第45話 転移魔法陣

 朝起きて、シャルロットに心配されたのを、何でもないと宥めるのが大変だった。何故だろう、1回戦したよ?朝はしなかったけど。


 何が、そんなに引っ掛かったのかと聞いてみたら、今日から自分達も夏季休暇なので、朝までとかあるかなぁと思ったんだそうだ。そんなに体を酷使して欲しくない。ぶっちゃけ、嫁が増えすぎたが、シャルロット1人がいれば、俺は満足なのだ。


 1日中、チュッチュ、キャッキャ、イチャイチャしていたいと思う程度には、彼女の事が堪らなく好きだ。と言ったら、納得してくれた。本当の事だけど、みんなには言わないでね、後が大変だから。まぁ、シャルロットはその辺の機微には敏感なので、大丈夫だろう。


 今のところ全幅の信頼を置けるのは、シャルロットとメイリーナしかいないのだよ。これだけ嫁がいるのに。まぁ、弥助と霧は別だけどね。信頼感で言うと、桜より霧の方が安心できる。桜はたま~にポンコツ化する事が、なくもないからだ。


 さて、朝飯を済ませて、取り敢えずローレルだ。ゲートを開いて、ローレルの城のカルロスの執務室へ移動した。執務室に出ると、カルロスはメイドさんの尻を撫でていた。


「お前は、俺か!!」

 と、思わず言ってしまったが、仕方のない事だろう。趣味も気も合う男なのだ。


「おう、来たか。尻はいいよな~、実にいい。」


「うむ、そこは激しく同意しておこう。じゃ、これをプレゼントしてやろう。」

 と言って、ミニスカメイド服を出して、カルロスに渡した。


「なんだ?メイド服じゃないのか?」


「着せてみれば分かる。萌えるから。」


「お、おう、分かった。」

 と言ったカルロスは、メイドさんに着替える様に指示を出した。


 着替えたメイドさんが現れると、カルロスは親指を立てた。

「やべーなこれ!捲り上げて尻触っちゃいそうだぜ!」

 完全に辺境伯ではなく、冒険者に戻っていた。


「だろ?これくらい可愛いメイド服が、有っても良いと思うのだよ。」


「でもよ~、仕事になんねーぞ?これ。」


「捲り上げて、後ろからスッキリしてから、仕事すればいいじゃないか。」


「まぁ、そうか。うん、そうだな!」

 分かり易い男である。

「あ、そうだ。マサキ、これ屋敷の鍵な。場所は城の門を出て左隣だ。すぐ分かると思うぞ。方向で言うと、東隣な。」


「ああ、有難う、助かるよ。」


「なぁ、マサキ。このメイド服どこで買えるんだ?」


「売ってないな。俺が作らせたんだけど、まだ商品化していないんだ。どの位必要なんだ?」


「そうだなぁ、この城にメイドは全部で40人はいるから、120着位か。」


「40人分か、サイズがなぁ。このメイドさんの身長とスタイルの女性になら合うが、他はサイズ計測して欲しい。一応、S・M・Lと3種類はサイズは作るつもりなんだけどね。」


「じゃぁさ、俺もメイドの採用は、見た目重視なんでな、これと同じサイズで80着をまず頼む。」


「見た目重視ってはっちゃけたな!」


「良いんだよ。俺は独身貴族なんでな。逆に言えば、メイドは全員、俺の女だからな!」


「なるほど!その手があったのか!失敗したぜ……。メイドハーレム羨ましい。」


「今、何人になった?面倒だろう?」


「ああ、16人。めんどくせー事、この上ないな。」


「はっはっは、ざまーみろ。」


「エクルラートも行かなきゃなんねーんだよ。」


「エルフ王国が何か言って来たのか?」


「女王を嫁にしてくれだと……。」


 カルロスは大爆笑だった。

「あーはっはっはっはひっひ!!、腹いてー、ネタの尽きねえ野郎だぜ。あの超絶美女がねぇ、何かに取り憑かれてねーか?」


「もう、王族は勘弁して欲しいんだけどなぁ。6か国10人だぜ?馬鹿じゃねーのかと思うよ。」


「んじゃ、未開の大森林開いて、国でも作っちゃえばいいじゃないか。両隣がうちとエクルラートだし、綺麗な泉も湧いているぞ。」


「探索した事あんの?」


「最深部までは行ってないが、昔ちょっと入ってみたんだよ。幻想的な風景の場所があったんだ。また行ってみたいとは思うんだが、時間がなくてな。」


「そっか、ちょっと楽しみだな。」


「まあ、まず屋敷を見て来いよ。」


「ああ、うん、ありがとう。」


 カルロスに礼を言って、マサキは城外へと足を進めた。城から出ると、活気があった。冒険者も多いし、屋台がいっぱいだった。これぞ異世界ファンタジーだろうと思う光景だった。降り立つなら、ここが良かったやね。


 そうすれば、セレスティーナに会う事もなかったし、王城に行く事もなかったんだよなぁ。あ、でもそうすると、セレスティーナは死んでいたかもしれないし、王は死んでいた。コンスタンとカルロスが頑張ったところで、あの宰相じゃ、国が倒れていたな。


 良かったんだと思うしか、ないのだろうな。ここでなら、1人でも生きていけそうな気がする。あ、1人で生きていけちゃうから、王都だったのか。爺め。


 そんな事を考えながら東に向かうと、城の周りの堀の横に大きな屋敷があった。まさか、こんなデカい屋敷じゃねーよな?でも直ぐ隣って言ったもんな。

 と思いながら門を入り、玄関まで辿り着くと、鍵を差してみた。回っちゃったし、カチャと音がして鍵が開いた。


 まあ、ここも王都の屋敷に負けず劣らずのデカい屋敷だった。3階建てなんだけど、1階毎の部屋数が多いのと、執務室が何部屋か1階にあった。風呂は流石にそんなでもないだろうと思ったさ、最初は。やっぱり、30人くらいは入れそうだった。王都屋敷より若干狭いかな?程度。


 後で聞いてみたのだが、この屋敷の風呂も温泉なんだそうだ。城の風呂もね。なんでも、城が出来る前の領主館だったんだそうだ。だから、執務室がいくつかあったんだね。


 一通り屋敷の中を見て回って、主寝室を覗いたら、ここも巨大なベッドが置いてあった。ベッドと布団が新品て事は、カルロスが気を遣ってくれたのだろう。


 満足したので、1番奥の執務室に入って、インクに魔石の粉を混ぜて、魔法陣を描き始めた。直径4m位の円を描くのだが、これが難しい。仕方ないので、ロープを出して、中心にナイフを刺して、ロープに輪を作ってナイフに引っ掛け反対側を持って回った。


 円さえ綺麗に描ければ、後は古代文字を書いていって、また小さい円を描く感じなのだが、1番外さえちゃんとしていれば、良さそうな気がする。最後まで描き終わって、魔法陣の横に「1番」と日本語で書いておいた。


 転移魔法陣と言うのは、対になっていて、1番の魔法陣は1番にしか転移出来ないのだ。で、日本語で書いておかないと、万が一、裏切者や間者がいた時に、行先が解ってしまうのだ。



 そんな、一連の作業を終えて、執務室から出ると、玄関に向かった。ゲートで帰ってさっさと魔法陣繋げよ!と思うのだが、この街には、抗い難い魅力があった。取り敢えず、冒険者ギルドくらいは行きたいじゃないか!


 街の中を歩いていると、冒険者がやはり多い。面白いと思うのが、其処彼処そこかしこで、冒険者同士の喧嘩があるのだが、衛兵にぶっ飛ばされてんだよね。


 衛兵強い、流石にカルロス鍛えてるな。辺境伯は独自の軍を持てるから、魔物の氾濫に備えて鍛えているのだろう。冒険者だけじゃ、手が足りない事も多いだろうからね。


 屋台の綺麗なお姉さんにギルドの場所を聞くと、丁寧に教えてくれたので、お礼にお尻を触らなかったヨ。迷わず、冒険者ギルドに到着すると、ワイワイガヤガヤと煩いくらいに活気があった。中に入って、掲示板を見ると色々な依頼はある様だが、迷宮産の素材の依頼が多い様に思う。


 掲示板はBランクまでしかないので、Bランクの掲示板を見ていて、気が付いたのだけど、迷宮にはいるみたいだよ!ゴブリンキングとかオークキングとか、ファンタジーのテンプレさんが!心躍るのを我慢して、依頼書を見ていたのだが…、別のテンプレさんがお見えになりました。


「おい、小僧!邪魔だ、どけ!!」

 だってさ。堅そうな革の鎧を着ている、ツルピカ禿げ頭のおっさんが。


 マサキは、のんびりとした表情で、

「お前は何様のつもりだ、ハゲ。俺は掲示板を見てるの、分かる?」

 と言ってやった。


「てめーが見るような掲示板じゃねー、ここはなBランクの掲示板なんだ。背伸びして死んだ奴を、俺は沢山見て来ている。大人しくDランク位にしておけ。」


 どうやら、テンプレさんではなく、口の悪い、人の良いおっさんの様だ。

「ああ、そんな事なら心配いらない、気遣い有難う。」

 と言って、ギルドカードを見せた。


「えー??Sランク??」

 ギルド内部がざわつき始めた。


「ああ、Sランク主席のマサキ・タチバナだ。若い奴を気に掛けているんだな。おっさんみたいな冒険者は嫌いじゃないぜ。」


「すいませんでした!」


「いや、年齢もキャリアもあんたの方が上なんだ。気にしないでくれ。普通に喋ってくれよな。」


「しかし、その歳で主席とは、凄いな。あの超美人魔女に勝ったのかぁ。」


「やっぱり、魔女って呼ばれているのか?」


「ん?ああ、魔女ってそっちの意味じゃないぞ。魔法の魔、だからな。魔法だけで全然敵なしで、自分より強い男にしか興味ないって公言してたからな。体術も相当だって話だし。」


(なんだあいつ、自分で墓穴掘ってんじゃん。)

「なるほどな。」


「で、なんで掲示板を?」


「ああ、最近まで王都にいて、今日この街に来たからな。街の状況を知るのに、掲示板の依頼を見るのが1番分かり易いからだよ。」


「ああ、なるほど確かにそうだね。困っている事が書いてある訳だから。」


「そういう事。だから、依頼は受けないけど見てるんだよ。」


「どうして受けないんです?」


「Bランクの仕事奪っちゃったら、Bランクの冒険者が困るだろ?」


「そうですか。」


「じゃ、今日はまだ忙しいから、またね。」

 とマサキは、手を振った。


 ちょっとギルドで注目を集めてしまったのが、恥ずかしかったので、そそくさとギルドを後にすると、マサキは屋敷に戻ったのである。

 だが、マサキは思った。屋敷に鍵を掛けて出て来たのだから、ゲートで戻ればいいじゃないかと。まだ、魔法陣は繋がっていないのだ。。。バカである。



 ゲートで王都屋敷に戻ったマサキは、1階に適当な部屋がないかと探していた。そう言えば、この屋敷の全部は、まだ見てないんだなと、自分の間抜けさに呆れるのだった。


 1階に執務室が3部屋あった。そりゃあるわな、大公家の屋敷だもの。その1番奥の部屋に入ると、やはり同じ手順で床に魔法陣を描いていき、日本語で「1番」と書いた。


 そのまま、ゲートでローレル屋敷に移動して、インクが乾いているのを確認して、魔法陣に魔力を流した。魔法陣が光り出し、中の文字が回転し始めたのを確認して、再びゲートで王都屋敷の執務室に戻り、火と風の魔法を併せてドライヤ状態にして、魔法陣を乾かした。


 乾いた魔法陣に魔力を流すと、やはり光り出し、中の文字が回転を始めた。それを確認して魔法陣の上に乗ってみた。瞬間的に目の前がブラックアウトした様に思ったが、次の瞬間には、ローレル屋敷の執務室にいた。


 どうやら性交、いや成功した様だ。これで、拠点云々の話は良いよな。いつでも移動出来るんだしね。そのまま王都屋敷に戻り、腹減った~!!と叫んだ。


 食堂に移動すると、霧がご飯と味噌汁、煮物を出してくれた。腹減ったと言うだけでいいのだ。頭がおかしくなっても致し方ないだろう。くノ一娘達が作る野菜の煮物は絶品なのだ。これだけで、ご飯3杯はいける。酒にも合うんだ、特に日本酒には最高だ。


 料理の腕は、スキルレベルなる物があったとすれば、間違いなくレベルMAXであろう。しかし、このくノ一娘達に下手な事は言えないのだ。毎回、美味いと忘れず言えれば良いのだが、言わない日があると、物凄く落ち込んでしまうのだ。

 だから、滅多に美味いとは言わないのだ。そうすると、偶に「美味い」が出ると、凄く嬉しそうにするのだ。


 もう上様の為って言うのが、至上命題らしく日々研究をしているのだ。冗談で、女体盛りが食べたいなんて言った日には、間違いなくやるので、冗談でも言えないのである。



 昼飯を食い終わると、弥助を呼んだ。が、今日は危ない事はなかろうと思ったので、桜と霧に一緒に行くか?と聞いたら、嬉しそうに、お供しますと言うので、連れて行く事にした。


 ゲートを開き、マサキがこの世界に降り立った、湖畔の木の根元に移動した。


 弥助が、首を捻った。

「上様。此処は?」


「ああ、俺は此処に降り立ったんだ。神界からな。」


「じゃ、立花公降臨の地と石碑を建てましょう。」


「やめれ!」

 何て恥ずかしい事を言い出すんだ、こいつらは。



 念の為、大刀だけ異空間から取り出して、革帯に手挟んだ。4人でブラブラと湖畔を北に向かって歩いて行った。しかし、大きい湖だと思う。まだ、北側までは到達していないが、エルスの城が微かに見える程度なのだ。マサキが降り立ったのは、大分王都に近かったと言う事だろう。流石に琵琶湖程あるとは思えないが、半分位は有るかも知れない。


 北側に到達したが、周りは一面草原なのだ。わりと平坦でもあるし、なんで此処には何もないのか、逆に気になる。更に山に向かって歩いてみた。湖から1時間位山に向かって歩いただろうか、振り返って見ると、絶景だった。


 その場で、手を地面につき魔力感知を地中に向けて、探っていくと、そんなに深くないところに水脈があった。さらに下へと魔力を伸ばしていくと、かなり深いところに温泉と思われる水脈があったが、深すぎて現実的では無さそうだ。


 水脈も多いし、小川もあり、湖もあり、水源は豊富なのだが……。農業には抜群の環境だなぁ。此処なら、気候的にも甜菜の栽培が可能じゃないかなぁ。砂糖欲しいよなぁ。まあ、甜菜がこの世界にあれば、だけどね。でも、なんかヨーロッパ風だから、有りそうな気はするんだけどなぁ。夏なのに乾燥気味だし。


 此処から、東へ足を延ばしてみよう。魔力感知を時々地面に向けて撃ち出しながら、進んで行ったが、やはり浅いところに温泉の水脈は無かった。

 まあ、深い所から引っ張れば良いのだけど、面倒なんだよねぇ。掘るのもそうだけど、火山性だった場合、硫化水素とか亜硫酸ガスの処理も考えないといけないし。


 まあいいか、取り敢えず候補地の1つとしておこう。


 その場でゲートを開き、屋敷に戻った。が、

「上様に置いて行かれたー。」

 と椿が喚いていた。


「置いて行ったわけじゃねーよ。桜と霧は、偶々目に入ったから連れて行っただけだ。予定としちゃ、弥助しか連れて行くつもりはなかったんだよ。明日は、お前達の里に行くからな、みんな連れて行くぞ。」

 と言ったら納得していた。忘れてたなんて言えないよね。


 夕方も、いい時間になっていたので、風呂に入って考えてみた。掘るだけ掘って硫化水素が出てしまった場合。ん~、風呂前で飛ばす事は出来るが、湖に近いから溶けたら毒になってしまう。あれ?硫化水素って水溶性だっけ?


 判らないから、止めておこう。甜菜があれば、栽培と製糖工場だけ作ってもいいしな。誰も使っていない土地なんだから、文句も言われないだろう。



 風呂からあがって浴衣に着替え、晩飯をみんなで食いながら少し話をしたが、俺が向こうに拠点を移している間は、転移魔法陣があるなら、向こうから通う事にした様だ。学校もギルドもね。



 この日は、学校の生徒達は休みだった事もあり、のんびりした様だが、俺に会えなかった事が不満だったらしい。ソルティアーナとシリルの目が潤んでいたので、その2人の部屋に順番にお邪魔した。


 ソルティアーナもシリルも1回戦で満足した様なので、寝室に戻ってゆっくり寝ようと思ったら、やはり布団が膨らんでいる。少し考えて、ヘルミナの控室に向かった。

「誰?」


「セレスティーナ様です。」


「やっぱりか。」


 折角なので、ヘルミナと1回戦して、セレスティーナがいるであろうベッドへ向かった。寝ていたので、起こさず寝ようとしたら、起きちゃったので、2回戦して寝ました。


 セレスティーナは、色々エロくなっちゃって、俺の方が困る位なのだ。まぁ、嬉しい事ではあるのだが、あからさまなのは少し恥ずかしいよね。






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