ゼロを刻む時

呼霊丸

第1話 ゼロになる時

00:02・・・・00:01・・・00:00

左目の数字がゼロになる


「また知らない街か・・・」


おおよそ現代とは似つかわしくない中世的な街並み、現代の科学など存在しない

ここはまさに異世界なのだ

目立たないように極力人を避け裏路地へと入り用意してあったフードと眼帯をリュックから取り出し身に着ける

左目の数字がゼロになる時に何度も訪れた世界

ここの世界の住人からは厄災と恐れられているこの呪われた目

原因は俺なんだけど・・・


なのである程度この世界の情報も収集済みだ、そうでないとひどい目に会ってしまう、軍資金として多少だが通貨も手に入れている

別に働いて稼いだお金でもない、街の外で亡くなっていた人から拾ったものだ

この世界で人と関わることができない以上こうするより他に手立てがない


あとは向こうの世界から持ってきたサバイバル道具もある

不思議と身に着けていた物はこちらに持ってこれるようだ

次に左目の数値がゼロになるまでにこの街から離れないと


「とりあえず、このお金で食料を買って、人の居ないとこまで行ってサバイバル生活だ」


街の外には現時点ではモンスターらしき者は存在していない

物語の中にはそういう存在も出てくることから過去には存在していたのかもしれない

街の外にモンスターが居ないからといって安全とは限らない

野党の類が存在しており、街の外で野営をする物好きなどはいない

悪事を働いて楽に生きようと考える人どの世界にでも存在すると言うことだろう


とりあえず、当面の食料の買い出しに市場へと向かう


一時的なので野菜など健康に気を遣う物は取る必要はないだろう

ここはやっぱ腹持ちの良い肉だな

なんの肉か分からない物を買うのは勇気がいるが生きるためだ


それにしても市場を歩いていても厄災の話が聞こえてくる、それに聞きなれない予言と言うことも

予言ってなんだ?まだ知らないワードがでてきたな


まぁいい、とりあえず街から離れることだし食料は確保しないとな

ここは本能に任せに匂いで決めよう


「この店が良さそうだな、おっちゃん、このお金で買えるだけのその肉をくれ」

「お、ぼうず中々目が聞くな、この肉は今日入ったばかりの新鮮な肉だぜ」

「ぼうずが食べやすいようにカットしといてやるよ」


お金を払いその場を後にする

「坊主、ちょっと聞くがその左目はどうしたんだい?」

「え、ちょっと瞼を怪我したんで薬を付けてるだけだよ」

「まぁそうだよな、ぼうずな訳ないか、左目の噂は知らないはずないだろうからね、気を付けなよ、予言の時が近いから今はみんなピリピリしてるから気を付けなよ」

「おっちゃん、ありがとな」

肉屋のおっちゃんに手を振り離れる

"厄災の復活が近い"街のあちこちで噂話が流れる

これに関しては俺の事かと思ってしまったが流れてくる噂から推測するにどうやら違うようだ

別の厄災なのか?なんにせよこっちの世界も忙しいことだな


市場で他の食料を品定めしていると慌てて逃げてくる人にぶつけられ尻もちをついた

「ごめ・・・、お前も左・・・チッ、今日はなんて日だ」

「おい、逃げるぞ」

「なんだよもう人にぶつかっておいて、謝りしなで行っちまうなんて」

騒がしい声と共に女性の悲鳴に近い叫び声が聞こえてくる


「厄災の子だ!!!!!!!」


声と共に市場が混乱に陥る

声と共に蜘蛛の子を散らすように人々が離れていく中

通路の真ん中に座り込んだ黒い髪に白髪交じりの少女が目に飛び込んできた


「あれはセーラー服、おいおい、この世界でセーラー服はあり得ないだろう」


周囲の人間が呼んだのか武装をした衛兵らしき人が集まってきているのが目に映る

この状況はやばい、衛兵が来て掴まる可能性もあるが、人々からの目つきも違う明らかな殺気、その場で殺されてもおかしくない


「おい!逃げるぞ」


少女の手を掴みその場を急いで離れ人気の居ない場所へとにかく走り周る

裏路地へと入るがやはり影からの人の目もありる、とりあえず眼帯とフードの予備を持ってきておいてよかった、それを少女に着せた

とにかく街が一望できるような高い場所へと逃げよう


人目をなるべく避け、ようやく周囲を見渡せる小高い場所にたどり着いた

木々が生え人の手入れがされていない茂みだが、街の外へと通じる門が見える距離でもある

気が付くと日も暮れていた


「はぁはぁ、とりあえずここなら大丈夫だろう」

「あ、あの助けていただきありがとうございます」

「いや、いいって事よ、それよりその服?」

「え、あ、この服は・・・」

「ごめん聞き方がわるかった、それってもしかして隣町の木中の制服?」

「え?な、なんで知ってるんですか?」

「いやどこかで見たことのある制服だと思ってね、なんせ俺も同じ世界から来ているからね」

「そうなんですか・・・よかった・・・分かってくれる人がいて・・・・」

少女は気が抜けたのかその場に座り込んだ

「うーん、でも君にどこかで会ったような気もするんだけど、思い出せないんだよね、年はいくつ?」

「15歳です」

「そうか年下か、だよな、やっぱ知るはずもないか」


なんだなんだこんな展開いままでなかったぞ、それに俺と同じ左目、まさかとは思うが街で噂の厄災はこの子なのか?

予言と言うのは女の子・・・どおりで肉屋のおっちゃんに怪しまれなかったのか

まさかここに来て美少女と恋愛ストーリーなどというウハウハ展開を少し期待もしていたのだが、そうい訳にもいかないだろう


まぁでも改めて見ると結構ちょっとかわいいかも・・・頬が赤くなる


「ぼーっとして、どうしたの?」

「あ、いやいやなんでもない、そういえば、ほらお約束の、な、名前聞いていい?」

少女は頷く

「サ、サクラです」

「サクラさんか、俺はシロ、よろしくな」

「シロさん・・・ですか・・・ふふふ」

「ん、なにかおかしかった?」

「ごめんなさい、うちの猫と同じ名前だったからつい思い出しちゃって」

「う、ま、まぁたしかに人の名前としては珍しいかもしれないけど・・・犬ならわかるけど猫かよ」

「うん、ほら真っ白い猫だから、でも・・・そうね犬の方がしっくりくる名前かもしれないよね」

「そうだな、人の名前っぽくはないよな」


何気ない会話でサクラの緊張が解れればと思ったんだけどそう簡単にはいかないか


「もう気付いているとは思うけど、ここは俺たちが居た世界とはまったく違う異世界だ」

「うん」

「ファンタジーなんて、夢のある世界じゃないし、俺たちは魔法とか使えるわけでもない、まったくの無力だ、そしてモンスターも居ない、人間しかいないんだけどそれはそれで厄介なんだ」

「魔法とかってないんだ・・・」

「うん、ただモンスターとか魔法は伝説みたいな感じでは残っているようだけど、この世界の図書館みたいな世界を記録した場所に行けばなにか分かるかもしれない、俺はそこまでこの世界に興味がなかったから調べてはないからだけど・・・」

「うん、わかった、ありがとう教えてくれて」

「だからこの世界で一番気を付けないといけないけないのは人間だと言うことを、この世界についてはおしまい」


「そ、それはそうとサクラの左目?」

「あ、うん、これなんだけど昔からこの数字が見えていたんだけど、初めてこの数字がゼロになって、気が付いたらここに飛ばされて・・・」

「なるほど、で今の数字はいくつ?」

「えっと、1:10:21:31になってます」

「なるほど、自分の数字より若いな・・・1日後か・・・妙に早いな」

「ちなみにその数値がゼロなった時に元の世界へ戻れるから安心しな」

「戻れるの・・・よかった・・・シロが心配するから、あ、猫の方ね」

「ああ、わかってるよ、とにかく街の衛兵に捕まると厄介なので朝一番でこの街は出よう、なーに、食料とサバイバルグッツは揃えているから任せなさい」


ガサガサ


「!」

何かが近づいてくる

2人息を潜め唾をのみ込む音と共に緊張が走る

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