第2話 バグからの豪運
「は?」
「いや、だからバグ。」
「は?」
「バグだと言うておるじゃろうが!」
「いやいやいや、逆ギレされても。てかキレたいのはこっちですって!なんすか、バグって、そんなのありなんですか⁉ゲームじゃあるまいし俺の人生かかってるんですよ⁉」
そう、まさかのステータスにバグが生じるという異常事態。
何万、いや何億分の一という確率を見事に引き当ててしまう運の悪さ。
さすが運に見放された男、禅木海翔である!
「そんなこと言われてもわしだって長い事神をやっておるがステータスにバグが生じるなんて聞いたことも見たこともないしのぉ。すまんがそのまま転生してもらうしかないの。」
急に投げやりになる神様。
言外に”わし知らん”と言っているのがまるわかりなんですが、、、、。
「自分で対処できなくなったからって見放すの早くありません?ねぇ何とかしてくださいよ。このままじゃ死亡フラグ回収まっしぐらですって!」
必死ですがりつく。
諦める事には慣れているがこればかりは諦めるわけにはいかない。
なんせこれから行く世界での自分の命がかかっているのだ!
「しかたないのぅ、ちょいと試してみるが期待はするでないぞ。」
「はい!」
何やらおもむろに立ち上がる神様。
そして彼の後ろに立つ。
海翔からは神様が何をしようとしているのかはわからないがきっと神様的な力を使ったりするんだろうな、そう思っていた。
まさか神様が壊れたテレビに繰り出すような手刀を海翔の頭にもおみまいしようとしているなど夢にも思わずに、、、、。
「いってぇえ!!なにすんですか!」
頭が割れるかと思うくらいの衝撃だった。
どうやら神様のフルパワーで繰り出された手刀をもろに頭に受けたようだ。
「いや、こうすると治ったりするじゃろ?画面が映らなくなったときとか、、、。」
「俺の頭はテレビか! てかテレビでもそれやったらこわれますからね⁉」
(いつの時代の人間だよ、あんたは!)
などと涙目になりながら内心で文句を言い、神様はそもそも人ではないしかなり昔から存在していることに気づき次からは違う文句を探そうと心に誓った。
「まぁまぁ、もしかしたら治っておるかもしれんしもう一度ステータスを開いてみてはどうかね?」
未だに目の奥で火花が飛んでいるがとりあえずもう一度唱える。
「ステータスオープン」
すると浮かび上がってきた映像はなんと、ノイズなしの状態だった!
「神様!これってもしかするともしかしませんか⁉」
「ほっほほ。やはりわしの行いに間違いはなかったというわけじゃな。」
急にすごく得意げになる神様。
さっきまで狼狽えてあわあわしていた人と同一人物だとは思えない。
「それでどうすればいいんですか?」
「ああ、そうじゃな。ステータスは触れて操作することができるようになってお
る。申し訳ないが名前はこちらで決めさせてもらう。お主がやる事はスキルと職業を選択することじゃな。そのあとSPを選んだスキルに振り分けていけばよい。レベルは1からで年齢も成人である15に固定されとるがそれ以外は自由に選んでもよい。」
「名前って前の世界のではだめなんですか?」
「ダメではないが神が付けた名前には護符が宿るのじゃ。それに地球の名前はあちらの世界ではめずらしいいからのぉ。目立つじゃろう。」
名前を変えることに抵抗はあったが第2の人生では普通に生きていくことを目標にしたからには悪目立ちすることはできれば避けたい。
「まあそういうことならいっか。新しい名前はリュースティア、か。次は職業。前は飲食だったし違うのがいいよな。やっぱり魔法の世界って言ったら冒険者とかかな。ってあれ。おかしいな。神様、職業欄に何もないんですけど、、、。」
「・・・・・・。」
あれ、まさかこの反応ってもしかして、、、。
「バグじゃ。」
やっぱりそうきたかーーーー!
「仕方ない、もう一度、、、。」
そういい立ち上がろうとする神様。
「ちょっと待って、なにする気ですか?」
「なにってほら、」
そう良い腕を振るしぐさをする神様。
人の脳みそ揺らすのにちょっと飲み行こうかみたいなテンションはやめていただきたい。
「いや、それはもう結構ですから」
必死で断るがなおも叩こうとしてくる神様。
(どんだけ叩きたいんだよ⁉)
しばらく神様ともみ合ったいると空から別の声が聞こえる。
「創造神、1人転生させるのにどれだけ時間をかけているのですか?そんなペースでは賭けの負債を払いきるまで何千年もかかってしまいますよ。」
空から降ってくる声の主の姿は見えないがそれよりも気になるワードが出てきた。
「神様?賭けの負債ってなんです?」
にっこりと、それはもう素晴らしい笑顔で尋ねる。
「か、賭け事はわしら神の中での娯楽なんじゃが負けに負けを重ねてしもうてな、負債として地球の魂を何人か転生させなければならないことになったのじゃ。」
そういいサムズアップを決める神様。
するとあれか、俺がここに来たのも目の前にいるだらしのない神様のせいってことか?
「じゃ。じゃねえぇ!全部あんたのせいじゃねぇか!おまけにバグ付きとか冗談じゃねぇぞ!だいたいあんたは、、、、、。」
この際だ、言いたいことを全部言ってやろうと思い口を開いたが全てを出し切る前に強制的に終了させられた。
なぜかって?
空の声の主が俺が話しているにも関わらず、俺の準備が何もできていないにも関わらず俺を転生させたからだ。
ふっざけんな~!!!!
そう心で叫ぶと同時に海翔、いや、リュースティアは意識を手放した。
*
一方、彼が強制的に転生させられた神界では。
「おい、運命神よ。いくら何でも今のはかわいそうではないかの?」
「なぜかしら?ステータスの設定はもう終わっていたのでしょう?」
そういいどこからともなく現れたのはあ淡い水色のドレスに身を包んだ女神だった。
「それがの、どういうわけかバグが生じてあの子が設定できたのは名前だけなのじゃ、、、。それに加えあの子には補助でつけておる技能の説明も何もできておらんのじゃ。」
「・・・・・・・・。」
言葉を失う運命神。
「もしかして私、とんでもないことをしてしまったのかしら?」
コクリ。
無言でうなずき彼が転生された世界のある方を見る。
つられて運命神もそちらを向く。
二人がこの時何とも言えない憐れみのまなざしをしていたことをすでに転生した彼が知ることはない。
(せめてもの償いじゃ。お主のこれからが良い人生であることを願おう。これはわしらからの些細な贈り物じゃ)
そうして何かをつぶやくと神たちは光の粒子となってはじけ飛びその場から消えた。
*ステータス*
【名前:リュースティア】
【年齢:15】
【レベル:1】
【種族:人族】
【職業:なし】
【天職:なし】
【スキル:なし】
【魔法:なし】
【称号:なし】
【加護:創造神の加護(創造特権)、運命神の加護(豪運)】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます