第101話 変態女現る
何食わぬ顔で城に戻ったマサキは、自分の葬儀をしている場に出くわした。
「あれ?犠牲者は出なかったと聞いているぞ?誰か亡くなったのか?」
「え?旦那様、魔神を倒した後、消滅したと聞いておりますが?」
「あ、俺の葬儀?」
「はい・・・。生きておられたのですね。」
と涙を拭いながらシャルロットが、抱き着いた。
「まあ、生きていたかと言えば死んでいたと思う。消滅した筈だし、生き返った感じ?」
「ガリル様ですか?」
「多分。気が付いたら庭園に居たから。爺ちゃんと話もしたし。」
「死んだのか、死んでないのかと言われると良く分からん。」
「そうですか。」
「まあ、俺が今ここにいるって事で良しとしよう。」
「そうですね!」
弥助と霧がやって来た。
「上様。御帰還お祝い申し上げます。」
「心配かけたな。」
「いえ、上様が戻って頂いただけで。」
「そう言えば、俺が行方を断ってから何日経った?」
「3日ですね。」
「そっか、神界にいたのに日にちが進んでいるのか・・・。」
何かがおかしいが、今は再会を喜んでおこう。
「じゃあ、俺の葬式なんかやめて、祝勝会でもしようぜ。宴会だー!」
「承知!!」
弥助が走って行った。
嫁ズは、俺の周りに集まって離れない。どうしたと言うのだろう。
「おーい、カズキ。」
「あん?しぶといマサキ。何だ?」
「みんなの反応がおかしいなと思って。俺は帰って来なかった方が都合が良かったんだろうか?」
「あー、アレだ。」
と、カズキは指を差した。
「また、間に合わなかったと泣いて泣いて大泣きして、絶望の淵に立っていた女が居てな。これは、さっさと葬式でもしないと踏ん切りがつかないかなと葬式を始めたんだよ。そしたら、お前が帰って来たから、みんなどうして良いかわからんのじゃないか?」
「あー、そうなんだ。そんなに悲しんでくれた人がいたのかぁ。なぁ、カズキ。俺さ神界にいたはずなのに、3日も経過してんだよな。何故だと思う。」
「お前も偶に抜けてんな。神界は時間が停止している訳じゃなくて、時間と言う概念そのものがないんだろ?ていう事はだ、どの時間軸に送り込むかは、ガリル神の匙加減一つなわけじゃん?」
「あー理解した。自分の葬儀に面白がって送り込んだ訳だな。」
「それもあると思うが、彼女が来たのが昨日なんだよ、だからじゃないかな?」
「お?彼女転移者なのか?」
「よく見ろ、馬鹿野郎。」
地面に手をついて下を向いたまま、涙を流している女性がいた。
「彼女、昨日からあの体勢でずっと泣いたままなんだ。」
「それは最早趣味なのでは!?」
「行ってやれよ。礼を言うんだろ?」
「いや、あれ見たら近寄りたくないよねぇ。3日くらい放っておけば泣き止むんじゃない?」
「なんで3日なんだよ。」
「あの逆プロポーズされた時、断ったら3日泣き続けて帰ってくれなかったんだ。」
「マジか!」
「あいつ絶対マゾだからな。」
面白がって見ている2人に全然気が付かない女。マサキは大豆を一粒右手に取り出し、親指で弾いてケツにぶつけた。
「いたーい!!!」
と言ってこちらを睨む。
2人して腕組みをして見ていたのだが、再び下を向いて泣き出す。
「狙ってるよな?」
「狙ってるな。」
2人共背中を向けて、祝勝会場に向かって歩き出したその時、
「課長!!そこは慰めに来る所ではないんですか!?」
と女は立ち上がって吠えた。
マサキは顔だけ向けて言い放つ。
「ないな!」
「この辛辣な返答。間違いなく立花課長ですね!!」
「違いますー、人違いですー。」
「このハーレム野郎!!」
と言いながらダッシュしてきて、マサキの頭を殴った。が、拳の方が痛かった様だ。
「いたーい!!」
「俺が知っている小夜子って変態は、胸はペッタンコだし、貧弱な尻してたしな。お前は誰だ?まさか豊胸手術でもしたのか?」
「ヘッヘーン。私はですね、生涯、立花課長に操を捧げまして、遂に処女のまま死んだのです。で、ガリル様がコンプレックスを排除してくれまして、エリセーヌ様が立花課長の好みの体形を教えてくれたので、ガリル様が体形を合わせてくれたのです。」
「どこが、ヘヘーンなのかサッパリ分からんが、生涯処女とかキモイし、もはや整形手術より変わってんじゃねーか。」
「どうですか、この豊満なボディ。私は忘れていませんよ。出勤する時、ブラを付けるのを忘れて、出社後に気が付いて課長にお願いしました。『ブラを忘れてしまったので、買って来て良いですか?』と。そうしたら、貴方はこう言いました。『馬鹿か、お前にブラなんて必要ねー、乳首に絆創膏でも貼って措け』と。あの辛辣なコメントにメロメロになってしまいましたが、今度は豊満ボディで迫ってみようかと。」
カズキが大笑いする。
「辛辣なコメントにメロメロになったのか!」
「ええ、あれで惚れてしまいましたね。」
「な?変態だろ?だって、お前のブラのサイズってAAだろ?そんなのその辺に売ってる訳ねーだろ。」
「そんな事分かってますー、課長がなんて言うか罵倒されたかったんですー。」
カズキが溜息を吐いた。
「これは、キモイな、確かに。」
「だろ?」
「でも、今度は課長にちゃんと愛して欲しくて、体とか色々準備してたら、課長死んでました。」
「あーキモイ上にアホだったか。」
「そうなんだよ・・・。」
「ひ、酷い!だが、それがイイ!」
「引くわ~」
「引くな」
「あ、一言、言っておこう。俺が辛くて壊れそうな時、優しく支えてくれてありがとう。何も言えずに死んだから、それだけが心残りだった。」
「そ、それだけですか?」
「うん。」
「いや、そこは『今度こそ一緒になって幸せになろう』とか言って下さいよ。」
「ん?だって俺、今凄く幸せだし。これ以上、女要らないし?」
「私など眼中にないと言う事ですか?」
「うん!」
とマサキは爽やかな笑顔で返事した。
小夜子は昔から顔は美女なのだ。なので、案外モテたのだ。世の中には、ちっぱいより更に平らな、ないぱいが好きな男性もいるので、需要はあったなずなのだ。なのに、性癖が残念過ぎて生涯独身だったのだろう。ただ、胸も尻もなくシルエットが棒だったので、マサキは全然興味がなかったのだ。
顔が美人で優しい女だったので、愛せるとは思うが、きっと夜のお店に通ってしまった事だろう。それは、お互いに良くないと判断していた為、どんなに苦しくても手を出す気にならなかったのだ。
ガリル神が小夜子を連れて来た真意が奈辺にあるのか、マサキには分からないが、体形が変わったとて、あの性癖が直らない限り、色々な意味で立たないよね。主に下半身だけど。
そんな事を考えていたら、大きな腹を抱えてセレスティーナが歩いてきた。
「セレス。体調はどうだ?おかしい事ないか?」
「はい。最近動くんですよ。お腹を蹴られるので少し痛いです。でも、早く産んで旦那様に抱いて欲しいです。私は、エッチみたいです。」
「いやいや、抱くのはまぁ、俺も抱きたいけどさ。子育てを考えようよ。」
「大丈夫ですよ。この子には、お母さんが80人もいるのですから。」
「それもそうか。」
「でも、旦那様が帰って来てくれて、本当に嬉しいです。」
「心配掛けちゃったな。」
「私はなんとなくですけど、希望は持っていましたよ?だって、マサキさんですから。」
「そうかそうか。」
そう言って、セレスティーナの肩を抱いた。セレスティーナは頭をマサキの肩に乗せて、甘々の雰囲気を醸し出していた。
それを後ろで見ていた小夜子は、
「課長!その女のお腹の子供は、まさか課長の子?」
と聞いて来やがった。何する気なんだ。
「当たり前だろう?隣の国の王女で、俺の最初の女なんだからな!」
「まさか、そんな美少女を手籠めに!?」
セレスティーナは首を捻り、
「どなたですか?随分失礼な方ですけど。」
と、不思議そうに言った。
「ああ、向こうの世界で若干世話になった変態女だ。相手にすると胎教に良くない。行こう。」
「そうですね。」
何かスイッチが入ったのか、
「王女?王女様なの?まさか、課長は勇者なのですか?」
と変なフラグを立てようとしやがった。
「もう、課長呼びはヤメロ!俺は勇者なんかじゃないし、変なフラグ立てるのなら、向こうの世界へカエレ。」
「私を捨てるの!?」
「いや、元々俺のものにした覚えはないが?」
「いや、そこは『小夜子、今度は俺のものになれ。』とか言うところでは?」
「ないな。スコット!!」
スコットは走って来た。
「なぁ、スコット。この女の面倒見てやってくれ。ヤッちゃっても良いから。」
「承知しました。私、ガリセーヌ神皇国の宰相スコットと申します。陛下の命ですので、生活のお世話をさせて頂きます。まずは、こちらでお着替えを。」
と言って、小夜子を連れて行ってくれた。
やれやれと疲れていると、セレスティーナが優しく、
「ご苦労されていたのですね、旦那様の向こうの世界でのご不幸を垣間見た気がします。私達全員で旦那様を幸せにして差し上げます。」
と腕を組んだ。
やっぱ小夜子がすげー女に見えるんだな。
もしかしたら、不幸の元凶はあいつなのでは?考えてみると、あいつが煩いから急いで結婚した気がする。結婚してからも、『不倫しましょう!』って言ってたしな。
まあ、考えても始まらない。今は宴会を楽しんで温泉入ってエッチしよう。
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