第92話 改葬

 そう言えば、スコットを迎えるのに、屋敷は用意してやらないとな。あ、カズキの屋敷も作ってやらねば。

 そう考えたマサキは、城内の行政府のある小天守の近くに、スコットの屋敷とカズキの屋敷を作る為、基礎を打ち始めた。

 勘治と治吉を呼んで来て、屋敷の建造を依頼した。間取りは、カズキのはカズキに聞いてくれと言っておいた。スコットの方は、マサキが絵を描いた。


 そうしたら、カズキが何か言っている様だ。

「おい、マサキ。俺を城から追い出すのか?」


「何を言ってんだ、お前は。お前も嫁と愛人で30人位欲しいだろ?屋敷くらい持っておけ。」


「そんなに要らねーよ!」


「いや、この世界はな、女が多いんだ。だから甲斐性の有る奴がもらってやらんと余ってしまうんだぞ。」


「まじか!!」


「良いじゃねーか。屋敷と書いてラブホテルと読めば。」


「おお!分かった。そうする!」


 簡単な奴だ。だが、それがイイ。

 あいつは、それくらいでないとな。

 それよりスコットが早く来ないかな。スコットに丸投げしたい事が、山ほどあるんだが……。

 あ、その前に、スコットの奥さんと娘のイリアだったかな、墓を作っておいてやらないとな。帝国から改葬すれば良いな。

 近くにいた方が、スコットも良いだろう。

 そんな事を考えたマサキは、御影石を異空間から取り出して、墓石に丁度良い大きさに加工して、名前を刻めるようにしておいた。


 湖の畔の景色の良い所に、場所を確保して、石柱で囲んだ。そこに墓石用の石板を置いて、眺めが良い角度に調整した。

 【ゲート】を開いて、帝国へ飛びルキウスに聞いてみた。スコットの奥さんと娘の墓を知らないかと。

 実は、ルキウスが墓守の代わりをしてくれていたらしい。テリウスが迷惑を掛けたからと。そんな訳ですんなりと場所が判明し、改葬の許可をもらうと、墓石さら異空間に収納した。


 再び、【ゲート】でプロミスへ戻ると、石工を捕まえて湖の畔へ連れて行き、穴を開けて、遺骨を石室を作って仕舞うと墓石を出して、名前を見せ御影石に名前を掘ってもらう様にした。

 持ってきた墓石は石室の蓋にして、新しい墓石を湖が見える様に斜めに配置した。ニルフェスに頼んで、花を周りに植えてもらったら、景色も花も楽しめそうな、良いお墓になったと思う。

 奥さんもイリアも、喜んでくれたら良いなと思うマサキなのである。勝手に改葬したので、スコットは怒るかもしれないが、出来るだけ近くに居させてやりたかったのだ。


 心の拠り所には、なると思うのだ。だって、スコットは簡単に死なせてはやれないのだから。

 マサキにとって、弥助、スコット、カズキは絶対に失いたくない男達なのだ。家族の元になど、当分逝かせてやれないのだ。

 やっぱり怒るかなぁと一抹の不安を抱えながら、それでも出来栄えに満足するマサキなのである。




 あれやこれやと色々手を出し過ぎて、一向に進んでいない現状ではあるが、割と楽しんでいる感じだ。商業ギルドとの決着が着いたので、現在は、燃え尽き症候群の発病中だ。


 しかし、思うのだ。勘治や治吉は忙しそうに色々やっているのだが、俺が頼むと何でもすぐにやってくれるのだ。困ったもんだと。

 最近は、あれが必要だなぁとか、これが欲しいなぁとか、ボソっと呟くじゃん?そうすると、すぐに研究がスタートしてしまうんだ。研究室は、俺が研究する用に作ったのに、使わせてくれないのだ。

 なんか絶対君主と言うより、完全甘やかされ君主な感じ?

 尻とか触ろうとするだろ?みんなどうぞって言うんだ。

 ムラムラってしてると、俺の顔がだらしないらしくて、みんな『します?』って言うんだ。するけどさ。

 何か不満なのか?って聞かれたら、全然不満なんてないのだけど、何かそのうちみんな居なくなりそうで、不安なんだよね。

 良いのだろうか、こんなんで。

 そうなのだ。何にもさせてもらえないのだ。エッチしか。

 開発しなければならないと考えている物は、忘れない様に書き出しておくのだけども、書いた紙が無くなってしまうのだ。


 どこへ行ってしまったんだろうと考えていたら、出来て来ましたよ。色とりどりの顔料と、印刷機。それに、ミシンに石鹸にシャンプーと。やろうと思っていた事を全部やってくれていた。

 どうも、書いた物を霧とか桜が持ち出して、カズキに見せて色々聞きながら、職人に割り振っていたらしい。

 何か、俺に気を遣い過ぎじゃないだろうか。


 取り敢えず、石鹸とシャンプーは使って見なければ分からないよなと、城の1階の大浴場へ行ってみた。

 大理石風なツルツルの石造りの床で、これ滑って転ぶと危ねーんじゃね?と思いながら、洗い場で試してみた。石鹸は柔らかい泡が立ち、肌がスベスベになるクオリティ。シャンプーも髪がサラサラになる程度にはよく出来ていた。

 これなら商売になるだろうと、商品化にゴーサインを出したいと思う。

 湯舟に浸かりながら、そんな事を考えていて、ふと思った。もう、住民の受け入れを少しずつでもしていくべきかなと。

 生活必需品は揃うのだ、住民が困る事もそうそうないだろうと。無いのもがあれば、飛空船で仕入れても良いのだし。現に、日本人達は普通に生活出来ているのだから。


 なんて思っていたら、40人の女が一斉に風呂に入って来た。まあ、50人以上は同時に入れる様な風呂だから、別に良いんだけどさ。背徳感がすげーのよね、女風呂に1人男が紛れているようでさ。

 若い女しかいないし、みんな美人だし、スタイル良いし、普通に風呂屋に行っても有り得ない光景なんだよなぁ。女子大生の合宿の風呂場を覗いても、こんな事にはならないぜ?だってブスが1人もいないんだもん。

 そんな幸せを噛みしめながら、湯舟に浸かっていた。

 そうしたら、シャルロットに言われた、最近、元気がないと。

 そうかなぁと考えても、自分では良く分からないっぽい。なので、別にそんな事ないと思うよ。とだけ言っておいた。


 風呂から上がったら、5階の自室の畳の上でゴロゴロしていたら、やはりシャルロットが来て、膝枕をしてくれた。風呂上りのシャルロットは、黄色の浴衣がよく似合っていた。

 シャルロットとセレスティーナの膝枕と言うか太腿は気持ちが良いのだ。

 太腿を枕にうつ伏せになり、元気がないとするとなんだろうと考えてみた。

 普通は、テレビをみたり本を読んだりしている時間よなぁと思うと、この世界に飽きて来たのかもしれないと考える様になった。娯楽が足りないと。

 娯楽室は作った物の、ゲームと言うのは、基本相手が必要だ。だが、1人でボケボケする娯楽がないのだ。紙が貴重なこの世界で、小説の様な本は見た事がない。漫画など、言うまでもないだろう。

 てか、新聞もないもんな。カメラ作るかなぁ……。と考えていたら。シャルロットにストップを掛けられた。


「旦那様。また、何か作ろうとか考えていましたね?」


「あーうん。何で分かった?」


「旦那様は、表情や雰囲気で分かります。」


「そんな分かり易い?」


「はい。でも、暫く止めませんか?お疲れです。顔に出ていますよ。もう、生活するのには全く困りませんし、急ぐこともないでしょう?」


「まあ、そうなんだけどさ。1人で時間を潰せる娯楽がないなと思ってさ。」


「そういうのは、追々で良いではないですか。旦那様は、絶倫なのですから、暇なら私達とエッチな事をしていれば良いでしょ?頑張りすぎですよ。特に、最近は少々働きすぎです。そんな時間があるのでしたら、私をもっと可愛がって下さい。」

 そういう事か、それで俺に何もさせない様にしていた訳か。考えてみれば、元々ロクデナシの癖に、真面目に働きすぎてたな。


「そうか。働きすぎか……。」


 そう言って、シャルロットをベッドに連れ込み、一晩中可愛がってやった。こうでなければ、俺じゃないな。

 シャルロットに感謝しつつ、5回戦もしてしまったのである。


 考えてみれば、全部自分の頭の中で出来上がってから取り掛かってたし、魔法任せにやってきた事もあって、誰かに『任せる』と言う事をしているつもりで、していなかったと言う事なのだろう。

 国が云々言う前に、組織化して役割を決めてしまう事も大事だろう。暫定でもね。

 スコットが来てからと思っていたけど、少し考えておこう。

 大規模ま工事はほぼ終わったのだし、手を出し過ぎるのも良くはないのだろう。


 シャルロットを抱き枕にしながら、そんな事を考えていたのである。




 翌朝、エルスの城へ行き、スコットを攫って来た。そして、みんなを大広間に集める様、桜に指示をして、自室のソファでひと息吐いて大広間に向かった。


 大広間には、日本人集落の主だった者と俺の嫁ズ、カズキとケネス一家、ドワーフにエルフなど総勢150名が集まっていた。

 上座に腰を下ろして、みんなを見回すと話始める。


「急に集めて申し訳ない。今日は、それぞれに役割を持って事に当たってもらいたいと役職を考えて来た。まあ、暫定なので気楽に聞いて欲しい。」

そう言いながら、みんなを見回してみたが、誰も声は発しない。


「宰相は、ここにいるスコットに任せたいと思う。そしてプロミスの市長をカズキにやってもらいたい。」


 スコットは、目を見開いて声を上げる。

「謹んでお受け致します。精一杯務めさせて頂きます。」


 カズキは不満な様だ。

「えー?俺も働くの?」

「当たり前だろう。」


「これから、必要に応じて各部門を創設していくし、部門長も決めていくが、ずはこの体制で相談窓口としてもらいたい。以上だ。」


「「「承知!」」」


 この他、御庭番頭に弥助を据え、俺の直轄とした。隠密頭を藤林家に依頼した。

 あとは、生産部門、建設関連部門、財務部門など組織化していけば良いだろう。




 この後、スコットを湖に案内して、奥さんと娘の墓を勝手に改葬した事を謝罪しながらも、良い景色の墓だろ?と自慢しておいた。

 スコットは墓前に膝を付き、泣きながら喜ぶという器用な真似をしていた。



 さてと、形にはなってきた。後は、どう着地させるかだなぁ・・・。



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