第4話 死の予感

 ーー死を感じる。


 シュラウドくんを殺したカイトさんは、ただただ笑って、獲物を捕捉した猛獣のように爛々とした瞳で私を見ていた。


 底が見えないほど愉悦に満ちていて、不気味なくらいに私を追いつめるのが楽しそうで……。


「っ!?」


 刹那、カイトさんの姿が霞んだ。

 違う、跳躍が早すぎるあまりそう見えたのだ。


 気づくと彼は、私の目と鼻の先にいた。

 血の付いたナイフは確実に私の胸に向けられている。


 視界の隅に動かなくなったシュラウドくんが映る。

 死を激しく意識したのはその時だ。

 数秒後、私もあのような姿になっていると。


 ーーだが、その時が訪れることはなかった。


「あなたは……?」


 突如、白くて巨大な何かが、私の正面に現れて、カイトさんのナイフを掴んでいた。

 丸い頭は髪がないのではなく、それを宿す皮膚がないからだった。人の体こそしているものの、所々覗く隙間から向こうの景色がそのまま見える。


 そこにいたのは二メートルくらいはあるガイコツだった。

 目の前にいるのが誰なのかわかると、私は唾を飲み込んだ。


「ル、ルガーさん!?」

「離れていろ。こいつは危険だ」


 余裕な態度で大きくなったルガーさんが警告を飛ばす。


「へぇ〜。中々優秀な仲間だね。スケルトンか」


 ナイフを握られて失速したカイトさんだったが、外套の中で一瞬何かが光り、こちらに向けて投擲された。


 それは四方向に尖った手裏剣だった。

 ルガーさんの肋骨の隙間を縫って放たれたが、ルガーさんは体の軸をずらし、その身で受け止めた。


「ちょうどこの辺りが痒かったので助かった。俺からも礼をしないとな」


 ルガーさんは手に力を入れ、カイトさんのナイフを破壊した。

 手の中の金属片を握りしめ、前方に投げ放つ。


 散弾とかした金属片は路地裏の壁を抉る。カイトさんはそれを避けたけど、もし当たっていたら致命傷になっていただろう。


「俺からの投げ銭だ。ありがたく受けとれよ」

「ひえー、おっかねぇ馬鹿力。筋肉ないのにどっからそんな力出るんだよ」


 手をパンパンと払うルガーさんに、距離を取ったカイトさんは壁に目を向けて苦笑い。


 と、私は不思議なものを目の当たりにした。

 横たわるシュラウドくんの肉体が光っていたのだ。彼だけではない。彼の仲間もそうだ。


 宙に浮いたまま光っていた。

 そしてガラスが砕けるように、シュラウドくんとその仲間は光とともに散った。地面の血溜まりもなくなっていた。


 だが、消えた仲間からは別のものが残されていた。

 オレンジ色の石が地面に落ちる。


 カイトさんはその石を拾い上げると、不思議なことに、石は指輪へと形を変えた。


「まずは一個目と」

「何ですか、それ?」


 指輪を嵌めたカイトさんは、私の問いかけに答える。


「RF…… Rival Fateライバルフェイト の略だね」

「RF……」

「このゲームにおける冒険者は全員が敵。君のように同業者を見つけたから仲良くしようだなんて考え、僕みたいなのにカモられるからやめることだね」

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