#31月のダイヤモンド盗難事件

 署の受付で言い争っている声が聞こえたので、僕は何事かと近づいてみる。


 そこでは老婦人が係のものに詰め寄っていた。


「だから《月のダイヤモンド》が盗まれてしまったんです。早く取り戻してくださいな!」


「どうしました?」


 僕は受付の警官と変わり、老婦人猫小曽ネココソ志望シホウさんから事情を聞く。


「何度も言っていますが、私の大事な《月のダイヤモンド》がいなくなったんです。きっと盗まれたに違いありません! 貴方警察でしょ。早く探してくださいな!」


「落ち着いてください奥さん。その宝石の写真か何かありますか?」


「これですわ。とても素敵でしょう? 早く見つけてくださいな!」


「……これが《月のダイヤモンド》ですか?」


 受け取った写真は、僕が想像していた姿と全然違っていた。


「痛っ!」


 そんな野太い叫びを聞いたお母さんが声の方を見ると、物陰から男が飛び出してきました。


 右手の甲を左手で抑えた男性は、お母さんの姿を見ると頭を下げて謝罪します。


「あっとすいません。驚かせてしまって」


 お母さんは男性の右手の甲に出来た三本線から、血が流れていることに気がつきました。


「怪我してるみたいですけれど」


「ああこれ。さっきそこの階段で転んでしまってすりむいただけですよ」


 立ち去ろうとする男性にお母さんはこう言います。


「出血しているから直ぐ病院に行ったほうがいいわ。近くに知り合いの外科がいるので案内しますね」


 お母さんは怪我した男性を病院に連れて行きました。


「母さん? 病院出てきてどうしたの? 怪我したの?」


「あらコーくん。違うわ。今怪我した男の人がいたからここに連れてきたの。何か事件があったのね?」


 僕は猫小曽さんの《月のダイヤモンド》が盗難された話をした。


 ミルクキャンディを舐めながら話を聞いていた母さんは、何かを閃いたようだ。


「お母さん犯人が分かったわ。絶対逃げられない方法もあるの。ちょっと耳を貸して」


「いいね。それで行こう」


 僕は母さんのアイデア通りに犯人を待ち構える。


 数十分後。病院から治療を終え出てきた窃盗犯檜垣ヒカキショウは警官隊に囲まれていることを知ると、出入り口で彫像のように固まるのだった。


 問い、何故お母さんは手の甲を怪我した男が窃盗犯だと分かったのでしょうか?


 お

 母

 さ

 ん

 の

 推

 理

 が

 こ

 ち

 ら

 ↓

 ↓

 ↓

 ↓

 ↓


 答え、手の甲の傷よ。三本線の傷を見て猫に引っ掻かれた事が分かったの。

 犯人は被害者のシャム猫の首輪についていたダイヤを盗ろうとしたの。

 その時に引っ掻かれたのね。

 因みにタイではシャム猫は月のダイヤモンドウィチアンマートと呼ばれているらしいわ。


 それじゃあ次の謎解きで会いましょうね。バイバイ。

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