2章 城を造ったロクデナシ

第68話 第一候補地

 マサキは、寝た。3日間、1度も目を覚まさなかった。大精霊達が起きない様に調整していたのだ。兎に角、誰にも襲われず、誰も襲わず、3日も寝るなんて、地球以来ではないだろうか?あ、この世界に来て、桜としたのが、4日目位だったか?まあ、そんな程度だな。どんだけやってんだと言う話だがな。


 3日目の晩飯前にすっと目を覚ました。近くに待機していた、ヘルミナと桜が安堵の表情を浮かべ、上様、3日目ですと言った。


「あん?3日も寝てたのか。大精霊達が俺の体調管理を勝手にするもんだから、多分、起きれない様にしていたんだろう。過保護な事だ。疲れがあると、起こしてくれないんだよな。仕方ないな。しっかし、腹減ったな!!」


 桜は言う。

「上様。お食事の用意はすぐできます。丁度、夕食ですので、みんなに顔を見せてあげて下さい。」


「先に、風呂じゃ駄目か?」


「お体は、常にウンディーネ様が綺麗にされていたので、汚れてはいないと思いますが、先に入られても構いませんよ。多分、みんな集まると思いますが。」


「いや、今日みんなが入るのは不味い。そのままやってしまう。3日も空いた絶倫はやばいから。」


「そちらの準備は、皆様されておりますので、先にお食事をしてから、お風呂で大暴れされては如何ですか?」


「そんな準備があるのか?」


「ニルフェス様から聞きました。修行で絶倫も鍛えられると。だから、みんな準備しておいた方が良いと。」


「あー、そうなんだ。じゃ、先に飯にしようかな。今日も食うぞ~。」


しかるべく。」


 そんな、桜の返事を聞いて、ベッドから出ると、1階へと降りて行った。




 食堂へ顔を出すと、霧がマサキに抱き着いた。

「霧。抱き着く相手が間違ってる。今日の俺は野獣だからな、駄目だぞ、近寄ったら誰彼構わずやってしまう自信しかねー。」


 霧が目を潤ませて言う。

「上様の好きにして下さい。」


「弥助!タスケテ。」


 弥助は笑いながら言う。

「心配だったんですよ。上様が嫌じゃなけりゃ、霧も抱いてやって下さいや。」


「弥助。お前迄、何てことを言い出すんだ。祝言も近いと言うのに。お前達夫婦は、そんなんで大丈夫なのか?」


「冗談ですよ。それくらい心配したって事です。」

と言って、弥助は霧を宥めて、放してくれた。


「勘弁してくれよ。吃驚するじゃないか、仲違いしたかと思ったぜ。忠臣の女房を寝取るとか、どんだけ俺を鬼畜にしたいんだよ。取り敢えず、無茶苦茶腹が減っている、食う物を頼みたい。」


 霧は、笑顔になって厨房へ走って行く。

「はい!」



 嫁ズが、ワラワラと集まって来た。学校組も帰っていた様で、一様に心配顔だった。

「なんて顔をしてんだ、お前達は。」


 リリアーナが、泣きそうな顔で言った。

「だって、全然起きないから、ずっと起きなかったら、どうしようかと思って。」


「俺が起きなかったのは、大精霊達の所為だぞ。俺が疲れてると、起きない様にしたり、眠くしたりするんだ。過保護なんだよ、こいつら。」


「どうして、あんなに眠気と戦っていたんですか?」


「あー、時間の流れがない空間にいるとな、一応、疲れたら寝るんだけど、寝ている間の時間経過がないから、休めているし、体の疲労は回復するんだけど、寝た気がしないんだ。

 んで、時間経過がないから、腹も減らないんだけど、食わないと死んじゃうから、適当に頃合いを見て食べるんだけど、感覚がないから、全然足りていないんだな。だから、現実世界に戻った時に、強烈な眠気と空腹に襲われるんだ。」


「それって、危険な場所なんじゃ?」


「まあな、生身の人間が、長期間居られるような場所じゃないな。俺も正直好きじゃない。キツイんだ、戻って来た時が。」


「もう、行かないんですよね?」


「3カ月後に約束してるからなぁ。行かねばなるまいよ。放っておくと、本当に堕神になりかねん、特にアリスは。エリセーヌにバレるのも不味いし、あれは、疲れるからなぁ。早いとこ神々の保養地を作らねば……。」


 セレスティーナが言う。

「お父様に、土地の相談をしてみては?」


「ああ、それもちょっと考えていてな。王国内に土地を貰うとすると、叙爵せねばならんだろ?そうすると、貴族になってしまうんだよ。大公爵とは言ってたけどな。それは、ちょっと上手くない。」


「どうしてですか?」


「俺が、エルスローム王から、爵位を貰うという事は、女王のエルフェリーヌと、その妹のエルラーナが、俺の嫁になる訳だから、エクルラートをエルスロームの下に置く事になってしまうんだ。それに、俺がサラビスの家臣になってしまうんだよ。そんなだったら、無爵の方が良い。」


「お父様の家臣は、嫌だという事でしょうか?」


「お、斜め上なところが、セレスらしくなって来たな。現状、サラビスは親父だけど、主君ではない。

 今は、立場が対等と言うか、俺の方が上だから、自由に動けるし、いちいちお伺いを立てなくても、何でもできる。

 これが、例え冒険者のままであっても、叙爵してしまうと、王の確認を取らないと動けなくなるんだ。他国への介入なんて以ての外だ。帝国の様な事件があっても、動けないんだよ。これが、立場が逆転する事の弊害だ。」


「え?今って、マサキ様の方が立場は上なんですか?」


「下だと思っていたのか?王国が総力を挙げて、俺と喧嘩をしたとしても、俺には絶対に勝てないのに、どんな強制力があると思ったの?」


「それは、そうですけど……。」


「もっと分かり易く説明してやろう。現状は、各国王、皇帝、女王を集めて、『今日から、俺が世界を支配するから宜しく。』と言えば、世界征服が完了するんだ。誰も逆らえはしない。面倒だからしないけどな。」


 エルフェリーヌが頷いている。

「セレスさん。私が、マサキ様と、様付けで呼んでいる事で、理解して欲しいのだけれど、女王が嫁ぐという事は、その方の下に入りますと言う事なんですよ。王女が嫁ぐのとは、少し意味合いが違ってきます。本来ならば、マサキ様を婿に迎える事を考えるからです。ですが、それが不可能だと解っているから、嫁ぐのですよ。」


「では、私が、マサキ様にお嫁さんにして下さいと言っていたのは、とても図々しいお願いをしていた、という事ですか?」


 メイリーナが答える。

「セレス、今頃気が付いたの?でもね、マサキ殿はそういう事を鼻に掛ける人ではないから、貴女が何をしても許されているし、愛してもらっているでしょ?

 今だって、サラビスは下だって言いたい訳じゃなくて、『自由でいたい』と言っているだけなのよ。」


「そういう事ですか……。」


「まあ、セレスはもう少し、勉強が必要だという事さ。ま、考えが斜めってるところが、セレスらしくて面白いけどな。」


「うぅ……。」


「さぁ、死んじゃう前に飯を食わせてくれ~。」


 そう言うと、霧と桜と椿が食事を運んできた。ご飯と味噌汁と大量の煮物だな、野菜が美味しく食べられる。霧がお櫃を持って、横で待機している。桜も後ろで待機している。今日は、眠くないから、そこまで急がないんだけどなぁ。煮物のお陰で、飯が進む。浅漬けも美味いな。ホッとする味、と言うのだろうなぁ。


 大き目の茶碗で、飯を4杯食べて、満足したマサキは、今日の風呂は1人にしてくれと頼んで、湯舟に身を沈めた。最近、体は洗わなくても、ウンディーネが体中を這いまわって綺麗にしてくれるのだ。これが、気持ち良いのだ。水が体を這いまわるって変な感じだけどね。髪の毛もゴワゴワしないし、スベスベなんだぜ。


 湯舟に入って満足したら、風呂から上がる。と、拭かなくてもシルフィードが乾かしてくれるから、何もしなくて良いのだ。後は、桜が浴衣を体に掛けてくれるから、帯を締めて終了なのだ。もう、完全に駄目な子だよね。



 風呂から出て、リビングのソファにドカッと腰掛けて、メアリーに酒を頼んだ。銀製タンブラーに氷を落とし、ウィスキーを注ぐ。チビチビと遣りながら、3日も寝ていたので、今後の事を考える。


 今は取り敢えず、空から見て回るしかないのだよなぁ。方向としては、西方面にゆっくりと進みながら、見て回るか。セベインは上空からみたけど、アクシアンとか、サンドルとか見てないしなぁ。あ、カステールの向こう側ってどうなっているんだ?

あと、パルミナの周辺か、そこら辺が、どうなっているのか知っておく必要はあるだろうな。


 暫く、ゆっくりとした船旅でも良いな。職人娘6人と弥助を連れて行けば問題ないだろう。畳職人達は、ダンスホールを順調に畳敷きにしてくれているし、ミリアの店も当分は大丈夫だろう。セリアは連れて行ってもいいかもな、主にケツを。


 イカンイカン、欲望丸出しの状態で、メンバーを考えてはいかんな。でも、今日は準備していると言っていたし、連れて行かないのを中心にしよう。4階は全室制覇で良いだろう。1回ずつなら充分な筈だ。最初は、激しくても大丈夫な方から行けば良いな。メイリーナ→リーザロット→エルラーナ→セレスティーナ→シャルロット→エルフェリーヌ→シリル→シルティーヌ→ソルティアーナ→ユリアナ→マリア→ヘカテリーナ→リリアーナ→ミリア→オリビア。この順番で行けば、満足したところで、止めれば良いだろう。


 足りなかったら、ミレーナ→ヘルミナ→メアリー→ユイ→ルミエール→椿→桜かな。総勢22名。いくら絶倫に磨きが掛かったとは言え、これだけいれば、どこかで息切れする事だろう。皐月と弥生は船だから連れて行くし、セリアも問題なければ連れて行きたいしね。残り4人の職人娘達には、今のところ手を付けるつもりはないのだ。


 それにしても、男手が足りない。勘治と治吉は和室を作ると言って、仕事に掛かっているし、畳職人の2人も結構大変そうだ。作業場も作ってやらないと、雨の日困るか?工房も欲しいが、それは城が出来るまで、我慢するとしよう。


 弥一夫婦を連れて来ると言う手もあるな。椿の両親も、霧の両親も連れて来たら、少しは霧の暴走も止まるだろうか。でも、場所が決まらない事には、何も動かないな。場所を決めたら、弥助と霧の祝言を挙げてしまおう。全ては、それからだな。



 そう考えたマサキは、酒を切り上げると、メイリーナの腰を抱き、メイリーナの部屋へとお持ち帰りしたのである。メイリーナとリーザロットを2回戦ずつして、早々に失神させて、終わってみれば、22人完走しても足りなかった様で、朝起きた時は、セリアの部屋にいたのである。


 そして、朝からセリアと2回戦した後、風呂に入って、湯舟の中でもう1回しちゃったのだ。マサキ自身、こんなにやばいと思っていなかったので、自分の精力に戦慄した。何しろ賢者モードがないのだ。こんな事を毎日していたら、死人が出てしまうと、真剣に悩んでしまったのである。


 エリセーヌには相談出来ないし、ニルフェスに聞いてみれば良いかと思って、呼び出して聞いてみたところ、3日も寝ていた所為だと言う。だが、これが3日分だとしてもおかしいよ?と聞いたが、あの空間にいた反動だと思うから、毎日、誰かとしていれば問題ないはずだと言う。本当かよ、とも思うが、今はそれを信じるしかなさそうだ。


 いずれにしても、あの空間に行って良い事など1つもないので、早く計画を進めないと、自分が辛くなるだけだと、考えを新たにしたのだった。




 落ち着いたところで、朝食を摂り、今日から船で出る事を伝え、暫く戻らないと思うと告げると、霧がまた暴走しそうだったので、弥助も連れて行くし、霧も連れて行く事にした。職人娘6人と弥助夫婦、セリアとヘルミナを連れて行く為、食料を買い出しに、霧をお遣いに出した。


 桜が行きたそうだったが、学生組の身辺警護をメアリーとミレーナ、椿、桜に頼むしかなかったので、納得してもらった。戦力にならないのは、極力、連れて来る様にしたので、問題ないはずだ。


 船体のチェックをしているうちに、霧が食材を買い揃えて来たので、船に積み込みを始めて、操舵室をチェックした。起動用魔石に魔力を流して、準備を終えると、船長席に座って舵輪を弥生に任せ、上昇の指示を出した。


 ゆっくりと船が上昇して行き、北西に向かって水平飛行に入った。時速100Km程度のスピードで前進しながら、マサキは、甲板に椅子を出して座りながら景色を見ていた。スマホの地図を見て、位置を確認しながら進んでいた。北西に進んでいるので、もう、王国内ではなく眼下に広がるのは、森だけだ。


 やがて、山脈が近くなってきたので、西へと方向を変える様、指示をして、セリアの尻を撫でながら、外を見ていた。ひたすら広がる森にうんざりして来たが、仕方がないと諦めて、甲板の縁に肘をつき頬杖をついて、外をぼーっと眺めていた。


 やがて、サンドルから北に外れた森の中で、綺麗な湖を発見した。大きさは、王都の湖の1/3程度かな?それなりに大きな湖だった。高度を落とし、水深がそれなりにある事が確認出来たので、船を着水させた。森の中は、船が降りられる様なスペースは無かったのだ。


 しかし、ここで気が付いた。ロープはあるがアンカーがない。仕方がないので、船尾に縛ったロープの反対側を持って、岸まで飛んだ。近くの木にロープを縛って、固定したが、喫水を考えると、湖の岸に着けられるような深さはないので、そのまま待たせようかと思ったが、シルフィードが、全員を風で包んで岸まで運んでくれた。


 マサキは、大精霊達を呼び出し、この辺の魔物を調べてもらう事にした。その間に自分達は湖畔でバーベキューをする事にした。弥助と2人で獣を探し、雉が数羽獲れたので、落として焼いて食べる事にした。迷宮産の肉もまだまだあるので、それも焼いて食べた。


「弥助。この辺て冬は寒いと思うか?」


「いえ、そこの山脈がありますでしょ?あの山脈のお陰と言うか、所為と言うか、北から風があまり吹き付けないですから、そんなに寒くないと思いますよ。まあ、それでも冬ですから、氷が張る程度には冷えると思いますが。」


「ふむ、夏は今ぐらいなんだよなぁ。気候的には悪くないが、平地がないか……。草原でもあれば、開けると思うんだけどなぁ。」


「さっき降りるときに見えましたが、あっちに平原は見えましたよ。」

と、弥助は南を指さした。


「マジか。見に行くかな。遠かった?」


「いえ、そうでもないと思いますよ。空からだと距離感が、今一つですけど。」


 マサキは、腕を組んで考えた。船で行くか、歩いて行くか、だが。船を湖に浮かべておけば、魔物が寄り付けないから、女達が安全だと思うからだけどね。夜も安心だし。まあ、船で行っても、平原なら問題ないか。


 そうこうしていたら、大精霊達が帰ってきた。

 シルフィードが言う。

「主様。この辺りに、強そうな魔物は見えないですね。風の精霊達にも聞いてみましたけど、あんまり魔物化しない場所の様です。」


「ほほう。」


 ノーミードも言う。

「土の中も安全。巨大化したミミズとかムカデとか、そういう魔物はいない。後ね、鉱山が開けそう。まだ、掘られてはいないけど。」


 ウンディーネが良い情報をくれた。

「この湖は、湧水と山から流れて来た水で、綺麗だから、そのまま飲めるよ。魚はいたけど、魔物はいなかったね。あと、主様の大好きな温泉の源泉と水脈が何本かあるから、違う種類の温泉が入れるよ。水源も豊富。」


「申し分ない土地だな。なんで、今まで人間が住み付かなかったんだ?何か理由が有る筈だが……。」


 イフリータが言った。

「あ、それね、多分、赤龍がいるからだと思う。」


「何処に?」


「この山脈の頂上の裏側に火山があるの。そこに巣穴を掘って住んでる。」


「ここに、城や街を作ったら、怒るかなぁ?」


「赤龍は、竜じゃないから、話が出来る。主様なら大丈夫と思う。」


「人の言葉が理解出来るのか?」


「骨格的に声は出ないけど、主様なら念話が出来ると思う。それに、私とレオノール様がいれば大丈夫。」


「リータは知り合いなのか。じゃ、平原を確認した後に会いに行ってみるか。」


「うん、そうすると良い。」


 予定が決まったので、船で移動する事にした。全員が乗り込んだところで、50mくらい上昇させて、弥助が指さした方向へ船を進めた。ああ、広大な平原があった。船から北側の下ばっかり見てたから、気が付かなかったみたいだ。


 これは、広大な平原だ。はるか南に小さな丘が東西に延びている。あの丘の南側がサンドル領の様だな。この平原なら、王都エルスの4倍位の街が出来るな。川が2本南に向かって延びている、小川もチラホラ見えるし、ここは、良いんじゃないだろうか。


 測量しないと、正確な絵は描けそうにないが、此処は、第一候補だな。何しろ王国内でないのが良い。どうしようかな。先に赤龍に会っておこうかな。他もみてからにしようかなぁ。カステールの向こう側も見てみたいしなぁ。



 まあ、まずは、赤龍に会ってみよう。それから考えても良いな。そう決めたマサキは、イフリータとレオノールに案内を頼み、火山に向かうのだった。

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