第44話 先生卒業いよいよ冒険者に

 結局、リリアーナ、マリア、ヘカテリーナの3名は、結婚式の日取りが決まってから、引っ越しをした方が無難であろうと言う話に落ち着き、ついに教員最終日を迎えたのである。


 しかし、ユリアナは我慢出来なかったらしく。既に、我が屋敷に引っ越しをして来た。4階は、王女ばっかりなので、3階で良いと言う話になり、セリアの隣の部屋をチョイスした様だ。


 霧とヘルミナが色々考えて、3階の主寝室も俺が使う事になったらしい。なんで?俺の主寝室に呼ぶと色々面倒だろうと、出来るだけ女の部屋に突撃していたのだがなぁ。


 どうも、昼間する時は、3階を、夜は4階でゆっくり寝てくれと言う事らしいが、隣で寝てりゃ一緒じゃねーかと思うんだよ。と言ったら、そういう事ではなくて、ミニスカメイド服とか和服に興奮してやっちゃうのは構わないと、しかしながら、王族がいっぱい来る事になると外聞が悪いので、3階まで攫っていってやれと言う事らしい。ごもっとも。


 とは言え、話が横に逸れた。


 教員最終日を迎えて、今日は終業式なので講義もなく、おっさんはやる事がないのだが、一応最後の挨拶をしに来たのだ。


「うーす。お前達は、前にも言ったが、宮廷魔法師が鼻糞程度に思える位には魔法が使える。だが、力には責任が伴う。成人しているとは言え、お前達の心がそこまで育っているとは思っていない。決して、面白半分で魔法を放つ事がないようにな。

 生活に便利な魔法はバンバン使え。本来、魔法は人間の生活を豊かにする為にあるべきだと、俺は思う。戦いだけが、魔法の使い道だとは思わない様にな。」


「「「「はい。」」」」


「そして、男子生徒諸君。お前達は、宮廷魔法師団に入団する事になる。そして、次男、三男であっても一家を立てる事が可能だ。人材不足の王国にあって、チャンスはいくらでも転がっている。焦ることなく、緩むことなく、精進していく様に。」


「「「「はい。」」」」


「宮廷魔法師団にいれば、偶に揉んでやるけどな。メイドさんのおっぱいを。」


「台無しじゃねーか!鍛えてくれるのかと思ったら、そっちかよ。」


「冗談だ。偶に揉んでやるさ。騎士団にも鍛えてくれって頼まれているしな。」


「騎士団鍛えるってどうやんの?」


「騎士全員VS俺で戦って、俺が一方的にボコる。」


「マジか!!先生最早人間辞めてるな!」


「まぁ、そうだな。それでも、騎士連中も大分腕は上がって来たぞ。基準を俺にすると強くなった気がしないんだけどな。俺もまだ強くなる。だから、修行には終わりはないと思え。」


「先生、まだ強くなるの?」


「あぁ、俺は大罪系悪魔を片手で倒したいと思っている。今はまだ、1対1で戦って互角だからな。」


「え?互角?まじか!!」


「Sランク主席って言う名前は軽くないんだぞ。この悪魔がいる世界では、俺が負けたら、人類が終わるかも知れないんだからな。だから、最強は無敵を目指さなければならないんだ。逃げも負けも許されない。これが、俺が背負う責任だ。」


 クレイブが言った。

「先生の今の言葉、忘れません!」


「お前が代わってくれても良いんだぞ?」


「俺には人類は背負えません、でも頑張って、手伝いが出来る様になりたいと思います。」


「おう、期待してるぞ。お前達と過ごしたこの3カ月弱かな、俺も楽しかった。ありがとな。

 明日からは夏季休暇だ、勉強なんか忘れて海水浴場に女の子を鑑賞若しくはナンパに行くんだぞ!」


「「「「おー!!」」」」


「今日のホームルームは終了だ。解散。」

 こうして、学校教員の依頼は終了した。このクレイブ達との出会いも、掛け替えのない物になる気がしている。



 セレスティーナとシャルロットとシリルが寄って来た。

「先生、帰りに少しお時間頂けますか?」


「あぁ、いいぞ。今日は予定もないしな。」


「では、行きましょう。」

 と、女子全員に引っ張られて、街へ繰り出した。


 女性陣に連れて行かれたところは、例のジャンボパスタ屋だった。

「先生、ここのパスタ好きでしょ?」


「まぁな、量が食える範囲ならだけどな。」


「あの大きい奴をお願いしてあるので、みんなで食べましょう。」


「まじか!あれは妊娠するぞ!俺が!」


「大丈夫ですよ、8人もいるんですから。」


 やがて、山盛り。文字通り山盛りのパスタが運ばれてきた。何度見ても食える気がしない。よく食ったなぁ、俺。

「これ、女子が何人いても食えないと思うんだ。」


「頑張ります。」


 みんなで、小皿を片手にフォークでクルクル巻き取りながら食うんだが、全然減らないんだぜ?俺は、女性陣のスタイルが崩れないかが心配で堪らないんだが…。

 だって、7人全員俺の女なんだぜ。


 結局、俺は頑張った、超頑張った、超絶頑張った。そしたら、なんとか無くなった。もう止めようぜ、こういう勿体ないのは。

「あーーーー、やっぱ妊娠したじゃねーか!」

 マサキの腹は、ぽっこりと膨らんでいた。


 セレスティーナが笑いながら言った。

「しちゃいましたね、てへ。」


「なんで、こんな事考えたんだ?」


「最後なので、先生と生徒である内に、1度だけでも、同じ物を同じ場所で食べたかったんです。先生が旦那様になる前に、友達みたいな事がしたかったんですよ。」


「あぁ、屋敷に帰ると先生じゃなかったな。」


「それに、私達はまだ学校がありますから、暫くは、中途半端な関係になってしまいますから。」


「ふーむ、元々は1カ月の依頼だったんだがなぁ。お前達が望むのなら、屋敷で学校してもいいがな。お触り有りでだが……。」


「ふふ、マサキ様らしいです。でも、冒険者に戻りたいのでしょう?」


「んまぁな、最近ちょっと冒険に行きたい病に掛かってしまった様だな。それでも、お前達を愛している事は、何も変わらないぞ。」


「そこは、疑っていません。ただ、『先生』からの卒業をお祝いしたかったんです。」


「あぁ、俺の卒業式か。それが、この妊娠パスタなのか。」

 と言って笑うマサキだった。


「可愛い奴らめ。まぁ、ありがとう。取り敢えず、屋敷に行って、のんびりしようぜ。俺がお前達にお返しを作ってやろう。」


「えー、怖いですぅ~。」


「お前達に別腹と言うものを教えてやるぞ。」

 そう言って、マサキは美女7人を引き連れ、屋敷に戻ったのだった。



 屋敷に戻ったマサキは、女達を食堂に座らせ、キッチンに入った。

「上様がこんな所に入ってはいけません。」

 と桜に怒られた。


「いいんだよ。俺、料理上手いんだぞ?」


「ですが…」


「いいから、やらせとけ。滅多にやらないんだから。」


 マサキは、卵と牛乳と砂糖を異空間から出すと、超掻き混ぜた腕がどうかなる位掻き混ぜた。そして茶漉しを持って来て、2,3度濾して銀製のコップに入れていった。そして、湯煎だ。


 湯煎している内に、魔法で氷の板を作りだし、中を削って、水で満たした。湯煎がすんだら、そのままコップを水の中へ。


 まぁ、プリンなんだが、おっさんはカラメルは要らない派なので、冷やしたコップを取り出すと、スプーンを添えて、桜に食えと言って渡してやった。

 20個作ったので、女達に出してやった。自分も食べてみたが、牛乳がいいからか、いい味だった。


 食堂へ行ったら大騒ぎだった。

「マサキ様、美味しいです。すっごく美味しいです。」


「ふっ、どうだ。俺の仕返しは。」


「幸せな味です……。」

 とみんな満足した様だ。


「言って措くが、いくらでも食べられると思うだろうが、その位が1番いい量だからな。あんまり食べると漏れなく太る!」

 みんなの表情がピキーンと固まった。


「それくらいなら、問題ないぞ。食べ過ぎれば何でも毒だ。食後の一時の幸せと言う奴だな。」


 セレスティーナがショックな様だ。

「マサキ様は、料理も出来るのですね……。」


「出来ちゃいかんか?」


「私、何にも出来なくて……。」


「そこは期待してねーよ。俺もなかなかやらせてもらえないしな。あー天麩羅とかカツ丼とか寿司食いたいなぁ。」


 桜が言う。

「上様。上様に教えて頂く事は出来ますか?」


「料理?」


「はい。」


「構わねーけど、桜の料理抜群に美味いじゃん。桜の煮物好きだけどなぁ。」


「いえ、上様が食べたい物を作れるようになりたいです。」


「そうさなぁ、追々教えていこうか。」


「お願いします。」


 プリンを作っていて思った。冷蔵庫が欲しい。作ろう、冷蔵庫。付与魔法でいけそうな気がする~。冷凍庫は難しそうだな。側を作るのが。

 断熱材か、ちょっと難問だな、考えよう。



 暗くなる前に、3人を帰したマサキは、今日はもう晩飯は要らないと言い、風呂に入りながら、明日以降の予定を考える事にした。今日の風呂は1人にしてくれと頼んで、風呂場に向かった。じっくりと考えたかったからだが、女達にはどうしてしまったのかと、心配されてしまった。解せぬ…。


 さて、明日からだが、まずはやる事を整理してみよう。湖の北側の調査、ローレルに拠点開設、弥助の里に行く、エルフ王国訪問、迷宮攻略、未開の大森林探索、

弥助の祝言、結婚式、結構あるな。


 明日は、まずローレルかな。ローレルの屋敷を確認して、自由に行き来出来る様に、転移の魔法陣を作ってしまおう。魔石の粉が要るな。昼迄に、これをやってしまいたい。 

 昼からは、湖の北側の調査を半日でやってしまおう。景観と温泉の有無を確認して、道路の敷設が可能かどうか、湖の水質も調べておいた方がいいな。明日はこれで終わりかな。


 明後日は、弥助達を連れて、里へ行こう。昔の日本の文化と言うか、生活様式が解りそうだし、それがどう変化しているかも、また興味あるな。何せ忍びが残っているのだ。忍びも魔法を手に入れて、変わっているのだと思うが、元が謎なので、どうしようもないのだ。


 それが、済んだらエルフ王国かなぁ……。何時になったら迷宮行けるんだろう。エルフ王国から帰ったら、迷宮と大森林だな。迷宮と大森林については、何も知らないので、凄く楽しみなのだ。ここからが、所謂冒険者としても活動だろう。


 そんな風に考えが纏まったところで、風呂からあがった。浴衣に着替えて、リビングへ行った。ソファで酒を飲みながら、今度は国造りについて少し考えて見る事にした。まぁ、保養地として考えると温泉は外せないだろうが、施設的なものより、立地的にどうか。を考えてみた。


 湖の北側であれば景観も良いし、距離的にも王都に近い。逆に近すぎる気もしなくはないが、然したる問題でもないだろう。交通手段が貧弱なこの世界であれば、遠く無い方が良いだろう。サラビスは公国と言っていた。モナコ公国みたいに小さい国であれば、王国内のどこに作っても文句は言われないだろう。


 やはり候補としては、温泉が出れば湖の北側は良い立地と思われる。水源も多いしね。保養地とは言っても、観光立国にする気は全くないのだ。魔物が闊歩する世界で観光だけでは、成り立たないと思うからだ。


 多少のリスクを負ってでも出向く何か、がないといけない。魔道具販売や、学園都市化、豊富な水源を利用して、農作物を色々考えても良いだろう。酒造り、味噌・醤油作り等、やりたい事は、色々ある。


 本物のメイドが沢山いる世界で、メイド喫茶が流行るかどうかは分からないが、公国を秋葉原化してしまうのも有りだろう。魔道具とサブカルチャーの発信都市として。腰元喫茶とかでも良いかも知れん。ただ、普通の喫茶店は必須だと思っている。上流階級にしかない、お茶会の文化を庶民レベルにまで落としたいのだ。


 お茶会と言うと、「~ざます~。」とか聞こえて来そうだが、要は女子会だ。喋り倒すのが生きがいと言っても良かろう女性が、仕事と買い物位しか外出しない世の中なのだ。これでは、流行などないに等しい。


 流行の拡散は、女性の口からと言っても過言ではないだろう。SNSなどないのだから。それ故、女性達の交流の場は必須なのだ。なぜ、流行が必要なのか。それは経済を活性化させる為に他ならない。1度買った服を何年も着られては、服屋が儲からないのだ。これと同じ理屈が、色々な業種で当て嵌まってくる事だろう。


 では、喫茶店で女子会が開かれる為には何が必要だろう。甘味だ。要は、ケーキやプリン、シュークリーム等のデザートと紅茶やコーヒー等のお茶だろう。甘い果実でも良いと思うが、この辺りのデザートの研究が必要になるだろう。


 そして、甘味で必要な物は、甘味料。砂糖が高価な世の中だから、砂糖の精製法の模索、養蜂などの研究も必要だろう。ここまで考えただけで、相当なマンパワーがいるな。やはり日ノ本人の強力は必須だろう。



 当分先になるであろう事は分かっていても、考えておかなければならないだろう。実際に叙爵するかどうかは別として、どこから人を集めるか、何から手を付けるか位は考えておかないとね。


 未開の大森林や、北の未開の森林に国を作るのであれば、爵位なんか必要ないのだ。エルスローム王国ではないのだから。そもそも、王など名乗るつもりはないので、爵位はどうでも良いのだ。絶対王政、中央集権、封建社会などに興味はないのだが、今のこの世界の教育水準では、議会制民主主義は無理だろう。


 現代日本の様な、議院内閣制の政府も腐っているとは思うが、議員代表制は一定水準の教育が必要だろう。誰を選んで良いか分からないからだ。

 議院内閣制の何が駄目だって?政治家が嘘を言おうが何をしようが、多数政党が、あんたが大将と言えば、総理大臣になってしまうのだ。国家元首が直接選挙でない事の弊害だろう。まぁ政治論争をする気はないので、ここらで止めておこう。


 そう言う現状を踏まえると、王制が最適なのだろう。王制の上で国民サービスが行き届く事が重要だろうと思う。そうすると、王を名乗らねば、ならんのだろうなぁ……。


 国造りか……、面倒臭いな、もしかして貴族の方が楽なのでは?では?そんな気はするが、忍び達は差別とは言わないが、忌避されている気がする。ならば、彼らの住みやすい国を作ってやりたいと思うのだ。同じ土地から来た者として。



 などと、取り留めもない事を考えていたが、弥助が目に入ったので、一緒に飲む事にした。

「上様。何か考え込んでましたね。」


「あぁ、明日からの予定と、これからの事をな。」


「ほほう、ついに動きますか!?天下取りに。」


「馬鹿野郎。天下なんていらねーよ。忍びとか、エルフとかって、差別と言うか忌避されているよな?」


「ええ、まぁ。ローレル辺境伯は、ああいう人なんで特に差別はないですが、普通の人には忌避されていますね。まぁ、滅多にないですが、暗殺まで引受ける場合もありますんで。」


「縁談とかもなさそうだなぁ。」


「ありませんね。」


「お前達が、住みやすい国があったら良いと思うか?」


「そりゃぁ、私らも子供が生まれたら、自由に暮らさせたいとは思いますよ。今は、上様の傍にいればいいので、考えていませんが。」


「そうか、俺んところは居心地がいいか?」


「そりゃもう。」


「ふむ……。ローレルに行ってから考えるか。」

 と、一旦考えに蓋をした。



 弥助には、明日の午後は湖の北側へ行くから付き合えと言って措いた。いよいよ冒険だと思うと、なかなか心が躍る。



 この日は、シャルロットと1回戦しただけで、シャルロットを横に就寝したのだった。翌朝、起きて何もせずにいたら、シャルロットに心配されてしまった。

 どうかしたのか、体は大丈夫か、私が何かしたのかと。俺がしないだけで、心配するのは、止めてもらいたい。俺の下半身にも自主規制と言う奴があ……るよね?


 無いかもしれない……。





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