第83話 結婚式

 結婚式の日取りが決まった。2月の最終日、なんと言うか、卒業式の前日だ。とは言え、もう1週間もないのだ。若干フライング気味ではあるものの、丁度良いと言えば、丁度良い。卒業式が終わったら、扱き使ってやるのだ。城と街が完成したら、明るい家族計画だな。一斉に妊娠しても困るのだ。みんな子供って欲しいのかなぁ…。俺は、居なくても良いのだけどな。義務感で欲しい訳じゃないんだろうなぁ。


 だって、子供が出来たら、嫁さん取られちゃうじゃないか。と思うのは、俺だけなんだろうか。希望する嫁さんを順番にって感じかな。まあ、セレスティーナは子供が出来たら、落ち着くような気はする。そういう一面もあるのだろうな。


 シャルロットも欲しいのかなぁ、欲しいのだろうなぁ。セリアは、なんとなくだけど、俺と一緒なら、特に要らないとか言いそう。養育係がいないと無理だよね、これ。乳母とか募集するべき?あれ、今から何を考えているんだ。先の事を考えすぎてブルーになるのが、最近の悪い癖なのだ。先ずは、結婚を喜ぼうぜ。と思うのだけど、何故か、ああなってしまうのだ。これが、マリッジブルーなのか?違うわな。結婚はしたいんだし。


 まあ、先ずは、結婚式をパパっと済ませて、初夜だな。まだ手が付いていない嫁、愛人が3人いるのだ。アルシノ、セシル、サーシャだ。サーシャは結局、1度だけでも良いから抱いて欲しいと懇願されて、妻にする事にしたのだ。だが、まだ手は付けていない。セシルもマリアの調子が悪い時だけでも良いから、抱いて欲しいと言われ、以下同文。


 アルシノは、ドワーフだから嫌とかはなくて、背が小さい以外は普通の人間だしな。寿命は違うらしいけど。ただ、完全に美少女ロリ巨乳なので、俺の中の背徳感さんが、『ちーす』と顔を出しただけなのだ。良いケツしてんだ、マジで。俺の中のケツNo.1は、セリア。セリア→メアリー→アルシノ→セレスティーナ=シャルロット=桜な感じ。


 パイオツカイデー具合で言うと、カトリーヌがぶっちぎりのGカップ、以下、シャルロット→サーシャ→マリア→セレスティーナ=ソルティアーナ=シルティーヌな感じ。3姉妹のおっぱいは張りは違うが、大きさだけなら、みんな一緒くらい。


 均整がとれていて、シルエットが美しいのが、リリアーナ=静=エルフェリーヌ→エルラーナ→桜→シリルな感じかなぁ。まあ、みんなスタイルが良くて美人だから、贅沢ランキングなのだけどね。全体的に小ぶりだけど、瀬奈と弥生が可愛くてお気に入りなんだ。


 エロさランキングは、案外面白いと思う。1番エロいのは、メイリーナ。なんか、どんどんエスカレートしていいくんだけど、本人も止められないらしい。それから、セレスティーナ=リーザロット→カトリーヌ→マリア=リリアーナな感じ。リリアーナは、何かに目覚めてしまった模様。面白いかと思ったが、案外鉄板だった。


 セレスティーナは見ているだけで、発情してしまう。ある意味危険な女なのだ。だから、あまり人に見せたくいないのだ。セレスティーナを女にしてから、女っぽさに磨きが掛かってしまい、目立つし、男性陣は前屈みになってしまうのだ。そういう事に気が付かないので、怖いのだ。


 もう6日しかないので、準備とか色々考えなくてはいけないんだけど、どうも頭が回らない、取り敢えず、各国王家に報告に行かないとね。時差があるから、前日に迎えに行く感じがベストなんだろう。


 結婚式って、相手が1人でも、めっちゃ面倒だったのに、王族・貴族だけで14人だからなぁ。面倒臭くても仕方ないのかも知れない。まあ、ご祝儀などの風習は無い様なので、引き出物もいらないし、そういう意味では楽なんだけど、なんか見世物にされるのも、するものなんかね……。




 考えていても仕方ないと、各国王家に報告に行った。みんな一様に、めでたいと言ってくれた。結婚式には参加するよ、とも。そして、工事現場に赴き、弥助以下全員に式が決まった旨を伝えると、みんなが一斉に喜んでくれた。やっぱ、こいつらといるのが、1番楽しいと思う。


 エルスの教会と王城でする結婚式には、彼らも興味がないようで、現場の方で、宴会を考えておきますとは、勘治の言葉。盛大にやりましょうと、俺達より盛り上がっていた。弥助の祝言もやってやらないとな。


 全員分のドレスをミリアに頼んで措いた。自分の分も忘れるなよ、と。6日しかないけどナー。ミリアの親父が、気合でなんとかするだろう。スマン。もっと早く用意しておくべきだった。考えるんだけど、行動に移せていないんだよな。


 どうも霧の様子がおかしい。しかも機嫌が悪い。これは、触れてはいけない奴だと、俺の中の昼ドラさんが警鐘を鳴らすので、気付かないフリをして、準備を進める事にした。指輪の追加分を作っていないのだ。これも、面倒臭くなっちゃったので、ただのミスリルリングに意匠を凝らして、恰好を付けようと思う。もう、オリハルコンなんてないのだ。ん?ドワーフって持ってないんだろうか?


 アルシノのケツを捕まえて、聞いてみた。

「ドワーフってオリハルコンなんて持ってないか?」


「オリハルコン鉱石なら、洞窟にありますよ。加工出来ないので、余っているんですよ。」


「加工出来ない?何故?」


「熱を入れて叩いても、変形しないんですよ。」


「ほぅ、少し分けてくれないか?」


「構いませんよ。じゃ、行きましょう。」

 そう言って、転移魔法陣に手を引かれて入って行った。




 見せてもらったオリハルコン鉱石は、純度はそこそこ、大きさもそこそこの中々手に入らなそうな物だった。

「これ、もらっちゃって良い?」


「ええ、良いですよ。何に使うんですか?」


「結婚指輪だぞ。」


「え?私達のです?」


「他に誰が?」


「え?どうやって加工するのですか?」


「魔法だよ。」


「作るところを見ていても良いですか?」


「まあ、別に構わないが、面白いもんじゃないぞ?」


 現場に戻って、簡易工房の机で作業した。オリハルコン鉱石を【精錬スメルティング】して、純粋なオリハルコンを取り出した。結構な量があったが、前に作った奴と同じデザインにするので、少し切り出して、異空間に仕舞った。


 異空間から、ミスリルのインゴットと魔石の粉を取り出して、オリハルコンと【融合フュージョン】させて、【形成フォーム】で指輪にしていった。前と同じ様に、ミスリルリングにオリハルコンの線を螺旋状に走らせたデザインだ。これを、22個追加した。40個もあれば足りるだろう。


 前に作った、20個の中には、弥助と霧の分もあるので、一応、自分の妻用に40個用意した形だ。あ、忘れてた。極小の魔法陣と、1人1人の名前を刻んでおかなければ。誰のがあって、誰のがないのか、もう覚えてないから大変なのだ。当初は、もっと早く結婚する予定だったからね。


 その様子を見ていたアルシノは、凄い凄いと言っていた。何が凄いのかと言うと、オリハルコンは、そもそも加工するのに、何が必要なのか解っていない上に、他の金属と合わせて合金にする等、考えられないと言っていた。もしかしたら、魔法専用の金属なのかもしれないな。だって、そんなに難しくなかったんだもん。


 あれ?俺のギルドカードって、アダマンタイトにオリハルコンの縁取りだよなぁ。どうやってんだろ。今度、エルラーナに聞いてみよう。




 結婚式が近いと、俺だけでなく、女性陣もソワソワしている様だ。まあ、そりゃそうか。何事も無ければ良いが……。

 俺も、気持ちが浮ついているのだろうか。最近は、昔の事をよく思い出す。


 両親は、腕の良い、板金屋と呼ばれる建築関係の職人だった親父と、看護師をしていた母親。親父の食道楽に、苦労もあったと思うのだが、家族3人で普通に生活出来ていたし、子煩悩な親父という事もあって、幸せだったんだと思う。


 高校生の頃だった。仲の良い友達と街中で遊んでいた頃など、よく言っていた。


「なあ、世の中には、こんなに女がいっぱい居るのに、なんで俺のは、いないんだろうな?」


「な!おかしいよな!雅樹、お前ちょっとナンパして来いヨ。」


「おう、任せろ!」


 これが、いつものやり取りだった。ナンパの成功率など高い訳もなく、偶に「ご飯くらいならいいよ。」なんて、言われた時には、何か騙されているんじゃないだろうか。とか、疑ったりしたものだ。それが、今やどうだ。『俺の』がいっぱい居るんだ。感謝しなければならないだろうな。


 だが、そんな高校生活に影が差す。高校3年も終わりに近づいた頃、大雑把な職人の親父が、ヤクザな詐欺師に騙され、借金を背負わされた挙句、母親をヤクザに連れ去られ、暴行されて殺害された。怒った親父は、ヤクザと刺し違えてでも、仇を取る事を選び、そして、命を落とした。


 マサキは、思う。愛する妻を殺されて、黙っている事など、出来る訳がないと。親父のした事は、褒められはしないだろうが、別に褒められたくて刺し違えた訳ではない。例え、親父が生き残って、逮捕されたとしても、俺はきっと思っただろう。筋が通っていれば、良いじゃないか、と。


 きっと、批判されるだろうし、非難されるだろう。殺されたから、殺した奴を殺して何が悪い?と思う人もいれば、法治国家なんだから、警察に任せるべき。と言う人もいるだろう。普通は、後者が正解だし、理性を総動員して、そうするのだろうと思う。だが、前者を選んだとしても、別に、俺は良いんじゃないかと思うのだ。自分も殺されてしまう覚悟があれば。責任を取る覚悟があるのであれば。


 今でも、その考えは変わらない。だが、当時は、色々言われたな。親父も母親ももういないのに、態々、俺に言いに来るんだ。「あんな事しちゃいけないんだ。」とね。全然関係のない評論家を名乗る第三者が、自分こそが正しいと言う顔でね。俺は、いつも黙って聞いていた。言いたい事を言わせていた。そして、いつも最後にこう言ったんだ。


「満足したか?俺は、親父でも御袋でもない。俺は、別に復讐もしていないし、今から何かをしようとも思わない。親父と俺は、別の人間だから、価値観も違う。お前は、頼んでもいないのに、俺に親父の悪口を言いに来ただけだ。評論家ってのは、良い商売なんだな。弱者を叩いて金になるんだろ?俺から見たら、お前達の方が、余程、醜いけどな。人を食い物にするハイエナなんだろ?」


 こう言うと、いつもバツが悪そうに帰って行く大人達。結局、人を貶めて、差別して優越感を感じる事が、大好きなんだろう。人間と言うのは、醜い物なんだなと思っていた。だが、その頃、俺は友人に救われた。母親が、お金を残しておいてくれたお陰で、1人暮らしをしながら、大学まで卒業が出来た。レーシングカートは無理だったが、剣術は、大学卒業まで続けられた。


 その間、ナンパだ云々言っていた仲の良い友達が、常に傍にいてくれた。何も言わないで、ただそこに。お陰で料理だけは、上手くなったな。ただ居るだけなのに、腹が減っただ、あれが食いたい、これが食いたいと我儘を言うからだ。


 人間不信の俺が、結婚すると言った時、本当に自分の事の様に喜んでくれた。そいつは、俺がずっと心に闇を抱えている事を、良く分かっていた。だから、俺が結婚すると言った時、

「そうか、やっと俺の役目も終わりだな。俺も海外行って、結婚するわ。」

と、ファンキーな事を言い出した。


 どうも、外人の女と付き合っていたらしいのだが、俺が目を離せないからと、結婚を諦めようと思っていたらしい。日本人ならしてたんだけどな、と寂しそうに言っていたのを、よく覚えている。本当にヤツには感謝しかなかった、ヤツと過ごした日々が、俺をまともでいさせてくれたと、今でも思う。


 そして、俺の結婚がどんなものであったかは、周知の通りなのだが、そんな事をヤツに言えば、離婚してでも帰って来そうな気がして、言えなかった。そして、俺はロクデナシな人生を歩む事になったのだ。


 異世界に来ても、未だに思う事が1つだけある。ヤツに会いたいなあと。適わない夢ではあるけれど、美女に囲まれて楽しく過ごしている、今の俺を見せてやりたいと切に思うのである。きっと、諸手を挙げて喜んでくれるはずだから。ヤツも幸せに人生を歩んでいてくれたら、これ以上の喜びはない。心から、そう願うマサキだった。


 感傷に浸ってしまったが、色々時間がない。淡々と準備を進める中で、ふと、自分と言う者。本来の俺を、解ってもらう必要があるのではないかと、思ったりしたのだが、こんな話、聞きたい奴はいないわな。と、考えに蓋をしたのである。




 モーレツな勢いで準備を進め、結婚式の2日前となった。ミリアの親父は、何を思ったか、どうやったのか、既にドレスが出来上がって来ていた。嫁ズ達は、試着して色々チェックした様だ。が、品質も問題なく、サイズもピッタリとの事で、満足している様だ。どんな手品を使ったのか、聞いてみたかった。


 その答えは、ミリアとオリビアが持っていた。元々サイズは、採寸を済ませてあって、仮縫いまでしてあったそうだ。足りなかった、アルシノの分だけは、最初からだったらしいが、忙しいマサキの事だから、きっと、突然言い出すに違いないと予想していたらしい。ミリアも先を見れる娘だったみたい、舐めてたわ。


 翌日は、朝から各国へ家族を迎えに行った。パルミナ王国は、無事にチュゴセンの領土を併合したと報告があった。アルジャーノとトマスと奥方2人を連れて仲良く来ていた。


 カステールは、王妃と初対面だったが、姉妹の性格からして、もしかして…とは思っていたのだ。しかし、予想に違わず、エキセントリックな王妃だった。


 ラーメリアは、ステファンと王妃のクリスティーナの熱々ぶりが、ちょっとイッちゃっていて、こっちが恥ずかしくなる程、ベタベタだった。ヘンリーが頭を抱えていた。ヘンリーは、正妻だけを連れて来た様だ。


 この日は、エルスロームの王城に宿泊してもらい、サラビスも何か話したいのであれば、すれば良いと思っていた。そんな事をして、翌日の結婚式当日を迎えた。


 今日は、屋敷には俺と嫁ズしかいない。みんな現場の方で何かやっている様だ。まあ、それでも俺を含めて39人もいるのだ。減った気がしない。


 タキシードの様な白い服を着たマサキと、色とりどりのドレスを着た嫁ズ達が、何台もの馬車にゾロゾロと乗っていく。民衆の注目を集めているが、今日くらいは良いだろう。気にしたところで、俺の嫁達は、美人過ぎて目立つのだ。


 教会に向かい馬車を走らせ、僅か10分程度の旅は終わりを告げた。教会内部に入って行き、エリセーヌ像の前にみんな並んだ。


 マサキを中心として、左にセレスティーナ、エルフェリーヌ、マリア、カトリーヌ、ソルティアーナ、シルティーヌ、メイリーナ、セリア、マーガレット、セシル、桜、椿、ミレーナ、ルミエール、ユイ、緑、藍、紫乃、サーシャ。


 右にシャルロット、リリアーナ、ヘカテリーナ、アルシノ、シリル、エルラーナ、ユリアナ、リーザロット、静、メアリー、ヘルミナ、ミリア、オリビア、皐月、弥生、睦月、瀬奈、沙織、奈緒。マサキと総勢38名の妻が並んだ。


 妻達が、セレスティーナを先頭に1人1人が、エリセーヌ像に、誓いを立てている。「生涯、マサキ様に寄り添い、身も心も捧げます。」と言っているらしい。そう言えば、こっちの結婚の誓いって知らなかったんだよねぇ……。


 誓いを終えた嫁の頭上から、金色の粒子が頭に降り注いでいる。どうやらこれが、加護らしい。でもさ、加護って有難がってるけど、何んなの?後で聞いてみようかな。なんて、考えていたら、教会には誰も来ないはずなのに、後ろから声が聞こえた。




「はっはっは、おめでとう。そんなに沢山、美人な嫁が居るのに、俺のはいないのか?1人くらい、俺にもいても良いと思わないか?なあ、俺のもナンパして来てくれよ、雅樹。」








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