24話 日本帝国側の準備


PW地球年月 1940年1月17日


 総理官邸総理執務室にて



「美加子様、これからの日本はどのように舵を切れば宜しいのでしょうか?」


「米内総理。陸軍東条派の連中は、キッチリ片付けたのですか?」


「ハイ、陸軍東条派の連中はについては全て一掃し、畑が知己ある有能な人材を東条派が抜けた穴を埋めています」


「分かりました。次に実行することは考えていますか?米内総理」


「海軍力の増強、石油確保のための南進策というところでしょうか」


「ハァ?アマテラス様は貴男の能力を見誤っていたのかも知れませんね」


「え?一体、私の何処が間違っていたのでしょうか?」


「まず、南進策は下策です。石油が欲しいのであれば、満州国に有望な油田が存在し、これらの油田はマレーシア半島やインドネシアよりも石油が多く産出します。ココを真っ先に採掘しなさい」


「え?満州国内から石油が出るのですか?」


「満州だけではありませんよ。樺太にも陸上、海底油田があるので、コチラも検討した方が宜しいです」


「ハハッ、早急に手配致します」



「それと畑陸相、日中戦争を早急に終戦させなさい。

 終戦のために『勝介石』と和平を結びなさい。

 ただ、この人物はクセがかなり強いでしょうが、中国を赤化させないための一つの布石になりますから、絶対に講和交渉を進めなさい」


「勝介石と和睦ですか?」


「そうしないと、アメリアに日中戦争に介入される口実を与えてしまい、中国側をアメリアが軍事援助する形になり、日中戦争はいつまで経っても勝てませんから。

 それと早急に終戦しないと、逆に勝介石と毛拓糖と結託して中国が赤化してしまいますよ」


「しかし、和睦が実現してもなかなか撤兵が難しいところです」


「畑陸相、中国の撤兵は講和成立後、どの位の期間が掛かる予定ですか?」


「今から実施しても、2年は掛かるかと」


「遅い!今から3カ月以内に講和し、成立後に半年以内に撤兵しなさい!」


「ハハッ!」



「外務大臣!」


「ハイ!」


「有川大臣でしたか。

 ヨーロッパ諸国との外交政策はどうなっているのでしょう?」


「ハイ、以前は陸軍筋から日独伊三国同盟を結ぶように強力な圧力を受けていましたが、それもコレまでです。

 これからは、新しい外交の姿に生まれ変わらせようと思っています」


「フッ、私は貴男の心の思いを聞くために質問した訳ではないですよ。

 まあ、貴男を含めて多くの閣僚達は、陸軍側からの横暴なやり口を嫌がっていましたから、貴男の気持ちは理解出来ます」


「済みません。つい自分の心の内を話してしまいました。

 私自身は、三国軍事同盟なるモノには反対していました。

 ですが、防共協定は共産主義から日本国を守るために必要だと思い、協定を残しています」


「ふむ、正しい判断です。やはり防共協定は残すべきでしょう。

 我が主神も、共産主義は殲滅すべきモノであると解釈していますから。

 それより、他のヨーロッパ諸国との関係はどうなっていますか?」


「英国とは以前に同盟を結んでいましたが、軍縮会議、四カ国条約以降は同盟を失効してしまいました」


「有川外相、早急に英国側と連絡を取りなさい。

 そして、日本側が英国と同盟を結びたがっていると仄めかして下さい」


「あのう、同盟締結は急がなくても良いのですよね?」


「そうです。同盟締結は最後の切り札ですから、完全締結は天変地異後に検討した方が宜しいでしょう」


「同盟締結の条件(エサ)は何でしょうか?」


「日本側が英国に新技術を提供すること」


「我が日本国が求めるモノは?」


「ビルマの独立支援、英領マラヤの放棄、シンガポールの共同統治」


「この条件だけならば、比較的簡単に英国側は納得しますが?」


「求めるモノはコレだけではないですよ」


「え?まさか、アレは流石に無理かと」


「そのまさかです。オーストラリアとニュージーランドを、英国連邦から日本側に鞍替えさせることが今回の条約目標になります。

 とりあえず、オセアニア関係の条件は伏せて、東南アジア関係で話を進めて下さい」


「わ、分かりました。早急に英国大使を通じて交渉を持ちかけてみます」


「有川外相、連邦鞍替えの話を先に進めると拗れる恐れがありますので、あくまで情報収拾と新技術提供の噂拡大に努めるように」


「ハイ、了解しました」


「(さてと、次は宮内省か)」



 ミカエルは、宮内大臣である『松川常夫』を総理官邸に呼んで、天皇の人間宣言を早急に行い、約1月半に天変地異が起きる旨を合わせて発表することを申し渡したところ、松川はいきなり難色を示してミカエルに反論した。


「美加子様。天変地異の発表は、皇室からの予言として臣民に受け取られるでしょうが、玉体御自身に『人間宣言』させることは畏れ多いことで、私の立場から勧めることは決して出来ませぬ」


「あぁ?お主、私の命令を拒否する気か? 頭の堅い奴だの。

 どれ、ほんの少しの時間を待っておれ」



 ミカエルは、松川の目の前で姿を消すと、10秒もしないうちに天皇陛下と侍従長の2人を連れて、松川の前に現れた。


突然現れた博仁と侍従長の姿を見た松川は、その場の床に平伏した。



「何をしているのですか?宮内大臣。さあ、立ち上がって下さい」


 松川は、侍従長から肩を貸されて、ようやく立ち上がって博仁と対面した。



「宮内大臣、僕が人間宣言をして何が不都合なのか?」


「い、いえ、陛下に不都合なことは全くございません。

 さ、早急に人間宣言と天変地異の発表準備を行いたいと思います」


「うむ、宜しく頼むぞ」



 ミカエルは内閣閣僚を始め、各官庁等に天変地異についての準備をするように指導して、転移事象に備えるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る