第21話 腹減った!!!
悪魔騒動が起きてから、1週間が経った。学校では相変わらず講義をしていたが、そろそろ休みを利用して、帝国へ行きたいと思っていた。
ゲートを開通させる為、1度空を飛んで、帝国まで行ってみた。自分の体を結界で包み、時速300Km程度で飛んでみたら、5時間半位で着いた。これは疲れる、魔力がゴリゴリ削れて行く感じなんだよな。それも、速度を上げれば上げる程。
そう思うと飛竜って便利なんだなぁ。航空力学を使って飛行機を作ろうとすれば、当然滑走路が必要だし、離陸する時の速度は、やはり時速300Km程度必要で、浮いてからも速度を維持する必要がある。セスナの様なプロペラ機は、そんなに必要ないんだろうが、精々4人位しか乗れないだろう。
滑走路が必要ない、ヘリコプターはどうだろう。飛行機よりも、もっと技術と計算が必要だろう、煩いしね。
やはり、ここは魔法のあるファンタジー世界。空を飛ぶ船は必要だろう。出来れば理想的なんだけどなぁ、滑走路がいらなくて、海にも着水出来る。動力が魔力だから煩くないしね!
挑戦してみるか、戦争の種になりそうでウザいけど自分達が使うだけで、売り出さなければ大丈夫だろう……。大丈夫だよね。
まあ、広範囲殲滅魔法があるのだ、今更だよね。
帝国の帝都付近に降り立ち、街中に入ってみたが、適当な場所がなかった。仕方がないので、冒険者ギルドに立ち寄って、個室を確保して措いた。
家を買ってしまった方が早いのか……。だが、それなりの人数分、いや、ゲート開くだけだから、狭くて良いのか、失敗した。計画性の無さがこう言うところで、仕事を増やすんだな。
やはり、ギルドに突然現れるより、家を買ってしまう方が良いだろう。買い物拠点にして、王都で売り捌くのも有りだろうしね。そんな訳で、再び冒険者ギルドに戻り、冒険者に斡旋している家はないか、尋ねてみたら、意外と沢山あった。
何が有るか分からないから、風呂は必要として、何が有るか分からないからね。なんて考えてたんだけど、管理する奴がいないんだから、小屋程度で良いんだ。
大きな屋敷が欲しくなれば、皇帝の治療の報酬に、分捕れば良いんだしな。そして、工房付きで2部屋ある家があったので、そこを購入した。
即金で良いと、ギルドのお姉さんにギルドカードを渡して、引き出してもらったら、Sランクのカードにも驚いていたけど、預金額を見て目を剥いていた。
「あのぅ、Sランクの方にはギルド内にお部屋をご用意出来ますけど?」
「いいの、いいの、悪の秘密結社を作るだけだから。あんな事やこんな事、あーんな事までしちゃうからな、ギルドの内部では困るだろ。」
「全然わかりませんが、タチバナ様が、それでよろしいのでしたら。では、これで手続きは終了です。こちらが鍵と簡単な地図です。お持ちください。」
「はい、ありがとう。」
冗談の通じない堅物の受付嬢だったなぁ、美人ではあったけど。やっぱり、俺にはセリアが1番合うな。あ、受付嬢の中ではって言う話だぞ?
誰に言い訳をしているのか分からないが、地図を見ながら歩いて行くと、結構遠かった。が、その分、帝城?皇居?まあ、城が近くなった。
鍵を開けて、中に入ると意外に広かった。何故、工房付きにしたのかって?それは、色々作りたいじゃないか、良い匂いの石鹸とか、ローションとか、精力剤とか媚薬とか?
ま、それは冗談としても、ちょっと試してみたい事があって、魔道具作成工房にしようと思ったのだ。精力剤や媚薬なんて物は、薬研と擂鉢があれば出来るしね。そもそも、あんな物は下手くそが使えば良いのだ。
それに、必要だと思えば、桜が作ると思う。そっち方面のくノ一の知識と技術があれば、大人のおもちゃ屋さんが開けるだろう。
一通り、家の中を見て回り、中から鍵を掛け、ゲートを開いて、セレスティーナの部屋に直接移動した。移動してすぐ、セレスティーナの手を取り、ソファに座って膝の上で横抱きにして、両手を回してホールド。
「マサキ様?これは少し恥ずかしいのです、嬉しいですが。」
「駄目だ、お前はちょっと目を離すと、何をされて帰って来るかわからん。心配で仕事にならん。拘束しておくのが1番簡単だ。」
「あれこれ、有り過ぎましたからね……。信用はないですよね。」
「信用の問題じゃない。俺が心配なだけだ。うーむ、魔道具でガードするか。よし、魔道具をいっぱい作って、ジャラジャラ成金ババアみたいにしてしまおう。」
「そんなの嫌です~、可愛くして下さい。」
「大丈夫だ。俺のセレスは、何を着けても美人だからな!悪趣味な成金ババアになったとしても愛してやろうじゃないか!」
「イヤですー!!」
「ふっ…、お前に拒否権はない!」
「いやぁぁぁぁぁ。」
何て言う、バカップル会話をメイドさん達が微笑ましく見ていた。心配で仕方ないマサキは、ポンコツになりつつある様だ。
「腹減ったな、飯行こうぜ。」
「はい。」
と言って、そのまま立ち上がり、お姫様抱っこのまま、食堂へ向かおうとしたら、セレスティーナに恥ずかしいから、降ろしてくれと懇願されたので、降ろしてやり、代わりに、ソルティアーナを拉致して、お姫様抱っこして食堂に向かった。
「マサキ様?どうして、ソルティアーナを抱っこしているんですか?」
「お前が嫌だと言うからだ。」
「ソルティアーナは関係ないですよね?」
「馬鹿だな、お前達王女は、直ぐ悪戯されて帰ってくるだろ?それに両方婚約者なんだから関係あるだろ。ソルティアーナは文句言わねーし。」
ソルティアーナは、文句を言わないのではなく、真っ赤な顔して、恥ずかしくて声が出せなかっただけなのだが。
「これから、セレスは足で転がしてやろう。」
「嫌ですぅぅぅ!!」
「ソルティアーナって長いよね。ルティでいいか?」
ソルティアーナは嬉しそうな顔で、お姫様抱っこされたまま、首に抱き着いた。
「はい。その方が良いです。」
「そうか。うんうん、愛い奴め。」
セレスティーナは、不貞腐れて言う。
「狡いです!ソルティアーナばっかり狡いです。」
「何言ってんだ。お前が嫌だと言ったんだろうが。ルティの方が可愛いんだから、仕方ないだろう?」
「私は、捨てられたのですね……。」
「うん。」
「いや、そこは嘘でも『そんな事ある訳ないだろ。愛してるよ。』とか言って下さいよ。悲しくなっちゃうじゃないですか。」
「愛してるよ、嘘だけど。こうですか?」
「もう!知りません!」
「怒ったセレスも可愛いなぁ。」
セレスティーナは、両頬を押えて、赤くなった。
「そ、そうですか。」
マサキとソルティアーナは顔を見合わせて、笑った。
「チョロいよね?」
「チョロ過ぎますね。」
食堂に到着し、ふっと思った。
「なぁ、抱っこしてると食べにくいのな。」
「私が食べさせてあげますよ?」
とソルティアーナが言った。
「駄目だ。違う食べるに聞こえる。理性が吹っ飛ぶ前にやめておこう。」
とソルティアーナを降ろした。
3人で食事をしていたら、シャルロットも食堂へ来た様だ。4人でテーブルを囲んで食事をしながら考えた。
「俺って、何しに王城来たんだっけ?」
「さあ、突然ゲートから現れましたからね、どこから飛んできたんですか?」
「あーそうだ。帝都に家を買って、そこから飛んで来たんだった。シャルロット、今からデートにいくぞ。帝都にな。」
シャルロットは、何故か嬉しそうだ。
「デートなんですね?デートなんですよね?間違いないですね?」
「あ、いやー皇帝んところ行こうと思っただけなんだけど……。城入れないし。」
「遊びだったのね?グスッ……信じてたのに……。」
あれ?なんか周りの視線が痛いわ。
「まだ、遊んでないよね?」
「私を、おもちゃにした癖に。」
「いや、してないよね?」
「私を弄る玩具にしたじゃないですか!」
「お前さ、態と誤解を招く様な言い方してるよな!」
シャルロットは、笑いを堪えながら、幸薄い女を演じていた。
「幼気な乙女を弄んで、誤解はないですよね?」
「弄んでないよね?セレス、タスケテ。」
セレスティーナは、顎に指をあてて、少し考えた。
「シャルロットさんは、マサキ様が好きなのですか?」
「そんなの当たり前なのではなくて?同じ講義を受けているのですから。あの教室で、マサキ様に心を奪われていない女は、いませんよ?」
「そうでしたね。全員落ちちゃってますね。マサキ様、シャルロットさんも、もらってしまいましょうよ。」
「何言ってんだ、このポンコツ王女。じゃ、エルスローム王家からは、1人いればいいから、セレス返品な。これでバランスが取れそうだ。」
「どうして、すぐそうやって虐めるんですか?」
「だってさ、ルティは色々見ちゃってるし、セレスティーナ姫は、ケツすら触った事ないから、問題なかろ?第二王女様。」
「じゃぁ、脱ぎます!」
と言って、セレスティーナは立ち上がった。
「待て待て、俺が悪かった!!そう言う訳だから、シャルロットすまんな。」
シャルロットは、だから何?って顔だ。
「じゃぁ、戦争ですね。同盟を結びたいと言いながら、嫁枠も譲って頂けないのですから、これはもう同盟どころの話ではありませんね。」
「いやいや、おかしいよね?王家と俺は関係ないし。」
「いいえ、これはもう、セレスティーナさんに譲って頂くか、マサキ様に増やして頂くしかないのですよ?」
「だってさ~、住むとこないんだよ?」
「城を建ててしまいましょう、その位のお金なら、王家と皇家が出すでしょう。」
「いやな、金がない訳じゃないんだよ。希望する様な土地が、見付からないだけなんだよ。シャルロットもさ、こんな根無し草なんかやめておけ。物好きなんだよ、こいつらはな。」
と言って、マサキは、セレスティーナとソルティアーナを見た。
シャルロットは、堪えてもいない。
「どんな土地が良いのです?」
「取り敢えず、エルスローム王国内で、海と川か湖が近くて、温泉が湧く土地。魔物はいくら居ても、構わんのだけどな。殲滅すれば良いのだから。まあ、気楽に探してみるさ。」
「何か目的があるのですね?」
「そりゃそうさ、言わないけどな。」
「私達の卒業までに、住む所くらいどうとでもなるでしょう?私は、そんなに魅力がありませんか?」
「魅力は、あるだろ?と言うか、寧ろ涎が出そうな程の魅力的な女性だと思うぜ?まあ、今はそんな事言ってたって仕方ないだろう。取り敢えず、皇帝んところ行くぞ。今は、やるべき事をやり、成すべき事を成す。話はそれからだ。」
ソルティアーナが呟いた。
「恰好いい……。やるべき事やり、成すべき事を成す……ですか。」
ソルティアーナは意味深な笑みを浮かべて、何かを考えていた。
シャルロットは、仕方ないなという顔で言った。
「仕方ないですね、お父様にお願いしてみます。色々と。」
セレスティーナは、ソルティアーナが何を考えているのか。が、少し心配だった。マサキは、シャルロットを伴って、ゲートを開き帝都の家に移動した。
玄関を出て、城に向かって通りを歩きながら、マサキが口を開いた。
「シャル。」
「まあ。シャルと呼んで下さるのですか?」
「シャル。お前は、俺なんかで良いのか?周りに流されていたりしないのか?」
シャルロットは立ち止まった。マサキの何時になく真剣な表情に、しっかり考えを纏めて、真剣に返事をしようと思ったからだ。
「マサキ様。最初はお父様に言われて決めた留学でしたし、出来ればマサキ様と
ですが、マサキ様の講義を拝聴し、刺客への鮮やかな対応。的確な先手を打つ等、この人はどこまで先を見通しているんだろうと、思いました。
マサキ様が、無類のエッチ好きな性格であるのも、承知しておりますけれど、妬まれる事もなく、王国内でも大事にされているのが分かっています。
マサキ様を女誑しと見る向きもある様ですが、私はこう思います。無類の人誑しであると。だから国王様からも信頼されています。そんなマサキ様に私は、皇女としてではなく、1人の女として、恋をしています。心からお慕い申し上げます。」
マサキは、真剣に答えを出したシャルロットに向き直ると、こう言った。
「俺に出来る事と言えば、死ぬまでシャルを愛しぬく事、くらいしかないのだが、それでも良いか?何も持っては、いないのでな。」
「充分です。好きな殿方のお嫁さんになる事が夢でした。皇女には適わぬ夢でした。何も要りません。ただ、貴方が居ればそれで良いです。私の全てを捧げます。
貰って下さい。」
「分かった。必ず幸せにしてやるとは、烏滸がましくて言えないが、俺の生ある限り、シャルを愛しぬくと誓おう。」
「はい。嬉しいです。」
シャルロットは大粒の涙を流していた。その顔もまた、美しいとマサキは思うのだった。
シャルロットの涙が治まるまで、待っていたマサキは、3歩シャルロットに近付くと、左肘を出した。シャルロットは嬉しそうに、右手で掴まり身を寄せた。
マサキは、左肘に感じる、シャルロットの胸の感触を楽しみながら、城に向かうのだった。
シャルロットが感動しているのに、下心満載のマサキは、やはりロクデナシなのだろう。
城の表門で、シャルロットが話を付け城内に入れてもらった。取り敢えず、皇帝の寝所へ向かう事にした。
城は、エルスの城よりは若干小さいものの、勇壮で中も豪華な装飾品で飾られており、正に「ザ・皇帝」と言う感じがした。どういう感じかサッパリわからないが、煌びやかな城内であった。
シャルロットに腕を引かれるまま着いて行った。途中、執事風の男に何某か指示をしていたが、興味がなかったので、聞いていなかった。
皇帝の寝所に辿り着くと、ノックをして「シャルロットです。」と言いながら、扉を開けて入って行った。ここまで、マサキはされるがままになっていた。
皇帝の寝所に入ると、皇妃と思われる女性が3人とメイドが3人いて、執事が1人付き添っていると言う具合だった。そして、ベッドの脇には皇子と思われる人物が1人いた。
「お兄様。ただいま戻りました。」
皇子は、優しい笑みを浮かべて、
「シャルロット、お帰り。元気にやっているかい?」
と聞いていた。
「はい。ご紹介しますね。Sランク冒険者主席で、私の恩師でもあります、マサキ・タチバナ様です。」
紹介された、マサキは胸に手を当て紳士の礼をした。それを見た、シャルロットは驚愕の表情を浮かべていた。が、何も言わなかった。
「私は、ガイザス帝国第一皇子ルキウス・ガイザスと申します。お初にお目に掛かります。タチバナ殿。ルキウスとお呼び下さい。」
「俺は、マサキ・タチバナだ。マサキで良い。今日は、皇帝陛下の容態の確認と、シャルロットをもらい受けに来た。」
シャルロットが、目を大きく見開いて、顔を赤くしていた。
「そうですか、それは有難い。皇帝の顔も見て下さい。」
マサキはベッドに向かうと、皇帝の顔を見た。今は、寝ている様だ。
妙に唇の色が赤い気がする。マサキは布団を捲って、手の爪を見た。白い斑点だったり線だったりが爪に出ていた。手を元に戻し、布団を戻してやった。
「皇帝は、食事は摂れているか?」
皇子は首を振りながら答えた。
「最近は、流動食も喉を通らない様です。水分だけ補給している様な状態ですね。」
「薬は飲ませているか?」
「はい。水分に混ぜてですけどね。」
マサキはうでを組んで考え込んだ。
(良く生きている。恐らくヒ素中毒だろうが、人口呼吸器もなく、ただ漢方の様な薬しかない世界で、これは、凄い生命力としか言えないだろう。やはり、魔法の知識を広める必要があるな。怪我であれば【
マサキは、体内で魔力を練りながら、皇帝に掛かっている布団を全体的に剥がすと、左手を翳した。魔力を薄く体の中にぶつけながら、どこにヒ素が溜まっているかを調べていった。
胃腸と腎臓と肝臓が駄目な様だ。
「多臓器の不全か……、いけるか?まあ、これじゃ、もって1週間だろう。やってみるか。」
と、マサキは呟いた。
皇子は何をするのか不安だったが、シャルロットが胸の前で両手を握り締めているのを見て、大丈夫なんだとマサキに向き直った。
マサキは、頭から大腿部までをゆっくりと【
この間、何度も皇帝が光るのを見ていたシャルロットは、尊敬の眼差しをマサキに向けていた。
再び、マサキは皇帝の内臓に、魔力を軽くぶつけて触診していた。良さそうだがなぁ、弱っていたからなぁと考えていたが、胃腸が急に活性化しだした。唇の色も戻った様だし、大丈夫だな。と、一安心した。
「誰か、食事の準備を。多分、腹減った~って起きると思うぜ?」
とマサキは皇子に伝えると、部屋から出て行こうとした。
扉に向かうマサキの背中に「腹減った!!!」と豪快な言葉が聞こえて、ニヤっと笑みを浮かべたマサキは、満足そうに、扉に手を掛けたのだった。
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