#19にせヒーロー事件

 僕の隣に立つスイ姉が子供達に混じって歓声をあげた。


「今年から始まるギガンティック54も全話録画決定だな」


「スイ姉。僕達仕事できてるんだよ」


「何だよ。コウだって小さい頃は『ギガンティックマ〜ン』って追いかけてたじゃん」


「そんな昔のことなんて忘れたよ!」


 僕とスイ姉がいるのはショッピングセンターにあるイベントスペースだ。


 そこではヒーローショーが行われていたのだが、昨日今日と出演者の財布が盗まれるという窃盗事件が相次いで起きていた。


 相談を受けた僕達が警戒に当たっているのだが、ヒーロー好きのスイ姉のテンションはさっきから上がりっぱなしだ。


「私も仕事じゃなかったら握手してもらいたいな〜」


 僕がいなかったらスイ姉は今にもヒーロー達に握手を求めに走り出すだろう。


 そんな時、イヤホンに連絡が入る。


 バックヤードを警戒していた警官からで、またもや財布が盗まれたらしい。


 容疑者が逃げてくる可能性があるので、僕達はイベント会場で待機することになった。


 窃盗犯は現れない。イベント会場のショーは終わり、今は子供達とヒーローの握手会が行われている。


 握手会に出ているヒーローは三人。


 元気いっぱいな新人ヒーロー《ギガンティック54》は子供とツーショットしたり必殺技のポーズを取っている。


 進んで悪の道に堕ちたヒーロー《ダークギガンティック》は、左手を後ろに回し子供達を見下ろすポーズのまま右手でハイタッチしている。


 半世紀以上地球を護る初代ヒーロー《ギガンティックマン》は威厳あるベテランヒーローだからだろう、子供の相手をせずに二人のヒーローの方に誘導していた。


 そんな三人をスイ姉は顎に手を当てて見つめている。


「スイ姉。考え事?」


「あいつおかしいな。おいコウ話聞きに行くぞ」


 二人で会場に近づくと、こちらに気づいたヒーローの一人が突然逃げ出した。


「あっ待て、逃げるな!」


 すぐさま追いついたスイ姉は、殴りかかってきたヒーローの顎にハイキックをお見舞いし、見事窃盗犯を逮捕した。


 問い、窃盗犯はどのヒーローに化けていたのでしょう?


 ス

 イ

 姉

 の

 推

 理

 が

 こ

 ち

 ら

 ↓

 ↓

 ↓

 ↓

 ↓


 答え、初代ヒーロー《ギガンティックマン》だよ。

 いくら威厳あるからって子供の事を蔑ろにするなんておかしい。

 ヒーローはいつも子供の味方なんだからな。


 何? これを読めって……それじゃあ次の謎解きをお楽しみに。

 あっと、言い忘れてた。私がヒーロー好きな事あんまり言いふらすなよ!



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