第14話 悪夢は続く

疲れ切った状態で部屋に戻るとベットには絶世の美少女がいる。

これは頑張ったご褒美なのか?

そんな邪な考えが頭に浮かんだが考えなおす。

断じて俺はロリコンではない!

ええ、違いますとも。

シルフの寝顔に一瞬見惚れてしまったのは事実ですが。


だが、異世界に来てまでロリコンなどという不名誉な称号を得るわけにはいかない。

いくら年齢が若くなっていたとしても中身は20代。

俺自身が耐えられない。

下手すりゃ犯罪者だ。

なので多少、ほんっとに少しだけ残念に思いつつも冷たい床の上に丸くなる。


本音を言えばベットで眠りたかったが仕方ない。

とりあえず寝よう。

今日はもう疲れた。


そうしてようやくリュースティアがまどろみに落ちるころは当然ながら朝になるわけで。

朝になるという事は人々が起きだす時間というわけだ。

それはどこかの精霊も例外ではなかったようで、、、、。


「リュー! 起きろ! 朝だぞ! 今日こそ遊んでもらうからな!」


そういって勢いよくリュースティアのお腹にダイブしてきたのは少女姿のシルフである。

皆さんお気づきだろうか。

彼女の口調が違う事を。

これが彼女本来の性格なのである。

どうやら彼女は精霊としてはまだ若いらしく性格はもちろん、口調もどこか幼い。

だがそれでも人の数百倍は生きているのでただ単にシルフの性格かもしれないとリュースティアは思っていた。

もっともこのことをリズたちは知らない。

なんでも舐められるから人前では大人びた話し方を意識しているらしい。

こんな猫かぶりすぐにバレると思うのだがどうせ言っても聞かないので言う気はない。


「んー、なんだよ? 俺疲れてるから寝かせてくれ。つか起きるならベット寄越せ。」


シルフの遊んで攻撃を軽くながしつつベットに入り布団を頭からかぶる。

さっきまどろんでからまだ一時間もたっていない。

徹夜で市内観光とか冗談じゃない。

いくらヘタレのリュースティアでも自分が契約した精霊にまで気後れすることはないらしい。

まぁ半分くらいは睡魔で頭が働いていなかっただけなのだが、、、。


一方、自分のかまって攻撃を無視されたシルフは。


むむむーー。


そんな言葉が聞こえきそうなほどに頬を膨らませていた。


「リューのバカー!! リューなんてふっとんじゃえ! 【我が求めるは風の導き 友の声に応じ今一度その身を預けたまえ 我を贄とし敵を打て ウィンドストーム】」


怒りの一言と共に放たれたのは小さな竜巻。


サイズが小さいのは注ぐ魔力量を抑えているか狙いがリュースティア一人だからのどちらからだろう。

ただいくら小さいとはいえ四大精霊が放つ中級風魔法だ。

リュースティア一人くらいなら簡単に跡形もなく吹き飛ばすことができる。

そんな自らの死期を察知したのかリュースティアが起きる。


すでに目の前には破壊力抜群の竜巻。

そして竜巻の傍らには怒りに震える少女。

多分怒っているんだろうけどトイレを我慢しているようにしか見えない。

でもそんなことを言ったら目の前の竜巻が直撃してくることは明白なので言わない。


「シルフ? 何に怒ってるのかわかんないけど、謝罪する余地ってあったりする?」


なぜ怒っているのか全く分からないけど謝るに越したことはない。

自分の死がかかっているなら見た目幼い子供だろうが謝れる。

それがヘタレ・リュースティアである。

だがそんなリュースティアにシルフが返した言葉は何とも無慈悲な一言だった。


「ふっとべ」


その一言を最後にリュースティアの意識はブラックアウトした。


のちに町の人はこう語る。

朝方に大きな音がして見てみたら伯爵家のお屋敷に女神様がいたと。

女神様は朝日をその身に浴びてそれはもうなんともいえない神々しさを放っていたとか。

そしてその女神にまるで仕えるように小さな竜巻が傍らにあったとか。

女神が姿を消すとその竜巻は上空へ上り露散したとか。

人々がその衝撃の場面に目を奪われていると遥か上空、竜巻が露散したあたりから何かが落ちてくるものを見たとか。

それを見た町の人々は女神様からの贈り物だと口々に囁いた。

我々にもたらされた恩恵なのだと。


だが事実はいつも想像をはるかに凌駕する。

彼らには遠すぎて落ちてきたものの正体がわからずそういったのだが、落ちてきたものは当然、贈り物などではない。

なぜならそれは竜巻に吹き飛ばされ落下していたリュースティアなのだから。

いつの間にかふっとばされただけなのに女神からの贈り物になっていた。

その間違いに町の人も本人も気づくことはないのだけれども。





余談だが。

リュースティアが意識を戻した時、昇っていた太陽はすでに沈んでいた。






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