中編

 坂道は半ばを過ぎていた。ペダルを踏む力は次第に弱くなって、汗が目に入って目が開かない。ぼんやりと映る坂の頂上を見ていた。廣田さんの匂いがまだ鼻に残っている。今、金城くんは何をしているだろうか。大好きなプラモデルをかちゃかちゃと組み立てているのだろうか。それとも、早めの晩御飯をチンしてお母さんの味に包まれているのだろうか。きっと私の想像してない、何か別のことをやっているのだろう。息が激しくなる。坂の頂上は目前だった。頂上に赤松先生と白石先生が見えた。そこで私の右足は地面に着いてしまった。

「お、加藤じゃないか〜」

「…何してるんですか?」

「何って、金城の家庭訪問だよ」

「赤松先生はわかるけど…白石先生はなんで?」

白石先生とパチっと目が合う。白石先生は少し困った顔をして、そしてまた微笑んだ。あの顔が嫌いだ。優越の含まれた、あの表情。

「白石先生も心配だって来てくれたんだよ。ほら、金城の一年の時の担任だろ?」

 知らない。そうだったんだ。金城くんってC組だったっけ。

「加藤さんも金城くんに会いに行くの?」

「…はい。まぁ」

「そう。熱中症に気をつけてね」

「お前からも金城に学校にもう一度来てみるよう言っといてくれよな」

「わかりました。先生、また明日」

「はい、また明日」

赤松先生と白石先生が坂を下って行く。二人の背中を少し見送って、私はまたペダルを強く踏み込んだ。


 金城くんの家に入ると、リビングはシンとしていて、部屋にいるようだった。

吹き出す汗を手で拭って、私はドアの前に駆け寄る。

「加藤です。金城くん?」

 少しして微かに人の動く音。向こうのドアの前にどしんと腰をかける音。

「ノック二回、今日はしなかったね。誰かと思ったよ」

金城くんの声は静かで落ち着いていた。

「あの合図、気付いてたんだ」

「加藤さんはマメだからね。いつもあのノックの後に、加藤ですって。バカでも流石に覚えるよ」

「暑くない?リビングの冷房入れなよ」

 私はそう言われて、ダイニングテーブルのリモコンを手を伸ばして引き寄せ、冷房を入れる。

「先生来たでしょ?赤松先生と白石先生」

「…あぁ、会った?」

 金城くんの声が少し沈む。

「何か言われた?」

「特に何も。教育マニュアルに乗っ取ったことをつらつら言われて終わり。学校来てみないか?カウンセリング室にも相談してあるから。出席は後々評定にも響くから。そんなことばかり」

「なんて言ったの?」

「全部、はい、はいって。それだけ」

「じゃあ、白石先生は何て?」

 数十秒、沈黙が訪れる。首を伝った私の汗は、シャツに入り込み、体の中心部を伝って流れていく。その軌道を感じる、短くも長い時間。

「学校で顔を見せて欲しいって、それだけ」

 金城くんの返答はまるで拗ねた子供のような、そんな言い回しで心が騒いだ。

「そっか」

「加藤さん」

「え?」

「今日は何があったの?」

「何か俺に話したくて、来たんじゃない?」

「あ、うん。でも、大したことじゃないから」

「いいから話してよ」

どこか寂しそうな声。顔は見えないけど、どんな顔をしているか、私にはわかる。虚ろな目で、遠くを見つめ、口元は少し開いて、私の言葉は彼の耳にはちゃんと届かない。それが悲しくて泣きたくなる。ドアに背中をもたれ、私はシャツのボタンを上から二個外した。

「今日ね、友達が出来たかもしれない」

「へぇ、どんな人?」

「クラスのムードメーカーで、廣田さんって人」

「へぇ。何を話したの?」

「色んなこと。色々ありすぎて、何って説明できないけど、とにかく…」

「いい子なんだね」

「…そう。いい子なの」

 やっぱり、金城くんは空返事だ。白石先生は貴方にとってそんなに大事な人なの。

「ねぇ」

「うん」

「このドア開けて、出てきてよ」

シンとする部屋。金城くんがため息を漏らした。

「らしくない事言うね」

「そんな事ないけど」

「でも、俺の知ってる加藤さんは、そんな困らせるようなこと言わない」

 私の、何を知ってるんだ。金城くんのその言葉はとんでもなく無責任で、怒りがグツグツとこみ上げてくる。

「顔見せるくらい、いいじゃん」

体の汗はいつの間にか引いていて、今度は冷房の風に肌がザラつく。体が小さくブルッと震えた。私はすがるようにドアに手をかけた。

金城くんは何も言わない。さっきまでの高揚感は遠い過去になってしまった。今、私はドアを隔てて座り込む少年がたまらなく愛おしくて、会いたくて、気が狂いそうになる。

「ごめんね」

じわっと涙がこみ上げて、立ち上がる。出て行こうとした時、

「加藤さん」

 愛おしい声に立ち止まる。

「また、話聞かせてよ」

冷房を切るのも忘れて私は外へ飛び出した。


 五月末。雨が降りしきっていた。テレビの中で天気予報士が「今にも梅雨入りを宣言したいところです」と言っていた。なら宣言しちゃえばいいのに、と思ったけど、彼も彼で何かの重圧にそれを止められていた。

 学校での生活はガラリと変わった。廣田さん、生島さん、高田さんの三人と、全ての行動を共にするようになっていた。移動教室も、お昼のお弁当も、放課後も。今まで全てが1人だったのが、4人になった。それは楽しくて、気が滅入る物でもあった。私は三人のことが好きだった。それぞれいい子で、明るくて、一緒にいて楽しかった。だけど同時に気を遣った。常に笑っていよう、変なことは言わないようにしよう、何をすれば喜ぶかな?そんなことを思ってばかりの毎日は立っているだけで、歩いているだけで、座っているだけで何だか疲れてしまい、自分はこんなにヤワだったのかと愕然とした。

 月曜の四時限目は体育だった。この日は雨で、先生の気まぐれで自習になった。自習と言われて、大人しく席について勉強するものは一人もいない。正確には1人2人はいるけど、大抵の人間は騒いで50分を過ごす。廣田さんたち三人は星座占いの本を広げて、あの人との相性はこうだとか言って楽しそうに笑っている。生島さんは赤面して、心がふわふわ飛んで行っているようで、それを廣田さんと高田さんは満足そうに眺めている。私は三人のそばを離れて教室を出た。

廊下は静まり返っていた。窓の外は大雨で、ザーザーと雨の降りしきる音が窓を突き抜けて耳に刺さる。廊下に出て見たはいいけど、やることがない。手持ち無沙汰に私は廊下を歩き始めた。

 不意に雨の音が止んだ。この間、金城くんの家に行った日の自分を思い返した。どうして金城くんをそっとしておいてやれないのだろう。自分の欲のまま、外に引き摺り出して質問責めにして全てを理解したくなるんだろう。それが嫌われるやもしれないくらい身勝手な行為だと理解しながら、どうして衝動に駆られてしまうんだろう。自問自答を繰り返しながら、まっすぐ続く廊下をグングン歩く。想像の中で金城くんのアパートに入っていく。ドア越しの低く、細く、優しい声を聞いていると身体の芯がメラメラと疼く。体が火照って、自分の体の中心が良くわかる。少し前から私は、本でしか読んだことのなかったエロスとやらが自分の中にもあることを知り、戸惑っていた。

 いつの間にか一年生の教室の横を歩いていた。教室を横目で覗くと一番後ろの席の男子学生がよだれを垂らして眠っている。教壇に立つ先生は白石先生だ。黒板にチョークで板書をしている。白くて美しい細い腕。黒板を見つめる凛とした横顔。大人の女性の、気品溢れる佇まいだ。私は立ち止まって彼女の横顔をこっそり眺めた。金城くんの恋した横顔は完璧で、団子っ鼻の私は歯が立たない。ぼんやりそう思っていると、また雨の音が聞こえ始めた。

 白石先生が教科書に目を落とす。少しして黒板に目を戻す時、バチッと目が合った。白石先生はチョークを持ったままこちらへ向かってくる。私はびっくりしてたじろぐ。逃げ出すように廊下を引き返しかけたが、遅かった。

「2年D組は体育のはずでしょ?」

 涼しい声が呼び止める。私は観念して後ろを振り向く。

「それが今日は自習で」

「自習してるようには見えないけど」

「トイレに行ってたんですけど、ぼうっとしてたら迷っちゃって」

「二年生は真反対の廊下のはずだけど」

「おかしいな〜考え事してたから。すみません」

「苦しい言い訳ね」

冷たい声だった。心臓が脈打って、ふつふつと怒りがこみ上げた。

「迷っちゃったって、言ってるじゃないですか!」

気づけば大きな声を出していた。白石先生は驚いた様子でこちらを見ている。教室内の一年生も、首を伸ばして廊下の様子を伺っている。私はハッとして、黙り込む。

「すみません。戻ります」

頭を下げて教室に向かって走り出す。

「加藤さん。放課後、国語科に来て頂戴」

 振り返らなかった。夢中で白石先生から遠ざかる。

「お説教じゃないから。金城くんのことで」

「絶対よ」

 ひたすら走った。頭が真っ白で、何も考えられなかった。

教室に戻ると、廣田さんたちが目をまん丸くしてこちらを見ていた。

 「璃子ちゃんどうした?」

 私は気がついたら泣き出していた。子供のように、歯止めが聞かずにわんわん泣いた。廣田さんと生島さんと高田さんは駆け寄って来て、三人がかりで私をぎゅっと抱きしめた。三人の少し違ったいい匂いが混じり合って、心にじんわり溶け出した。


 放課後、私は国語科のドアの前に立っていた。廣田さんと生島さん、高田さんも立っていた。私を心配してついて来てくれたのだ。

「璃子ちゃん大丈夫?」

 廣田さんが横から顔を覗き込んだ。私は言葉が出てこなくて何度も首を縦にふる。

「ここで待ってるから、なんかあったら呼びなね」

 三人の視線に促されるように引き戸に手をかける。心臓の鼓動を指の先に感じる。ガラガラッ。

 扉を開けると奥の席、白石先生は窓の方を眺めていた。私に気付くと、立ち上がってにっこり笑った。

「来てくれてありがとう。それじゃあ、そこの椅子に」

 白石先生はそう言って小さいピンク色の紙コップにお茶を注ぐ。

「時間が経って濃くなっちゃったかしら。ルイボスティーなんだけど」

 紙コップを受け取るとふんわりと鼻に茶葉の香りが上がってくる。

「緊張しなくていいからね」

 白石先生はマグカップにブラックコーヒーを注いでゴクリと一口、コーヒーを喉に流し込む。白くて細い喉仏がうねるように動く。

「まず、さっきはごめんね。意地悪したみたいになっちゃって」

「あ、えっと…いえ」

喉に言葉がつっかえてうまく出てこない。私は困ってルイボスティーを一気に喉に流し込む。

「私のせいなんでしょ?」

「え?」

白石先生の喉元から上に行かなかった視線が予想外の言葉に上へ移る。白石先生の黒い瞳は伏し目がちで奥の方に黒々とした何か邪悪なものが住み着いているように見えた。

「金城くんが学校に来ないのって、きっと私のせいよね」

 気の利いた返しが思いつかなかった。私が黙っていると、白石先生は小さく笑った。

「加藤さんは何か話を聞いてるのかなって思ってね」

「話って?」

「金城くんが、私をどう思ってるかとか」

「金城くんは白石先生の話なんて私に一度もしませんでした」

 白石先生が驚いた様子で私を見る。

「そう…」

「何があったんですか?」

 膝の上に作った拳のなかで手のひらに爪が食い込む。

「知りたいんです」

 私は自分が出来る精一杯の眼差しで白石先生を見つめた。

「金城くんのことがよく分からないなぁ」

 白石先生はそう漏らして軽く伸びをする。

「でも貴方は知る権利があるものね」

 黒々とした瞳が私を捉える。奥の色、メラメラと蠢く闇色に光がさした。白石先生の表情は穏やかになっていた。

「貴方が今座っているように、金城くんもよくそこに座っていたの」

 そしてそう切り出した。


 去年の春、金城くんは白石先生のクラスになった。金城くんは教室の隅で静かに本を読んでいることが多く、派手な生徒ではなかったので、白石先生は特に気にすることはなかったと言う。気に留めなくても問題は起きないだろうと、勝手に信頼を寄せていたからだ。

 しかし、二学期になって、そういうわけには行かない出来事が起きる。金城くんが中間テスト中にカンニングの冤罪をかけられたのだ。結局それは誤解だった。クラス全体でその事実を認識し、解決したかのように思えた。しかし、その一件で金城くんはクラスから完全に孤立してしまったのだ。今まで仲良くしていた数名のクラスメイトもすっかり離れてしまい、金城くんはクラスの中で腫れ物のような扱いを受けていた。白石先生は腹が立った。たかがカンニングの冤罪だけで態度を変えてしまうクラスメイトがどうにも許せなかった。それで、自身の国語の授業を返上してその問題を取り上げた。クラスメイトの反応は悪く、何を聞いても言っても、皆俯いて口を塞いだままだった。白石先生は余計怒りがこみ上げて、金城くんにこのことをどう思ったか皆の前で発言させようとした。しかし、当人の金城くんは「どうでもいい」と言い放ったのだと言う。

 僕の問題に時間を割くより、ちゃんと教育のカリキュラムをやった方がいい。こんなことしてるから、僕らの世代までゆとりの扱いを受けるんだと、そう金城くんは言った。そこで白石先生は自分が本人の望んでいないことをしていたことに気付いた。そう気付いたら教卓に立つのが恥ずかしくなり、教師になって初めて生徒の前で涙してしまった。

その日の放課後、金城くんは国語科のドアをノックした。そして、さっきは生意気なことを言ってしまった、と謝罪をして来たと言う。

 「先生の気持ちは嬉しかったけど、あぁやってクラスの前で目立つと、僕はどうも居心地が悪くて嫌なんです。でも、だとしてもさっきは言い過ぎたっていうか、生意気すぎたから、ごめんなさい」

 白石先生は国語科にわざわざ話に来てくれたことが嬉しくてたまらなかった。そしてこれからもここに来て自分のことを話してくれないかと提案した。そしたら許してあげると、少し意地悪なことも言った。金城くんは少し困った後、頷いて帰って行った。

 それから、金城くんは国語科によく来るようになり、色んな話をした。話して見ると、好きな作家が一緒だったり、白石先生が高校時代に読んでいた本を一通り読んでいたり、本の趣味が合った。金城くんは思っていたよりずっと明るい人でそれでいて少し大人びていたので話すうちにますます興味の湧く生徒になった。金城くんも白石先生の前でよく笑うようになり、少しずつ明るくなった。

ある日の放課後。いつものように白石先生はルイボスティーを入れて金城くんを待っていた。引き戸を開けて入ってきた金城くんはいつもより元気がなかった。今日は伏し目がちでいくら笑いかけても目が合わない。白石先生は心配になり、金城くんを覗き込む。やっぱり目を合わせない。

 そうするうちに金城くんが口を開いた。

「…先生、織田先生と結婚するんですか?」

「え?」

予想外の言葉に体がのけぞった。

「なんで?」

「クラスの子達が噂してたから」

 正直にいうべきか迷った。すぐには言葉が出ず、沈黙が流れる。

「先生、俺のこと好きですか?」

 ばちっと金城くんとようやく目があった。虚ろな目をしている。壊れそうで、吸い込まれそうになって見つめた。

「俺は先生が好きです」

 金城くんは再びうつむき、静かにそう言った。ドクン、と心臓が鼓動する。

「私も好きよ」

気がつくとそう言っていた。金城くんは顔をあげて、嬉しそうに少し笑った。


「なんですかそれ?」

白石先生の話の途中で、私は堪らず口を挟んだ。

「なんで好きなんて言うんですか?」

「だって、金城くんのこと好きだったから」

「織田先生と結婚したじゃないですか」

「好きの種類が違うのよ」

「好きの種類?」

「金城くんは人間として本当に好きだと思ったのよ。趣味も合って、もっと知りたいし理解したいし、話してたいって言う、そう言う好き。織田先生が好きなのとはまた違うの」

「そんなの残酷です」

 私ははっきりとした口調でそう言った。

「だって金城くんの好きは…先生だって薄々分かってたでしょ?」

 白石先生は困ったように俯く。

「でも、じゃあ嫌いって言えば良かったの?」

「そんなの自分で考えてよ!わかんないよ!」

 冷静になろうとしても声が荒くなる。私は白石先生の話を聞きながら、金城くんが心にどんな傷を負ったのか、その経緯を必死に辿った。そして、金城くんの気持ちを想像した。悲しくて、悔しくて、やるせなくて、でも白石先生を憎めない。憎むどころか、大好きなままだ。

「その後も金城くんはここに来たんですか?」

「いや…その日以来、来なかったの。だから私も金城くんを十分理解できないまま、中途半端になってしまって」

「必要ないです」

「先生に金城くんを理解する権利なんてないです」

 自分でも驚くほどに、口をついて出る言葉の一つ一つが強い。

「だって、金城くんを裏切ってるじゃないですか」

「裏切るなんて、そんな」

「金城くんは大人なんかじゃないです。私にはわかります。先生が過ごした時間の何倍も、私は一緒にいたから。先生の行為は金城くんにとって裏切りです」

 私はいつの間にか手に握りしめて潰れていた紙コップを白石先生に突き出す。

「ご馳走様でした」

軽く頭を下げて、走り出す。白石先生は黙ったままだった。どんな表情をしていたかは、わからない。引き戸を開けると、廣田さんたちが聞き耳を立てていた。

「璃子ちゃん大丈夫だった?」

「ごめん、行かなきゃ」

 何振り構わず足が動き出す。私は廣田さんたちを背に走り出した。上履きが湿気で湿って廊下はいつもより走りにくい。足の指でしっかり廊下を掴むように、力強く、走る、走る。


 さっきの雨が嘘のように外に出るとすっかり晴れていた。遠くの雲がまだ曇っているが、いまにも彼方に消えそうだ。いつもの坂道の下、私は頂上を見上げた。息を大きく吸い込んで自転車を漕ぎ出す。

中学生の時は体育館裏で、高校生になって渡り廊下で。私たちはいつも二人ぼっちだった。お互いにそれでいいと思っていたし、それで幸せだった。でも、金城くんは白石先生に出会って、二人の世界に外界がいつの間にか入り込んで、それで私たちは離れた。私も廣田さん達と出会って、これまでに感じたことのない幸せや喜びを感じた。そしてその二倍、いつか嫌われるんじゃないかっていう不安を背負った。だからこそ今の私にはわかる。金城くんが白石先生の口から「好き」と聞いてどんなに嬉しかったか。私たちには「好き」の免疫はないのだから。

 気づいたら坂道の頂上は目の前だ。息がはぁはぁと途切れ、足の力も弱くなる。体は成長しないまま、成長した心で自転車を押し漕ぐ。たどり着いた、頂上。一度振り返ってみると長い長い坂の下は小さく見えた。私はまたペダルを踏み込んだ。

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