第14話 先輩の初恋相手?

「おぉぉ~」


 久しぶりにバスケットボールを手にとって指の上で回す俺を見て、先輩は感嘆とした声を上げた。


「別に大したことじゃないですよ?」

「ううん! 私にとっては凄いよ!」


 俺の要望を聞いてくれた先輩。それにより俺は今、中学生の頃以来のスポーツショップに先輩を連れて来ていた。


「そういえば私ね、バスケにお世話になったんだ」


 バスケにお世話? どういうことだ?


「あっ、バスケをしてた男の子に救われたの」


 バスケをしてた男の子? 男の子……って、まさか!?


「先輩の、は、初恋の相手!?」


 驚嘆とした声でそう聞くと、照れくさそうにコクリと頷いた。

 でもまぁ、今は俺と付き合ってるし? その相手と運命の再会しても……まぁ、大丈夫だよな??


「あっ、そんなの志勢くんに話すべきじゃないよね?」


 先輩はそう言うが、どうも気になって落ち着かない。

 俺は「大丈夫ですよ」と言って、恐る恐る先輩の初恋話に耳を傾けた。


「高校のオープンキャンパスのとき、心音ちゃんとはぐれた私を助けてくれたバスケ部の男の子」


 なんだそれ? 絶対惚れるやつ。忘れられないやつじゃねぇか!

 さらに先輩はこう続けた。


「ユニフォームにウチの学校の名前が入ってたから、たぶん高校の先輩だと思った。けど──」

「ちょっと待った! じゃあ先輩が清峰高せいほうこうに来たのって……」

「ち、違うよ! 元々、清峰は志望してたし。それにその人とは『会えたらラッキー』って思ってたくらいで……、でも──」


 くそっ、嫌な情報を聞いてしまった! だが、時すでに遅し。


「先輩!」

「なっ、何!?」

「もしその人に会っても、あの……大丈夫ですよね?」


 つい焦ってしまった俺。頭が回らないまま、俺は変に口走った。


「大丈夫。大丈夫だよ」

「ホントですか!?」


「うん、大丈夫」


 先輩は俺の目をバッチリ見て、微笑んでくれた。これはカレシとして強く信じないとな。


「わかりました」

「……うん」


『おい、あれって』


 先輩と面と向かって話していると、誰かが俺達を見て何かを言おうとしているのが聞こえた。

 まさか同じ高校のやつか!? 俺は焦って振り向くと、他校の見知らぬバスケ部員二人が見えた。

 それならよし。なんて、思ったが──


『あー、あの人って確か』

「先輩、そろそろ行きましょうか?」

「えっ、いいの?」

「はい! もう大丈夫です」


 俺は彼らから逃げるようにスポーツショップを後にした。


「あの、その、ふぇぇぇ……」


『あっ、らぶらぶかっぷるだ~』

『こらっ!』


 店を出てすぐ、子どもにからかわれてから気づいた。俺が咄嗟に先輩の手を掴んでいることを。


「すっ、すみません!」

「ううん。大丈夫……」


 ひどく照れて、俺達はすぐ自然に繋いだ手を離した。

 これは不可抗力だ。先輩、すみません。あと、ありがとう。神様……とでも言っておこう。


「あっ、そうだ」


 すると先輩が手を団扇うちわのように扇ぎながら、俺に言った。


「ちょっと外行かない?」


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