6話 暗躍する天使達 その2


 ガヴリエルから任務内容の説明を受けた3人は、疑問点をガヴリエルに質問していた。



「ガヴリエル姉様、目的の人間に天啓を与えるというのは、一体どのようにすれば良いのですか?」


「レミエル、天使の能力を使えば良いのよ」


「サリエル姉様。それは姉様が大多数の人間の精神領域に容易に入り込めて、精神操作出来る能力があるから簡単でしょうけど、私には個人を自分の意識下に置くか、幻視能力しかないんですよ」


「それだけあれば充分アルよ。私なんか予言めいた古文書で学者を扇動させる能力と、空間転移、後は瞬間移動をする位アルね」


「まあまあ、姉妹喧嘩しないの。それぞれの能力を最大限利用するのは当然であるけど、基本は『夢枕』で対象者に語り掛けることよ」


「なるほど、流石はガヴリエル姉様。見事な助言を有り難うございます」



「皆、話を任務内容の説明に戻すが、良いかしら?」


「ハイ、お姉様。説明の続きをお願いします」


「今回の任務は南北統一前に軍事クーデターを成功させ、軍事政権を樹立することが最優先で、タイムリミットは2030年12月までよ。

 だが、その年以前に南北統一が成立したら計画変更する予定だけど、出来る限り軍事クーデターを成功させて、軍事政権が樹立するように動いてね。

 それじゃ、行動開始して頂戴!」


「「「了解!」」」



 2028年1月、ラファエルとウリエルは任務終了して、ガイアに任務達成の報告に来ていた。


「日本企業と在韓日本人の様子はどうなの?」


「ハイ、ガイア様。韓国に軍事政権が樹立すると企業資産が没収される危険性をほのめかせば、韓国に残る会社は1社もありませんでした。

 また、日本人の方も被害が及ぶことを聞くと、殆どの者が帰国を急ぐみたいでしたが、一部の者は残るようでした」


「一部の者とは何者か?」


「早い話が宗教関係者ですね」


「ラファエル、彼等を説得したの?」


「ハイ、天使の能力も使用しましたが、『神の御業だ!奇跡が起きた!』等と逆効果になり、余計に信者と指導者が残ってしまいました。

 彼等は信仰という誤った考えに囚われた阿呆で、まさしく宗教馬鹿ですね」


「そうですか、いずれ彼等には悲劇の主人公を演じてもらいましょうか」


 韓国内には日本企業は全て撤退し、仮に日本の看板があったとしても、日本製品からの輸入品を扱う韓国人経営者の現地代理店がある程度であった。

 また宗教関係者は、ラファエルが申し立てたとおり、苦難が与えられれば殉教的精神が高まり、信仰心がより一層強まると考えている者ばかりで、誰も帰国する者はいなかった。



「ラファエル、ご苦労様でした。ウリエル、韓国内の様子はどうでしたか?」


「そうですね、現政権の大統領はますます軍部を解体化しようと躍起になっており、アレでは我々が暗躍しなくても軍部の不満が溜まる一方だと思います」


「そうか、間もなくクーデターが勃発するか。そろそろガヴリエル達も任務を終了させて帰ってくる時期ですね」


「私達はこの後、何をすれば?」


「ラファエル、ウリエルの両名は今まで働き詰めだったのだから、しばらく休養していなさい。今後の展開では全然休めなくなるのでしっかり鋭気を養うように。コレは命令ですよ」


「判りました、ガイア様。お言葉に甘えて休ませて頂きます」



 ラファエル達が退室すると、次にガイアの前に現れたのはミカエルだった。

 ミカエルは、ガイアに依頼されていた対馬の防災シェルターを建設することであったが、見事に日本の政治家達を動かしてシェルター建設にこぎ着けたのだった。


「ガイア様。シェルターの建設工事が始まり、早期完成する予定です」


「ミカエル。いつ頃完成しますか?」


「遅くとも2030年中には全てのシェルターが完成する予定です」


「分かりました、貴女の努力が報われますね。改めてご苦労様でした。

 貴女もラファエル達と同様にしばらく休養ということで休暇を取りなさい」


「分かりました」



 ガイアの命を受けて、パラレルワールド(以下PW略)地球各国で暗躍していた天使達の成果が着々と結び、数年後には目に見える形で現れ始めた。



2029年2月


 韓国に軍事政権が樹立。



2029年4月


 韓国と北朝鮮との間で、第二次朝鮮戦争が勃発した。

 以前の朝鮮戦争では、アメリカを主体とした国連軍と中ソ連合の共産軍との戦いであったが、今回は純粋に朝鮮民族同士での内乱であり、世界中の国々はそっぽを向いて傍観していた。



2030年10月


 1年半に及ぶ朝鮮戦争は、当初はミサイル、ロケット弾を駆使した北朝鮮軍の攻撃で同軍は優勢気味であったが、韓国軍は劣勢になりながらもトンデモお笑い兵器を駆使し、故障気味でも最新兵器を何とか稼働した韓国軍が、燃料と食糧不足でまともに動けない北朝鮮軍を下し、金一族による独裁政権を打倒。


 なお、金一族は国外逃亡を図るも中朝国境にて北朝鮮兵士に拉致監禁され、兵士に男性は暴行、傷害を受けて半殺し状態、女性達は兵士達の慰み物で陵辱された後に、一族全員は見せしめのために平壌の広場前に設置された処刑台に吊し首になり、死亡確認後に頭と胴体を切断されて、広場前に設置された台に晒し首の状態で1カ月程放置されていた。



2030年11月


 韓国軍事政権は統一後の国名を『大韓民主共和国』と定めた。



2030年12月


 韓国軍事政権は、戦争でボロボロに荒廃した国土を立て直すために、周辺国に経済援助を求めるも、過去幾度となく国家レベルで約束破りをして、戦争前に軍事同盟を破棄し在韓米軍を追い出したこと等と、恩を仇で返す国家は地球上から消滅すべしと考えていたアメリカは、韓国側の援助要請は一切無視していた。



2031年1月


 韓国側は、韓国内に残っていた日本人約5千人を盾に援助金目的の人質外交を始め、当初は1人頭に付き1億円要求して来た。

 流石に高過ぎるため、交渉の余地無しと日本側は突っぱねたが、次に1/100の100万円に一気に下げたことから、日本側は50億円を援助金という名目で韓国内で人質状態になっている在韓日本人をほぼ全てを救出した。



2031年2月


 韓国はさらに援助要請するも、その後日本が一切拒否するため、過去北朝鮮の時代に拉致された日本人被害者を盾にさらに人質外交を開始した。

 韓国が要求する援助金は1人頭10億円であり、帰還対象者は拉致被害者名簿に一切載っていない日本人であり、如何に日本を国家レベルで騙してお金をむしり取る根性を垣間見た日本側は、援助要請を一旦白紙化して再度改めて韓国側と交渉することを申し伝えた。



2031年3月


 韓国軍は、第二次朝鮮戦争時に北朝鮮側の核兵器使用を恐れ、真っ先に北朝鮮核施設を破壊し、核兵器は既に無くなっていたものの、通常爆弾のミサイル兵器は健在であった。

 そこで、ミサイルを日本側に打ち込むぞという脅しをしながら援助要請する恫喝外交を開始した。



2031年4月


 日本国内にて統一地方選挙実施。

 参議院選挙の前哨戦と言われていたが、韓国から恫喝外交と日本侵略の危機感を感じ取っていた国民は、憲法改正を唱えている与党及び右翼系政党が圧勝して、憲法改正を反対していた左翼系野党は惨敗し、地方議員の殆どの議席を失った。



2031年5月


 韓国側は一向に恫喝外交に屈しない日本側の態度に激昂し、ついに韓国軍は日本各地に10発のミサイルを発射した。


 日本側はこの事態を予想して、日本海と対馬近海等に展開していたイージス艦と、以前から配置されていたイージス・アショアから各迎撃ミサイルを発射して、殆どのミサイルを迎撃したが1発だけ迎撃失敗して石川県小松市の一角に落下してしまった。


 ミサイルの迎撃に失敗した理由は、小松市に落ちたミサイルは本来首都圏を狙ったものであったが、ミサイルの故障で予定の軌道から失速したため、迎撃ミサイルが狙いを付けられなかったためだった。


 このミサイル落下で市街地は甚大な被害が発生し、事前避難していたものの防災シェルターとは違って、完全に被害を防ぐことは出来ず、死者約500人、負傷者約2000人以上の犠牲者が出た。


 日本側は監視衛星とアメリカ側の軍事衛星により、ミサイル発射前後の動きは事前に分かっていたが、日本国憲法の縛りによって他国への武力侵攻は絶対不可能であり、敵ミサイルが日本側の領空に侵入した時点で迎撃する程度しか出来ないという現実問題があった。


 これら一連の行為に韓国政府はミサイル発射実験中の事故であり、故意によるものではないと頑なに否定し、ミサイルが日本国土に落下して民間人の犠牲者が出たことは遺憾の意を表していたが、あくまで遺憾の意はパフォーマンスであり、韓国は戦争被害により現在経済再建中であると嘯き、今回の事故での賠償金等は捻出出来る状況ではないと頑なに拒否した。

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