第86話 列車製作開始

 城も完成したし、区割りも出来たので、街を壁で囲いたいと思う。まずは、小天守の後ろを通って、大天守の真横から壁を出す。城の後ろ側は、プライベートスペースなので、見えない様にしたいのだ。神様も来るしね。


 そして、10Km四方の壁を作る事にした。長さは、平安京の約2倍だな。これは、姫達とノーミードとマサキとカズキで、一気にやっていく。が、とても1日では出来ないので、何日かに分ける事にした。


 魔力回復の時間を使って、住所を考えねばと思うのだ。広さが広さなので、単純に東区、西区、南区、北区では、1つの区が広すぎる。8個位欲しいな。これは、みんなに考えさせよう。姫達が喜んで考えそうな気がする。エルスの王都などには、そんな物はないのだが、戸籍と住民登録をちゃんとしようと思えば、必要な事だと思う。何せ、エルスの8倍くらいあるからね。


 ここまでで、城の横の壁は完成した。勿論、断面の形は、外側だけが、上に向かって広がっていく感じだ。登れない様にね。そして、内側に階段を設けて、壁の上に立てる様にした。ここまでやって、本日の作業は終了とした。屋敷に戻って、風呂に入った。最近は忙しくて、ゆっくり出来なかったから、今日は、湯舟で疲れをとったら、寝ようと思う。ローレルの屋敷で。


 弥助が、2人ゲットしたと言う話も聞かないので、大丈夫とは思うが、念の為なのだ。本当に往生際が悪いと思うが、精神衛生上、仕方ないのだ。


 最近は、お気に入りの瀬奈と弥生を連れて歩いている事が多いので、寝ている時だけが、危ない感じ。瀬奈と弥生は良い、可愛いし、いつでもどこでもヤラせてくれるし、特に瀬奈はくノ一なので、何でもありなのだ。アクロバティックなのも有りだし、青空でも良いし、何プレイでも良いのだ。弥生に至っては、子供なんかいらないので、ずっとして居て下さいと言う。大丈夫なんだろうかと思うが、本人達が良いと言うので、甘えさせてもらっている。




 翌日からは、壁の建造を最優先として、小中学校を区毎に姫達に作って貰い、高等教育を集中させる区に、何を作るか考えてもらう事にした。


 マサキはと言うと、ノーミードと壁を作ったら、カズキとノーミード、ドワーフを集めて、列車の基本構想を決めようと、話合いに入った。ケネスとマルカムには、橋桁を引き続き作成してもらうべく、真っ直ぐと水平を出して一定間隔で橋桁を作るよう重ねて指示を出した。


「さて、列車の動力を何にするか、何が良いと思う?」


 カズキは、頭を捻りながら言う。

「決めてなかったのか?そこ重要じゃん。」


「ああ、何でも行けそうな気はしていたんだけど、今一つ、決め手がなくてな。」


「魔法を使うんだろ?」


「んまあ、そうなんだけどさ、直接的な魔法じゃなくても良いと思う訳よ。例えば、飛空船は、魔法でジェット推進しているけどさ、鉄道なら、魔法で湯を沸かして蒸気でも良い訳じゃん?魔力効率的には、そっちの方が良い訳だし。」


「ああ、そう言う事か。蒸気の他に何かないか?って事な?」


「うん、そんな感じ。」


 カズキとドワーフ達は、頭を捻りだした。マサキを含めて、喧々諤々と話をしていたが、アルシノの一言を少し考えてみた。魔法で回転運動は作り出せないのか。が、アルシノの疑問だった。


 内燃機関だと、ロータリーでもレシプロでも爆発工程が必ずある。それの代わりの魔法となるとなぁ……。思い付かないんだよな。


 カズキは言う。

「内燃機関は使えないのか?」


「鉄道となると、使うエネルギーがデカすぎて、内燃機関じゃ超巨大になってしまうし、内燃機関には爆発工程があるだろ?それに耐えうる素材が、素人の俺達では、見付けられないと思うんだ。」


「でも、蒸気機関だって、内燃機関だろ?」


「いや、あれは、レシプロ部分と燃焼部が別だから、外燃機関なんだ。それに、蒸気機関も高圧蒸気を使わなければならんから、爆発事故が怖いんだよ。」


「なるほどな、天才雅樹をもってしても頭を悩ませる訳だ。」


「まあ、本来ならトライ&エラーを繰り返して、素材を探せば良いんだが、今回はあんまり時間を掛けたくない事もあってな。」


 で、アルシノの疑問の戻る。爆発を伴わない魔法で、回転運動を生み出すとすると、風で風車を回す、水で水車を回す、位しか思いつかないんだけど、どっちもトルクも回転数も足りないし、安定しない。


 カズキがアホな事を言う。

「風力発電とかして、モーターで走らせるとかな。」


「馬鹿野郎。風力で発電って、どんだけデカい風車が必要になんだよ。それに電線も張り巡らさないといけないだろ?」


「そうか、そうだよなぁ。」


「ん?発電、発電かぁ……。風車でか…………。おお!!タービンだ!」


「タービン?どうやって回すんだ?」


「アレだ。飛空船で使っている【爆風ウィンドブラスター】を2、3本付けて、タービンをぶん回して、ギヤで減速してやれば良い。」


「ほほぅ、なるほどな。【爆風ウィンドブラスター】なら実績があるって事か。」


「そうだな。で、先ず作らなければならないのは、ボールベアリング、ニードルベアリング、スパーギヤ、ヘリカルギヤ、ベベルギヤだな。それの試作を、カズキが音頭をとって、ドワーフ3人くらいと一緒にやってくれよ。あと、アルシノは、レールをこれ見ながら試作してみて。」


「マサキ。レールの幅は計算してあるのか?」


「いや、計算なんかしない。1435mmだ。知ってるか?古代ローマの火山灰に埋もれてた、ポンペイって遺跡。あの遺跡の馬車の轍と、新幹線のレールの幅って一緒なんだぜ?2000年前の馬車とな。新幹線で大丈夫なんだから問題なかろ?」


「マジか!?それなら大丈夫そうだな。」


 さて、タービンの形状を考えないとな。楽しくなってきやがった!



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 時は少し遡る。


 マサキが、ローレル屋敷の寝室へ、早々に寝に行ってしまった頃。マサキの嫁達は、カズキを捕まえて、尋問していた。マサキが、俺の全てを知る男だと言ってしまった所為だ。


 向こうの世界にいた頃の話を、あまりしたがらないマサキの話を聞きたくなっても、仕方がないと言うものだろう。


 カズキは、あいつはどんだけ愛されてんだ。と思いながらも、差し支えない範囲で話てやろうと思うのだった。


 そして、みんなが一様に聞きたがったのは、マサキの頭の良さだった。なぜ、あんなにも先を見通せるのか。教育水準の違いとは聞いているけど、何か納得がいかないと言う事だった。


「ああ、教育水準の違いねぇ。確かに、識字率は100%に近いし、この世界と比べたら、雲泥の差があると思うよ。ただねぇ、あいつは自覚してねーんだけどさ。

向こうの世界にいた時でも、あいつは紛うこと無き天才だったと、俺は思ってる。ただ、あいつは色々あり過ぎた所為で、自分を人と比べるとか、自分の実力がどの辺に位置しているとか、全く興味がなくてね。だから、自覚がねーんだ。」


 嫁達は、納得した様な顔をしていたが、シャルロットが珍しく追及を始めた。

「そのあり過ぎた色々と言うのは、お話頂けないのですか?」


「何で、それを聞きたいのか、聞いても良いかい?」


「旦那様は、時々、一人で考え込んでいる事があります。でも、カズキさんが来てから、凄く減ったと思うんです。心が、楽になったんだろうと思ってはいるんですけど、私は役に立てなかったのかなって思って……。」


「あー、そう考えちゃったんだ。何が有ったのか、それを俺の口から全てを話す訳にはいかない。だけどね、あいつはちゃんと君らの事を愛しているよ。、言わないんだよ。知りたければ、あいつに聞けばいい。隠す事はないはずだ。態々、聞かせる様な気分の良い話じゃない、と思ってるだけだと思うぜ。」


「そうですか、ありがとうございます。」


「いいなぁ、あいつ。こんなに愛されてて。まあ、向こうにいた時に受け取れなかった分の幸せだと思えば、腹も立たねーけどな。」


「そんなに酷かったですか?」


「ああ、酷かったねぇ……。あれで、よく正気でいられたと思うよ。」


 メイリーナが言った。

「それは、傍に貴方がいてくれたからだと、彼は言っていたわ。貴方がいたから俺は、まともでいられたと。何度も聞いたわよ?」


「そうだな。あいつは、そう思ってくれるんだよな。俺は俺で、助かっていたんだけどね。困った時は、あいつに言えば、大抵の事は何とかなったしね。」

と、カズキは自嘲気味に笑った。


 カズキは、みんなの顔を見て、頷きながら言った。

「あいつが、1人でこっちに来て、今までやって来られたのは、君達のお陰だよ。それは、間違いない。で、昔から、あいつが頭脳担当で、俺が労働担当だったから、あいつの基準でやりたい事を理解してやれるのは、多分俺だけだろうから、多少楽にはなるんじゃないかな?」


 どうやら、嫁達は納得した様だった。自分達が、要らない子になったんじゃないかと心配していたらしい。


 それから、カズキに聞きたい事がある嫁は、個別に色々話をしたらしい。何しろ人数が人数だ、カズキも災難だったのである。



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 マサキは、嬉々としてタービンの形状や、シャフトの太さ等を考えていたが、絵を描いて試作して。超楽しいじゃん、コレ。と思っていた。そんな時期もありました。


 試作してみると、全然回らない。フィンの形状を工夫しながら、色々試してみるが今一つな感じなのだ。こんな時は、気分転換だと瀬奈を連れて、湖の畔で野外エッチをしながら考えた。


「あー!爆風を抜く穴が無ければ、回る訳ねーじゃねーか!」

と、ハッスルしながら閃いたのだった。


 瀬奈と合体したまま、城地下の工房までダッシュするという暴挙に出たマサキは、涙目の瀬奈を見て、

「あ、スマン。別の意味で興奮しちゃった。ちゃんとするわ。」

と言って、フィニッシュまでちゃんとした。


 そして、前方に爆風を抜く穴を開けたら、今度は穴から噴射した爆風の所為で、マサキに向かって、タービンを入れたユニットさら飛んで来た。壁とユニットに挟まれたマサキは、

「瀬奈。タスケテ……カクッ」

と、なってしまったのである。バチが当たったんだな。


 瀬奈に助け出されたマサキは再び考える。これは、もう1度、気分転換が必要ではないかと。と思って瀬奈を見ると、後ろを向いてスカートを捲り上げようとしながら、もう1回します?と言うので、それを見て再び閃いた。


 スカートに風を送り込むのに、股の間を抜けた風は、スカートを膨らめながら、スカートに沿って、両側から後ろに帰って来る。それを再び股の間に戻してやれば、循環しだすのではないかと。タービンを入れたハウジングの外側に循環路を作って砲筒に循環させれば増速するはずだし、爆風も節約出来る気がする。


 そんな、頭の悪い事を考えていたのだが、ハウジングを作り直さないといけなくなった。だが、やろうと言う事で、ドワーフ達に手伝ってもらいながら、作り直してみた。そして、早速実験。回る回る、これは思った以上に、増速しているし、使用魔力も激減だ。成功と言って良いだろう。うむ、これは使える。だが、ふと思った。どうやって止めるんだと。


 再び考え込むマサキ、そして、お尻を向ける瀬奈。尻を触ると、嬉しそうな瀬奈。離すと不審な顔をする瀬奈。再び触ると嬉しそうな瀬奈。うむ!これはクラッチを付けるべきだろう。


 と、また閃いちゃったので、クラッチの絵を描き始めるが、パワーがありすぎて、車のクラッチ機構は使えないと判断。再び思考に落ちるのである。


 そんな強力なバネはないよなぁ。だけど、飛空船と違って逆噴射なんて使えないしなぁ。頭を悩ませながら、瀬奈を見ると、抱き着いてきたので、おっぱいで窒息しそうになった。巨乳ではないのだけど。そして、また閃いた。


 循環路を塞いでしまえば良いのでは?と考えたマサキは、循環路に蓋をするべく絵を描き始めた。レバーで蓋が閉まる様にして、シャフトにブレーキを付ければ止まるんじゃないかと思うのだ。


 トライ&エラーは楽しいのだ。が、瀬奈は見ていてもつまらないだろうと思うのだが、良いのだろうか。

「瀬奈。見ていても、つまらないだろう?みんなの所に行っていても良いぞ?」


「いえ、上様の顔を見ているのが、楽しいです。難しい顔をしていると思ったら、締まりのない顔になって、パッと明るくなったと思ったら、鼻歌交じりに絵を描き始めますからね。飽きないです。」


「俺の顔って、そんなんなってんだ?」


「考えている事が凄く分かり易いです。今はエッチな事考えてるなとか、お尻触りたいんだな。とか、何か思い付いたなとか。良く分かりますよ?」


「え?そんなバレバレ?」


「バレバレです。可愛いですよ。」


「可愛い瀬奈に、可愛いって言われちゃうと、おっさんショック!」


「そんな上様が大好きですよ?」


「ふむ。もう1回するか?」


「はい!」


 なんて、バカップルプレイを楽しんで、再びドワーフの手を借りて、ユニットに改造を施すのであった。


 結果、かなり良い出来だと言って良いだろう。あとはベアリングとギヤとレールと車輪が出来てくれば、輪郭は見えるな。ただ、1つ問題があった。巨大な魔石が駆動車両1両につき1個欲しいのだけど、手持ちが1つもない。聖域行ったらまずいよなぁ。ワイバーン程度でも良いのだけどなぁ。


 アレ?ワイバーンの魔石って持ってなかったか?あった…けど、1個じゃなぁ。試しに、握り拳大の魔石を3個出してみた。ちょっと足りないなぁと思って、【融合フュージョン】してみたら、出来ちゃった。


 魔石問題が解決しちゃったので、制御プログラムを考えるべく、フローチャートを書き始めるのだった。フローが書けたので、外へ出て、カズキに進捗を聞いてみると、順調との事だった。ボールベアリングを見せてもらったが、抵抗なく回る。良い出来だ。


 あとは、フレームを作っておこうかな。車輪が出来ていれば、取り敢えず形にはなるんだが、さすがに一辺には無理だろう。


 やる事がなくなってしまったので、城の北側を湖も纏めて壁で覆ってしまう事にした。森と湖が内側にあるので、壁があるように見えないが、逆にそれが良い。景観は重要なのだ。露天風呂に入りながら眺める湖も良いものだろう。


 街より壁の規模がデカくなってしまった。面積が湖がある分、凄い事になっている。だから、とても、1日で出来る様な物ではなかった。まあ、車輪や、ギヤも1日で出来る様な物では無さそうだし、ゆっくりやるとしよう。早く実験したくて、うずうずしてはいるのだけど。


 壁を作り終えるのに、3日掛かった。姫達に頼んであった、小中学校も、8区全部に作り終わった様だ。高等学校を2つと、研究施設の為の建物を新たに頼んで措いた。大体の絵を描いてね。


 仲良し同級生と言うのは良いな。色々意見を戦わせながら、良いものを作ってくれる。今のところ、口も手も出すところは殆どない。あ、厨房と保健室は追加しておかなければ。給食制度にするんだい。保健室は、アレだ。エロいだろ?



 そんなアホな事を考えていたら、カズキが一応、一通り出来たと言うので、見に行った。ドワーフってすげーな。品質が機械で作った既製品みたいなんだよなぁ。工作機械もないのに。フライスや旋盤は欲しいもんなぁ、贅沢を言えば、マシニングがあれば最高だが……。


 車輪も鍛造で作ってくれた様だ。さて、車台を作って、車輪と車軸にベアリングを付けていきましょうかね。


 




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