第79話 水道の道険し

 そして迎えた大晦日。まあ、特にアレコレある訳ではないのだし、年が明けても、初詣とか年始回りとかある訳でもないので、弥助と酒を飲んでいるだけなのだが、そこに勘治と治吉と三郎、三次にケネス、マルカムを混ぜて、『男だらけの酒大会、ポロリはいらねーよ!』の開催中だ。


 昼間っからと言うより朝からの酒盛り、俺がやるぞと言ったのでなければ、奥さんにぶっ飛ばされていると感謝された。偶には羽目を外したい、そんな事も思っていたそうだ。外せば良いじゃないかと思うのは、俺だけなんだそうだ。所詮、俺はロクデナシだし、みんな諦めてくれているのだろう。


 桜と霧がつまみを用意してくれるので、馬鹿話をしながら、ダラダラ飲み流し飲んでいたら、相当に酔っぱらってしまった様だ。自分に、【浄化ピュリフィケーション】【回復リカバリー】を掛けて、また飲み始めた。それをチラッと目にした霧に怒られた。


「上様?魔法を使って迄飲まなくても、酔ったらお止めになって下さい。お酒は逃げませんよ。」


「はいはい。承知、承知。」


「上様!!」


「はーい。」


 そして、また泥酔するまで飲んで、昼寝をしたのである。なんか俺の場合、嫁ズより、霧の方が嫁っぽい。泥酔して寝ていたので、寝ている間に誰かとヤッた気がしたが、気のせいか。泥酔してたら、役に立たない筈。桜が様子を見に来たので、ベッドの中に引っ張り込んだ。桜の良い匂いを堪能して、ヤリ納めをした。


 姫初めの人選に困るなぁと、頭の悪い事を考えていたら、衝撃的な事を桜に言われた。寝ている間、霧ちゃんと何かありましたか?と。霧ちゃんが嬉しそうに1階に降りて来たと。うーん、思い出せない……。


「桜。全然覚えてないし、思い出せないんだが。まさか俺、霧とやってないよな?」


「判りません。着物は、乱れていませんでしたから。」


「やべー、やってたらどうしよう。腹切るか……。」


「上様?そんな事は考えないで下さい。霧ちゃんは、上様に抱いて欲しいだけなんです。兄様も上様から霧ちゃんを下賜されたいのです。それに、祝言前なんですから、問題ありません。祝言を挙げるまでは、誰の物でもありませんから。」


「そういう物?そういう物だと思っておけば良いのか?」


「はい。それに、上様は主君なのです。別に誰としても構わないのです。」


「それは、不味いだろ。」


「いいえ、例えば、秋世さんとしたとしても、誰も文句など言いませんし、秋世さんも喜んで脱ぐと思いますよ。」


「おかしいだろ!?お前達の倫理観が分からない……。」


「私は、上様を愛していますが、今や里の人間にとっては、神にも等しい人なので、何をなさろうとも、誰も文句は言いません。みんな、上様が大好きなのです。」


「それを飲み込むには、少し時間が必要だ。ちょっと俺の感覚では、無理っぽいしなぁ。」


「大丈夫です。私が付いています。」


「何が大丈夫かは、解らんが、桜に甘えておこう。」


「はい。上様。」




 やっちゃったら、やっちゃったで、諦める事にして、風呂に入った。軽いなぁ、俺も。まあ、ロクデナシに多くを求めてもらっても困るのだ。と言いう事にしておこう。主に俺の精神安定の為に。


 風呂から上がって、晩飯をと思ったら蕎麦を用意してくれたらしい。年越し蕎麦か、そう言えば、そんな話もしたっけな。これは、早く天麩羅を作らないといけないな。食文化も国が出来てからでもと思っていたが、屋敷内では、やっても良いかと思うのだが、時間が取れない。


 油を吸い取る紙も必要だしなぁ。油切り用のバットはすぐ出来ると思うが。イカンイカン、今は蕎麦を堪能しなくては。

「これ、出汁がすっげー美味いな。鰹節なんかあるのか?」


「花鰹と言いますが、これです。」


 かなり堅い、乾燥はしている様だ。削った物を少し口に入れてみたが、旨味が薄い。これは改良の余地があるな。てか、鰹いるんだな。そういや、あんまり食べないけど、鮪もいるって言ってたな。産業なんかいくらでも思い付く、あとは人材の確保と場所作りだけだな。


 蕎麦を食べ終わり、ゆっくりと過ぎていく、大晦日の夜を楽しみながら、再び酒に手を伸ばしたら、霧に怒られるかと思ったが、今日は、大晦日だから特別ですよと言われたので、また、飲み過ぎてしまった。酔っぱらいながら、新しい年を迎えたが、特に外でも何かある訳でなし、おめでとうと言っただけで終わった。


 姫初めは、慎重にと思ったが、セレスティーナとシャルロットの二択じゃねーかと思ったのは、内緒だ。そんな訳で、シャルロットをチョイス。朝までやっていた。酔って寝ていたから、全然眠くなかったのだ。シャルロットも朝まで放してくれなかったので、問題ないだろう。


 朝は、風呂に入って、雑煮を食べて修練場に行く事にした。どうせ、この時間に戻ってくるのだ。




 パンツブラ狩りをした後、修練場に入ったら、誰もいなかった。取り敢えず、ベッドに入って寝ていたら、いつの間にかアリスとクレアが来ていた。何とか、起きぬけからヤリまくって、早く帰ろうとしたんだけど、中々放してくれなかった。ここにいる時間が、長ければ長い程、後が疲れるんだけどなぁ。


 そんな話をアリスとクレアにしたら、先に教会の神殿を作れば、そっちに降臨するよと言うので、城より先に、そっちに手を付ける事にした。簡易的な教会でも構わないと言うので、女神像は欲しいのか?と聞いたら、有った方が楽だと言うので、石像を作る事にした。勘治に頼めば、なんとかしてくれるはずだ。


 そんな訳で2人の写真を撮って、参考にしてもらう事にした。そう言えば、指輪も足りなくなったな。現状、嫁14人、愛人23人、合計で37人か、20個は追加しておかないとな。カルロスよりは少ないから、良い事にしよう。ヘンリーより2人多いのか。結構、俺まともじゃん。と少し安心するのだった。


 アリスとクレアは、今、神殿とか街とか城造りをしていると言ったら、喜んでいた。それが出来れば、そっちに行くので、次は、半年以内に出来るのなら、出来てからで良いよと言われた。どうも、ここに来るのに、エリセーヌに見付かりそうで怖かったらしい。


 そんな話になったので、屋敷迄転移して見る事にした。空間が特殊なだけに、何とかなるかと思ったが、上手くいったので良かった。そのまま、風呂に入って色々考える事にした。




 それにしてもやる事が多い。チュゴセンの件で、パルミナ、カステール、ラーメリアの3国から、かなりの金額の事後依頼をもらって、資産状況は悪くない。恐らく30億以上はあるだろう。人を雇う事も視野に入れるべきだろうか。いや、まだだな、まだ、下水工事も出来ていない状況で情報が洩れるのは上手くない。利権に群がるハイエナが、入る余地がなくなってからだな。


 特に、商業ギルドに、嗅ぎ付けられるのは上手くない。奴らは、美辞麗句を並べて、人に近づき、情報だけ持って帰るからな。


 セレスティーナ辺りは1発だろう。人を疑う事を知らないからな。

 彼女は、馬鹿ではないのだが、人が好過ぎるのだ。疑う事を知らないから、疑われると思っていない。そして、誤解を招く。

 何かを、教えて欲しいと言われると、困っている人を放っておけないと、情報を渡してしまう。

 人を馬鹿にする事を知らないから、自分が馬鹿にされると思っていない。そして、思った疑問をすぐ口にしてしまう。

 自分が、美人だと理解していないから、周りがどんな目で見ているか、解っていない。だから、無防備になってしまう。自意識過剰よりは、全然良いと思うけど、もう少し理解して欲しいと思う。


 そんな彼女が、可愛いとは思うが、ずっと付いて見ていないといけないのだ。セレスティーナだけを嫁にしたのなら、或は、最初の様に、桜とセレスティーナだけだったならば、問題にはならなかったのだと思う。


 ただ、セレスティーナを嫁にすると決めた時点で、多妻になるのは、確定してしまったので、今更言っても仕方ないのだが……。




 この世界の物作り文化が発展していないのは、商業ギルドの責任が、多くを占めているとマサキは考えているのだ。新しい技術が、利権を独占する為に、全て隠蔽されている。それ故、色々新しい物を作りたかったのを我慢していたのだ。トイレを一般販売していないのも、その為だ。


 恐らく、クロードが、サイモンから直接仕入れをしているのも、その所為だろうと思う。サイモンは、商業登録していないのではないかと、予想しているのである。

だから、流通量が少ないし、クロードは職人が特別だと言った。恐らく、そんなところだと思う。逆に言えば、クロード商会及びサイモンは誘致出来ると言う事だ。ユリアナも居る事だしね。


 全ては、街を完成させないと始まらない。遊んでいる暇はないのだ。大規模な壁を作ったのも、商業ギルド対策と言う面が大きい。飛空船も何度か覗きに来て、見せろと言ったが、見せなかったしね。船の構造や理論は理解出来ないと思うが、トイレがあるのだ。あれを見たら、作れないにしても、作ってくれと煩いだろう。


 そろそろ、商業ギルドの金を引き上げる時期かもしれないな。ギルドを脱退して、新たに商業組合、或は、商工組合を組織するべきだろう。知的所有権を、保護して公開する為に。ロイヤリティが入れば、研究者の研究も捗るはずなのだ。


 そんな事を考えていたら、急激に眠くなってきたので、急いで風呂から上がり、勘治を呼んでもらった。弥助に、スマホに撮ってあるエリセーヌとアリスとクレアの写真を書き起こしてもらい、勘治に石像を作ってくれと頼んだ。が、折角、写真で色が分かるので、木像にして色を付けたいと言うので、了承した。


 そしてマサキは、そのまま意識を手放した。



 目を覚ましたら、隣に誰か背中を向けて寝ていたので、後ろからおっぱいを揉んで、そのまま致してしまったんだが……。手前を向かせたら、静だった。霧かと思って吃驚してしまった。


「静。後ろ向いて寝てたのは、態とか?吃驚するから、止めてくれ。」


「霧かと思いました?」


「一瞬な。ドキッとしたわ。」


「じゃ、前を向いて、もう1回。」


「ああ、いいぞ。」


 と、2回戦して、確認した。

「俺は、何日寝てた?」


「昨日の今日ですよ。朝です。」


「じゃ、ほぼ丸1日という事だな。そうか、良かったぜ、あんまり遊んでいる暇はないんだ。」

と、静にキスをして立ち上がり、着替えて1階に降りて行った。




 みんな起き出して、色々とダラダラしていた。まあ、正月だし、こんなもんだろう。霧に朝飯と弁当をお願いした。


「上様。松の内から何方どちらかへ、お出かけですか?」


「ああ、少しやって措きたい事があるんで、現場にな。みんなは、ゆっくりしてくれて構わないからな。今日は、2日よな?」


「そうですよ。」


「じゃ、明日は休む。」


「はい。」


 雑煮と御節を食べて、弁当を貰って、【ゲート】を開いて、現場へと移動した。掘った下水道の溝に入り込み、ノーミードと2人で、一気に下水道をトンネル化していった。ちょっと今日は、本気モードでやっているので、いつもより3倍速位で進んでいる。


 午前中の作業を終えた頃には、ヘロヘロになってしまい、大精霊達に至れり尽くせりのサービスを受けた。あ、エッチなのじゃないぞ。膝枕とかマッサージとかだからな。ウンディーネのウォーターベッドは、やばいと思ったけどな!


 それから、霧特性の愛情弁当を食べて、昼寝した。ちょっと、魔力がやばそうだったんだ。枯渇した事ないんだけどな。ウンディーネベッドで昼寝したら快適だった。寒さは、ガリルの爺ちゃんが、迷宮攻略時にくれたコートと、イフリータが肉布団をしてくれた。1時間程度だったけど、熟睡したら魔力も気力も復活したよ。


 午後からも、ノーミードと2人で、同じ作業を繰り返していった。何とか、全ての下水道を完成させる事が出来た。これから、水道管を張り巡らせて、マンホール用の穴を開けて、土を埋め戻すと言う、作業があるのだが、水道管を作らないとなぁ。そう、上下水道完備の街を造ろうとしているのだ。この世界では画期的なはずだ。井戸も掘るけど、水道不調時と火災や災害用だな。これだけでも、移住者は獲得出来ると思う。


 水道管は、下水道を掘った時の土が、トンネル分余る筈だから、その土で作ってしまおうと思う。青銅も考えたんだけど、錆び難いとは言っても錆びるので、止めたのだ。ただ、青銅で作った方が、ネジが切り易いと思ったんだけどね。水道管を通しても、取水口がないといけないが、使わない間は、メクラ詮をしておかないと、水がダダ洩れになってしまうからだ。さて、土にネジを切る、可能だろうか?実験しかないな。トライ&エラーしか進歩の道はないのだ。


 ノーミードと2人して、嬉々として実験をしているのだが、上手くいかない。それに、家の中まで、管を土で作る訳にはいかないか。規格を作っておかないと、後でハマるやつだな、これ。エンビ、塩化ビニール管があればなぁ。鋳物で作るしかないかな、鋳型を作るのが面倒臭いなぁ、まあやるか。ん?こういう時は、ノーミードか……あ、鉄に炭素を沢山混ぜて、溶かして鋳型に流す。魔法で何とかなるかも。でも、炭素か、炭焼き小屋でも作るか。


 炭素は不完全燃焼させればとれるから、何でも良いのだけど……。まあ、何れにせよ鉄鉱石が大量に欲しいのだ、今すぐ出来るわけじゃないな。王都の鉱石屋にはどの位あるかなぁ。よし、帰りながら買いに行こう。


 ノーミードには、ドワーフを探して、移住する気はないか、聞いて来てもらう事にした。自分で行きたかったけど、時間が取れない。


 【ゲート】を開いて、屋敷の庭に出たのだが……。しまった、正月も2日に、店がやっている訳がないのだ。もうね、色々、自分が残念過ぎて、力が抜けた。


 庭でガックリしていると、サーシャに声を掛けられた。

「マサキ様。どうされたんですか?」


「色々、自分の馬鹿さ加減にガックリしてるとこ。」


「何ですか?それ。マサキ様が馬鹿だったら、私なんか虫けら以下ですよ?」


「あ、サーシャ、一発やらせろ!じゃねー。セベインに鉱山あるか?」


「一発と言わず、何発でも良いですよ?」


「そっちじゃねーヨ。」


「鉱山は……ありますね。」


「あるか、店は、今日はやってないよなぁ?」


「どうですかね?やっているかもしれませんよ?」


「サーシャ、今暇か?」


「ええ、特にやる事はないですね。」


 と、返事を聞いた瞬間に、【ゲート】を開いて、セベインに繋いだ。サーシャのおっぱいを、後ろから揉みながら、移動した。

「案内よろしく。」


「承知しましたよ~。」


 サーシャに着いて行くと、鉱石屋があった。覗いて見たらやっていた。どうも、こっちの世界では、正月だからなんだ!と言う店も結構あるらしい。うちに日本人が多いから、やっていない気がするだけかもしれないな。


 鉱石屋に入って、店主を呼び出し、鉄鉱石を有るだけ寄越せこの野郎、と言ったら、通報されそうになってしまった。金を払う気がないと思われた様だ。


 倉庫を見せてもらったが、精製して、1/3として考えると、全然足りないが、無いより良いな。因みに、炭はあるかと聞いたら、それも沢山あったので、全部買ってやった。倉庫の隅に、黒い鉱石があったので、見せてもらったが、どう見ても石炭です。何に使うのか聞いたら、木の板に字を書くんだそうだ。間違ってるよ!!


 なので、それも全部買ってやったぜ。ざまーみろ。なぜ、ざまーなんだろう。自分で言ってて、良く分からなかったが、まあ、気にするだけ無駄だろう。



 そんな事をして、店をお休みに追い込んでやった。商品が無くなったからね。そして、サーシャを連れて屋敷に帰ったのである。そうしたら、ノーミードが帰って来た。ドワーフは、別に人間が嫌いで山にいる訳ではないので、酒と仕事があるなら、移住しても良いとの事だった。ドワーフは、土精霊を崇拝しているので、ノーミードの誘いは、断れなかったのではないかと思うのだ。







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