第23話 ダメ家族会議

「あたしはもともと女の子同士のほういいし、幼女ってのもたまらないわ、ウフフ」

「ウフフじゃねえよ、キモいんだよ」


 突然カミングアウトされた母親の性癖にカヲルはガックリと肩を落とした。


「じゃあ、その子はなんなんだ。オレの妹ってことは、オヤジとよその女の間にできた子なんだろう」

「ああ、そうだ。十四年前、オレはロシア辺境の教会に囚われの身になっていた女性を助け出した。彼女は、陽気の対極にある陰気を操る部族の最後の生き残りだった。オレと彼女との間に生まれた子供、それがこのトウコだ」

「じゃあ、やっぱり浮気じゃねえか!」

「そうじゃないのよ。カヲル、よく聞いて。すべては睡蓮寺のためなの。睡蓮寺の血を引くあたしと天才忍者であるハルトさんの間に生まれたのがカヲル。そして、陰気を操る一族の娘とハルトさんの間に生まれたトウコちゃん。この二人が、新たなるくのいち忍法の未来を作るの」


 カヲルは、思わず顔をしかめた。


「なんか、いやな予感しかしねえけど……新たなる未来を作るって、どういうことだ」


 すると、ハルトとチアキはやれやれと言わんばかりに顔を見合わせた。


「おまえ、ここまで説明してまだわからないのか」

「つまり二人が子供を作れば、陽気と陰気の両方を操れるスーパーくのいちが誕生するってことでしょ」

「何言ってんだ、オレとトウコは兄妹なんだろ! 結婚なんかできるかよ」


 抗議の叫びを上げるカヲルに、チアキはあっさり答えた。


「結婚はしなくてもいいのよ。とりあえずセ〇クスして子供さえ作れば」


 母親の口からセ〇クスなんて聞きたくねぇ!


「さらりと何言ってやがる! そっちのほうがヤバいだろ、兄妹で子供なんて!」

「まあ、細かいことは気にすんな。近親交配も一代くらいなら大したことないみたいだぞ」


 ハルトも至極呑気な口調だ。


「アバウトなこと言うんじゃねえ! エンドウ豆掛け合わせるのとはわけが違うんだぞ! トウコも何とか言ってくれよ! 実の兄と子作りなんてできるわけないって」


 カヲルは助け舟を探して、腹違いの妹に話を振った。

 しかしトウコはうつむいたまま――


「トウコは、物心ついたときからずっと兄上様と子作りするつもりでいましたから」

「qwertyuiop@!」


 妹とはいえ、とびきりの美少女の爆弾発言にカヲルの顔が真っ赤に染まる。

 しどろもどろで尋ねた。


「それは、その、なんだ、オレとするつもりなのか? いわゆる、セ、セ、セ」


 するとトウコも真っ白な肌を染めながら答えた。


「はい、最近は夜な夜な兄上様と子作りをするためのイメージトレーングに励んでいます」

「イメージトレーニング?」

「はい、一人で鏡を見ながら……セ、セップンの練習を」

「接吻!?」


 カヲルの目が点になる。拍子抜け半分、ホッとしたのが半分。

 ハルトは感慨深げにうなずいた。


「聞いての通り、おまえの好きな色に染められるよう純真無垢に育てておいたぞ。感謝しろよ」

「するか、ボケ!」

「まったくわからんやつだな。反対してるのは、家族でおまえだけなんだぞ」

「全ては睡蓮寺の未来のためなの。これは命令よ」

「兄上様、ふつつかものですが、よろしくお願いします」


 父、母、妹の三人がカヲルを取り囲む。


「おまえらみんな、頭おかしいだろ! 妹と子作りとかありえないし。それにオレにはサクラちゃんが……とにかく、ぜったいヤだからな!」


 悲痛な叫びが、山花の森にこだました。


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