第74話 宗主の行状

 ヘンリーと執務室に戻ったマサキは、王が落ち着く迄、雑談をしていようと思った。ヘンリーとは気が合いそうだしね。元冒険者、それも高位の冒険者は、何故か話が合う。戦いに際して信念の様な物と持っているからだろうと、勝手に解釈しているのだが。


「ヘンリーはさ、瞬剣と呼ばれていたんだよな?」


「うん、そうだよ。」


「カルロスは知っているかなぁ?」


「ローレルの?」


「そうそう。」


「彼は強かったねぇ。Sランクになる前に叙爵しちゃったけど、あのまま冒険者をしていたら、最強と言われる部類には、いただろうね。」


「そうなのか。俺、カルロスとは話も合うし、仲が良くてさ、ヘンリーの話をしたら、会ってみたいと言うから、今度3人で飲まないか?俺も楽しみなんだよ。」


「お、それは良いね!政治の話ばかりじゃ疲れるし、偶には、そう言うのも良いよね。」


「俺も、男の飲み友が欲しいんだけどさ、女ばっか寄って来るんだ。俺の飲み友達は、この弥助しかいないんだぜ?可哀相だろ?」


「あー、マサキ君は仕方ないよね。強すぎるし、頭も良すぎるから、どうしても各国縁を結びたがるし、普通にモテてしまうから。僕もね、冒険者時代は相当遊んだからね。子供だけは作るなと言われていたけれど、女性は沢山いたよ。」


「やっぱ、Sランクって、そんな感じなんだな。カルロスは上手くやったなぁと思うな。カルロスは独身貴族なんだけどさ、城に40人もメイドがいて、みんなカルロスの女なんだってさ。メイドハーレム羨ましい。」


「はっはっは。僕も、嫁は5人だけど、メイドも30人いるけど、みんな手付きだよ。マサキ君も似た様なもんだろう?ただ、王女や令嬢が多いだけで。」


「いやさ、その王女と令嬢が多すぎるのよ。俺は貴族じゃないから、王女なんて物の役にたちゃしねーから、普通の娘で良いのよ。

 リリアとかは、先生してた事もあって、仕方ないとは思っているし、リリアは真面目で勉強家だからね、支えにはなってくれると思うんだけど、役に立たない方が多いんだ。まあ、全体数は同じくらいだけどさ。」


「それはね、贅沢な悩みと言うんだよ。そもそも、この世界は、男より女の方が圧倒的に多いのだから、養えるのなら何人作ったって良いんだよ。」


「あ、そうなの?女が圧倒的に多いの?」


「うん、だから騎士団なんかにも女性はいるし、冒険者にも女性は多いよ。街中を見ても、店主以外のお店の従業員とか、みんな女性でしょ。各国見ても、王女より王子は少ないし、だから王家は普通、嫁を沢山娶るんだ、男が欲しいからだけどね。」


「それは、下手くそが多いと言う事では?」


「上手いと男の子が出来るのかい?」


「だって、ヘンリーのとこ男ばっかだろ?」


「何か関係あるのかな?」


「んとね、100%ではないからね。先に言って措くけど。」


「うん。」


「エッチした時に女性が絶頂を迎えた状態で、奥深くに射精すると、男の子が産まれやすい。逆に、ちょっと入れて出すだけ、みたいなエッチだと女の子が産まれやすい。」


「本当かい?」


「ああ、染色体……わからんな。んーと、1つは受精する迄のスピードが勝負と言う事と、女性の中が酸性……これもわからんか。簡単に要約すると、エッチする日にも依るのだけど、基本的には、男が3日以上禁欲して、女性が超感じている状態で、1番奥に出す。これが、男の子が産まれやすい状態。濃厚なエッチが好きな男には、男の子が多いのさ。」


「そうなのか……。」


「だからさ、女を子を産む道具とか思っている奴には、男は出来ないよ。逆に、ステファンは、病弱な王妃を労わっていたから、リリアが女の子で産まれたんだろうさ。だから、次は王子があるかもな。もう、遠慮はいらねーし。」


「そうか、そうか。」

 ヘンリーも嬉しそうだ。


 そんな話が聞こえたのだろうか、ステファンが王妃を連れて戻って来た。

「俺に王子が出来る可能性があるのか?」


「まあね、王妃に聞かせる様な話でもないから、後でヘンリーに聞いてくれ。男が頑張れば良い話なんでな。」


「そうか。此度は礼を言う。本当に有難う。」


「お?ステファンにそう言われると、何かこそばゆいな。だが、喜んでくれた様で何よりだ。」


「ああ、思えば、マサキ殿が、リリアーナをもらってくれたからこそ、こうして、クリスティーナが元気になる事が出来たのだな。今まで、大変申し訳なかった。」


「気にしちゃいねーよ。リリアーナは、大事な俺の婚約者なんだしな。もう、王妃は、何も心配せず、普通に生活して大丈夫だからな。今まで、体を気にして出来なかった事なんかに、挑戦してみるのも良いだろうさ。」


「はい。体が楽になって世界が違って見えます。体が軽いなんて、思った事がありませんから。本当に有難うございます。」


 マサキは、みんなが座った事を見届けて、話を切り出した。

「話の続きなんだけど、良いかな?」


「ああ、構わない。」


「うん、それで、チュゴセンの宗主が、リリアーナを誘拐しようとしているのには、もう1つ理由が有って、慰み者にしたいらしい。と言うのも、宗主と言うのが、まあ醜男ぶおとこらしいんだが、洗脳して侍らせているみたいで、飽きたら違う女を攫って来るんだそうだ。」


「何て奴だ!」

ステファンは拳を握り締める。


「それでね、忍びがそれなりにいるらしいんだけど、みんな洗脳されて使われている様なんだ。女も洗脳、忍びも洗脳、リリアーナを誘拐しようとしている。ちょっと看過出来なくてさ、潰しに行こうと思うんだ。不味いかなぁ?」


 ヘンリーは唸る。

「うーん。難しい問題だね。戦争回避の為には、外交努力が必要だけれど、彼らは人攫いを認めないから話にならない……。かと言って、だよねぇ。」


「まあ、ラーメリアには、工作員は入られていないと思うんだ。エルスで情報収集していた位だからね。だが、カステールは王城にまで入られていた。あれだけ警戒していたにも関わらず。恐らくパルミナに至っては……と言う感じだと思うのよね。例えば、こういうのは、どうかな。チュゴセンの国境に沿って、壁を張り巡らせて外にも中にも入れない様にしてしまう、とか。」


「それが可能なら、その程度の事はしても構わんだろ。各国が苦虫を潰している程度には、怒っているからな。」


「じゃ、そんな方向で考えてみる。あと、許して欲しい事があるんだけどさ。ラーメリアの北の国境線沿いに壁が出来ているのは、知っている?」


 ヘンリーがハッとした。

「あれ、マサキ殿だったのか!?」


「そうなんだ。まあ、あそこからは、入らないでと言うだけなんだけどね。あの中に街を作ろうと思っているんだ。赤龍にも了解は取ったしね。ちょっと実験してみたい事もあって、人に出入りされたくないから、壁を建てたんだ。だから、事後になって申し訳ないのだけど、許して欲しいなぁと。」


「兄さん、うちは構わないよね。国境の外の話だし。」


「そうだな。きっと新しい何かを見せてくれるのだろう?」


「うん、みんなが生活するのに、便利な物を見せるつもり。まだ詳細は話せないけど、王と王妃がエクルラートに旅行に行ける様な日が来たら、良くないか?」


「馬車で3カ月は最低掛かる道のりだな。」


「そう、そんな遠くに、気軽に遊びに行けたら楽しくないか?」


 王妃が嬉しそうに言う。

「それは素敵ですね。」


「そんな物を実験してみたいと思っているのさ。でも、事故が怖いから、人を入れたくないんだ。」


「うむ、承知した。通達を出しておこう。」


「うん、頼むね。」


「じゃ、今日は帰るよ。また、リリアを連れて来るね。」


「ああ、待っている。」




 マサキは手を振って、【ゲート】を開き、王都屋敷へと戻った。丁度、晩飯の時間だなと思って、食堂に顔を出して、ただいまと言っておいた。学校組も帰って来ていた様で、マリアが飛んで来た。


「マリア、お前達は、飛ばずにいられないのか?」


「あ、お姉様ですか?」


「初対面で、扉を開けた瞬間に飛んで来たぞ?」


「あちゃー、受け止められたので、もらって頂きましたと言っていましたが。」


「あれを、もらったと言うのかどうかが問題だがな……」

と、カステールの王城であった事を再現しながら話してやった。


「それ、完全に押し掛けと言うより、押し売り女房じゃないですか?」


「うん、しかもドがつくエロさ。マリアの姉ちゃんだわ~と思ったな。まあ、何て言うの?あの爆乳に負けた気がする。」


「あー…、私より大きいですからね。」


 と、一頻ひとしきりマリアに苦情を述べると、マサキは風呂に入った。湯舟に入って考えを巡らせる。


 普通に考えれば、ヘンリーの考えが当たり前だろう。それを押して宣戦布告はないわな。だとすると、まずパルミナで間者の炙り出しでもするか。あ、ヘカテリーナのお付きは、素性は大丈夫なのか?


 晩飯の時に、一通り話をしておくべきだろうな。もう、サーシャに危険が及ぶ事はないだろう。各侍女達の意向も確認しておくか。帰りたければ帰れば良いしね。カルロスやヘンリーみたいに、全員手付きにしちゃっても良いみたいだしね。


 順序としては、パルミナで炙り出しと、国境に壁を建てる許可をもらって、ノーミードと一緒に一気に壁を建てるか。一晩で終われば最高。国境線はそんなに長くないもんな。小国だし。それから内部に潜入して、忍び達の洗脳解除をして、宗主をぶっ飛ばして、宗主の女達の洗脳を解除かな。帰りたい奴は、みんな帰してあげれば良いだろう。


 よし、明日はパルミナだと考えて、ヘカテリーナを湯舟の中に探した、ヘカテリーナの後ろから、おっぱいを揉みながら、聞いてみた。

「ヘカテーの侍女ってさ、素性は確かな人?」


「ええ、貴族家の令嬢ですよ。気に入りました?」


「なんで、すぐそう言う話になるのかなぁ。嫌いではないけど、嫌いでは。」


「お手を付けても良いですよ。本人も喜びますし。」


「あーうん、今は良いかな。ヘカテーの感触が今は、堪らない。」

と、言いながらキスをしたら興奮してしまった。どうしよう、今晩は約束があるが、大丈夫だろうと、割り切って、ヘカテリーナの部屋まで、忍法お持ち帰りの術を使い、階段を駆け上がった。


 2人して、大興奮してしまった。ヘカテリーナがノリノリなのに、吃驚したぜ。何か、勉強会とかしてねーだろうな。2人して、大満足して再び1階に降り、食堂へ向かった。


 カトリーヌがすっと寄って来て、

「お約束をお忘れ無きよう。」

と、釘を刺されたが、わかってねーな。後悔させてやる。


 晩飯を食べながら、これまでの流れを説明して、現状は、リリアーナが宗主に狙われていると言う事を全体で共有して、今は、王都内には諜報員はいないと言って措いた。明日は、パルミナに行ってみるつもりである事も伝えておいた。


 リリアーナは、自分が知らないところで護られていた事に、感謝とショックが綯交ないまぜになっている様だ。


 晩飯を終えて、軽く酒を飲むと、約束通りカトリーヌの所へ行って、大暴れしてやった。初めてらしいが、痛みは少ないようで、治療しながら、ちょっと強めにしてやった。マーガレットもして欲しそうだったので、そのままベッドに引きずり込んで、交互に4回戦。2人とも青息吐息だったので、満足した事だろう。


 その後、リリアーナの部屋へ行き、今日あった事を話してやり、弟が出来るかもしれないぞと伝えると、泣きながら抱き着いてきたので、優しく1回戦して、部屋に戻った。


 久しぶりに1人で寝るぞと、ベッドに入ったら、そのまま睡魔に誘われて深い眠りに落ちていった。




 翌朝、恒例の朝風呂の後、食堂に行ったら、足を開いたまま前進すると言う、変な恰好で歩いている、カトリーヌがいた。

「なんつー歩き方してんだ。」


「だって、まだ入ってる気がするんだもん。」


 まあ、面白いので放置する事にした。朝飯を食べると、学校組を送り出し、【ゲート】を開いて、パルミナの王城へと、移動した。今日の供は、桜と沙織だ。


 王の執務室に移動すると、アルジャーノもトマスもいたので、昨日までの経緯を話して、チュゴセンの手の者を排除する事の重要性を説明した。また、隣国故に、人攫いの被害も多かろうと思ったが、やっぱりかなりの数の若い女性と、何某かの研究者やエキスパートが連れ去れらている様だ。と言う事は、宗主の女遊びの他に、軍備増強などの目的もありそうな気がする。普通ならだが。


 どうも、この斜め宗主は、自分の国を上げるより、他国を下げる事に執着している様に思える。たたの勘だけどね。


 早速、炙り出しをする事にして、執事とメイドを全員集めてもらう事にした。近衛は、それに先立って確認済みなのだが。ホールに全員集めてもらい、近衛には、等間隔で壁際に並んでもらい。範囲を絞って、【審判ジャッジメント】を全ての執事とメイドに掛けた。


 ここで、全員に「いいえ」と答える質問をして、痛がる奴を捕縛しようと思ったのだが、洗脳の可能性を考えると危険だと考え直し、1人ずつ面談の形に変えた。


 1人ずつ、【精神鑑定メンタルアプレイズ】を掛けて。正常である事を確認してから、「君はチュゴセンの人間か?」と聞いていった。執事とメイド60名の中に、執事が3名、メイドが3名の該当者を発見。うちメイドは3人とも洗脳されていた。洗脳を解いて、話を聴いてみると、元々パルミナ国民らしく、泣きながら御礼を言っていた。希望すれば、そのままメイドとして働いて良いそうだ。


 執事3名は、完全に工作員で、攫う女のリストアップをして、誘い出し、大きい麻袋に入れて、馬車で運んでいたそうだ。これまで、何人攫ったか聞いたら、呆れて物が言えなかった。城のメイドを含む、女性が150名を超え、研究者などの男性も30名程度だそうだ。


 3名の処分は、アルジャーノに任せる事にして、洗脳されていた女性達にどうしたいか確認すると、1度家に帰って考えたいと言う娘と、このまま城で働きたいと言う娘がいたので、好きにさせる様に言って措いた。その中の1人は、宗主に犯られてしまっていたので、【復元レストレーション】を掛けて、生娘に戻してあげた。結婚出来なかったら、可哀相だもんね。


 その娘が、家に帰りたいと言っていた娘なのだが、あんまり気分の良い話ではないが、と前置きした上で、宗主の話を少し聴いてみた。抵抗あるかな~と思ったんだけど、割と淡々と話しをしてくれた。


 話を纏めると、宗主は典型的な独裁者で、誰かが自分に文句を言おう物なら、洗脳するか、処刑するそうだ。常に、周りに裸の女を7、8人侍らせていて、色事をしながら、色々な指示を出しているのだと。


 宗主の前に出されても、1回は絶対にするのだが、気に入らない娘は、諜報に出すか、部下に宛がうのだそうだ。絶対君主にありそうなシチュエーションだけど、洗脳はしないよなぁ。権力でひざまずかせるよね、普通は。


 そこまで醜男ぶおとこなんだろうかと聞いてみたら、コンプレックスらしい。決して恰好良くはないけれど、見ていられない程ではないとの事。


 逆に言うと、見ていられない程ではないが、醜男ぶおとこと言う事なんだろう。優しい女の子なんだね、きっと。


 忍びについても聞いてみたが、そもそも、忍びをみた事がないので、分からないとの事。そりゃそうかと、マサキも納得するのだった。変装したり、執事服やメイド服着てたら分からないしね。


 なので、黒髪黒目の男女は沢山いたか聞いてみた。多分、と前置きした上で、チュゴセン国内にいるのは、5人位だと思うとの事。内、女性が3名だと言っていた。段々見えて来た。


 あと、宗主に家族はいるか、聞いてみると、驚いた事に、息子が2人いて親父のお古と称して、女性を侍らせているとの事。その母親は、もう何年も前に、部下に下げ渡されたと言う。



 もう、駄目だよね。俺は駄目だ、我慢が出来ない。まずは、囲ってしまってから、考えよう。女の子には、気分の悪い話をさせて悪かったと、詫びておいたが、逆に助けてくれて有難うと、感謝されてしまった。やっぱり、優しい娘なんだね。


 結局、丸一日使ってしまい、アルジャーノと余り話す時間が取れなかったが、国境線を囲ってしまう話には、同意を得られた。なので、一旦、屋敷に戻って作戦を立てようと思ったのだ。








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