第81話 ドワーフ
鉄筋を全面分作るのが、果てしなく面倒だったので、ここは、ドワーフの力を借りるべく、拉致しに行こうと思うのだ。ノーミードの奴が、俺しか抱っこしないと言いやがったので、飛空船で行く事にした。
山脈を越えて、赤龍の火山を通り過ぎて、更に北に行くとハゲ山があった。そこに穴を掘って住んでいると言うのだが、降りれるのか?ここ。
ゆっくりと下降していき、山間の平な所に着陸出来た。
「ミー。どこだ?」
「主様、こっち。」
そう言って、ノーミードは、マサキを正面から抱いて、飛んだ。良く分かっていらっしゃる。柔らかい双丘に顔を埋めて。
麓から、それ程高くない場所に、普通に歩くと天井に、頭が当たるか当たらないかの高さの、穴が開いていた。その入口に立つと、ノーミードの案内で中へと足を進めた。外からの見た目は、ただの洞穴な訳だけど、中は凄かったね。
中に入って、少し進むと、扉があった。そこを開けて中に入ると、穴ではなく、白壁の廊下と言う感じだった。壁を触って見ると、大理石の様にツルツルとした感触だった。これ良いなぁ。洞穴に見合わない清潔感、ドワーフって綺麗好きだったりするんだろうか。だが……、これ酸欠にならないか?
ノーミードについて歩いて行くと、両側に扉のついた部屋が出て来た。それを無視して進んで行くと、かなり広く天井の高い工房らしき場所があり、その更に奥には、鍛冶場らしき場所があった。そこに幾つか、出来たばかりの剣やガラス製品が置いてあるのが、見えた。それに近付いて見ると、剣は流石に良い物だと思ったが、ガラスの像の様な物が、精巧で恰好良い物だった。
(ドワーフってガラスも得意なのか?爺ちゃんは、そんな事言ってなかったなぁ。)
しかし、肝心のドワーフがいない。
「ミー、どこにいるんだ?」
「恥ずかしがり屋だから、隠れてる。待っていれば良い、すぐ来ると思う。」
そんなノーミードの言葉と、同時位に、野太い声が聞こえた。
「よく来たな。人間の若者よ、歓迎する。ワシが、ドワーフの王、ドルンじゃ。」
ドルンと名乗った男は、150cm位で、髪の毛と髭の境目が分からない程毛むくじゃらだった。その横には、綺麗なのか、可愛いのか良く分からない女の子が立って居た。やはり、145cmあるかないかだろう。だが!おっぱいと尻は主張するねぇ、と言う感じなのだ。流石に女の子に髭は、なかったよ。
「ドワーフ王?ほう、王がいるのか。俺は、Sランク冒険者主席マサキ・タチバナと言うのだが、冒険者っても分からんか?」
「分かるぞ。昔は、ドワーフにも冒険者はおったからの。」
「ほほぅ、それは興味深い。少し、話をしたいが時間は取ってもらえるか?」
「精霊様の思し召しじゃ、大丈夫じゃよ。こっちへ来い。」
そう言って、ドルンは自室だろうか、部屋に案内してくれた。ソファがあったが、革張りで中身は分からないが、柔らかくて質が凄く良かった。
「このソファ、すげーな。質が凄く良い。体が沈むとか久しぶりの感覚だ。」
「久しぶり?と言ったか?」
ドルンは、目を剥いた。
「ああ、言ったよ。」
「このソファは、苦心して作り出した物だ。他にあると思えんのだが、人間が作ったと言うのか?」
「ああ、そういう事か。心配するな、この世界の人間にそこまでの、知恵も技術もないさ。俺は、異世界人なんだ。」
「なんだと!じゃ、この世界にない、もっと凄い物を知っていたりするのか?」
「当然だ。今日は、それらを作るのに、是非、ドワーフの力を借りたいと思って、話をしに来た。」
「是非、聞かせてもらおう。」
マサキは、山の向こうに新しい、人種、種族差別のない国を造ろうとしている事や、現在、築城中で、街も作っている事。水道を通したい事、それらの実現に手を貸して欲しい事。そして、魔導的な鉄道を敷設したい話などをしていったら、案の定食いついた。
「そんな事を考えているのか!?」
「ああ、原理や思想は頭にあるんだが、こちらの人間では、知識と技術が足りない。かと言って1人で出来る訳もないからな。だから、ドワーフの手を借りに来た。お前達の技術を俺に貸してくれ。まあ、最初は地味な仕事になってしまうがな。それでも、鉄とガラスが扱えるなら、助かる。それに、開坑していない鉱山もあるんだ。」
「なんと!ワシが行きたい程、魅力的な話よなぁ……。」
女の子が口を開いた。
「私は、ドルンの孫でアルシノと申します。20歳です。宜しくお願いします。」
と、一礼した後、
「お爺様。私が行っては行けませんか?若手を5、6人連れて。」
と言った。
ドルンは渋った。
「アルシノ、其方が行かなくても、よかろ?」
「いいえ、お爺様。この方は、土の大精霊様の主様ですよ。私、お嫁にもらって頂きます。」
と、とんでもない事を言い出した。
「何?そのトンデモ理論。力は貸して欲しいが、嫁をくれとは、言ってないはずだがなぁ……?その、おっぱいとケツは魅力的だが!」
ドルンは、悩んでいる様だ。
「しかしなぁ……。」
「良いではありませんか。アルシノが、自分からお嫁に行きたい等と言うなんて、考えられない事ですよ。どういう心境の変化なのかしら?」
アルシノは顔を赤くして呟いた。
「お母様……。一目……で…恰好良いと…。」
「あら、一目惚れ?」
「は……い。」
「あらあら。私は、アルシノの母で、ベレニケと申します。娘を、宜しくお願いします。」
「随分、簡単なんだな。」
ベレニケは笑いながら言う。
「難しく考えたって、良い事などありません。どう考えても、乗る以外の選択肢は、ないのですから。我々ドワーフとしても、貴方様の知識と技術を勉強させて頂きたいのですよ。外にある空飛ぶ船は、貴方様がお造りになったのでしょう?」
「まあな。」
ドルンが、目を剥いて怒鳴った。
「何!?空飛ぶ船じゃと!!」
ベレニケは呆れ顔だ。
「お父様、今更、何を仰っているのかしら?では、この方はどうやって、ここ迄来たと思っていたのですか?」
「なるほどのぅ……。これは、ドワーフにとっても好機なのだな。差別のない国と言ったが、相違ないか?」
「ああ、その為に国を造ろうと思ったんだしな。現在、俺には嫁と愛人合わて37人いるんだがな、エルフの女王、王女、皇女から服屋の姉ちゃん、くノ一まで多彩だぞ。それに、差別ってのは、所詮、人間の専売特許みたいな物だし、入国審査は厳しくするつもりだよ。」
「エルフの女王?そこまでか。」
「ああ、女王とその妹がいる。」
「分かった。全面協力しよう。何人行かせようか……。」
「ああ、全面協力してくれるんだったら、暇な奴が、手を貸してくれる感じで良いさ。転移魔法陣を作っていくから、毎日通いでも良いぞ。まだ、工房も出来ていないから、加工はこっちでしたいだろうしね。炉もないし。」
ベレニケが笑顔で言う。
「まあ!私も行けますね。」
「ああ、遊びに来るだけでも構わないぞ。それでだ、ちょっと急いで欲しい仕事があるんだが、頼めるか?」
ドルンが頷く。
「ああ、構わない。」
「ドワーフが鉄の事をどこまで理解しているか、分からないから聞くんだが、鉄と鋼の違いは解るか?」
「鉄は鉄、鋼は鋼じゃろ?」
「ああ、そうか、自然に出来るに任せているんだな?」
マサキは、異空間から鉄と炭素を取り出した。
「これは、純鉄のインゴットなんだけどな、このインゴットは2Kgあるが、これにこの炭素って言うんだが、40g以下を混ぜると、鋼になる。で、炭素の量で硬さが変わる、硬さを出すと、粘りがなくなる。つまり折れやすくなるんだ。その加減を目的によって変えるんだ。純粋な鉄は非常に脆いから、あんまり使えないんだけど、炭素の量を任意で決めたいから、純鉄が必要になるんだ。」
アルシノは、メモ?なのか書いている。
「で、急ぎの仕事と言うのは、この鉄2Kgに対して、炭素を20g混ぜた鋼で、鉄筋と言うんだが……。」
と、言いながら、紙に絵を描いて説明した。
「これを大量に作って欲しいんだ。」
ドルンは唸る。
「これを建物の外壁に使うと言うのか?」
「ああ、これを、網の目状にコンクリートの中に入れるんだ。そうすると1000年経っても大丈夫な建物が出来る。」
「承知した。鉱山を開く要因もいるだろうし、20人位連れて行くと良い。製作はこちらで引き受けよう。」
「おお、感謝する。魔法陣を描いても良い場所はあるか?みんなが出入りして良い場所だが。」
「アルシノ、案内してあげなさい。」
「はい。お爺様。」
アルシノは、マサキを案内してくれた。迷路の様な、洞窟の中だが、普通の廊下に見える。だが、これは迷う。出られる自信がない。案内された部屋は、どうやら入口近くの一室の様だ。
そこにマサキは、魔石の粉とインクを取り出すと、転移魔法陣を床に描いていった。いつもより大きい、直径6mの魔法陣を描いた。作った物を運べるように。中の文字は、普通に古代文字を使った。そして、横に『9番』と日本語で書いた。乾くのを待って、魔力を流し込むと、魔法陣が光り出し、文字が回転を始めた。よし、と独りごちると、アルシノに言った。
「アルシノ。俺の嫁になるか?」
「はい。末永く、よろしくお願いします。」
「そうか、嫁が沢山いて申し訳ないが、よろしくな。」
マサキとしても、ドワーフとは仲良くしたいので、断ると言う選択肢はないのだ。可愛いし、良いケツをしているのだ。問題ない。
元の部屋に戻ると、男女合わせて20名のドワーフが待機していた。
「こんなに来てくれるのか?もの凄く助かるんだけど。」
「おう、良い勉強になるじゃろて。」
「じゃ、行こうか。アルシノも来るか?」
「はい。」
と、アルシノが嬉しそうに返事をした。
外へ出るまで苦労したが、ドワーフ達が案内してくれた。ドルンには礼だと言って、蒸留酒を1樽置いてきた。滅茶苦茶喜んでいた。やっぱり、ドワーフは酒好きなのな。
外へ出ると、山を下り飛空船まで来ると階段を降ろした。全員乗り込んだのを確認して、階段を上げて、操舵室に入った。魔力を流して起動し、上昇を始めると歓声が上がった。ゆっくりと前進を始めて、山脈を越えると湖が見えた。
大浴場の近くに、船を降ろすと、一応、温泉とか仮設だけどと前置きして、施設を説明していった。特に、温泉には興味があった様なので、入ってみるか?と聞いたら入りたいと言うので、入らせた。これで酒が更に美味くなると、斜め上な喜び方をしていたが、凄く嬉しそうだったので、良しとしよう。もう、帰らねぇと言い出す奴もいた。
築城中の城に案内して、この外壁に鉄筋を使うんだと、説明したら、真剣な顔で寸法を測って良いか?と言うので、頼むと言っておいた。寸法を測りに行った奴を除いて、男女4人のドワーフを捕まえて、水道管の構想を紙に書いて説明していった。鉄でパイプを作ると言う発想は無かった様で、俺達はこれをやりたいと言うので、そっちも頼むと言って措いた。ネジの部分に興味があった様で、タップとダイスを絵に描いて説明してやった。作ってみる、と嬉しそうに言っていた。
ドワーフと言うのは、本当に物作りが好きなんだな。鍛冶屋しかいないと思っていたら、何にでも興味を持って、何でも作ってみたいと言う。実は革細工や織物も得意なんだそうだぞ。夢が広がっちゃうじゃないか!ドワーフもエルフも移民を募集せねば。
ドワーフとエルフは仲が悪い。と言う話が頭にあったので、聞いてみた。そうしたら、逆だと言われた。エルフとドワーフはめっちゃ仲良しだったぜ。エクルラートには、それなりにドワーフの鍛冶屋がいるんだそうだ。エルスロームには、1人か2人みたいだけどね。
夕方になったので、親睦会をしようとみんなで風呂に入って、野外で宴会しようぜと言う話になった。男風呂に、弥助や勘治、治吉、三郎、三次に表具屋の辰に瓦職人の権蔵、左官の達三とそれぞれの弟子達。それに、ドワーフの男性14人と一緒に入ったんだが、勘治達職人とドワーフ達は、もうめっちゃ仲良くなっていた。羨ましい。これは、明日は仕事にならないに1リルだな。
だって、ドワーフと超仲良しになって、宴会だぜ?無事な奴がいるとは思えないだろ?もう既に、ゲロと嗚咽のハーモニーが聞こえる様だぜ。だが、それでイイ。ドワーフってもっと気難しいのかと思っていたら、凄くシャイなんだけど、気の良い奴ばっかりだったさ。
風呂から上がって、魔法で作ったテーブルと椅子を用意して、脇に酒樽を3個積んでやった。霧とか桜とか、くノ一達には、料理で苦労を掛けるが許してもらおう。マサキも鉄板を出して、迷宮肉をガンガン焼いた。食いながら焼き、飲みながら焼き、途中、助成に代わると言われた。が、気分が良かったので、お前は、咲とイチャコラしてろと、言って代わらなかった。
だが、予想通り、そこら中から嗚咽が聞こえて来た。明日は、仕事にならない事だろう。ドワーフ以外は。築城は、勘治とドワーフに任せちゃっても良いかもなぁ。コンクリートも教えたら、すぐ出来てたし。細かい設備を俺がやれば良いだろう。あ、バイブレーターを作らねば!エッチなのじゃないぞ。コンクリートの密度を上げる為の道具だからな!船の発着場は、太い鉄筋を張り巡らせて、バイブレータで充填して丈夫にしておかないと、へこんでくるからな。
もうね、地面に屍が沢山転がっていた。地面で寝るなよ……。ドワーフも地面で寝てるし。これはこれで、楽しいんだけどさ、風邪引くぞ。今を何月だと思ってんだ、こいつらは。暫くしたら、温泉に放り込んでおこう。
付き合いきれない女達は、既に寝ていた。俺も、温泉に放り込んだら、船長室で寝よう。そう思い、男達とドワーフの男を温泉に放り込んでおいた。死にはしないだろう。外に置いたままの方が危ないしね。
船長室に上がり、ベッドに入って寝ようと思ったら、誰かが布団の中にいる。これは、相手にしたら負けな奴ではないだろうか?と、思ったら、普通に桜だった。霧かと思って警戒してしまった。桜だったら、落ち着いて寝られるので、抱き枕にして寝た。勿論、桜のくノ一サービス付きだがな。
明日の朝が怖いが、心配するだけ無駄だろう。なる様になるしかないのだ。しかし、これで、街づくりの人材は揃った、後は資材だけだな。先が見えて来ただけ、マサキの心は軽かった。しかし、大きい方の川に堤防を作って、引き込み川を作って浄水場を作らねばと、また新しい課題が思い起こされ、まだまだ、やる事はいっぱいかぁと思って、ゲンナリするのである。
こいつが、忙しくなくなる時は、来るのだろうか。来ないよね、きっと。
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