第4話  勇気を出して──


 俺は勇気を振り絞って言った。

 これは告白ではない。あくまでデートのお誘いだ。

 この誘いに乗れば脈アリだし、乗らなければ脈ナシと判断できる。


 さぁ、どう出る?


「えっ…………」


 あれ? ショック受けてる? もしかして脈ナシ!?


「もしかして、心音ちゃんのこと嫌いなの??」


 えっ? そう来る??


「いや、そんなことは……」

「じゃあ、なんで??」

「あっ、いや……」


 一切嫌な顔を見せず、純粋な疑問を抱く姫坂先輩が首を傾げて上目遣いで俺を見る。


「そ、それは……」


 ダメだ。もう頭が回らない。

 どう答えたらいいか、わからない。

 いや、素直な答えを言えばいいのに、俺はそれを無理に避けようとしている。


「それは?」


 先輩に答えを迫られる。

 これはもう、素直な答えを打ち明けるしかない。

 あくまで告白じゃないんだ。おとこを見せろ、俺。

 強く目を瞑って、俺は叫んだ。


「先輩と! どうしてもになりたいんです!!」


 俺は勇気を出して素直な気持ちを吐いた。「二人っきり」の部分をかなり強調させながら。


 …………………………

 ……………………

 ………………


 あれ?


 これはもしや……告白なのでは!?

 見ると先輩の顔が真っ赤になっていた。


「ふ、二人っきりだなんて……」


 先輩は両頬に手を当てて、赤くなった顔を隠している。

 やはり、告白と取られたのだろうか。


 でももし、告白と取られたのならば……。


「俺、先輩が好きです!」


 もう、どうにでもなれ。ここで告ってしまえ!俺は早まった。

 告白のシチュエーションとか知るか。もう今は、思いを伝えたくて仕方ない!


「部活探してるときに声をかけられたときから、ずっと好きです! 一目惚れでした!!」


 そう思うと気が楽になったのか、ここで逃げるべきでないと思った俺の口から、溜めていた言葉と気持ちが勢いよく流れ出る。

 だからといって長々と気持ちを並べることなく、俺はこの言葉を放って告白を締めた。


「だから……付き合ってください!!」


 俺は頭を下げ、勢い任せの告白を完遂させた。

 さて、あとはどう転ぶか──。


「えぇ、えーっと、その……」


 先輩は困惑している。

 そりゃそうだよな。勢い任せでいきなり告白しちゃったし。


 数秒後、ここでジャッジが下されるか?

 そう思ったのだったが……。


「ホントに、私のことが好きなの?」


 自信なさげな声で、先輩は俺に聞いてきた。


「はい、好きです! 大好きです! もはや、好みにどストライクです!!」


 だから俺は顔を上げ、目を見て、これでもかと言うくらいありったけの「好き」の気持ちを言葉にしてぶつけた。


 すると彼女は顔から首の下まで真っ赤になっていて、目をうるうるさせていた。

 実に可愛い。ここでも勢い任せで抱き締めたいくらいだ。さすがに無理だけど。


「あの……」

「先輩?」


「あの、私……男の子に告白されたの初めてで、こんな私に『好き』って言ってくれた人も初めてで……だから、嬉しくて……」


 そう言うと彼女はスカートの裾を両手で握り、俺と同じように目を強く瞑って──


「こんな先輩で良ければ、よろしくお願いしましゅ!!!」


 と、俺の告白に「イエス」と返事した。

 これすなわち──俺は告白に成功し、人生で初めてカノジョができたということだ。




【後書き】


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