#28潔白の殺し屋事件

 カンカンカンカン。


 踏切の遮断機が警報を鳴らし、赤い光を点滅させながら遮断桿を下ろしていきます。


 買い物帰りのお母さんの他に三人の高校生が踏切の前で待っていました。


 一人は黒髪の男子高生で右手のスマホを耳にあてています。


 茶髪の女子高生はイヤホンをして横向きのスマホを両手で持っていました。


 白髪の男子高生は右手で片手持ちしたスマホを親指で操作していました。


 遮断機の警報が鳴り終わり、遠くから電車が近づいてくる音が聞こえてきます。


 近づく電車の走行音で、背後から近づいてくる足音にお母さんは気づくことができませんでした。


 スーツを着た男性がスマホを見ながら全力疾走しお母さんを追い抜いていきます。


 目を見開いたお母さんの脇を通り抜け、静止する間も無く遮断桿を乗り越えて踏切内に侵入してしまいます。


 そしてお母さん達の目の前で、電車に轢かれて姿が見えなくなってしまいました。


 女子高生は悲鳴を上げてスマホを落とし、黒髪の高校生はスマホを耳にあてたまま固まり、白髪の高校生は右手をポケットに入れて尻餅をついていました。


 お母さんはミルクキャンディを舐め、冷静に119番と110番に連絡します。


 立ち去ろうとした白髪の高校生の腕を掴んだまま。


 電話を終えたお母さんに白髪の高校生が口を開きます。


「は、離してください」


「いいえ離しません。この殺人事件を仕組んだのは貴方ね?」


 白髪の殺し屋ビエールィは口元に笑みを作り本性を現します。


「鋭いね。けれど俺は捕まらないよ。おばさん」


「そんな事ない。警察は優秀よ。きっと貴方を逮捕するわ」


 問い、何故お母さんは殺人事件だと分かったのでしょうか?


 お

 母

 さ

 ん

 の

 推

 理

 が

 こ

 ち

 ら

 ↓

 ↓

 ↓

 ↓

 ↓


 答え、被害者はスマホを見ながら踏切に侵入したわ。

 黒髪の高校生は通話を女子高生は動画を見ていたから二人とも違う。

 でも白髪の高校生は片手でスマホをずっと操作していた。

 メールを打って被害者に指示を出していたのよ。

 それに彼は尻餅をついたフリをしてスマホをポケットに入れていたわ。


 ……彼は証拠不十分で釈放されてしまったわ。またどこかで会うかもしれないわね。


 それじゃあまた次の謎解きで会いましょう。バイバイ。

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