「あんたねー。そんなのあるわけないじゃない! 雇われたら雇い主に従わないといけないし。自分で何かやるにしたって大変なことは目に見えてるわよ。」
「そうですね。リュースティアさんのスキルで商売するにしてもあまり利益は期待できそうにないですね。」
当然のごとくそんな仕事はないと切り捨てられる。
「だよなぁ。なんか一攫千金とかないかなー。なんなら宝くじでもいいや。」
そんなことを言い椅子の背もたれに体重を預け大きく伸びをする。
昨日シルフに吹き飛ばされたばかりなのでまだ体のあちこちが痛い。
ちなみに今シルフはリズの膝の上で眠っている。
午前中に二人に遊んでもらえて満足したようだ。
寝ていればかわいいのにとか思う。
それにしてもリズの膝枕、うらやましい。
「そうだ!あるじじゃない!リュースティアがいう仕事にあうやつが。」
―ズデーン。
いきなりシズが立ち上がったせいで椅子の背もたれに体重をかけていたリュースティアはそのまま後ろにひっくり返る。
「いってー。急にでかい声出すなよ。で、なに?どんな仕事?」
腕をさすりながら訪ねる。
「ふふふーん。そ、れ、は!冒険者よ!」
声高々に宣言されたそれは地球にはない職業だった。
予備知識のないリュースティアがかろうじてわかるのはダンジョンとかに行くくらいのものだ。
けど、それって確かに稼げるかもしれないけど命の危険ありますよね?
「ああ、なるほど。そうと決まれば早速ギルドに行きましょう!」
そういって俺の手を掴んでどこかへ連行するリズ。
え、俺やるって言ってないよね?
そんなことを思いつつもされるがまま、決して逆らう事はしません。
理由は簡単。
俺の手を握るリズの握力が強い。
かわいらしい”ギュッ”じゃなくて”メキメキ”、ですから。
そろそろ腕折れますよ?
後、うしろからついてくるシズが逃げようとするたびに剣を鳴らしてきます。
どうか何も起きませんように、そう願うだけで精一杯だった。
特に何もなく冒険者ギルドに到着した。
道中に男連中か殺気をたくさん頂戴しましたがそれはなかったことにします。
「ここが冒険者ギルド? さびれた飲み屋じゃなくて?」
冒険者ギルドと呼ばれるそこはどこから見てもさびれた飲み屋だ。
大きさはそこそこあるのだがどこか荒くれ者を連想させる雰囲気を持っている。
「そ、ココがこの街のギルド【メーゾル】。見た目はぼろいけど中はそこまでひどくはないわよ。」
そういってギルドの今にも外れそうな扉を開けて中に入っていく。
ちなみにメーゾルというのはこの街の名前らしい。
つまりここは【メウ王国;メーゾル領】らしい。
ようやくここがどこかわかったが名前を聞いてもピンとこない。
神様がこの世界のことはインプットしてくれているらしいけど全く頭にない以上忘れられたのだろう。
だが対して気にも留めずリュースティアは先に入っていった二人を追う。
室内はシズの言うように外見ほどひどくはなかった。
だがそこらへんにこわもてのおじさんがいる上に酒臭いのでさびれた飲み屋というイメージが変わることはない。
キョロキョロとあたりを見渡しているとすでに受付の人と話していたリズたちに呼ばれた。
「リュースティアさん、こっちです。ここで冒険者登録をしてもらいましょう。」
そして二人の横まで行って初めて受付の人の顔を見ることができた。
受付の人の顔を見てリュースティアは固まった。
ファンタジーに詳しい人ならだれもが期待するテンプレ。
”受付嬢が美人”
そしてそれはファンタジーに全く詳しくないリュースティアにも適応された。
受付嬢はまさに美女であった!
20歳くらいでその見事に整った顔立ちとプロポーションに目を奪われた。
そして何よりも眼を奪ったのはふさふさなかわいらしい尻尾とピンっとはった獣耳。
ヤバイ、可愛すぎる。
目が離せない。
受付嬢が何か説明をしてくれているが全く耳に入らない。
「リュースティア!聞いてる⁉」
そんな怒声と足の痛みで意識が戻りようやく受付嬢から視線を外す。
ちなみに足の痛みは横で二人が俺の足を踏んでるからだったりする。
「わり、聞いてなかった。もう一度お願いします。」
「はい、ではもう一度説明させていただきますね。3回目はないのでよく聞いておいてくださいね。」
もう一度説明を求めたリュースティアに受付嬢は嫌な顔することなく丁寧に初めから説明してくれた。
仕事だからだろうがいい人だ。
ちなみにラニアさんというらしい。
説明は全く耳に入っていないが名前だけはちゃっかり聞いていたりする。
再び見惚れそうになったが3回目はないという言葉を思いだし必死に耳を傾ける。
「まずはこの石に魔力を流していただきます。この時に一定量の魔力がないと冒険者として登録することはできません。魔力を流していただいたら魔力の質によって適正ジョブが決まります。ジョブが決まれば冒険者カードにステイタスを入れ終了です。これで説明は以上になりますが何か質問はありますか?」
ラニアさんの説明はとても丁寧できっとこの世界の人間ならなんの問題もなく理解できるだろう。
だが異世界人であるリュースティアにはわからないこが多々ある。
「えっと、魔力流すとかやったことないんですけど、魔力がない場合とかってあるんですか?」
魔力操作をしたことがないというリュースティアの発言に驚いた様子のラニアさんだったがすぐに営業スマイルに戻り説明してくれた。
「この石は魔力との調和性が高いので手を触れれば感覚がつかめると思います。イメージとしてはステイタスプレートをつくるトレース盤に似てますね。亜人ならともかく、魔力を全く持たない人族は珍しいですね。」
「それなら大丈夫かな。もう一つだけ質問で、ジョブってなんですか?」
トレース盤のイメージといわれて安心したリュースティアはもう一つの疑問をぶつける。
「ジョブというのは簡単に言えばその人の戦闘スタイルになります。魔法適正があるなら魔法使い、剣なら剣士、弓なら射手とかですかね。他にもいろいろなジョブがあります。もちろん複数のジョブを持つこともありますが多くても3つですね。それ以上は聞いたことありません。それにあくまで適正になりますので適正ジョブ関連のスキルを覚えて初めて正式なジョブとなります。なので適正ジョブはその人の可能性と考えていただいても構いません。」
「なるほど、まっ、とりあえずやってみるか。冒険者になれなきゃジョブなんて関係ないしな。」
そういってラニアさんが出してくれた石に手を置く。
人の頭ほどのそれに手を置くと確かに何か力の流れを感じることができた。
それを石に流せと言ってたから言われた通りその力の流れを石の方に向け少しずつ注いでいく。
結構簡単だ。
どこまで注げばいいかわからなかったのでとりあえず流しつつけてみる。
どんどんラニアさんの顔が引きつったものに変わっていくがリュースティアは気づかない。
さすがにこれ以上は!と言ってラニアさんが止めようとしたとき。
>パンッ!!
リュースティアの手の下にあった石が破裂した。
「「「えっ?」」」
そんな3人の間抜けな声が騒がしいギルドで嫌に大きく響いた。
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