23話 帝国陸軍のクーデター
その次の日の午前8時55分ころ 皇居宮殿内にて
「ガイア様、例の件はバッチリです。秘密会議開始時刻は午前9時です。
会議室に陛下が入室するのは午前8時57分、私達が入室するのは午前8時58分です。
開始時刻1分前に東条以下10名の腹心が九九式短小銃を所持して会議室内に突入し、陛下を宮殿から奪う手筈になっています」
「ご苦労、ミカエル。この時間では既に腹心が近くにいるはずだが。
どれ、我もしばらくぶりに探知能力を使うか。
ふむ、おるおる。それでは我々も会議室に向かうとするか」
ガイアは前回より簡単な転移といっても、眩い位の白い光を部屋中に放ちながらミカエルとともに控室から会議室に転移した。
それから間もなく、陸軍将校クラスの軍服姿に身を固めた男性軍人10名と
東条秀樹が会議室内に突入してきた。
「「「動くな!」」」
「「「陛下を救え!」」」
「陛下。この女達は女狐か狐狸妖怪の類いで、決して騙されてはいけません」
東条は陛下に近づき、ガイア達を指差しながら叫んでいた。
ガイアは、博仁と米内総理以下3人の閣僚達を包み込むようにバリアを張るとともに、東条の前に歩み始めた。
「う、撃て!」
腹心達は、構えていた自動小銃をガイアの方に向けて引き金を引いた。
「「「パ、パン、パン」」」
腹心達が撃った弾丸は、ガイアが張ったバリアに全て阻止されて弾丸が空中に浮いていた。
「うぬ、化け物か。銃が効かぬとは、全員抜刀!かかれ!」
東条と腹心達は、日本刀でガイア達に斬りかかったが全てバリアで阻止されて、刀も弾丸と同様に空中で止まっていた。
「やれやれ、情けない連中だのう。我は化け物扱いか。本物と偽物の見分けが付かない連中に言われたくない言葉だのう」
ガイアは、右手を動かして手の平を上に向けて手首を少し回転させる動作をすると、東条と腹心達の身体が空中に浮き、ガイアは続けて右手を払うようにすると、浮いていた東条以下腹心達の身体は、会議室の向こうの壁に叩き付けられて気絶した。
次に安全が確認出来ると、陛下と閣僚達を包んでいたバリアが解除されて、空中に浮いていた弾丸はその場の床にバラバラと落ち、日本刀は部屋の隅の一カ所にまとまる形でフワリと落下した。
陛下と閣僚はその出来事にあっけに取られて、ただ黙って固まっていた。
「博仁!この事態をどうするのじゃ?」
「は?そうだ。侍従長!近衛を呼べ。否、待て。皇宮警察を至急呼べ」
侍従長は陛下の指示で、会議室を急ぎ退出して皇宮警察を呼びに行った。
「陛下、近衛兵は東条の息が掛かっている部下が大多数占めていると思いますので、ココは畑大臣に近衛兵を皇居から下がらせるよう指示し、海軍省に連絡して私の部下達に皇居を守らせるようにしたいと思いますので御裁可を」
「うん、米内か。それは名案だ。早速に手配を頼む」
「ハハッ!畑、行くぞ!」
「おう、了解した!」
米内総理と畑陸軍大臣は、会議室を出て事態収拾に向かった。
「コレは陸軍によるクーデターだな。博仁!」
「ハイ、親神様。そのとおりですが、皇居の警備がこんなに手薄とは」
「其方も阿呆よの。皇宮警察は宮内省管轄だが、二、二六事件を経験しているにもかかわらず、あの事件の首謀者の中に近衛兵幹部がいたのではないか?」
「そうでした。あれ以来は信頼出来る者に警備を任せきりでした」
「近衛兵を陸軍任せにするからこういう事が起きるわけじゃ。
東条は陸軍内では何処でもフリーパスだろうし、その手下も同様じゃろう。
こういう警備は尊皇的で中立な立場な者、もっと皇宮警察の力を増すようにすべきではないのか?」
「ハイ、おっしゃっるとおりでございます」
会議室のドアが開き、ようやく皇宮警察官十数名が現れた。
「御怪我は無いですか?陛下!」
「私は大丈夫だ。その者達を捕らえて縄を掛けよ」
「ハッ!」
ガイアは博仁に彼等を尋問したいので連行するのを待つよう指示して、縄を掛けた後に皇宮警察官達を廊下で待機させた。
「親神様、どうしたのですか?」
「此奴らに日本帝国の未来を教えるためにココに少し留まってもらう。
米内と畑は帰って来たか?侍従長」
「1分程でコチラに戻るそうです」
「うむ、分かった。しばし待つか」
侍従長の言うとおり、米内達は事態収拾の指示を終了して間もなく会議室に戻って来た。
「お、全員揃ったか。美加子、アレを出してくれ」
「ハイ、アマテラス様」
ミカエルは右手首のリングデバイスを操作し、壁に向けて映像を投影した。
その映像は、陸軍が内閣を支配して東条が総理になり、その後太平洋戦争が始まり、最終的に日本国土に原子爆弾が落とされた後、無条件降伏するというモノクロ映像であった。
「ああ、こ、これは日本がアメリアに戦争で負ける未来なのですね」
「左様、そのとおりじゃ博仁。そこに縛られている東条が首相になることで、日本が破滅の道を歩むのじゃ。東条、何か言うことがあるか?」
「私が総理ですか?だけど総理になったら破滅の道を歩むわけか。
フフフ、ギャハハハァ!俺の~命運も~ここまで~か~!」
「東条に未来を見せたら、少し気が触れたようじゃな。
サッサと外に連れて行け。
東条の処分は米内と畑に任すが、コレは博仁に銃口を向け、刀を切り付けたのだから大逆罪か。確か未遂も死刑で東条の部下も同じだな」
「ハイ、親神様。そのとおりでございます。
それより、私は今後どのようにすれば宜しいのですか?」
「米内と畑、それに海軍の山元磯禄だったか。まだまだ有能な人物が埋もれているから、それらを頼ると良いじゃろうて」
「分かりました、親神様」
「米内総理、畑大臣。まだ我の事を自己紹介していなかったな」
「貴女様は『
「そのとおりじゃ、流石は米内だ。何処で気付いたのじゃ?」
「陛下を名前で呼び捨てに出来る人は存在しません、陛下自身が貴女様のことを親神様と呼んでいたため、客観的に判断致しました」
「うむ、それよりこの後の事態をどうするのじゃ?」
「東条以下部下達のクーデター未遂事件として処理する予定です。アマテラス様のおかげにより、これで陸軍内に巣食う奸物達を一掃出来ます」
「そうか、畑と協力して良き陸軍に作り直せよ」
「ハハッ!」
「博仁、我は神界に帰るが、今年3月1日に日本国に天変地異が起きる。
それまでの間、妾の部下である『江良 美加子』を置いて行く。
彼女は我との連絡役で、天変地異に対処するための方策は彼女に聞け。
それではさらばじゃ!」
「ハハッ、ありがとうございました。親神様」
博仁の言葉が聞こえるか否や、ガイアはミカエルに博仁の補佐することを命じ、ガイア自身は宇宙船に戻るため空間転移して、その場から姿を消した。
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