第28話 事件報告会議

 シャルロットの婚約指輪を送ってから、2週間。その間は、学校でエロ教師を務めて、ソルティアーナやセレスティーナとデートをしたり、シャルロットを襲いそうになるのを、鼻血を出しながら堪えたり、それを見ていたシャルロットに爆笑される等の、普通のラブコメを演じていた。

 演じていたんだよ。演じていただけ。地が出ていた訳ではないのだよ、諸君!!


 セベインに出張していた騎士団が帰着した為、報告会が開かれる事になり、マサキも王城への出頭を依頼された。命令ではなく、依頼。そう、セベインに関しては、ギルドを通した依頼でもなく、ただの私怨でやっただけなので、王国職員でもないマサキはあくまで善意の第三者なのだ。


 会議室が用意してあり、執政官も多数含めた中での報告会。王国の西部が壊滅状態の中、これからどうしていくのか、皆が心配そうにしていた。

 王家は、幼少の王子も含めて、全員出席。宰相コーラル公爵、スコット、騎士団からは団長と副官、メアリー。メアリーは何故か俺の横。しかもメイド服だ。


 他には、ローレル辺境伯、ユーリル子爵、ゼグス子爵、マイル伯爵、アクシアン侯爵、グランダ伯爵が領地持ち貴族。後は、財務政務官、領政監視官筆頭、公共工事担当の執政官、交易担当執政官等総勢120名での大会議となった。俺?俺は、シャルロットと一緒にオブザーバー。みーてーるーだーけー。


 だが、1番後の隅っこの席で隠れていたら、メイリーナに見付かって、王族が居る席に連れて行かれた。シャルロットも一緒に。メアリーが舌打ちしたのを俺は見逃さなかったぜ。だが、彼女もツワモノであった。俺の後ろで立って控えていた。


 メアリーを部下にした覚えはないのだがなぁ。まぁ、良いケツしてるんでな。撫でながら話でも聞くか。と思ったんだが、メアリーのケツに手を伸ばしたところで、メイリーナに見付かってしまい、手の甲を抓られて、右手を両手で掴まれてしまった。


 なので、ちょっと実験をしてみようと思い、メイリーナに直接魔力を流し込みながら、【回復リカバリー】【浄化ピュリフィケーション】【復元レストレーション】を掛けてみた。魔力を直接流し込んだ為、メイリーナが七色に光ってしまった。

「あ、やべ!」

 と、思わず声に出してしまったんだが……。


 本人は気が付いていないのだが、めっちゃ光っちゃったもんだから、注目を集めてしまった。そして、光が治まった時、メイリーナが20歳位の女性に変身していた。なんかこう、この場でひん剥いてやってしまいたい衝動に駆られる、妖艶な美女が出来上がってしまった。


 やっちまったな~、と思いながら、サラビスを見たら、目を剥いていた。そりゃそうだよね、メイリーナが美女だとは言っても、33か34だった筈だ。それが20歳前後だもん、最早、完全にセレスティーナのお姉さん。セレスティーナよりも美人なのが、凄いと言えば凄い。だってセレスティーナは超絶美女なんだぜ?


 あとでルチアにもやってあげよう。と言うか、王妃みんなにやってやろう。それで、サラビスには勘弁してもらおう。サラビスにもやってやるか。息子が元気になるかも知れないし。


 なんか会議室がシーンと静まり返ってしまった。まだ、始まってもいないのに、休憩になってしまった。俺は、王族全員に引き摺られて、王の私室へ向かった。

メイリーナだけが、なんでそうなっているのか、気が付いていなかった。


 サラビスがちょっと怒り気味に言った。

「マサキ!メイリーナに何をした?」


「ん?メアリーのケツを撫でようとしたら、メイリーナ妃に手を抓まれて、両手でホールドされたんで、ちょっと実験を。」


「何をしたら、メイリーナが七色に光るんだ?」


「ああ、あれか。あれは俺も吃驚したな!メイリーナ妃に手を握られて悪さを出来ない様にされていたから、メイリーナ妃に直接魔力を流し込んで、回復魔法と浄化と復元魔法を使っただけだが?まあ、15も若返るとは思わなかったがな。」


「七色なのは、何故なのだ?」


「俺の魔法適正は全属性なんだ。だから全ての属性が均等にあるから、7属性の七色に見えるんだ。ルチア妃にもやってみるか?

 30を超えていないと、ちょっと怖いが。背が縮む事はないから、18未満になる事はないと思うがな。実際の年が若返っている訳では無くて、体内の細胞って言って分かるかな?まあ、体を構成する組織が若く活性化しているんだ。

 サラビス王にもやってみようか?夜、元気になっちゃうかも?」


 メイリーナは首を捻っている。

「私が、どうかしたのですか?」


 セレスティーナが答える。

「お母様が、お姉様になっています。」


「え?」


「姿見を見て下さい。」


 メイリーナは姿見の前まで行くと、

「まぁ!」

 とニッコニコだ。


 サラビスは、ルチアにやる前に、自分で試せと言う。

「簡単に出来るのなら、俺で試してくれないか?」


「ああ、いいぞ。」

 と言って、サラビスの両手と両手を繋ぎ、魔力を循環させて、【回復リカバリー】【浄化ピュリフィケーション】【復元レストレーション】と、掛けてみた。やはり、サラビスは七色に光った。

 光が治まると、24,5歳のイケメン王が出来上がっていた。


「これは……、体力が戻った様だ。王子が大きくなるまで、頑張れそうだ。」


「ただなぁ、男はいいんだ。問題は、メイリーナ妃は、乙女になっちゃってるカモ?普通は、回復魔法とかって、外から掛けるじゃん?だけど、体の中からやっちゃってるから、体の中身まで復元しちゃってんだよね。だから、子供を産んだ事が無い体に戻っている感じ?じゃぁ、セレスは誰の子だって話だが……。まぁ、お姉さんでいいか!!」


「よくねーよ!!」

「良くないです!!」


「やっちゃったもんは仕方ないだろ?暇だったんだから。」


「いや、それは良いんだが、皆が見ている前でやってしまったからな。依頼が殺到する恐れがあるぞ。」


「あ……。まぁ光るのは予想してなかったからなぁ。まぁ、あんまりうざったい様なら、旅にでも出るさ。行きたい所もあるしな。」


 結局、ルチアとシルティーヌのお母さんのシルビアの2人に同じ事をしたんだが、どっちも娘より美人な気がする。サラビスの種はアレなのか?でも、娘達も超美人なのだ。もしかすると、若返ったのではなく、魔法で美人になるのかも知れないと考察したのである。


「これで、会議室に戻ったら、大騒ぎになりそうな気がするのは、俺だけか?」


 メイリーナは言う。

「なるでしょうね。本物の王はどこに?とか言われそうな……。」



 まぁ、予想通り、会議室に戻ったら大変だったなぁ……。大騒ぎだったが、やっと落ち着いて、会議が出来る様になった。


 騎士団長から、事件のあらましが説明され、領主カリグラ・フォン・セベイン辺境伯が盗賊団を使って、帝国から女性を誘拐していた事、その女性達をオークションに掛けて売買していた事、悪魔召喚をしていた事、明るみに出ない様、元宰相カルバロに多額の現金が渡り、報告が止まっていた事、セベインのギルドマスターが悪魔隷属されていた事等が説明された。


 騎士団長は更に続ける。

「盗賊団については、マサキ・タチバナ殿により、殲滅された。領主カリグラ親子もタチバナ殿により領主館もろとも消滅。また、召喚された悪魔は中級上位の悪魔だったが、これもタチバナ殿によって討伐焼却処分された。

 領主館を更地にする前に、タチバナ殿に指示を受けた騎士団により、オークションや金の流れの判る書類その他の押収は済んでいる。隠し金庫にあった金銭も押収済みである。

 中級上位の悪魔と言えば、普通に戦ったら、どれだけの被害が出るかを解らない様な人間は、この場にいないと思いたいが、セベインの領政監視官はいるか?」


 一人の男が手を挙げた。

「はい。」


「其方は、この悪辣な企みに気が付かなかったと?」


「はい。税率は変わっていませんでしたし、オークションについては、存在も知りませんでした。」


 マサキは、顔色一つ変えずに、淡々と嘘を並べる監視官に殺気を向けた。そこにメイリーナが、マサキの右手に手を添えた。今はまだ駄目ですと顔に書いてあった。仕方ないので、殺気を収めた。

 それを見たシャルロットは、凄いなと素直に思った。


「それでは、監視官は全く気が付かなったと言う事で間違いないか?」


「はい。その通りです。」


「次に、オークションにて売買された女性についてだが、何か知っている者はいるか?」

 と、次の話題に移った事で、監視官は安堵の息を漏らした。


 女性について知っている、なんて言う奴はいないわな。極秘会員制なんだから、手を挙げる奴なんかいる訳ないのだ。

 恐らく、最後の慈悲なのだろう。


「では、いないと言う事で話を進める。今後の王国西部の行政担当者を決める前に。今から呼ぶ者は、その場で立ち上がって欲しい。」


 上手いよね、行政担当候補みたいな話の持っていき方。


「オンズロー男爵、ゴドウィン子爵、ヒーリー男爵、アクシアン侯爵麾下ブーリン男爵、モウブレー子爵、セベイン監視官レッグ男爵。以上6名は前へ。」


 なんか、6人とも嬉しそうに前に出て来る。サラビス……舐められ過ぎだろ。


「近衛、6名を捕縛連行!」


「「「「はっ!!」」」」


 監視官は声を上げる。

「え?何故です?」


 騎士団長は、書類の束を見せて、アホかと言う顔で言った。

「ここに人身売買の記録がある。未成年の女性を買い漁り、不埒な事をしていた証拠だ。貴族以外の商人は全員捕縛済みだ。監視官に至っては、セベイン辺境伯から金をもらって転んでいた事も解っている。女性をもらっていた事もな。

 言い訳は、後の事情聴取で聞こう。」


 アホ達は連行されて行った。が、マサキは気に入らなかった。

「騎士団長。アクシアン侯爵の関与は?」


「ここにある書類上は、関与はないです。」


 マサキはちょっとキレ気味だ。

「トカゲの尻尾切りじゃないだろうな?どうなんだ?アクシアン侯爵。俺は王都から西側は全滅だと思っているんだが?」


「何故、そんな事を貴様に言わねばならん。」


「ほう、それは俺に喧嘩を売っているって言う事で良いか?」

 マサキは殺気をぶつけた。


「な、なぜ、そうなるのだ。」


「そもそも、王都に西側の情勢の情報が、耳障りの良い事しか入っていないんだよ。セベインだけじゃない。馬鹿宰相の所業もな。ならば協力者が居なければならんだろう?俺が口を開いた事の意味を考えろよクズ。」


 アクシアン侯爵は黙ってしまった。それが全てを物語っていた。

「馬鹿宰相からも、セベイン辺境伯からも金もらってたろ?」


「・・・・・・。」


「アクシアンとサンドルの領政監視官も捕縛しておけ。アクシアン侯爵もな。領政監視官筆頭も捕縛しておけ。叩けば埃しか出ないだろ。」


「横暴だぞ!」

 領政監視官筆頭が声を上げる。


「馬鹿か、てめーは。部下がこれだけ不始末を仕出かしているんだ、責任がないとは言わせねーぞ。こんなんだったら、筆頭なんて人形でも置いておけ!

 役に立たない官吏等ゴミクズ以下だ、馬鹿野郎。」


 騎士団長は、近衛に捕縛の指示を出した。


 マサキは、騎士団長を呼んだ、そして小声で話をした。

「騎士団長。点で捉えては駄目だ。今回は、辺境で起きていると言う事は、そこまでの道筋で情報を止めている奴がいなければならんだろ?そういう事を考慮して調査しないとな。

 あと王都の執政官、政務官だが、行商人は情報に敏い。役人から情報が入らないとしても、行商人は絶対に情報を持って王都に来ている筈だ。その情報を誰が止めていたかを探った方が良い。」


「なるほど、勉強になります。すぐ調査を始めます。」


 マサキは、これじゃ、正常化には程遠いとウンザリしていた。

「なんかアホ過ぎてめんどくさくなっちゃったなぁ……。帰るか……。」

 と呟いた。


 メイリーナが手を掴んで言う。

「何が気に入らないのか、教えてくれませんか?」


「なんかさ、王家はまともだけど、貴族家がクソばっかじゃん?今まで貴族を処罰するとか、して来なかったんじゃないのか?」


「そうねぇ、貴族を処罰はあまりしてないわね。」


「処罰されないから、図に乗るんだよ。自分達は選ばれた人間だ、とでも思ってんじゃないのか?くだらない。何も動かないで自浄作用を期待しても無駄だぞ。なんて言うのかなぁ、全てを各々の良心に期待しすぎだ。」


「どうすれば良いのかしら?」


「それを俺に聞くのは、お門違いと言うものだろう。俺はこの国に所属している訳じゃないし、今回はただ、放っておけなかっただけだからな。」


「そうねぇ。」


 マサキはなんかバカバカしくなってしまい。後は寝ている事にした。腕を組んで瞑目して、寝に入った。




 その後、王都から西の領主を決める事になり、帝国と同盟に向けて首脳会談を行う事になった等の報告がなされ、順調に会議は進んで行った様だ。

 マサキは、後は好きにしてくれと言う態度で、目を瞑っていた。



 マサキは、何かに疲れていた。それが何なのか、判らなかったが、疲れていた。何がそんなに疲れるのか考えてみたが、答えは見つけられなかった。


「なぁ、メイリーナ。何か疲れているんだけど、何がそんなに疲れるか判らんのだが、どうすれば良いと思う?」


「私で良ければ、癒してあげるわよ?」


「また、そんな事言ってんのか。もう、そう言うの止めようぜ。却って疲れる。」


「本気なんだけどなぁ……。」


「それ以上言うな。」

 と言ってマサキは席を立った。




 会議中にも関わらず、マサキは、もうそこにいるだけで疲れる事に気が付いた為、

城から出て自室に帰る事にした。


 帝国との会談が済めば、もう用はないな。と考え、旅をするにも何処へ行こうか考えていた。シャルロットは、18歳になったら迎えに行けば良いし、セレスティーナは……、別に良いよね。


 最近、セレスティーナに会っていない。会う気になれないのだ。なんでだろうなぁ、なんか不安定な自分に嫌気が差している。


 弥助と飲もう。それが1番良い気もするし、スコットも誘って3人で飲むのも良いだろう。女の相手に疲れているのかもな。でも、シャルロットと一緒にいるのは、悪くないのだ。



 ギルドの自室に戻り、桜に酒の支度をしてもらった。


「弥助。相手してくんね?」


「いいですよ。何かありましたか?」


「いやな?最近なんか疲れるんだよ。何に疲れているか、分からないんだけどな。なんか不安定な自分に苛つくと言うのか、自分らしくいられなくてな。」


「そうですか、セレスティーナ嬢には会っています?」


「なんか会いたくなくてな~。」


「私はね、上様。自分の気持ちに、正直になって良いと思うんですよ。上様がここんところ、ずっと思い悩んでいた事が、関係していると思うんですよ。それを無理矢理心に閉じ込めてませんかね?」


「確かにそれはあると思うが、しかし……。それが原因だとするなら、弥助。旅に出ないか?国内でも国外でも、この世界に来てまだ、俺は何も見ていないと思うんだ。この世界に降り立って最初に会った人物が弥助、お前だ。

 弥助達と世界を放浪するのも、有りかなとは思っているんだけどな。ここ最近はずっとそんな事を考えていた。」


「上様。逃げちゃいけませんぜ。」


「逃げる?逃げ……か。だが、許される事じゃないし、俺が許したくないんだよ。俺があの日の間男になってしまう位ならいっそ……と考えた事もある。」


「ですか。ですが、上様が上様の心を認めてあげなくちゃ、上様の心は誰が助けてくれるんですかね?

 私はね、セレスティーナ嬢に苛ついているのは、何もセレスティーナ嬢が子供だからってだけじゃないと思うんですよ。

 無意識にそこを避けちゃってるんじゃねーかと思うんですがね。だから間男になれってんじゃねーんです。

 まずは、上様の気持ちを認めた上でどうするかを考えましょうや。

 上様仰るじゃないですか、思うのは自由だと、その思いをまず認めましょう。その上でどうするか、ですよ。」


「そうか、思ってもいけないと考えていたのか……。なんか腑に落ちる。」


「その上で、上様が旅に出るってんなら、どこまでもお供しますよ。」


「弥助。やっぱ酒は男同士が良いよなぁ…。」


「ですね。私もそう思います。」


 2人で日本酒を飲みながら、そんな話をしていた。何を自分が苦しんでいるのか、弥助は分かってくれていた。有難い事だ。

 俺は、メイリーナが欲しいのだ。愛してしまったのだ。だから、セレスティーナの顔を見たくなかったんだろう。やっと理解出来た……。



 昼間から飲んでしまったが、時には酒に逃げるのも有りなんだなと、今更ながらに思ったマサキであった。


 なにかスッキリしたマサキは再び王城に行く事にした。









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