第62話 パルミナ王国
朝起きたら、シャルロットに襲われて、色々吸い取られてしまった。俺の為に色々考えてくれているのだろう。可愛い奴だ。ふと、こんな巨乳超絶美女に、愛される資格が俺にあるのだろうか。と考えてしまうのだ。Fカップなんだぜ?
まぁ、カップは措いておくとしても、シャルロット1人が居れば、充分満足出来る筈なのに、妻が29人とか馬鹿じゃねーのかとしか思えないのだ。有り得ない事ではあるが、もし、日本に居る時に結婚した相手が、シャルロットだったならば、幸せになれたと自信を持って言えるのである。そんな女が居ながら、色々な女に手を出している俺に、愛される資格があるのか、甚だ疑問なのである。
まあ、本人達が良いと言うのに、自分で勝手にこう言う思考に陥るのは、大体いつも、セレスティーナと何かあった時なのだ。こうなると、いつも思う事は、一つなのだ。他の女性達に申し訳ないと、セレスティーナ一辺倒であるかのような思考を嫌うのだ。事実、シャルロットやシリルを、心の底から愛しているのだが、こういう思考に陥る事自体が、彼女達に申し訳ないと思うのである。
彼女達とて独占欲が無い訳ではない。ただ、1人に取られてしまう位なら自分も、と言う意識が働いた結果、相手が何人居ようとも、飽くまでも自分とマサキとの関係しか考えないし、他はどうでも良いのである。自分が愛して、自分が愛されていれば、それで良いのである。相手が2人以上なのであれば、何人いるか等、些細な問題なのである。
シャルロットやシリルは、寧ろ、仲良しなクラスメイトが多いので、リリアーナやマリア、ヘカテリーナ、ユリアナと一緒に支えていければ良いとさえ、思っている訳で。こうなると、今度は、セレスティーナにもっと相談してくれれば、認識を共有できるのに、と思うのである。ソルティアーナに至っては、またお姉ちゃんの独り相撲なのでは?と思っている位なのだ。
セレスティーナに足りないのは、そこなのだ。セレスティーナの悪い癖は、他の嫁と自分を無意識に比べてしまっているのだ。だから、ああいう話になってしまうのだが、自分で理解していない。
メイリーナは、それを暗に指摘して来たつもりなのだが、もっと直接的に言わないと駄目なんだなと思ったのである。メイリーナは自分が惚れてしまった引け目もあって、今までセレスティーナに言えなかった事を後悔していた。マサキを苦しめてしまったと。
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時は遡り、昨日の食事後、メイリーナはセレスティーナと甲板で話をしていた。
「セレス、貴女はマサキ殿を愛しているのでしょう?」
「当たり前です。」
「じゃ、どうしてあんな事を言ってしまうの?」
「良く分からないんです。言われてみれば、そうだなと思うんですけど。」
「じゃ、私が教えてあげるわね。貴方は、他の人と自分を比べてしまっているの。他の人と比べて、私は大事にされているか、とか。他の人より、自分は愛されているかとかね。意識はしていないんでしょうけれど、無意識に比べているのよ?」
「そんな事……。」
「ないとは、言わせないわよ。マサキ殿がセレスを抱いたのはなぜ?結婚を決めたのはなぜ?彼はこう言ったわ、『セレスは、メイリーナと自分を比較して苦しんで居る様だ。それでセレスが安心するのなら、俺の矜持も倫理観も曲げる事にした。』とね。貴女の為に、自分の信念まで曲げてくれたのに、どうして他人と比較するの?私の為だったら、あの人は信念を曲げたりしない。あれだけ、侮辱され馬鹿にされているのに、セレスだけは好きにさせている。そんな、あの人の気持ちが理解出来ないのなら、私は1人の女として、貴女を許さないわよ。」
「どうして、私はこんなに馬鹿なんでしょうか。」
「妬くなとは言わない、でも、無条件の愛をもらっている事を忘れちゃ駄目。あの人が、普通の男性だったなら、貴女はもう捨てられているわよ。そこを理解しなさいね。みんなで愛していけば良いのよ、折角、仲の良いクラスメイトが沢山いるのだから。そうすれば、全力で応えてくれる。そう言う人よ。」
「そうでした。みんなで支えていけば良いのですね。」
「そう、もっとクラスメイトと話をしなさい。そうすれば無用な勘違いは、誰かが指摘してくれるはずよ。」
「はい。」
「今日は、きっとシャルちゃんが、マサキ殿の心を慰めに行っていると思うから、屋敷に帰ったら、思いっきり抱いてもらいなさい。」
「はい。そうします。」
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シャルロットと1戦交えた後、2人で食堂へ行って、朝飯を食べた。6人の職人娘達が出発の準備を整えてくれたので、いつでも出発できるとの事だった。
さて、まずは、パルミナ王国へ行くとするか。
マサキは船長席に座って、皐月に指示を出す。
「皐月、上昇。」
「はい。」
船が静かに上昇を始めた。凡その高度になるまで、外を見ていた。これは高度計が欲しいが、何で高度計れば良いのかなぁ。気圧じゃなぁ、変わり過ぎるしなぁ。気温?100m上昇すると1℃下がるんだっけ?それが地球と同じとは限らないじゃないか。課題にしておこう。などと考えていたら、良い高度になったので、次の指示を出す。
「静止。面舵90度。」
「はい。面舵90度旋回します。」
「旋回完了しました。」
「微速前進。」
「前進します。」
マサキは、スマホの地図を見ながら、確認した。
「全速前進。」
「全速に移行します。」
船尾から爆発音が聞こえて、一気に加速していく。それから2時間経った頃には、帝国の上空に入った。そこから更に2時間、帝国の上空を飛行して、パルミナ王国へと入って行った。
飛空船を王都パルメに向けた。それから約1時間、王都が見えて来た。丁度、お昼になったので、王都の外側に着陸して、昼飯にする事にした。
「昼だなぁ、ヘカテリーナ。どうする?寄って行くか?」
「そうですね、先生が返書を送って頂いてから、返事を受け取っていませんので、直接聞いて措きたいです。そうすれば、私も先生の所に行けますので。」
「そうか、エルフェリーヌ、行くのは大公家だが、行くか?」
「どうせ行くのなら、ついて行くわ。」
「何人で行くのが正解?」
エルフェリーヌが少し考えて、
「3人で行くとして、付き人は必要ね。エルラーナと弥助さんとパルミナ家のメイドさんの6人で良いかしらね。」
と言った。
「じゃ、そうしよう。弥助は執事服持ってるか?」
「大丈夫ですよ。上様。」
「船の警備はどうしよう。流石にこれで、王都には入れないよなぁ。」
ヘカテリーナは言う。
「大公家のお屋敷には、降りられると思いますけど……。」
「まあ、面倒だし行っちゃう?」
ヘカテリーナは、男前だった。
「まあ、怒られたら怒られた時ですよ。」
「まあ、そうだな。」
昼食を終えて、マサキは再び船を上昇させた。大体200m程度の高度で、微速で王都上空を進んだ。ヘカテリーナと甲板に出て、屋敷を教えてもらった。当然、下を見ると大騒ぎだったが、今更だろう。
大公屋敷上空に来たので、ゆっくりと船を下降させた。庭の何もない所を選び、そーっと着地させた。騎士達がワラワラと集まって来たが、甲板からヘカテリーナが手を振ったので、落ち着いた様だ。あ、他でも王女に手を振らせておけば、良さそうだと、マサキは考えるのだった。
階段を降ろして、ヘカテリーナとメイドを先頭に、マサキとエルフェリーヌ、弥助とエルラーナの順で降りて行った。
執事が近寄って来た。
「ヘカテリーナお嬢様。これはいったい……?」
「ただ今、戻りました。爺、マサキ・タチバナ先生をお連れしましたので、お屋敷にご案内を。」
「承知致しました。」
そう言って、屋敷の玄関へと案内してくれた。
「爺、お父様は?」
「大公様はお城で御座います。如何致しますか?」
「では、丁度良いので、王城に伺いましょう。」
執事は、一礼して、お待ちくださいと言った。
「では、馬車をご用意致しますので、少々お待ち下さいませ。」
そう言って、執事は馬車の手配をしに行った。玄関前に到着した馬車に、そのまま乗り込み、王城へ向かう事となった。隣なんだから、歩けば良いじゃないかと思うのだが、そこは、格式だとか、馬車の紋章で入城が楽だとか、そんな事もあるらしい。
城の、玄関前に横付けされた馬車から降りると、玄関から執事が先導して案内してくれた。大公は王の執務室で仕事をしている様だ。コンスタンと同じ様なもんか。
執務室へ着くと、執事がノックをして、マサキ達を招き入れてくれた。そして、大公に言った。
「大公様、お客様で御座います。ヘカテリーナお嬢様がお連れになりました。」
「ただ今戻りました。叔父様、お父様。」
大公が、顔を上げて聞いた。
「お?ヘカテリーナ、どうやって帰って来たのだ?タチバナ殿への返書は、まだ送ったばかりだぞ?」
「ええ、マサキ・タチバナ様が、空飛ぶ船をお造りになったので、空を飛んできました。ご紹介します、マサキ・タチバナ様です。」
マサキは、一歩前で出ると、挨拶した。
「お初にお目に掛かる、Sランク冒険者主席マサキ・タチバナだ。以後、お見知りおきを。マサキと呼んでくれれば良い。ついでだから、紹介しておこう。エクルラート女王だ。」
エルフェリーヌもマサキの横へ出ると、一礼した。
「お初にお目に掛かります。エクルラート女王国女王エルフェリーヌ・ル・ラ・エクルラートで御座います。」
王が椅子から落ちた。大公も固まった。
「突然、お邪魔して申し訳ない。何れ挨拶には伺わねばならん、と思っていたんだが、ヘカテリーナの夏休みも終わってしまうので、お邪魔させてもらった。」
王と大公は立ち上がった。
「こちらこそ、お初にお目に掛かる。パルミナ王国、国王のアルジャーノ・フォン・パルミナだ。以後、お見知りおきを。」
「お初にお目に掛かります。パルミナ王国にて大公爵を務めます、トマス・フォン・パルミナです。宜しくお願い申し上げます。」
王がソファを指して、
「まあ、まずはお掛け下さい。」
と言った。
マサキは、左にヘカテリーナ、右にエルフェリーヌを置いて、真ん中に座った。付き人達は後ろに立った。アルジャーノとトマスは向かい側に座った。メイドがお茶を持ってきた。
アルジャーノが口を開いた。
「空を飛んで来たと聞いたが……?」
マサキは、めんどくせーなと思いながら答える。
「ああ、空飛ぶ船を造ったのでね。」
「そんな事が可能なのか?」
「まあ、理論上は可能だと思っていたよ。出来るかどうかは、造ってみるまで判らなかったけどね。」
「その技術を教えて頂く事は?」
「まあ、教えたところで、理解は出来ないだろうし、戦争に使う馬鹿が出て来るから教えないし、売らないよ。」
「やはり、慧眼なのだな。」
「それは、買いかぶり過ぎと言う物だよ。」
「はっは、そう言う事にしておこう。返書の内容だが、私もトマスも諸手を挙げて賛成させてもらうよ。私には娘がいないので、弟の娘は我が娘と同じ様に思っている。ヘカテリーナを宜しく頼む。」
トマスも追随する。
「マサキ殿から返書が来た時は、嬉しかったですよ。何しろ、ヘカテリーナが惚れたと言うのだから。」
「ヘカテリーナの事はお任せを。」
アルジャーノは、エルフェリーヌの方へ体を向けて言った。
「驚きました。エクルラートの女王にお出で頂けるとは。」
「私も、マサキ様に嫁ぐ事に致しましたので、ご挨拶にと思いまして。」
「「なんと!?」」
「我がエクルラートは、長らく人間社会では、エルフ王国と呼ばれているとか。そこの認識を変えて頂きたくて、人間との縁談を考えておりましたの。」
「と、言いますと?」
「エクルラートは、エルフだけの国ではありません。未開の大森林の向こう側と言う事もあって、長らく交流はなかったのですけれど、元々、建国時は、沢山の人間がおりまして、協力して国を造ったのです。エルフは長命ですから、人間への感謝を忘れておりません。ですが、国内の人間の寿命が尽きるのと同時に、疎遠となったのです。今でも、僅かですが、人間の子孫はおりますのよ。」
「そんな歴史があったとは……。」
「マサキ様には、一目惚れでしたわ、中級上位の悪魔を片手間で屠る、圧倒的な強さと知識に智謀。私如きでは、太刀打ち出来ません。そして、先の道筋は、マサキ様が付けて下さると思いますので、エクルラートと交流できる機会が来た折には、是非、交流をして頂きたいと思っております。今日は、そのお願いに来たのです。」
「しかし、我が国からでは、遥かに遠く、なかなか難しそうですが、その機会が来ましたら、こちらからもお願いします。」
と、アルジャーノの言質を取ったのである。
マサキは、本題はと言う。
「で、今日来た本当の理由と言うか、目的なんだが……、エルスロームで結婚式を計画しているんだけどね、迎えに来るから出席して欲しいんだよ。まだ、日程は決まっていないのだけどね。」
トマスが難色を示す。
「しかし、エルスロームまで行くとなると、往復で2カ月はみないといけないだろう?それだと少し厳しいと思うんだ。政務が滞ってしまうから。」
「お父様。マサキ様は、迎えに来ると仰いましたよ?」
「あ、ああ。では、どの位掛かると思えば良いかな?」
マサキは、笑いながら言う。
「そうだな。空の旅が良ければ、移動に片道丸1日。急ぎたいなら、片道1分てところだね。だから、家族みんなで来ても大丈夫だよ。」
「「は!?」」
「やっぱり、驚くのか。」
エルフェリーヌが言う。
「貴方は、何の気もなく使うんでしょうけど、あの魔法はおかしいわよ?空飛ぶ船だって、速さがおかしいもの、理解出来なくて当然よ?貴方は自分が真理の深奥に至っている事を自覚するべきよ。」
「ふむ……。ヘカテリーナ達の為に頑張って造ったんだがなぁ、あの船。やっぱり、おかしいか……。でも、結構苦労したんだぞ?半月も掛かったし。」
トマスが首を捻る。
「ヘカテリーナ達の為とは?」
「ああ、ヘカテリーナの他に、カステールとラーメリアの王女が同級生なんだよ。で、担任の先生としては、誰か1人だけと言う訳にもいかなくてな。みんなもらってしまう事にしたんだよ。だけど、エルスロームの王都からだと、どこも遠いだろ?
でも、折角、結婚式をするのなら、ヘカテリーナ達も両親や兄弟姉妹に見て欲しいし、祝って欲しいんじゃないかと思ってね。」
「なるほど。理解しました。」
「他にも、少々考えている事があるんだが、それは、またの機会に相談させてもらうとするよ。今日は、挨拶だけのつもりだったしね。」
「ああ、態々遠い所、来てくれてありがとう。」
「また、日程が決まったら、知らせに来るね。」
そう言って、マサキは、アルジャーノとトマスと握手した。
「ああ、そうだ。最後に一つ聞いておきたい。ヘカテリーナ本人が望めば、少々早いが、うちの屋敷へ引き取っても良いかな?」
「ああ、構わない。もう嫁に出したつもりだし、エルスロームの屋敷は借り物だからね。却って助かるよ。」
「了解した。じゃ、今日は失礼するね。またゆっくりお邪魔するよ。」
そう言ったマサキは、立ち上がると、真っ赤な顔のヘカテリーナとエルフェリーヌを促して、執務室を出た。
弥助達3人の付き人役も、疲れた顔も見せずに無事終わった事を喜んでいた。王城から、馬車で大公屋敷へ戻ったところで、ヘカテリーナに聞いてみた。
「ヘカテー、屋敷から持って行きたい物はあるか?」
「特にはないですね。もうエルスで5年近く生活していますから、向こうに全部あります。」
「そっか。じゃ、行くか。」
「はい。」
6人が船に乗り込むと、ゆっくりと上昇させて、ある程度高度が確保出来たところで、水平飛行に移り、カステールに向けて、速度を上げていくのであった。
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