第二章 元いた世界に召喚されるなんて聞いてない 4
「実は、そこの嫉妬深い息子がな、セレンの日記を見つけてなぁ。きっと、幼い頃のレインのことが書かれていると想像して読んだんだろう。偶然にもそこに、【魔女の嫉妬】について書かれていたそうだ」
セレンが日記をつけていたことにも驚きだが、そこに【魔女の嫉妬】のことが書かれていたことにも驚いた。何故?と思っていると、その答えをレイスハイト答えてくれた。
「日記には、セレンが調べた呪いについてが色々と書かれていたらしい。あやつも、大切な妹君と母君の呪いをとこうと必死だったのだろう。結局、君たち家族は呪いの影響がない別の世界に行ってしまったがな」
日記の内容を語るレイスハイトは、何故が人伝に聞いた様な言い方で語った。疑問に思っていると、再びニヤついた表情をしたレイスハイトが付け加えていった。
「その日記には、レインの本当の顔についての描写もあったみたいでな。嫉妬深い息子は、決してその内容を人に知られたくなかったようで、自分以外には日記を見せないようにしていたんだ」
そう言って、人の悪い笑みを浮かべてからかうようにスイーティオを見やった。
レイスハイトの言葉でレインは再び小首を傾げていた。それに気が付いたスイーティオは、頭をかきながら、レインに説明した。
「セレンの日記によると、呪いは見た目だけで、姿かたちが変わるものではなかったということだ。強力な幻覚の様な効果で、触れれば本来の姿かたちが分かるとかいてあった」
その言葉を聞いて、家族全員のスキンシップ過多なふれあいの意味を初めて知った。
日本に行ってからも、そのスキンシップは酷くなる一方で、そんな理由があったなど気が付くことは全く出来なかったのだ。
ただ、家族全員は本当にレインのことが好きで可愛くて仕方なくってついベタベタしまっていたのだが、レインは日本にいる家族を思って心が暖かくなるのを感じた。
しかし、それでも見た目が醜いことに変わりはない。レインは、再び首を振った。
「無理です。殿下は第二王子なのですよ。その婚約者がこんな醜い姿のものだとなれば、周囲に侮れます。それは、王家の威信に関わります」
頑ななレインにスイーティオはしびれを切らせて言った。
「レンは全然変わっていないな。どうして俺を信じないんだ!俺は、お前がいいとずっと言っている。俺がいいと言っているのだから、大人しく嫁になれ!!」
「殿下は優しいからそう仰るのです。優しさは時に罪です……」
「何故だ?俺は、お前がいいんだ。別に優しさとかじゃない」
「殿下……。無理はいけません」
平行線をたどる二人のやり取りに向かいのソファーからあくびをしながらレイスハイト言った。
「ふああぁぁ~。痴話喧嘩もいいが、嫉妬深い息子よ。時に、自分の思いはレインに伝えているのか?」
「俺の気持ち?言っているにきまっt……」
言っているに決まっていると言おうとして、今までの自分の言動を色々振り返る。そして、今まで「君がいい」「側にいろ」「君以外いらない」と再三言っていた。しかし、肝心の「好き」と言う気持ちを言っていないことに気が付いたのだ。
初めて言葉をかわした日、「俺の運命の人」ということは伝えた。それに、再三言っていたことで、スイーティオがレインのことをどうしようもない位好きということは伝わっていると思っていたのだ。
レインに贈り物をする時、何時も着けていてもらえるようにと考え、仮面を贈った。普通なら指輪などのアクセサリーを贈るところ、仮面にしたのだ。
スイーティオは、いつでも君を守るという気持ちを込めて、仮面を贈ったが、レインは初めての贈り物で仮面が送られてきた時に勝手に勘違いしたのだ。「これで顔を隠すように」言われたのだと。
長年のすれ違いの原因が自分にあることに気がついたスイーティオは、向かい側にいるレイスハイトに目もくれず、レインだけを見つめていった。
「レン。お前のことが好きだ。好きだ好きだ好きだ。愛している。俺だけの可愛い人。どうか、俺の妻になってくれ。幸せにすると誓う。愛している」
そう言って、呆然とするレインの小さな手を取ってくちづけをした。次第にそれは激しくなり、指先を甘噛し始めた。
このままでは不味いとレイスハイドはここにはお父さんがいますよ~と、アピールするために咳払いをしたが、無視された。
必死になって、咳払いを続けるが全く意に介さないスイーティオの甘噛は次第にエスカレートして行った。
チュッという音を立てながら、口づけは腕にまで達していた。
もう無理だと言った風にレイスハイドは立ち上がり、目の前の息子に思いっきりチョップをかました。
「このエロ息子が!!目の前に父さんがいるというのに!!何をしているんだ!!私は、こんな破廉恥な息子を生んだ覚えなはいぞ!!」
いいところで邪魔をされたと言った表情のスイーティオは、舌打ちしながらレイスハイトを睨みつけた。
「ちっ。俺は、父上から生まれた覚えはない。俺は母上から生まれた。気色悪いことを言うな」
「私も生むのは無理だな!!言葉の綾だ!!」
そんな二人のやり取りを呆然と眺めていると、徐々にスイーティオに言われたことが頭に浸透してきた。
あまりの恥ずかしさに、レインは魔術を爆発させた。そして、絶叫しながらその場から消えたのだった。
「きゃーーー!!そんなの無理ーーーー!!無理無理無理!!!むーりー!!」
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