第15話 授業
さて、今日はJKをナンパしに行く様なもんだな。我ながら馬鹿じゃないかと思うのだが。18歳以上は1人もいない訳だから、生殺し確定なのに、何を燥いでいるんだか、なんかどうでも良くなってきたなぁ。
少し早めにギルドを出たものの、魔法学校何処ヨ。という訳で、セリアを引っ張り出し、尻を撫でながら行こうと思ったら、外は流石にやめようよ、と言われて、それもそうかと納得して歩いているところである。
まぁ、王都がアホみたいに広いのもあって、魔法学校まで遠い遠い。これを毎日はうんざりするなぁ。明日からはゲートだなと思ったが、生徒に見せたくないし、後で考えようと結論を先延ばしにした。
「セリア、こんなに遠いのに、みんな歩くのか?」
「循環馬車を使うか、歩くか、貴族家は馬車ですね。」
「王都を循環する馬車があるのか?」
「ありますよ?マサキ様が来てから、2カ月位経ってますけど、見た事ないですか?」
「ん~覚えがないな。」
「面倒だったら、朝、王城へ行って、セレスティーナ様と同伴で行けば、良いじゃないですか?」
「なんで、朝からあいつと、喧嘩しなきゃいけないんだ。」
「それは、マサキ様が、余所見ばっかりしてるからですよ?」
「ああ、俺の味方は誰もいないのな……。セリアだけは、俺を愛してくれていると思っていたのになぁ……。」
「愛していますよ、勿論。あ、ここです。」
「おう、ありがとな。仕事を終わったら、涎を垂らしながら帰るから、サービスしてくれよな~。」
「はーい。色々脱いで待ってまーす。」
セリアは手を振って帰っていった。セリアは気楽に付き合えて、冗談が通じるところが、俺には非常に居心地が良い。桜とセリアで2トップかな。
なんか大袈裟な校門を入って、生徒達とは違う正面玄関があったので、そちらを入って、近くにいた男子生徒を捕まえて、校長室の場所を聞いた。なかなかイケメンな好青年だった。
校長室に辿り着くと、ノックをして、返事がなかったけど、入室した。校長がいないので、ソファに座って寝る事にした。
暫く、ウトウトしていたが、飽きて来たので、帰ろうと思ったら、校長っぽいおっさんがいた。
「誰も居ないし、暇だから帰ろうと思ったんだけど?」
バーコード頭のおっさんは、キッと睨みながら言った。
「君は?勝手に入っていたのかね?」
「俺は、Sランク冒険者のマサキ・タチバナだ。依頼の件で来たんだが?お前が校長か?」
キーッと聞こえて来そうなヒステリックな顔で、
「私は教頭のバーナードだ!」
と、怒鳴っていた。
「ここ校長室だろ?お前関係ないじゃん。バーコード教頭。」
「バーナードだ!」
「あぁ、何コードでもいいや、校長どこ?」
「コードじゃない!」
「面倒臭いな、お前。永遠に眠っておくか?」
等と、不毛な会話をしていたら、身嗜みのしっかりした、茶色のスーツの様な物を着ている、おっさんが来た。
「何事かね?」
「はい。校長、この失礼な冒険者が勝手に入ったんです!」
「俺は依頼で呼ばれたから来たって言ってんだろ?ハゲ。そんなヒステリーで、教職が務まるのか?バーコード教頭。」
ぬぐぐぐっと教頭が顔を赤くして、歯を食い縛っている。
「それは、どう言う意味かな?マサキ殿。まあ、座って下さい。」
と言って、ソファを勧めてくれたので、素直に座った。
「ん?ヒステリーの件?」
校長は、ニコやかに話してくれた。
「そうそう、教員は割と怒って育てる方が多いからね、君の見解を聞きたいんだよ。あぁ、忘れていた、校長のルイス・フォン・ボイルだよ、よろしく。」
そう言って、右手を出して来たので、握手した。
「俺は、Sランク冒険者マサキ・タチバナだ。こちらこそよろしく。
まぁ、年齢にもよるんだろうけど、子供って言うのは、怒られると、怒られたと言う事実だけを覚えているんだな。何故、怒られたか?を覚えている子供は少ない。
だから、何度も同じ事で怒られるし、人が見ていなければ、何をしても良いと思ってしまう。
例えば、計算が出来ない子に『何で出来ないんだ!』って怒るより、どこが解らないのかを聞いて、『こうすれば出来るよ。』と教える方が教職だよね。前者は、やり方は自分で調べろ、とにかく出来ろと言っているだけだからな。」
「なるほどな、その方が建設的だね。」
「国全体の教育水準を上げていくのなら、落第する子を減らさないといけない。要するに、なんとか出来る様になってもらう努力が教員側に必要だと言う事さ。」
ルイスはメモを取りながら、話をしている。努力家の様だ。
ルイスが顔をあげて、言った。
「参考になったよ、ありがとう。それで本題なんだけどね、今日から5学年のSクラスの担任を、当面の間して欲しい。魔法の実技と座学の講義も、担当してもらえると助かる。」
「承知している。護衛の件も含めて。」
「では、教材のある机に案内するよ。」
と言って、ルイスが立ち上がった。マサキも続いて立ち上がった。教頭は立ったままだった。
教員室と書いてある部屋に入ると、オタクっぽい白衣を着た先生とか、眼鏡をかけた、おばさん先生とか色々いた。そして!若い女性の教員を発見!短めのスカートを穿いた美人さんだった。楽しみが1個出来た。
案内された、机を見ると、魔法学の教科書が何冊かあった。パラパラっと読んでみたが……。これ間違ってはいないけど、良いのか?これ。と言う感じ。
ホームルームの時間だと言うので、教室に向かう事にした。5階かよ……。
教室の前まで来ると、キャーキャー聞こえてきたが、やはりガキなんだな。
扉を開けて中に入ろうと思ったが、テンプレはあるかと確認したが、なかった。
中に入って教壇に立つと、10名しかいないので、2列で横に広がっていた。
「ホームルームを始めるぞ~、俺はSランク冒険者のマサキ・タチバナだ。今日から暫くの間、お前達の担任を務める事になった。まあ、適当にやってくれ。教科は魔法学をやってくれだってさ。」
「冒険者に教員が務まるんですか!?」
おっと、挑戦的な質問だ。だが、相手がロクデナシだと言う事を、忘れちゃいけない。
「多分な?さーて、出席をとろうと思ったが、10人しかいないし、面倒なので、省略。ホームルーム、終わっちゃったな!男子4人に女子6人か、男性諸君、ハーレムじゃないか。良かったな~。」
「少しは真面目にやろうとは思わないんですか?」
「じゃぁ、聞くが、真面目ってなんですか?ホームルーム真面目にやると何か良い事あるのか?真面目にホームルームやると勉強出来る様になったりするのか?」
「それは……。」
「そう、答えは『わからない』だ。それで良い。そこで、こういう物だと言ってしまうと、それは価値観の押し付けになってしまう。だから、わからない物はわからなくて良い。深く考えるなよ。で、今日の最初の授業ってなんだ?」
「確認してないんですか?」
「している訳がないだろ?さっき来たところなんだから。」
目の前の女子生徒が教えてくれた。
「今日の最初の授業が、魔法学です。次が錬金術で、その次が、魔法実習です。」
「おう、ありがとよ。因みに、教科書はどこまで進んでいる?」
「えっと、ここまでです。」
「はい。ありがとう。」
「じゃ、授業始めちゃうか?トイレとか行くなら構わんが。」
全員がやる気満々の様で、
「「「お願いします。」」」とハモっていた。
教科書を開いて、ちょっと読んでみると、詠唱が書いてあった。
やだな、こんなの教えたくない。
「Sクラスは優秀だと聞いているが、実際他のクラスよりは出来ると言う認識で良いか?それとも、大差ないけど上位10名と言う感じか?謙遜はいらん実態を知りたい。えーと、マリア。どう思う。」
「はい。座学はAクラスと比べても大差ないと思います。でも、実際の実技では、全然違うと思います。魔力量も違いますし、中級魔法と一部上級魔法が使えます。他のクラスは、下級魔法と中級魔法の一部と言う感じです。」
「他の皆もそういう認識で良いか?」
「「「はい。」」」
「じゃぁ、そのつもりでやろう。取り敢えず、教科書はいらん。仕舞うか捨てろ。」
「えーーー???」
「今、ちょっと読んだけどな、こんなの役に立たん。」
「クレイブ。」
「はい。」
「魔法ってのは、詠唱しないと発動しないと思うか?」
「はい。魔力を元素に変換して、詠唱通りにイメージして、初めて発動すると習いました。」
「そう、教科書に書いてあったんだな?」
「はい。」
「だから、役に立たないと言うんだ。それを証明して見せてやろう。」
マサキは、手の甲を生徒に向けて、拳骨を出した。人差し指から順番に立てながら、人差し指の先に火、中指の先に水、薬指の先に風、小指の先に土、を小さい玉で出してやった。
「おお!!!」
「これで解ったか?詠唱なんて魔法の世界には必要ない。これが答えだ。但し、魔法陣は違うぞ。あれはイメージは全く必要ない代わりに、どうしたら、どうなれと言う命令が書いてあるんだ。そこは履き違えるなよ。」
「「「はい!」」」
「要するに魔法と言うのは、魔力をイメージ通りに具現化する物だと理解しておけ。そうすると、難しいとされている筈の複合魔法も、あら簡単。と言う事になるんだ。だって、詠唱したらその時点で属性が決まってしまうだろ?
魔法はそんなに不便な物じゃない。ここまで、理解出来ているか?ついて来れていない奴は遠慮なく声をあげろ。今やっている事は、今、理解しろ。解らないので、あれば、必ず声をあげろ。いいな?」
「「「はい。」」」
「セレスティーナの魔法適正は?」
「はい。火・水・無です。」
「それ以外を試した事はあるか?」
「いいえ、ありません。」
「ちょっとこっち来い。」
「はい。」
セレスティーナを教壇横に立たせた。
「いいか?今から、俺がやるのを見て、詠唱せず同じ様にやってみろ。」
「はい。」
マサキは、まず人差し指の先に火を出した。
「この状態をイメージして指先から魔力を放出する感じだ。」
「出来ました。」
「じゃ、次いくぞ。」
人差し指の先の火を消して、水玉を出した。
「出来ました。」
次は土玉を出してみた。
「え?出来ました。」
「はい。ご苦労さん戻っていいぞ。」
「みんな見てたか?土の適正がない、セレスティーナが、土玉を出せたのは、何故だと思う?そーだなー、ビーン。どう思う?」
「悔しいけど、わかりません。」
「良い良い。問題ない。」
「じゃ、リリア。どうだ?」
「もしかして、詠唱が必要ない様に適正も本当は関係ないとかですかね。」
「惜しいとこだけどな、一応適正はあるんだ。
じゃ、説明するぞ、興味ない奴は寝てていいぞ。適正ってのは、要は魔力の質の話なんだ。魔力をイメージで変換する時に変換しにくいだけで、出来ないわけじゃない。適正がないと戦略級や広範囲殲滅魔法なんかは、使えないかもしれないが、中級、上手くいけば上級あたりまでなら、普通に使えると思って良い。」
「先生!」
「うい、シリル。」
「そうすると、今まで私達が勉強していたのは、なんだったんでしょうか?」
「そうだなぁ、魔法は魔法だよな。ただ、態々、使い難くして使っていた、と言う事だな。イメージさえしっかり固まっていれば、こんな事も出来るんだぞ?これは絶対真似するなよ、絶対だぞ。」
マサキは、【
「どうだ?面白いだろ?こう言うの見ると、ヤル気出るだろ?」
「やりたーい。」
「これはな、魔法を最低3つ同時展開出来ないと駄目だから、訓練して良さそうなら教えてやるが、絶対自分でやろうとするなよ~、絶対だぞ?
じゃ、今日の魔法学の講義はここまで!」
「「「ありがとうございました。」」」
やれやれと、教室を出て行こうとしたら、奴がダッシュしてきた。
「先生!」
と言いながら飛び込んで来た。避けてやった。黒板にぶつかっていたが、気にしたら負けだろう。
「ひどーーい。」
「場所を弁えろ馬鹿者。」
なんてやっていたら、囲まれてしまった。
クレイブと言う生徒が、興奮気味に声を掛けてきた。
「先生。講義凄く面白かったです。」
「そうか?イメージで色々出来る様になると、もっと面白くなるぞ。」
「夢が広がります。」
やべー制服姿のセレスティーナは破壊力がやべー、これキツイかも!
「制服姿のセレスはやべーな、襲ってしまいそうだ。」
「襲って下さい。」
「アホ。お前はビッチか!」
「違います~。」
可愛い女の子が、寄って来た。確かリリアだったな。
「先生。」
「おう。」
「しっかりとしたイメージって言うのが、どう言う物か、解らないんですけど。どうしたら理解出来ますかね。」
「そうだなぁ、次の次が実習だったよな。そこでイメージを補完する為に、少し魔法を見せてやろう。分からない内は、他人の魔法を見て覚えておくのも1つの手だぞ。」
「はい。ありがとうございます。」
ビーンを捕まえて聞いてみた。
「なぁ、ビーン。このクラスって美少女ばっかだよな?」
「そうですね、このクラスに集まっている感じです。」
「もしかして、成績じゃなくて容姿がSクラスだったり?」
「そうかもしれませんね!」
ビーンと2人で大笑いしていたら、奴が来た。
「マサキ様!どうして、すぐナンパしようとするんですか?」
「なんでって、美少女とは仲良くしたいじゃないか!」
「どうして、すぐそうやって私を虐めるんですか?」
「虐めてないだろ、人聞きの悪い。なぁ、ビーン。」
ビーンは逃げてしまった。冷たい奴だ。
入れ替わりで、シリルがやってっ来た。
「セレスティーナ様?先生とはお知り合いなんですか?」
雲行きの怪しい質問が出て来たので、教員室に逃げ帰った。
次の錬金術は、何を教えているのか興味があったが、余計な口を挟みそうなので、見学はやめておいた。
2時限で昼の様だ、昼飯は食堂が使えるらしいので、行ってみたら、学食じゃないよね、これ。
好きな物を好きなだけ取っていく、バイキング方式の様だ。美味そうだなぁと選んでいたら、奴が現れた。
「お昼位一緒に食べましょうよ。」
「ん?まあいいが、友達いないのか?邪魔はしたくないんだが。」
「いますよ、友達。」
「女同士の姦しい話の中には入りたくないんだよ。」
「もう!あー言えばこう言う。」
「俺は仕事で来てるの。遊びじゃないの。」
「わかっています。もう少し一緒にいてくれても、良いじゃないですか。」
「わかったよ。」
セレスティーナと飯を一緒に食う事にして、パスタを山盛りにしていった。
やはり女達の会話は姦しい。
午後は、実習と言う事で、訓練場を使う様だ。皆着替える様だが、覗けはしないので、つまらない物である。
ただ、実習と言うのは皆好きなようで、嬉々としてやっていた。まず、詠唱しないでどこまで出来るかを試してみろと言う事で、各々が工夫しながらやっていた。
最後に中級の魔法を一通り見せてやったが、同じ中級でも威力が全然違うと、ワイワイやっていたので、その辺は、また座学で教えてやると約束をして、今日の授業を終了した。
毎日、こんな授業をしながら、帝国皇女がやってくる日を迎えたのである。
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