異世界でパティシエやったら地球より断然いい暮らしができることにもっと早く気がつきたかった。
銀髪ウルフ
1章 転生
第1話 運の悪い男
俺の名前は
すごい、とか聞こえてきそうだが今はどうでもいい。
俺はなぜか生まれながらに運が悪い。
俺が楽しみにしていると行事の日は大抵雨。
晴天のときの俺はたいてい体調不良で欠席だ。
ドブに落ちたり鳥の糞が落ちてくる、車に水をかけられるなど日常茶飯事。
おみくじでは20年連続大凶。
電車が止まるなんてしょっちゅうだし事件に巻き込まれた回数も両手では足りない。
ある意味ではとても濃い人生を送ってきたと思う。
だって、旅行でたまたま一人別行動をして、たまたま寄った銀行で銀行強盗に巻き込まれるとかふつうないよね?
まぁ俺にはそれが普通で日常なんだけど。
だから大抵の事はまたか、ぐらいで流してこれたし俺の人生はそういうもんだと思って高望みすることなく普通に生きることを目標としてきた。
だけどこんなに運の悪い俺でもまさかこんなに早く死ぬとことになるとはさすがに思わなかった。
そう、俺は死んだ、らしい。
目の前に神様?らしい人もいるし多分そういうことなんだろう。
それに俺が今いるこの場所は地球の知識では説明できない。
「へぇ、死んだらこうなるんだ。」
などの感想を述べたりするくらいには冷静だった。
「ほぅ、思ったより混乱しておらんようで安心したわい。」
神様?らしい老人がそう言い手を振るとどこからともなくちゃぶ台と湯呑が現れる。
そう、時代劇とかでよく見るあの感じだ。
いつの時代だよ!
内心で突っ込みつつ座布団に腰かけ話の続きを促す。
「あまり実感もないですし、いずれはこうなることですしね。それよりここはどこなんですか?」
「うむ、諦めがいいというかなんというか。それもお主の人生のせいかと思うと、のぉ」
そう言いながら残念なものでも見るような視線を向けてくる。
うわ、痛い。
痛いから、やめてその眼。
憐れむような眼でこっちをみるのはやめてください。
心が悲鳴を上げた。
「で、俺の質問には答えてくれないんですか?」
「おお、そうじゃったな。だがもう少しのんびりしてもええんじゃぞ?ほら、お主は、あれじゃし?」
そう言い、なおも憐れむ目をやめない神?。
「いや⁉まず、その憐れむような眼やめてくれません?俺、別に自分がかわいそうとか思ったことないですしそれなりに楽しく生きてきましたから⁉」
「お主はいい子じゃな。だから余計にお主が不憫でならんわ。」
「ぐはっ。」
さらなる心へのダメージについに耐え切れず言葉とともに崩れ落ちる。
なんなんだこの神?は。
出会って数分でこちらのHPはすでに0に近い。
やはり本物なのか?
本物の神だからこうも簡単に俺の急所ばかりを責めてくるのか?
などと内心で叫びまくってみたが目の前の神?には届かない。
「お主がここに来ると決まってからお主の過去を見せてもらったが、お主ほど運に恵まれておらんものはめずらしい。たいていここまで運が悪いとわしが直接干渉しておってもおかしくはないはずなんじゃが見落としてしまっていたようじゃ。申し訳ない。」
まさかの救済処置の存在。
そしてその網にもかからない運の悪さ。
もう何も言うまい。
俺はそういう男だ。
「もうここがどこかはいいですからこれから俺がどうなるかだけ教えてください。」
お前はもう死んでいる、状態でとりあえずそれだけども聞こうと力を振り絞る。
「そんな不運なお主にはさらなる追い打ちをかけるようで申し訳ないのだが、お主には地球とは別の世界に転生してもらうことになったのじゃ」
「はい?すみませんうまく聞き取れなかったみたいで。」
自分の聞き間違いかと思いもう一度訪ねる。
「いや、だからの。別の世界に転生してもらうことになったのじゃ。」
どうやら聞き間違いではなかったようだ。
「はぁ、ここで何を言っても変わらないのでしょう?なら良いです。それにもしかしたら次の世界の方がいい人生を送れるかもしれないし。」
これは彼の本心だ。
地球での生活に不満があったわけではないがここまで運に見放されていると普通の人生というものにはあこがれる。
「そうか、わしもお主が次の世界で良い人生を送ってくれるのであればうれしいしの。お主が納得して受け入れてくれたところで早速だが新しい世界に転生するための準備をせねばなるまい。」
えっ?
おい、ちょっと待て。
納得とか受け入れる以外に道あったの?
納得しなかったら元の世界に返してくれるとか?
そう、そのとおりである!
じつはこの転生、断れたりしたのである。
だが、選出者の一人目という事もありたまたま説明されることがなかったのある。
なんという不運。
もういいや。
これが俺。
はいはいそういう事なんですよね。
などど内心不貞腐れている間にも神様?は異世界についての説明をしていた。
「たいていの事は転生されるときに頭にインプットされるから問題はないはずじゃ。じゃからここでやる事はステータスの設定じゃな。順を追って説明するから“ステータスオープン”と言うてみるがよい。」
これはもしかして、もしかしなくてもあれか?
魔法とかありの世界でチート能力を持って転生するラノベあるあるな奴か?
歳にもなく興奮してしまう。
なので早速、意気揚々と唱える。
「ステータスオープン」
すると目の前にまるでゲームの初期設定画面のような映像が現れ、、、、、ない。
現れたのはノイズだらけのテレビ画面のようなものだった。
「あれ?」
どうしたんだろう、そう思って神様?を見る。
すると神様?も呆然としているではないか!
「えっと、神様?これってこういうものなんですか?」
「・・・・・・・。」
目を閉じ無言の神様。
「あの?」
再び声をかけるとゆっくりと目を開ける。
そして一言。
「バグ。」
「うそん。」
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