第93話 建国

 街が概ね完成した頃、スコットを中心に法整備をし、各国に協力要請をして住民の受け入れを開始した。

  基本的に、戸籍をハッキリさせる為、住民登録を義務化して役所で面談して戸籍の作成をした。また、差別観念を持っている人には、市民証の発行をしない方針として、市民証がない者には不動産の販売はNGとした。

 但し、街へ入るのは良しとして、宿を利用してもらう方針とした。


 各種魔道具の販売を開始した事と、ミリアに経営を任せた服ブランド、クロード商会を百貨店化して魅力的な宝飾品や石鹸、シャンプー等の生活雑貨の販売を始めた事で商人の流入や工房の移転が相次ぎ、遂に人口は2万人を突破した。


 このまま自由貿易都市にしてしまおうかと思ったのだが、貨幣の発行などが出来なかったり、問題が多すぎる為、やむなく建国する方向へと舵を切った。

 神様達もちょくちょく遊びに来てくれるようになり、エリセーヌに久しぶりに会う事が出来た。アリスとクレアが帰ってくれない、と言う問題もあるにはあるのだが。


 各国王都には、駅の設置が完了しており、いつでも魔導列車を走らせる事が出来る様にしてある為、一度各国首脳に集まってもらう事にした。

 建国を承認してもらう為と、富の再分配をする為の方策会議をする為だ。

 今のままだと、プロミスへの富の一極集中が起きてしまう為、構造的な再分配を考えておかなければならないのだ。

 そうしないと無用な戦争など、争いの元になってしまうからだ。


 食文化等は各国で工夫して貰えば良いが、産業については各国へ商会の支店を設置して税金を納めたり、技術供与をして各国で生産活動をしてもらったり、特産品としての作物の考案などが必要だと判断した。


 特に農作物をプロミスの輸出品目にしてしまうと、ニルフェスが居る為に最高品質の農作物が毎年豊作となってしまうので、他国であまり生産していない大豆などの生産量を増やして、麦は街中で消費する分に押えたりと考えないといけないのだ。まあ、余ったら酒にしてしまえば良いのだが。


 そう言った事を各国が自分で考える事が出来る様に、学術都市化も進めなければならない訳だ。


 結局やる事は全然減らないのだけど、人が増えた事だけが救いなんだろうなぁ。





 そして迎えた建国の日。


 この日は、各国王族や首脳陣が続々とプロミス入りしてきて、挨拶回りだけで非常に疲れてしまった。

 しかしながら、建国宣言をしなければならないので、休憩する訳にもいかず正装に着替えて、城の3階のベランダへと向かった。

 国名は、タチバナ王国はやめて、ガリセーヌ神皇国とした。ガリルの爺ちゃんとエリセーヌからとったのだ。だってタチバナ王国とか恥ずかしいよね。

 そして、俺はマサキ・フォン・タチバナ・ガリセーヌと名乗り、皇帝となった。


 城の前には、2万人以上の人が詰め掛けた。注目を浴びて、恥ずかしくて堪らないのだが、ここまでやった責任だと割り切って、高らかに宣言した。


「本日この時を以って、ガリセーヌ神皇国の建国を宣言する!」


 一斉に歓声があがり、弥助とスコットは後ろで涙を流していた。


 結局、対外的な第一夫人には、セレスティーナ。第二夫人にシャルロット。第三夫人にエルフェリーヌとした。

 セレスティーナは、ここにきてかなり落ち着きが出て、どっしりと構えられるようになった。何があったのだろう。

 第四以降は序列は付けなかった。例えば、シリルは公爵家の娘で男子がいない為、跡継ぎとして子供が産まれたら返す必要があるかもしれないからだ。

 リリアーナも一人娘なので、同じ理由だし、エカテリーナも大公家だからね。

 それでも、みんな妻として愛していくのは変わらないのだから、問題ないだろう。


 建国宣言の後は迎賓館でパーティだ。

 料理は、エルスロームの王城のシェフとエルスのパスタ屋の親父を結局拉致して来たので、お願いした。

 しかし、迎賓館の会場にいる人間の半分近くが嫁さんなんだよなぁ。まあ、挨拶とかを代行してもらっているので、楽と言えば楽だけど。


 パーティの後は、ほぼ全員で温泉。水着を着て入れる温泉があって、そこにはウォータースライダーが付けてあるし、打たせ湯や泡風呂、ジャグジーまで用意してある。まあ、プールとスーパー銭湯を一緒にした感じの温泉だな。


 俺は義弟のアンソニー王子を膝に乗せて、ウォータースライダーで滑って降りて来たところだ。

「アンソニー、面白いだろ?」


「はい!兄様。今度は独りで行ってきます!」


「気を付けてな~」

 6歳になったアンソニーは元気一杯だ。


 そんなアンソニーをサラビスが微笑ましく見ていた。今日は、王妃も全員来ていた。温泉を楽しんでくれている様だ。


 問題はステファンだ。所構わずクリスティーナとイチャコラしやがって、見ているこっちが恥ずかしい。

 と言いつつも、俺の隣にはセレスティーナとシャルロットとリリアーナとマリア、ヘカテリーナがいるのだが。




 風呂からあがった後は、全員を娯楽室に招待をした。

 将棋、トランプ、リバーシ、麻雀、子供用に人生双六ゲームを用意してある。

 当然、酒を飲むスペースもある。各々が遊び始めたのを見て、一息吐いた。


 ここで、瞬剣ヘンリーとカルロスと3人で飲む事にした。


 カルロスが口を開く。

「ついに皇帝かよ、つくづく面倒になっていく性分なんだな。」


「なんか仕方ないよね。生活しやすい様に変えていこうとすると、反発する連中も出て来るし、かと言って諦められないし。でも、もう働かないけどな。」


 ヘンリーも言う。

「そういう訳にいかないでしょうよ。」


「いやいや、後はスコットに丸投げする予定。」


「あーそうか、子作りしなきゃなんねーもんな。あれだけいたら大変だな。」


「いやいや、人数はカルロスもヘンリーも変わらないだろ?」


 カルロスは可哀相な奴を見る様な目でマサキを見る。

「俺達はほら、メイドハーレム的な感じだから、出来たら産めば良いけど、特に作らないとって訳じゃないからな。望めば作るけどな。マサキよりは気楽なもんさ。

 マサキは王女や貴族令嬢には、絶対に種付けしなくちゃならないだろうし、大変だと思うぜ。」


 あーそうか、王族、貴族の令嬢は子供産むのは必須なのか。

「カルロスはそうやって独身貴族してるけど、跡継ぎはどうすんの?」


「ん?出来たら嫁にすれば良いかなって。」


「そっか、ほぼ義務なのと自然に任せるのは違うね、確かに。」


 そんな取り留めのない話をして、後は冒険者時代の面白かった話などを聞いて盛り上がった。

 そして、みんなを宿泊用の部屋へ案内し終わって、自室に上がった。




 部屋に入ると、座敷で神様達が寛いでいた。


「爺ちゃん、やっと来てくれたね。」


 ガリルは、目を細めて言った。

「ほう、待っていてくれたか。暫くやっかいになるでのぅ。」


「偶には、羽を伸ばしてゆっくりしてってよ。だけど、みんな来ちゃっていいの?つーか、アリスとクレアは帰れよ、エリセーヌが来られないだろ?」


「あー、マー君酷い。」


「それはそうと、少し話があるのじゃ。」

と、ガリル神が言い出した。



 何となく、面倒な予感を感じながらも、態々最高神が話をしに来たと言う事は、重要な話なんだろうと、姿勢を正して聞く体勢をとるのだった。






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