第99話 奴隷制度

 我が国では、奴隷制度は認めていない。だが、名前が違うだけで似た様な制度はある。奴隷制度を認めていないのは、人身売買を認めていないからだ。

 プロミスの街には、職業相談所と言う役所がある。まあ、所謂、職安なんだけど、街中にある店、工房、商会、商店など人員募集する場合は、この相談所に出すようにしてもらっている。キチンと雇用契約を結ばせる為と、不当な労働条件が課されない為だ。

 これを契約魔法で縛ってしまう為、労働者は安心して働けるのだ。この制度がまた移民を呼んだ。


 話を戻すと、奴隷制度に似た様な制度はあると言ったが、所謂、借金奴隷に相当する者が強制労働者だ。これは、借金で首が回らなくなった人が、自分で相談所に駆け込むか、貸主に連れられて相談所に来るかだが、隷属魔法を使って強制的に労働をさせるのだが、奴隷と違うのは、労働条件をハッキリさせて契約魔法で縛る事だ。3度3度の食事や睡眠時間の確保は必須だからね。

 分かり易く例えると、借金で身動きがとれない人に、マグロ船に乗って来いと言う感じだろうか。


 対して、犯罪奴隷は『受刑者』と呼んでいる。

 これも隷属魔法を使っているが、これは首輪を使い刑期が来ると勝手に外れる様になっている。賃金はなしで、衣食住だけ保障されると言う契約魔法で縛る。刑期が満了した場合は、一定の金額が国から支払われる。

 生活に困れば再び犯罪に走るからだ。


 実は、マサキは犯罪奴隷に関しては肯定的だった。奴隷と言う名前はどうかと思うが、刑務所の設置が必要ないからだ。刑務所を設置するとなると、土地、建物、看守、食料、等経費が掛かり、その分を税金で賄わなければならないのだ。

 隷属魔法で縛るという事は、刑務所にいるより安全なのだ。脱走が出来ないのだから。そして雇い主が経費を負担する事になるのだ。

 そういう意味では、魔法と言うのは非常に便利だと思う。


 問題なのは、ただ誘拐されて売られてくる者が奴隷にされている場合。我が国内でこれが発覚した場合は、即保護の対象となる。連れていた人間は捕縛される訳だ。ただ、娼館制度を完備したお陰で、滅多にこういう輩は入って来ない。

 金にならないからだ。が、富が集まって来るこの街では、幅を利かせる御大尽が出て来る。そして、そういう輩は危険を承知でそういう女を欲しがるのだ。

 だが、隠れてそんな事をしようものなら、御庭番から直ぐに知らせが入るので、警察組織の立ち入り検査が入り、売りに来た業者も纏めて即捕縛となる。

 そんな感じの街なので、治安はすこぶる良い。


 そして、遂に腰元カフェとメイド喫茶がオープンした。

 これがまた大当たりで、これ目当てに温泉旅館に旅行に来る人も増えた。観光事業も順調な様だ。

 しかし、これを真似しようとした他国の業者は、これに奴隷を使おうとした様で、あまり上手くいっていないらしい。エルスロームを始めとする各国では、ガリセーヌのやり方を踏襲して、奴隷制度を徐々に廃止にしていく方向の様だ。

 一気に出来ないのは、歴史の長い国程、貴族家では奴隷を使っている事が多いからだ。貴族家の反発を押えられるかどうかが、鍵になりそうだという事だ。


 奴隷を使って真似しようとしても駄目なのは、分かり切った事だ。何故なら、ああいうサービス業は若い元気な女性が必須条件なのに対して、奴隷はみんなどこか暗いから、客と言うのは敏感なのだ。


 楽しんでやっているか、無理やりやらされているかの違いは歴然なのだ。


 ただ、お触り厳禁のお店なので、これをやろうとしたら、治安が良い事が絶対条件なので、簡単に真似は出来ないだろう。

 メイド喫茶に通っているガチムチの冒険者が、贔屓のメイドの言う事を素直に聞いている姿は、なんとも可愛いものだ。


 俺が行きたくて作った店ではあるが、今や俺が入る隙間がない。俺が並んでいるとそれはそれで問題になるので、我慢している。

 考えてみれば、城に帰れば腰元とメイドが入り乱れていて、お触りOKだった。なのに、店に行きたくなるのは何故だろう。

 まあ、そんな時は瀬奈と弥生を捕まえるのだが。本当に二人は可愛いので、そういう気分な時は二人に限るのだ。腰元姿もメイド姿も早着替えで自由自在、何時でも何処でもOKなのだ。

 あれだけ妻達が妊娠しているのに不自由しないとは・・・。幸せ過ぎてハゲそう。


 そもそも、人身売買にも奴隷制度にも厳しい対応を取っているのは、何故かと言えば、この国にはエルフの行き来が多いし、住んでいるエルフも多いのだ。とても可愛い美少女から美女までいるので、奴隷制度を認めてしまうと危なくて仕方ないのだ。

 ドワーフの女の子も可愛いからね。少し背が低いだけで、ボンキュッボンな娘が多い。

 多種族、多民族国家としては、こういう事に気を遣わないと成り立たないのだ。だが、こういうところに神経を使っている事で、エルフやドワーフの優秀な人材が安心して移住してくれるので、国家的に見れば大成功なのだ。


 このままのスタンスで平和的に友好関係を結べたら良いと思う。まあ、友好関係も何も各国王女とエルフに至っては王族3人も娶っているし、ドワーフの王女を嫁にしているので、喧嘩する事はないだろう。


 後は、悪魔問題が片付けば、各王女に子供を作って、跡取りを残してやれれば、俺の役割は本当に終わるのだと思う。後は、子供達は成人するのを待って、山奥にでも隠棲すれば良い様な気がしている。

 まあ、愛する80人の女達を残していければだが・・・。

 無理だな。


 最近、ちょっとおかしいと思っている。俺もこの世界に来て5年目。なんか年を取っている気がしない。そして、嫁、愛人たちも老けていない。これ、エリセーヌの加護とかなのかなぁ。まさか・・・ね。


 ちょっと怪しいとは思いながらも、嫁が若い事は嬉しくはあっても困る事はないので、問題はないのだが。


 エリセーヌが何かを隠している気がするので、悪魔問題が片付いたら問い詰めてみたいと思う。








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