第3話 黄金のミルクをもとめて
きのう、プーカ
「しっ! しずかに聞いとくれ。あしたの朝はやく、子牛がうまれるよ」
ひなぎく
「おしゃべりスズメ! やつらに話したらただじゃおかないよ!」
ええ、もちろんスズメは話しました。そもそもスパイだったのですから。
りゅうの森に
さて、こんなことがニュース? とお思いでしょう。牛のお産は
やつらがなんなのかですって? 『ミルクのみ』ですよ。
***
「わしらのからだをつくるミルク!
わしらの
なかでも
「黄金のミルクをもとめて!」
ブナのおおきなうろの中、スズメのしらせを聞いたミルクのみの
ふだん森の木のうろにくらして、どうぶつたちの母親にこっそり
目はまんまるく顔から飛び出し、ストローのような口も
いまも、イチイの赤い
かれらがもとめる「黄金のミルク」とは、
「さあ、夜のうちにしのびこむとしよう!」
ミルクのみたちはぴょんぴょんとうろから飛び出し、ひなぎく牧場をめざします。
***
夜ふけ、ひなぎくばあさんは
母牛は落ちつかないようすですが、まだ時がかかりそうです。
ひなぎくばあさんは、プーカ島のことばで「鼻がいい」人、つまり人間ではないものたちをよく
まずひとつはお
さらに、ひなぎくばあさんの左右には犬とおんどりがひかえています。犬の名はローキ、おんどりはチャボ。かれらもミルクのみがきらうものたちです。
そして
さあ、そこに森からミルクのみの
「ローキ! チャボ!」
犬のローキは左へ、チャボは右、まんなかでばあさんがむかえうちます。
チャボはつばさをひろげ、ミルクのみたちをとおせんぼすると、まずは
おどろいて止まったミルクのみに、うしろから来たやつらがぶつかってポップコーンのように
チャボはすかさずくちばしでつつき、首をそらしてぱくぱくっと食べてしまいました。にわとりにとってはよく跳ねる豆に見えています。
ばあさんはというと、エプロンのポケットからお酢のビンを出し、むかってくるミルクのみたちにびしゃっとあびせかけます。もろにかぶってしまったミルクのみは、ほそながい口からぴろろろろと声を上げて森へと
はやくもたたかいはばあさんの
ミルクのみの
「ボールで気をそらそうってのかい。むだだね!」
ばあさんの言うように、ローキはおちつきはらってボールをふみつぶし、ミルクのみたちはちりぢりになりました。ローキは得意げに前足をなめ、それからつぶれたボールのにおいをかぎ、おや、だんだんしっぽを左右に振りだします。
そこをミルクのみの
このボールの中には、ミルクのみたちがつくったバターがたっぷり入っていました。ローキに
ローキが
ひなぎくばあさんはあわてて入り口に立ちふさがりました。中のようすをうかがうと、いよいよ母牛が
ばあさんのすきをついて、ミルクのみが
ひなぎくばあさんは牛舎へ入り、ミルクのみの
よほどの
ローキとチャボと、ちょっとねむたそうなりゅうの子は、
しずかに時がすぎ、しらじらと空も明るんできたころ。
おんどりのチャボがいきなり立ち上がって、大声で朝を
ねむりかけていたみんながびっくり飛び起きます。ニワトリの声が
そして牛舎の中では、きゅうくつに体を折りたたみ、ぺろりとベロを出した生まれたての子牛のからだを、母牛がていねいになめてやっていたのでした。
あらゆる生きものに子どもが生まれたとき、子の
おおくの人間には何も感じられないでしょうが、ばあさんの鼻にはこの虫が放つほのかな
そしていよいよ黄金のミルクをしぼり、ピカピカのバケツに入れて子牛のもとへはこびます。
がまんしきれなくなったミルクのみがバケツに飛びこんでくるのを、ばあさんは
さいごにのこった1ぴきは、すんでのところでばあさんのエプロンのポケットにすべりこんでかくれます。
生まれてから2時間ほどが
ミルクのみはポケットの中でもがき、えいやっと力をためると今度こそうまく飛んでバケツの中へ
子牛に飲みこまれてしまわないように気をつけながら、
一等すんばらしい、ミルクの中のミルク!
するとミルクのみの
それはだんだんひろがり、黄金のミルクのごとくなめらかにひかるうつくしい
ミルクのみは、こうしてミルク
ミルク蝶の羽の粉は、ミルクのみがこれまでにたくわえたミルクの栄養をふくんでいます。たくさん
ミルク蝶はばあさんの顔の前をひらひら舞うと、やがて外へ飛んでいきます。観戦者たちは空へのぼっていく蝶の
ミルク蝶は雲の上にすみ、1年に1
プーカ島のよき隣人たち たぬき よんろう @tanuki_yonro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。プーカ島のよき隣人たちの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます