第14話 依頼受注

 ゲートを潜って、王の執務室へ、直接足を踏み入れたマサキは、片手を挙げて、挨拶した。サラビス王とコーラル公爵がいた。


「こんちは。何か言いたそうな依頼が来たから、聞きに来たぞ。」


 サラビス王とコーラル公爵が口をあんぐり開けていた。

「もう、判ったのか?城に来て欲しいなぁと思って出した依頼書の件。」


「ああ、文句か確認に来て欲しそうだったから、何か言いたいんだろうとな。それも外で話せない様な奴。」


「手間が省けて助かるが、学校長名で出した筈だが?」


「んなもん、王立なんだし、Sランク使う金額考えたら、発信元がここなのは明白だろう?」


 サラビスは、両手を挙げた。

「参ったな。流石といえば、流石なんだろうが、此処まで早く看破されると思わなかったな。」


「これあれだろ?作文するのに、凄く時間使った感じじゃないか?そう思ったから急いで来たんだぞ?でも、見事な作文だったと思う。俺以外には解らないな。正にデキル王だと思ったよ?」


 サラビスは呆れたように言った。

「普通は、最初は校長の所に行くと思うぞ。それが、ここまで直行だろ?」


「ん?不味かった?」


「いや、正直助かる。まぁ、座ってくれ。」


 サラビス王に勧められてソファに座った。メイドさんがすぐお茶を淹れてくれた。素晴らしい身のこなしだ。

 本職がメイドとは思えないな、かと言って忍者ではない。若い女性だし、騎士団所属の女性剣士とかか?女性剣士から戦闘メイドへ転身?

 しばらく女性を凝視していると、コーラル公爵がっ声を掛けて来た。


「どうかね?彼女は。」


「ん?美人だねぇ。」


「そうじゃなくて、どう見た?」


「んまぁ、騎士団所属の女性剣士が、戦闘メイドに転身でもしたか?と思っていたよ?」


「どうして?と聞いても?」


「ああ、いいよ。

 まずは身のこなしが見事だったが、デキルメイドのそれとは違ったんだよね。だから普通のメイドではないと思ったよ。次に足の運びが、忍びではなく、剣士のそれだし、手に剣ダコがあるし、騎士団だなと、それも結構上位。あとは良いケツしてんな~って見てただけ。」


 メイド姿の女性は顔を真っ赤にしていたが、コーラル公爵は大爆笑だった。良いおっさんの様だ。女性の顔が赤いのは剣ダコに反応したのか、ケツかどっちかな?

「ハッハッハ。見立ても見事だけど、正直だね。あまり話した事はなかったけど、いつも話を聞いているだけで、面白かったよ。」


「楽しんで頂いて何より。最近は、恵まれない貴族の皆にパーティの招待状を渡すくらいしか、やる事なくてね。あ、お見合いの話は騎士団に持って行ったなぁ。」


 サラビス王がキレていた。

「マサキ君!駄目じゃないか、配ったら。出席してたら大変な事になるんだぞ?」


「いやいや、そこで出席しちゃう様なアホは、貴族にしといちゃ駄目でしょ。」


「うっ、正論かも知れない。そんな馬鹿がいたら、確かに危険かもしれん。」


「真に怖いのは有能な敵ではなく、無能な味方であるって言葉があるんだぞ。爵位が世襲なのは構わないと思うけど、執行部は人とは見ておかないとね。半分は悪戯だけど、役に立つと思ったんだがなぁ。」


「本音は?」


「面倒だったんで、誰か出席したら面白いのにと思って、押し付けました。」


「やっぱりか!何かやるとは思っていたんだが……、何もなくて良かった。」


 サラビス王がソファに来て、3人での話が始まった。

「依頼の内容は?」

「一応、聞いている。帝国から皇女が来るんだって?」

「あぁ、そうなんだ。だが・・・・・・。」


 王と公爵の話を纏めると、こうだ。

 帝国から第四皇女が留学しに来るのは間違いなく、年がセレスティーナと同じらしい。

 目的は俺の存在の確認と出来る事なら輿入れ、それが駄目だった場合、第四皇女を暗殺して、エルスロームの責任追及と言う形で難癖をつけようとしていると。

 最終的には、城塞都市セベインが欲しいらしい。


 マサキは心底、面倒臭そうな顔で言った。

「頭に、何か湧いてそうな奴の相手は、したくないんだけどなぁ。じゃぁ、質問!

まず、それどこの情報?」


 コーラル公爵が答えた。

「帝国に潜入させている隠密からの情報だが、間違いないと思う。」


「ならば、首謀者も解っていないとおかしい。」


「首謀者は第二皇子テリウス・ガイザス。20歳のこの男、相当陰険な様だよ。

 皇女の留学自体は皇帝の意を受けて、第四皇女が立候補したそうだ。本人は見目麗しく、聡明なんだそうだ。

 これに便乗したのがテリウスで、テリウスの目的は世界征服なんだそうだよ?」


「ブフォォォォ……。」

お茶を吹き出してしまった。

「何病の患者さんですかね?中二病?中三病ですかね、中一病かもしれん!」


 コーラル公爵は更に続ける。

「で、交通の要衝である、セベインが欲しいと言っているそうなんだ。それには、ある程度の犠牲は仕方がないと、配下には言っているそうだよ。要するに皇女は死んでも構わないと言う事だ。」


「もう、その中二皇子?首刎ねちゃっていいよね?それで終わるよね?大体、世界征服ってさ、エルフに勝てるつもりでいるの?そのアホ。で、その痛い子の為に何をさせたいの?すっごいヤル気ないんだけどね。」


 サラビスが言った。

「依頼書の内容通りなんだが……、出来れば全面解決して欲しい。報酬はギルドに提示した分とは別に、10億出す。」


 マサキは腕を組んで思考の渦に沈んで行った。暫く固まっていたが、すぐ戻った様だ。

「まず、解らんのが、皇帝にチンコロすれば済む話だと思うが?それか、中二皇子の暗殺。どうせ、宰相と繋がっていたのが、中二皇子とか言うオチなんだろ?だとすれば、皇帝は関係ないよね?そもそも第一皇子はどうした?

 どうせ第四皇女もらえとか言うんだろ?嫌だねぇ、大人って怖いわぁ。」


 サラビスとコーラルは、顔を見合わせて頭を掻いた。

「いやまぁ、そのなぁ。」

「遠回しは止めようぜ。何をどうしたいのかが見えて来ない。最終的な目的とそれに沿った、思い描いている道筋を教えてくれ。」


 サラビスは、漸く話す気になった様だ。

「最終的には、帝国と同盟を結びたい。それにあたり、出来る事なら、第四皇女をもらって欲しい。

 それで、懸案の第二皇子の野望を阻止して欲しいのと、皇女とセレスティーナの護衛をしてもらいたい。

 実は、皇帝とは文書のやり取りはしていてな、今回の依頼は帝国からの依頼でもあるんだよ。皇帝が病床にあるらしくてな、第二皇子を止められんらしい。」


「皇帝の年は?」


「俺と同じ位だった気がする。40には届いていない筈だ。」


「病床にいるのは、長いのか?」


「いや、詳しい話は皇女が来てから聞こうと思っていたのでな。」



 マサキは、考え込んでいたが、すっと顔を上げると、

「うーん。難しいやね。障害が多すぎる。」

と言った。


「まあ、第四皇女は本人次第として、保留。1番邪魔なのが、セレスティーナ。同じクラスだと聞いている、無理だな。あいつは、背中に夜叉を飼っているからな。

面倒な事この上ない。パス。」


 サラビスは、首を振りながら言った。

「セレスティーナの事なら心配いらん。あれの母親がメイリーナと言うのだが、相当、セレスティーナに怒ったらしい。悋気を起こすなってな。マサキ君の気持ちが分からないのなら、結婚は認めないとまで言ったそうだ。」


「王様よ。親父でありながら娘の事が分かっていないようだな。懲りると言う事を知らない女だぞ。普段は聡明なバランスのとれた王女でいるんだろうが、俺の事になると、急にポンコツになるんだぞ。それに、帝国からも嫁もらっちゃったら、我も我もと来るのが、目に見えているじゃないか。」


「セレスティーナさえ大丈夫なら問題ないな?」


「嫁のところは否定しないのな。」


「それは仕方なかろう。Sランク主席と言えば、国王より発言力があるのだぞ。」


「セレスティーナは無理だと思うぞ。都合の良い所しか話を聞かないしな。」


「毎日メイリーナに頼んで措く。」


「んじゃ、1度でも悋気起こしたら、俺は降りるからな。第四皇女については、皇女本人の意向次第だからな。」


「分かった。その条件で受けてくれるか?」


 マサキは、大きく溜息を吐いた。

「まあ、親父の頼みじゃ断れんだろ。承知した。で、学校は何時いつから行けば良いの?」


「今仕事がないのなら、何時から行ってもらっても構わない。教師をしてくれた分はちゃんと払うぞ。」


「魔道具の作り方とか、高度な魔法は教えないけど良いよな?」


「教えて良い物いけない物の判断は任せるよ。」


「うん、魔道具屋が困るような物は教えない。マジックバッグとかね。空間系・時間系は一切教えない方向で行こうと思う。」


「そうだな、転移できる人間が増えるのも困りものだしな。」


「それは、それとして。ローレルとか、セベインとか、王都と転移門作って繋いでおこうか?緊急時しか使えない様にはしておくけどね。」


「それは、どうしてなんだ?」


「それはそうだろう。ローレル辺境伯は常に飛竜と使っているかも知れないが、貴族ってのは、大袈裟な位の行列で王都まで来ないとダメじゃん。」


「だから、何故だ?」


「途中の宿場町で金落としてやらないと経済が回らないからだよ。貴族は適度な贅沢はしなければならないんだぞ?お金は流通させないと仕事しないからな。

 まあ、1番良いのは領地に特色を持たせる事が出来れば良いんだけどな。

 けど、経済が成長していくと、貨幣の絶対数が足りなくなるはずだ。いずれは、貨幣から紙幣への転換も必要になるだろう。だから、良質の紙の研究もしておいた方が良いぞ。国の施策としてね。」


 サラビスは、ポカンとしている。

「お前、国王やるか?」

「馬鹿言ってんじゃねー。柄じゃねーし、働きたくないんだってば。」


 マサキは立ち上がると、

「じゃ、明後日位から学校行くよ。」

と言って、【ゲート】を発動して、自室に帰った。



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 マサキが居なくなった執務室では、サラビス王とコーラル公爵が話をしていた。

「マサキ君に、国を持たせてみるのはどうだろうか。」


 コーラル公爵は懐疑的だ。

「しかし、国と言っても何処に?」


「前から、神々の保養所に出来そうな土地を、頼まれていただろ?そこを街ではなく、国にしちゃうんだよ。大公爵の爵位を与えて、公国にするのはどうだろう。」


「なるほど、王国ではなく、大公家で運営する国ですか。ありではないでしょうか。幸い、セレスティーナ嬢は、結婚する気満々ですし、皇女も嫁になってしまえば、身分的にも問題はないですね。」


「後は、土地か。保養地だから温泉が欲しいと言っていたんだけど、温泉地ってあったかなぁ、それが、問題だ。海が近くて、温泉が湧く場所だってなぁ。

 公国でやっている、施策のモデルケースを勉強して、取り入れていくという手法を取りたいんだよなぁ。彼の知恵を少しでも分けてもらう為に。」


「良い考えだと思いますね。彼の話では、彼がいた世界とこの世界では、教育水準が全然違うんだそうですよ。」


「やらせてみたい事は沢山あるが、希望する様な土地を早く探さないとな。」


「そうですねぇ。」



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 自室に戻ったマサキは、セリアに依頼を受けた事を告げた。

「受注処理しておいてくれ。」


 セリアは嬉しそうに依頼書の処理を始めた。

「承知しました。」

そのまま、事務所に降りて行った。


 部屋を見回して、桜に声を掛ける。

「あれ?弥助は?」


「兄は、霧さんを迎えに行きました。」


「弥助の許嫁?」


「そうですよ。」


「桜と同じ歳なんだっけ?」


「そうです。でも、もう1人私より1つ上の人も一緒に来ているようです。」


「弥助は2人もらうのか?」


「いえ、そうでは無さそうですよ。」


「なんなんだ?部屋足りるか?」


「大丈夫ですね、まだ。」


「ふむ、屋敷を強奪する必要があるカモな。王家から。もう、エルラーナの部屋と壁ぶち抜いて繋げちゃおうか。」


「あぁ、そうすれば余裕が出来ますね。」


「明後日から、学校行くからな。風呂入れてくれるか?」


「はい。すぐに。」

 桜は嬉しそうに支度をしに行った。桜は何か命令してやると嬉しそうなんだよなぁ。Mなのかしらん。でもな、既に桜がいないとお茶の一杯も飲めない俺がいる。

まあ、所詮ロクデナシなんだよ、元々な。

 俺はこの世界に来られた事にマジで感謝したい。


 セレスティーナの悋気は面倒なんだけど、良い娘だし。桜は……最高です!エルラーナにしても良い女だしなぁ、セリアのケツは堪らんし。ロクデナシに磨きが掛かっている気がする。

 だが、中二病全開でも誰も何も言わないからなぁ。そもそも、男はいくつになっても中二病だと思わないか?諸君。



 桜が、支度が出来たと言いに来て、既に俺の着替えを持っている。こうなんだよ。ダメ男君になるの解るでしょ?


「桜。一緒に入ろう。」

「はい。」

 嬉しそうだから良いよね。



 洗いっこして、湯舟にゆっくり浸かろうと思ったんだよ。本当だよ?湯舟に浸かって、一息吐いたところで、あ、桜さん待って~って感じで気持ち良くなってしまい、ヤッてしまいました。

 油断大敵だぜ……。桜は不意打ちが多いんだよなぁ。まぁ、もう俺は桜に生殺与奪権を握られていると言っても過言ではないだろう。



 これ、セレスティーナと結婚しても寝る時、横にいるんだろうか。ヤッている時も。難易度たけーな。

 弥助が帰って来ない。どうしよう、寝てて良いのか?あ、セリアが処理したら戻って来そう。まだリビングで酒でも飲む事にしよう。


 桜にタンブラーとウィスキーを用意してもらって、チビチビ遣りながら、学校の事を少し考えてみた。生徒が10名って書いてあったな。10人程度ならなんとかなるか。だが、セレスティーナだよなぁ、婚約者だなんだと騒ぎそうな気がするのは、俺だけ?いや、多分全米がそう思っている筈だ。

 全米って米が全部って事だよね?


 既に桜に精気を吸われてしまった俺だが!セリアともう1回したいなぁと思っていたら、処理を終えて、セリアが帰って来たので、無言で拉致して寝室に連れ去った。


 うん、美味しゅうございました。セリアのケツが堪らんのだよ!君!

今日は帰さないぞう。とかバブルっぽい言い方で言ってやりました。

そんな訳で、セリアと就寝。桜は自室で寝てくれました。良かった良かった。




 翌朝、おはよう朝マンをしたかったのだが!桜さんに起こされて着替えさせられてしまったんだよ。君!!誰か桜さんを止めて下さい……。


 その日は、学校に向けての準備で、服とか伊達メガネとか用意していました。生徒と教師の禁断の恋的なシュチュエーションも必要だろう。寧ろそれだけで良いのでは?などと頭の悪い事を考えていたら、桜に釘を刺されてしまった。


「上様。学校にはセレスティーナ様がいらっしゃいますので、くれぐれもみだりに女子生徒に手を出さない様、伏してお願い申し上げます。」


「あ、ああ。伏さないといけない程なのね。」


「勿論です。セレスティーナ様に我慢をさせているのですから。」


「いやいや、あいつは我慢なんて、これっぽっちもしてないだろ?すぐ夜叉出すし。抱いてないってだけだぞ?奴の辞書に我慢なんて言葉はない。」


「上様。この世界の成人は16歳です。そして、女にも欲求はあるのですよ?」


「何それ。平たく言うと、セレスはヤリたいけど我慢してるって事?」


「まぁ、下品に言えば……、そうですね。」


「下品?俺が?下品?まぁ、下品が服着て歩いている様なもんか、確かに。しかし、それなら、俺なんか待たなくても適当なの捕まえれば良いじゃないか。」


「上様。それはあまりに……。」


「俺はセレスがいなくても生きてはいけるけど、桜がいないと生きていけない子にされちゃったからな。

 それにセレスの所為で、嫁が増えそうだし。だから王族なんか嫌だったんだ。

 所詮、俺はただのロクデナシなんだよ。王族なんて釣り合う訳がないんだ。

 また1人に戻ろうかなぁ。それが1番楽なんだろう。」



 あ、桜を泣かせてしまった。やっぱり駄目な奴は、どこまで行っても駄目なんだな。なんかやる気もしないし、ベッドで横になろう。


 なんか疲れていたんだろうか、明るいうちにベッドに入ったと思ったんだが……朝なんだよ。もう?


 昨日は、桜を泣かせてしまったが、どうしよう。寝ちゃったしなぁと考えていたら、布団の中で何かがもぞもぞしていた。

 桜だった。


「何してんの?」


「元気なので、お慰めしようかと思いましたが、昨日怒らせてしまったので、どうしようかと……。」


 黙って桜を抱き寄せて、朝から「ファイト二発!」しました。

スッキリしたので、蟠りもない事だろう。


さて、今日から禁断の恋だぞ~!

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