第11話 異世界でも女性は策略家なようです。

 

うん。

なんだろう。

すごかった。

何がって?

まず、伯爵家の広さと使用人の数。

そしてさも当たり前のようにそこにいる二人かな。

あと、何食わぬ顔でいかにも高そうなクッションに舞い降りたシルフ。

さすがに鷲の爪や牙で破かれても困るのですぐに俺の頭に戻した。

断じて俺の頭よりそっちの方が気持ちよさそうだからと言ってクッションに降りたシルフにイラっときて、などではない!

俺が違うと言ったら違うのだ。


ちなみにシルフは実際に話しているわけではなく俺に直接、念話?というものをしているらしい。

いきなり頭に直接話しかけられて俺が飛びあがったのは言うまでもないだろう。


屋敷に入ると侍女と思しき女性に案内され、俺たちは学校の体育館くらいのホールを通り、これまただだっ広い食堂に案内された。

その後そのまま夕食をいただくことになりそこで二人の両親と対面した。


母親の名前は“シャルロット・フローウィス”で父親は“ポワル・アランガ・フローウィス”らしい。

伯爵夫人なのにシャルロット(貴婦人の帽子)?

で、夫の名前はポワール(洋ナシ)?正確にはポワルだが。

二人合わせてシャルロット・ポワールか?

何とも美味しそう、、いや、仲のよさそうな名前なんだ。

リュースティアの邪推は置いとくとして、二人は本当に仲のいい夫婦に見えた。

これは完全に俺の偏見だが、貴族なのに偉そうな態度をしない。

初対面の明らかに平民である俺を前にしても嫌な顔せずに、

むしろ物腰は柔らかい方だろう。


「我々のはねっかえり娘たちが迷惑をかけたね。その埋め合わせというわけではないが今晩は我が家でゆっくりしていいってくれたまえ。」


「ちょっと、お父様!あたしたちのどこがはねっかえり娘なのよ。」

「そうです!シズはともかく、私はそこまではねっかえりではありません。」


父親の言い分に不遜とばかりに反論する二人。

傍から見れば伯爵家の御令嬢が父親にこんな風に言い返すあたり充分はねっかえりだと思う。

そんな二人にポワルさんが必殺の一撃を言い放つ。


「ほう。では勝手に冒険者登録をし、勝手に王都の外まで魔獣討伐の依頼に行くのは伯爵家、令嬢の、気品ありかつ優美な嗜好と言うわけか?」


一言一言に重みをつけるためか微妙に間を開けるポワルさん。


「「っ⁉」」

「まさか、もうバレて、、、。」


「全く、お主たちには毎回驚かされるばかりだよ。お前たちは伯爵家の人間なんだぞ?王都で何かすれば必ず誰かが見ているという事をもう少し自覚しなければならん。」


どうやら今回のぴょん吉討伐は二人が勝手に行動を起こしたらしい。

ちょっと雰囲気悪いか?

そう思ったがポワロさんの目に優しさが見て取れたので単に二人のことを心配したが故の事だろう。

ちなみに伯爵家当主であるポワルさんは二人に何かを強要することはなく二人の好きなようにやらせてきたらしい。

だがそれはやりたい放題の我儘しほうだい、というわけではなくきちんとした基盤があって成り立つことらしいが。

俺に教育や家庭のことは言えないがきっとポワルさんはいい父親なんだろう。

母親もそんな父子をほほえましく見守っている。

シズとリズを見てこの二人が育った家ならいい家庭だろうと思っていたが想像通り暖かい家庭のようだ。


そんな家庭をリュースティアもほほえましく見守りつつ家族だんらんを壊してはまずいと思い、料理をいただく。

すると、突然の飛び火が!


「で、リュースティア殿だったか?お主はどちらの騎士なんだい?」

「ブフッ!!!」


まさかの言葉につい口に含んでいたスープを噴き出してしまった。


「ポ、ポワルさん⁉ 何言っているんですか⁉ 俺はたまたま出会った二人に王都まで送ってもらっただけですって。」

「そ、そうだよ!お父様が思っているようなことは何にもないから!ね、お姉ちゃん!」

「・・・・・・・。」


慌てて否定する俺。

赤面しながらも否定するシズ。

同じく赤面しつつも黙り込んでしまったリズ。


ん?????

俺とシズの頭の上に大量のはてなマーク。

それでも無言を貫くリズに両親は肯定ととらえたようで二人して好奇の目を向けてくる。

それからは両親からの質問の嵐でまともに食事を味わえなかった。

せっかくの宮廷料理だったのに、、、。

途中でちらりと見たリズと目があい、彼女の口元が三日月に歪む。

あっ、こいつ楽しんでる。

そこでリズの思惑を察したのだが、手遅れでした。はい。

女性、特におとなしそうな子は怖い。

それがこの世界で最初に学んだ教訓だった。



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