第84話 披露宴会
「はっはっは、おめでとう。そんなに沢山、美人な嫁が居るのに、俺のはいないのか?1人くらい、俺にもいても良いと思わないか?なあ、俺のもナンパして来てくれよ、雅樹。」
マサキは、一瞬何が起こったか解らず、硬直した。そして、エリセーヌ像に目を向けたまま、振り向きもせず答える。
「なぜ、お前がここに居る?」
「待たせたか?」
「待ってねーよ!!もし、死んでしまって、来たとしても、後、30年か40年は、あっただろ?早すぎるだろ!?篠宮一樹。」
マサキは、天を仰ぎ見て、涙を堪える。
「雅樹が、結婚するって言うから、飛ばしてもらったのによ~。ま、辛気臭い話になっちまうから、後にしようぜ。」
「グスッ……ばか…やろ…う。いきなり顔…出してん…じゃねー。」
もう、涙は止められなかった。マサキは振り向くと、足を進めた。段々早くなっていく。一樹も走り寄る。
雅樹は、一樹の胸倉を掴んで泣いた。そして、一樹も涙が止められなかった。頭をぶつけて、一頻り泣いたところで、2人はガッチリと握手した。
「カズキ。お前、死んだのか?」
カズキは、頭を掻きながら言った。
「ああ、小夜ちゃんから、お前が死んだと聞いて、ヒースロー空港から成田行きの飛行機に飛び乗ったんだが……落ちちゃったんだヨ。」
「「はっはっはっはっは!!」」
教会中に響く、大爆笑だった。
嫁達が歩いて近付いてきた。セレスティーナが口を開いた。
「マサキ様?どなたですの?」
マサキは、腹を抱えて泣き笑いをしていたが、呼吸を整えて答えた。
「ヒッヒ。こいつは、向こうの世界の、俺の無二の親友で悪友。そして、俺の全てを知る男だ。篠宮一樹、こちら風に言えば、カズキ・シノミヤだ。」
カズキは、右手を眉毛の上に当て、前に振る様に敬礼した。
「よろしくね。美人ちゃん達。」
「一先ず、屋敷へ行こう。」
そう言うと、マサキはカズキの手首を引いて外へ出た。馬車へカズキを放り込むと、嫁達を1人1人馬車に乗せていった。
屋敷に着いて、馬車から降りて玄関を入ると、リビングのソファへ移動した。桜にお茶の用意だけ頼んで、カズキをソファに座らせた。
「カズキ。俺は、お前に会いたいと思ってはいたが、適わぬ夢だと思っていた。何があった?全て話せ。」
いきなり尋問かよとブツブツ言いながら、カズキは話し出した。
「雅樹が死んだと、小夜ちゃん。お前がいた会社の部下の娘いたろ?あの娘、ずっとお前の事が好きだったんだぞ。朴念仁のフリを決め込みやがって。その小夜ちゃんから、連絡があったんだ。雅樹が死んで、半年以上経っていたと思う。俺も、引っ越しとかしてたから、俺の連絡先を、必死で調べてくれたみたいなんだ。」
「ちょっと待ってくれ。小夜子は、部下だったけど、離婚してから色々面倒も見てくれたし、良い娘だと思っていたよ?だけど、あれから15年近く経っているのに、なんで、俺が死んだ事まで知ってんだ?」
カズキは呆れ顔で言った。
「お前さ~、馬鹿だろ。小夜ちゃんは、お前から、傍に居ちゃいけないって、フラれてからも、ずっと気に掛けていたんだよ。会社を変わってからもな。誰とも付き合わず、結婚もせず。俺にも、時々連絡をくれていた。引っ越しして、メールアドレスが変わるまではな。」
「マジで?」
「大マジだ、馬鹿野郎。あんな良い娘を放っておいて、あんなビッチと結婚なんかしやがって。しかも、そのビッチ事件だって、俺に知らせも寄越さなかったじゃないか。」
「言えば、お前は、離婚してでも帰ってくるだろうが。」
「それはそうだが、嫁さん連れて戻る事だって出来たんだ。水臭せぇじゃねぇか。迷惑だとでも思ったか?」
「まあな。そんな事より、何で、お前がこの世界にいるんだよ。」
「お前が望んだからだ。まあ、俺もだが。」
カズキの話を要約すると、こんな感じだった。
俺の元いた会社の部下だった、小夜子と言う、1番苦しい時に一緒にいてくれた女がいた。その女から、俺が死んだと連絡を受けたカズキは、飛行機に乗ったんだが、墜落して死んでしまったと。
その時に、ガリルの爺ちゃんに、庭園に引っ張られて、「どうせ死んだんじゃ、生き返らせてやるから、マサキの力になってやる気はないか?」と聞かれたんだそうだ。断る事も可能だったらしいが、マサキが生きているのなら、また一緒に馬鹿をやるのも悪くないと快諾したらしい。そして、もうすぐマサキの結婚式があると聞いたので、それに合わせて飛ばしてもらったんだと。
特別な力とかは、もらっていないが、マサキと同じ歳にしてやると言うので、喜んでこっちに来たと。そんな話だった。カズキの話だと、ガリルの爺ちゃんが言うには、本当は、雅樹は小夜子と一緒になる筈だったらしい。が、あのビッチが介入した事で色々変わってしまったんだと。本当とも嘘とも取れる話ではあるが、そういう事らしい。という事しか判らなかった。
「小夜ちゃんも死んだら、本人が望めば連れて来るって、あのガリル神は、言っていたぞ。」
「そうは言っても、小夜子が亡くなる頃には、俺達もいい歳になってそうだがな。」
「時間の流れが違うらしいから、直ぐだと言ってたが?」
「マジで?神様……大丈夫か?」
「もし、小夜ちゃんが望んで来たら、今度は大事にしてやれよ?」
「いやさ、俺もう、38人も嫁いるじゃん。幻滅されるだけだろ。」
「そんな事で折れる様な女ではない。あの意思の強さは、真似出来ないな。」
「そうか……もし、そうなら、大切にする。あの1番苦しい時に、支えてくれた礼も言えていないしな。」
「約束しろよ。」
「ああ、約束だ。」
この後、王侯貴族の披露宴があるけど、一緒に行くか?と聞いたんだが、俺と一緒で、めんどくせーで終わった。なので、工事現場に連れて行き、弥助達に紹介しておいた。披露宴に出ない、嫁達も連れて来た。
「なあ、雅樹。俺達さ、こんな髪で完全に中二病じゃん?そこへ持って来て、お前は、上様って呼ばれてんの?お前は、健さんか!」
「俺も最初は戸惑ったし、恥ずかしかったけど、この世界は、中二病を楽しむ世界なんだと割り切る事にした。楽しいんだぞ、意外とな。」
「そうか、染まってしまえばいいのか。」
「そういう事だ。そもそも弥助達は、戦国の世の名残もあるからな。」
「ああ、そうか、そうだな。」
「だけど、お陰で、味噌も醤油もあるからな、助かってんだ。」
「おお、マジか!」
「じゃ、ちょっと姫達と披露宴してくるわ。適当に遊んでてくれ。」
「あいよ!」
屋敷に戻り、披露宴の支度をして、王城に向かった。14人の姫達を連れてパーティー会場に入ったら、スコットに涙ながらに、おめでとうございます!と言われ、照れるやら、恥ずかしいやら。スコットに、もうすぐ力を借りる事になると伝えておいた。
パーティが始まると、各国首脳から、挨拶攻撃が止まらなかった。帝国からは、レオ親父とルキウス、そしてエリザが来てくれた。シャルロットとリーザロットが若返ったエリザと和解して、仲良く話をしていた。良き哉良き哉。
エクルラートからは、妹のエルフォリアと、ボインメイドさんが来ていた。エルフェリーヌがセベインにいたとか、不思議に思っていたのだが、内緒の移動手段があるとの事。固定の転移魔法陣だと予想している。エルフォリアは、姉様は狡いと言っていた。エルラーナにも何か言っていた様だ。エルフォリアもすげー美人なんだぜ。ハイエルフは狡いと思うのだ。美人かイケメン確定なんだから。城が出来たら、ボインメイドさんは、勧誘しよう。
セレスティーナ、ソルティアーナ、シルティーヌ、メイリーナは、サラビスや王妃達と楽しそうに話をしていた。シリルは、コンスタンがニコニコしているだけなので、母親かな?と話をしていた。その横にいるのは、姉さんか妹かな?
リリアーナは、ステファンとクリスティーナの熱々ぶりに、逆に恥ずかしがっている様だ。弟か妹を楽しみにしておけとか言われていたが、先に出来たらどうすんだ。と思うのだ。産まれた時から、叔父様、叔母様と呼ばれると言う。可哀相な事だ。
ヘカテリーナは、嬉しそうにしながら、両親と話をしていた。パルミナの件は、俺も話をしておかなかったので、聞いて吃驚した様だ。ヘカテリーナがいたから、俺が動いたのだと、説明しているみたいだ。
面白かったのは、マリアとカトリーヌだ。エキセントリックな王妃が、マルキアスにフライングボディーアタックと言うより、浴びせ倒しをしていた。マルキアスは敢え無く倒されていた。その後、カトリーヌと王妃がオッパイ相撲をしていたり、それが、マリアとカトリーヌになっていたり、こいつら大丈夫か?と思ったのは内緒だ。
アルシノは、お母さんのベレニケが来ていた。ベレニケが凄く優しい顔で、良かったね、おめでとうと、言っていたのが、印象的だった。
後は、ひたすら飲んで食ってのつもりだったのだが、何故か、俺の所には、若い女が集まって来て、貰ってクレヨン攻撃が激しかった。結婚披露宴だよね?なのに、逆プロポーズ?意味が分からない。どこの令嬢なんだ?と思っていたら、ヘカテリーナの姉妹だったり、シリルの姉妹だったり、ソルティアーナの同級生で、貴族の令嬢だったりしたみたい。
カズキ用にお持ち帰りしようかと思ったが、不味いよね、と思い直した。あのボインメイドさんは、あげない。まあ、もうすぐ、大和撫子がいっぱい移住して来るはずだ。カズキなら、すぐ物にする事だろう。あいつも30人とか40人とかもらってしまえば良いのだ。
何れも、令嬢と言いうのは美女が多い。だが、結婚式当日に、不倫とかはないだろう、流石に。結婚前提であれば、不倫じゃないとかの屁理屈は、この際無視するとしても、ちょっとどうなんだろう。ただの社交辞令なのか、本気なのかなんだけど、この世界の倫理観で言うと、本気印の気がする。まあ、全員貰ったとしても6人増えるだけだけどね。大分麻痺してんなぁ。普通、王家で6人位だぜ?6人増えるだけとか、どんだけ麻痺してんだって話だな。
しかし、何故か尻は触ってしまうのだ。触ってしまうと責任取ってね。ニコッって話になるので、自動的に嫁になってしまうんだな。だから、触ってはいけないのだ。我慢なのだ。でもね、俺から性欲を取ったら、食欲しかなくなってしまうので、良くないと思うのだ。
そうは思わないか?男性諸君!!
そんな煩悩と必死で戦っていたのだが、宴も
各国首脳は、2日後に送ってくれれば良いとの事で、折角だから、首脳会議を軽くしていく様だ。良い事だろう。
そんな訳で、工事現場に戻ったのだが、外には誰もいなかったので、探していたら、勘治がこっちですと迎えに来た。ついて行ったら、城の中へ入って、温泉へ連れて行かれた。タキシード風の服を脱ぎ、風呂に入ると、湯女の恰好をした、霧と秋世が世話をしてくれ、湯舟に入って上がると、浴衣に着替えさせられた。そして、3階へと案内されたが、そこは、書院造の上段の間がある、大広間だった。
勘治達は、表具屋まで連れて来て、何をしているのかと思ったら、これをやっていた様だ。御簾までついてんだぜ?これじゃ、本当に将軍様になってしまう。座布団の横に脇息まで置いてある。俺の席だけ。
カズキが、首を捻った。
「なあ、こんなのお前が考えたんじゃないよな?」
「ああ、設計図にはなかった筈だ。まあ、好きにさせておいたんだけど……。まあ、いっか。あ、そうだ。嫁達よ、1列に並んでくれ。カズキの所為で渡し忘れた物がある。」
そう言って、結婚指輪をみんなの左手薬指に着けていった。婚約指輪は右手の中指に付け替えて。あーやっと終わったーと思って、宴会か?と聞いたら、そうだと勘治が言い。酒樽が大広間の真ん中に鎮座した。
料理は、霧と秋世と早苗と春、そして咲で全部用意してくれたらしい。そこから始まった大宴会。もうね、初夜どころじゃねー。みんな飲み過ぎてバタバタと倒れていく。しばらくして復活すると、また飲んで倒れていく。こいつら……。楽しすぎる。
カズキも楽しんでいる様で、
「この世界も悪くないな!」
と言っていた。
野球拳をカズキから教わった助成が、咲と始めてしまい。助成が素っ裸になっていたのは、愛嬌だろう。じゃ、俺もと出て行ったカズキは、シルティーヌ付きのメイドさんと野球拳を始めたのだが、沢山着ているメイドさんに勝てる訳がないのだ。だって、カズキは温泉に入った為、浴衣とパンツしか着ていないのだ。敢え無く、素っ裸になったカズキは、そのまま寝てしまった。丸出しで。
カズキを屋敷の客間に運び、嫁達も屋敷に返して、サーシャを頂いた。パイオツカイデーなので、色々楽しんだ。サーシャも元は貴族の令嬢だからな。良い物を持っていらっしゃる。
その後は、セシルを頂き、アルシノを頂いて、初夜は終了だ。酔っぱらってしていたので、自分の部屋に帰ったつもりが、セレスティーナの部屋だった様だ。そのまま寝たつもりだったのだが、後で聞いたら、猛獣の様にしてからパッタリと寝たらしい。
翌朝は、起きるのもだりー状態だったので、アルコールを魔法で抜いて、温泉に入るのだった。湯舟に入ってゆっくりしていたら、シャルロットの部屋に拉致されていった。お前達、今日は卒業式だろうに。
どうやら、彼女達も初夜が欲しかった様で、初めてっぽく念入りにしていった。流石に、全員と丁寧にやっていくと、1日やそこらでは、終わらないので、3日くらい爛れた生活をしていた。
途中、卒業式があったり、各国首脳を返したり、現場の指示をしたりと、忙しい事この上ないのだけど、カズキが来た分だけ、少し楽になった。しかし、カズキの話は本当なんだろうか……。
『エリセーヌ。』
『はい。マサキさん。』
『カズキの事なんだけど、飛行機が落ちたって本当??』
『ええ、本当です。』
『でも、どうしてこっちの世界に来たの?』
『マサキさんが、会いたがっていたからですよ。だから、創造神様が丁度良いと言って、連れて来たのです。カズキさんも言っていましたよ。あいつの隣には俺がいないと始まらないだろ。と。』
『正直に言うと、混乱している。会いたかったけど、その為に殺されたりしてないよね?』
『そんな事は許されませんので、していませんよ。』
『そうか。ガリルの爺ちゃんに頼まれていた、保養地がもうすぐ出来あがるんだけど、エリセーヌも来られる?』
『はい。行けます。楽しみにしています。』
『俺も、エリセーヌに会えるのを楽しみにしている。後さ、この世界の文明って、どこまで進めちゃって良いの?』
『その判断は、マサキさんがして下さって結構です。』
『そうか……。解った。完成したら知らせる。』
『はい。待っています。』
どうやら、カズキの話は本当の様だ。あいつの家も作ってやらないとなぁ。でも、先に弥助の祝言だな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます