#32溶けない暗号事件
予告
アースィム・アブー・アズハール氏の持つ宝石を頂く。
解き明かしてみたまえ警察諸君。それに名探偵さん。
怪盗Zより
氷氷氷氷氷氷氷氷氷
氷仔し子んや摛緒氷
氷れい御オじ粉離氷
氷こみコおっ男つ氷
氷と莉オもリ個い氷
氷李利たコだく尾氷
火火火火火火火火火
僕は怪盗Zから届いた予告状が置かれたテーブルを囲んで何時間も見下ろしていた。
日本が好きな事で有名なアラブの富豪アースィム・アブー・アズハール一家が訪日して二日目。
このままいけば大きなトラブルは起きないと思っていたら、その油断を突くように一通の手紙が届いた。
中を見ても怪盗Zが、どれを狙っているのか皆目見当がつかない。
何故ならアースィム氏が持ち歩いている宝石は三つある。
アースィム氏が炎のルビーを、氷のアクアマリンは奥さんのリーム・オムー・アズハール氏が、
そして森のエメラルドは娘であるアズハール・ベント・アースィム氏がそれぞれ指輪にして持っているのだ。
予告状の暗号を解き明かす事が出来れば、無駄なく警備を配置する事ができる。
けれども僕を含め署内の人間には全く謎が解けなかった。
時計を見ると午後六時。アースィム一家は明日の午前八時に日本を発つ。
それまでに守り切れれば僕達の勝利だが、怪盗Zは日本にいる間に活動するに違いない。
だから僕達警察は母さんに助けを求めたのだ。
「これが怪盗Zから届いた予告状ね」
事情を話すと母さんはミルクキャンディを舐めてから、瞬きもせずに予告状を見ていた。
いつもならすぐに謎を解く母さんが予告状を見たまま動かない。
「母さん。暗号解けそう?」
僕が声を掛けると、急に顔を上げてこちらを見た。
「あっごめん。邪魔したね」
「違うわコーくんのおかげで謎が解けたの。溶かせばいいのよ!」
予告状の謎が解けたのは署内で母さんだけだった。
その解答は間違っておらず、母さんの指示通りに警備した事で怪盗Zの活動を阻止する事に成功したのだ。
翌日朝日を浴びながらアースィム一家を乗せた旅客機は日本を飛び立つ。
それを見送った僕は、三日ぶりの睡魔に襲われるのだった。
問い、予告状には何と書いてあったのでしょうか?
お
母
さ
ん
お
願
い
し
ま
す
↓
↓
↓
↓
↓
答え、予告状を見て。周りを氷に囲まれ下に火が並んでいるわね。
氷氷氷氷氷氷氷氷氷
氷仔し子んや摛緒氷
氷れい御オじ粉離氷
氷こみコおっ男つ氷
氷と莉オもリ個い氷
氷李利たコだく尾氷
火火火火火火火火火
つまり氷を火で溶かす。文の中のこ・お・りを消去すればいいのよ。
するとこんな文が現れるわ。
しんや
れいじ
みっつ
ともい
ただく
《深夜零時三つ共頂く》
怪盗Zは深夜零時に宝石を三つとも盗むと予告してきたのよ。
今回も怪盗Zの犯行を阻止できて良かったわ。
それじゃあまた次の謎解きで会いましょうね。バイバイ。
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