#30幼い僕とこいのぼり事件

「じゃあいってきます……あれ?」


 出かけようとした僕の目に止まったのは、部屋に飾ってある小さな鯉のぼりだ。


 今日はこどもの日だっけ。


 それを見て小さい頃を思い出す。


「おかあさ〜ん。こいのぼり飾らないで!」


「あらあらコーくん。どうしたの? 何があったかお母さんに教えて」


 僕は友達と喧嘩した事を話した。


「僕の家にはお父さんがいないから、お父さんコイ飾っているのはおかしいって言うんだ。だから飾らないで!」


「まあそんなこと言われたの。ねえコーくんは何故こどもの日に鯉を飾るのか知ってる?」


「知らない」


 お母さんは優しい口調で教えてくれる。


「昔々たくさんのお魚が竜門という滝を登っていました。登り切ると竜になると言われた魚達は憧れの竜になるために必死に泳ぎます。

 一匹一匹脱落する中で唯一登り切ったのが鯉だったのです」


「じゃあ僕の父さんも竜になったの?」


「そう。お父さんは竜門を登りきって竜になったのよ。そしてコーくんは竜になったお父さんの子。急な滝があっても登れるかしら? お母さん心配だわ」


「僕登れるよ! お父さんより立派な竜になってお母さんを守るんだ!」


「まあコーくんったら……ありがとう」


 あの時は何で母さんが泣いていたか理解できなかったけれど、大人になった今なら何となく分かっているつもりだ。


「コーくんいってらっしゃい。あら、何か気になるものあったかしら?」


「鯉のぼり見てたら子供の頃思い出しちゃった。どこかで買ってきたの?」


「ううん。これはお母さんの手作りよ」


「これ手作りなの? どこかのお店で売ってるものかと思ったよ」


「まあ、ありがとう。今度のお弁当は奮発しちゃうわね。そうそう、鯉のぼりは屋外で飾られているものを指す言葉なんだけど、

 室内で飾るのはなんていうか知ってるかしら?」


 問い、室内で飾る鯉はなんというでしょうか?


 お

 母

 さ

 ん

 お

 願

 い

 し

 ま

 す

 ↓

 ↓

 ↓

 ↓

 ↓


 答え、屋外は鯉のぼり、屋内は飾り鯉というのよ。


 それじゃあまた次の謎解きで会いましょうね。バイバ〜イ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る