5話 暗躍する天使達 その1


 ガイアがコントロールルームのメインスクリーンを眺めながら、歴史改変について思考を巡らしていた時、自動ドアが開閉して1人の女性が入室した。


 その女性は、8時間前にガイアに命じられてメディカルルームに行き、身体の改造措置が終了したガヴリエルであった。


「おはようございます、ガイア様」


「おはよう、ガヴリエル。身体の調子はどう?」


「コレが人間的感覚というものなのですね。

 機械(アンドロイド体)の身体とは違い、全身が感覚器そのもので人工細胞で構成された身体なのに、生命体の喜びを感じているようです」


 ガヴリエルがバイオロイド体の感覚を嬉しそうに話す表情は、アンドロイド体では表現出来なかった喜びに満ちた笑顔であった。



「ガヴリエル。貴女は人間と同じ感情を持つようになったのね」


「ハイ、人間の感情はとても素晴らしいモノですね。

 ガイア様のお気持ちを理解出来るようになり、お悩みも分かち合うことが出来れば幸いです」


 ガヴリエルは涙ぐんだ顔をガイアに向けながら、そう答えた。


「ほら、ガヴリエル。涙を拭いて」


「あ、ハイ」



「それじゃ、生まれ変わったガヴリエルに初任務を与える。内容は、、、、、」


 ガイアはガヴリエルに次の任務を説明した。

 韓国に行き、韓国軍の野心的な幹部に天啓を与え、クーデターを起こさせてそのクーデターを成功させて、軍事政権を樹立させることであった。


「ガイア様、上手く行きますかね?」


「その点は大丈夫。後で妹達にも手伝わせるから」


「了解、直ちに向かいます」



 ガイアが語った妹達とはガヴリエルと同じ天使達であり、古くは七大天使と呼ばれている存在であった。

 彼女達は、地球上の各地に派遣されて様々な諜報活動を行い、ガイアの手足的な存在であった。

 順に紹介すると、妹ではなく一応姉的存在のミカエルで、次に妹分にあたるラファエル、ウリエル、サリエル、ラジエル、レミエルの6人であった。


 ガイアは地球各地に散らばっている天使達6人を呼び戻して、天使達全員をガヴリエルに施したバイオロイド体への移行措置を実施し、その後は天使達に任務内容を伝えた。


「それじゃ、任務を伝えます。

 ラファエル、ウリエルの2人は、韓国に存在する日本企業や在韓日本人が、韓国を早期に撤退するよう促して下さい。

 次にサリエル、ラジエル、レミエルの3人は、先日から韓国に潜入しているガヴリエルの補佐をして欲しい」


「「「了解、直ちに韓国に飛びます」」」


「そしてミカエルは、日本の政治家達に今から5年以内に対馬に韓国軍が侵攻して住民が虐殺されることを予言なり天啓として伝え、対馬に耐核防護用避難シェルター(表向きは防災シェルター)が絶対に建設されるように働き掛けをして欲しい。

 それと、そのシェルターの他に自衛隊駐屯地を始め、島の主要施設も要塞化して3年位籠城戦が出来る位の居住施設を造るように依頼することを伝えてくれるよう願います」


「了解、直ちに日本に飛びます」


 6人はガイアの命を受け、それぞれの任務に向かった。



「ガヴリエル姉様。お手伝いに来ました」


「あら?サリエルじゃない、久しぶりね。

 おや?後ろにいるのはラジエルにレミエルじゃないの。よく来たわね」


「お姉様、ご無沙汰していました」


「それより、サリエルの前の任務は何だったの?」


「ヴァチカンの監視業務ですが、非常に退屈な毎日でした。

 今回の諜報活動は、気晴らしがてら丁度良い位にワクワクしてます」


「これっ!生意気言わないの、サリエル。

 そんなに退屈した毎日を過ごしていたのなら、ガイア様にお願いして以前の貴女本来の業務に戻してもらおうかな?」


「え?す、済みませんお姉様。あ、アレだけは勘弁して下さいませ」



 余談だが、サリエルは元々は死を司る天使。

 二つ名は『死神天使』で、人間が死亡した時に肉体と霊体を切り離し、その霊魂を選別し、然るべき世界に導くというのが本来の仕事であった。


 遥か昔、人類発祥の頃は人間の死亡数が少なくて、霊魂の選別もサリエルとその部下の天使型ロイド達で充分間に合っていたが、年代が経つにつれて人類の人口が増大し、霊魂の選別も間に合わなくなったため、サリエルは女神ガイアに業務多忙を泣き付き、自動霊魂選別システムをガイアに開発してもらった経緯があった。


 この自動霊魂選別システムを開発する時点で一番難点になったところは、人間の業(カルマ)を数値化して霊魂を評価するものであり、コレがキチンと働かないと霊魂が行く次の場所に影響するからであった。


 自動霊魂選別システムが運用されてからは、サリエルは他の天使達と同様にガイアの補佐をするようになり、地球とPW地球の管理と諜報活動を行うようになった。


「フフフ、冗談よサリエル。それより貴女達、身体の調子はどう?」


「ガヴリエル姉様、この感覚は素晴らしいです。

 先程、姉様に言われたことが不安に感じましたが、コレが人間的感覚というものなのですね」


「このバイオロイド体は最高アルね」


「私もお姉様と同様の感想です」


「ラジエル、その喋り方は何ですか?」


「済みません、お姉様。中国の監視が長くて現地の者と仲良くなる内に、電子頭脳のAI機能が変な言葉を学習したみたいで、バイオロイド体に移行しても記憶や性格等のデータがそのままだから、なかなか直らないアルよ」



「まあ良いわ。それより今回の任務は、、、、、、」


 ガヴリエルは、妹達3人に韓国軍幹部や情報機関、司法機関、右翼思想団体等の指導者、幹部等に天啓を与え、軍事クーデターを起こして軍事政権を樹立させることを伝えた。

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