第13話 先生だと?

 セレスティーナが城内でお馬鹿さんっぷりを発揮してから、ギルドに届いたパーティの招待状を恵まれない貴族諸氏に配ったり、お見合いの案内を騎士団諸氏に配ったり、セレスティーナを揶揄いに行ったり、桜とイチャイチャしたり、エルラーナを失神させたり、セリアの尻を撫でながら、【ボックス】の魔法のイメージを手取り足取り腰取り尻取り教えていたり、魔物化した獣を狩りに行ったりして、解体して素材を売っていくら位儲かるのか、実験したりしていたら、1カ月が経過していた。


 現在は、ギルドの自室でセリアにお説教を食らっているところだ。

「マサキ様。質の良い素材は残して、悪い物ばかりを換金するのは、止めて頂けませんか?赤字まっしぐらなんです~!」


「ちょっと使いたかったんだよ。ちゃんと出すよ今度から。セリアにプレゼントしてやろうと思ってな。余った素材は売っちゃっていいからさ。良い素材って言っても、失敗した時の予備だから、手を付けてないし。

 革なんか、ちゃんと鞣してあるぞ。至れり尽くせりだろ?だから、1回いや3回位だけ、ヤラせてくれ!」


「嫌ですぅ~。で、プレゼントって何ですか??」


「ヤラせてくれないと教えてあげない。」


「じゃぁ、ちょっとなら……、チラッ」


「チラッって口で言ったって、色気もなんもねーだろ!大体、専属受付嬢なんだから、シモの世話までしてくれるんじゃないのか?」


「しませんよ!!」


 なんて不毛な会話をしていたら、エルラーナが来た。

「エルラーナ様。マサキ様が不真面目なんです。すぐヤラせろって言うんです。助けて下さい。」


「あら、減るもんじゃあるまいし、2・3回ヤラせてあげたら?」


「えーーー!!酷いです、横暴です、鬼畜です~。」


「あら?貴女だって彼の事は嫌いじゃないでしょ?専属は私が~って言ってた位なんだし。この間だって、お尻触られちゃいました~ってヘラヘラしてたじゃないの。」


「え?え?それは、言わない約束じゃないですかぁ。私の純情を返して下さい。」


「いい加減、抱かれてしまいなさい。仕事よ。」

 と言って、エルラーナはセリアに依頼書を渡した。


「だって、マサキ様はヤラせてくれても遊びだからなって言うんですよ?」


「貴女も少しは頭を使いなさい。仕事はデキルのに、どうして、そう盲目になるのかしら?セレスティーナ様の件があるからよ。

 セレスティーナ様と婚約しているのは知っているでしょう?だから、セレスティーナ様に話しておかないと嫁にするとは言えないの。

 それに各国から縁談がいっぱい来ているのは知っている筈よ。それをマサキさんがどうしているか知っている?」


「はい。全然関係ない、貴族や騎士団に配っているとは聞いています。悪戯ですよね?」


「確かに悪戯なんだけれど、『お前達の相手をするつもりはない』って言う意思表示のつもりなのよ。そんな彼がヤラせろって言っているんだから、抱かれちゃえば良いじゃない。人間の花の命は短いのよ。」


 横で聞いていた、マサキはいい加減、悶絶しそうになって口を開いた。

「なあ、上司と部下でヤラせる、ヤラせないの話は止めようぜ。本題はなんだ?」


 エルラーナはサラッと言う。

「でも、したいんでしょ?」


「愚問だな!セリアのケツは俺のもんだ。だが、ヤレヤレ言われて、するもんでもないだろ?気持ちの問題なんだし。」


「じゃ、私とする?」


「それも良いな!」


「じゃ、行きましょう。」


 セリアは大慌てだ。

「え?待って下さい。エルラーナ様がする事ないじゃないですか。」


 エルラーナは何でもないと言う顔で言い放つ。

「何を言っているの?私はいつも可愛がってもらっているわよ?凄いんだから、彼。私はもう離れられないわ。だから、彼が何をしようとも許せるわ。捨てられない限りはね、でも彼は絶対に捨てたりしないわ。」


 セリアは目が点だ。

「えええええええええ!!2人は既にそういう関係だったんですか!?」


「そんなに驚く事かしら?手合わせした時点で決まっていた事よ。それにね、彼には差別と言う言葉がないの。これは凄い事よ。」


 マサキは、耐えられなくなったので、介入した。

「で、仕事ってなんだ?」


「ちょっと待っていて、急ぎじゃないから、先に決着を着ける。」

とエルラーナが怒っていた。なんで???



 まあ、上司と部下だし、好きにやらせておいた。俺は桜を膝の上に乗せて、匂いを堪能していた。本当に良い匂いなのだ。別に匂いフェチではないのだが。

 どちらかと言うと、ケツフェチな自覚はある。おっぱいは好きだし、色々好きだが、最初に目が行くのはケツなんだよなぁ。なんでだろ。


 39年の人生の内14年は、仇の様に女遊びをしていた。今思えば、何をやっていたのかと、我ながら呆れてしまうんだが、似た様な状況にありながらも、愛情を持っている時点で全然違うんだろう。


 ただ、チートだと思うのは、39歳の知識と経験を持って19歳になった。最早転生と言っても、過言ではないだろう。

 年月と言うのは何にも代えがたい財産であると、俺は思う。知識も経験も時間が無ければ手に入らないのだから。


 14年間も女遊びをしていた俺が、下手な訳が無く、絶技とも言えるテクニックを持ってしている訳で、経験の浅い女性は、離れられなくなってしまうのかも知れない。思考にしてもそうだ、相手の考えをトレース出来る事は、やはり女遊びと営業としての経験からだと思う。色々と勉強になったもんなぁ。


 そんな事を考えていたら、上司VS部下の不毛な戦いは終わりを告げた様だ。結果を聞くのもバカバカしいので、仕事の話をしてもらった。


「で、仕事はなんだ?」


 エルラーナは、やはりサラッと言う。

「先生よ。」


 マサキは、目が点だ。

「は?」


 セリアが溜息を吐いて、詳細を説明しだす。

「王立高等魔法学校、5年Sクラス10名の担任教師を依頼したいとの事です。報酬は、基本報酬5000万リル。期間は、1カ月。

依頼人は、王立魔法学校長 ルイス・フォン・ボイル。です。」


「1カ月で5000万て少なくねぇ?拒否。」


 セリアが膨れた。

「もう、どうしてそうなんですか?」


「んなもん、見合わないからに決まっているだろう?」


 セリアが首を捻る。

「どこが見合わないんですか?教師の1カ月の報酬と比べたらとんでもない金額ですよ。」


「比較する対象がまず間違っているし、俺を教職にさせたい訳じゃないだろう?

 大方、どこぞの王族かなんかの令嬢が留学に来るとか、暗殺者っぽい新任教師がいるとか、そんな処じゃないのか?

 その上で、その令嬢なのか、セレスなのかは分からんが、ひそかに護衛して欲しいとかそんな処だろう?拒否!」


 エルラーナが両手を挙げて、降参のポーズだ。

「ごめんなさい。騙す訳じゃないのだけど、試しちゃった。依頼内容は、大体その通りよ。帝国から第四皇女が留学して来る。その上で、皇女とセレスティーナ様を護衛して欲しい。それから、Sクラスの10名は優秀だから、魔法について講義して欲しいとの事よ。報酬は0を1つ足して頂戴。」


「エルラーナ、俺は裏切りには容赦しない。今回は許す、次はないと思え。」

 冷徹に言い放った、マサキの目には憎悪の炎が灯っていた。


 エルラーナは、そんなマサキに戦慄した。

 この人の本気はどれだけなんだろうと、手合わせなんて、ほんの遊びでしか無かった事を雰囲気から感じとった、と同時に、馬鹿な事をしてしまったと後悔したのである。


「エルラーナ様、こちらへ。」と桜が何やら連れて行った。

 ああ、この間の話でもするんだろうか、言いふらして欲しくないんだけどなぁ。エルラーナなら異世界人て事も知っているし、裏切る事はないだろうから良いけどね。


「5億か、足りないな……。だが……。」


 セリアが恐る恐る聞く。

「5億でも足りないんですか?どういう計算なのか聞いても良いですか?参考にさせて頂きたいです。」


「ヤラせてくれたらな!」


「もう!捨てないで下さいね。約束してくれるなら…良いです。」


「お前、エルラーナに何を言われたんだ?」


 セリアは顔を赤くして言った。

「エルラーナ様には、隠す必要がない気持ちを、隠すなと言われただけです。ずっと好きでした。でも、セレスティーナ様と婚約した事を聞いていたので、釣り合わないだろうなぁと思って……。」


 マサキは嘆息した。ヤラせろ、嫌ですの会話が楽しかったんだけどなぁ、セリアのケツは堪らんが……。


「まあいい、俺は金額に直すと、1日で1億稼ぎ出せる力があると考えてくれ。1カ月32日でいくらだ?」


「32億です。」


「つまり、32億の仕事を5億でやれと言われているわけだ。護衛だけなら、それで受けても良いのだが、授業を受け持てと言う話になると、ちょっと話が違う。

 セリアに【ボックス】の魔法を教えたけれども、あれは、あんなに簡単に修得出来ない、何故なら明確なイメージが普通は出来ないからだ。

 その知識をタダで寄越せと言われているに等しいんだよ。理解出来るか?」


「え?私、そんなに凄い魔法を教えてもらっていたんですか?」


「気付いてなかったのか?」


「私の魔力が少なくて、ちょっとしか入らなかったから、そんなに大した事ないのかと思ってました。」


「いくら優秀だとしても魔法学校の生徒位ではまず、無理だな。あぁ、魔力の問題で少しってのは、みんなそうだから心配するな。俺の魔力は無尽蔵だからな、と言うより制御出来る魔力が膨大なんだ。これはちょっとやそっとでは出来ないから、俺しか出来ないと思っておけば良い。」


 マサキは異空間に手を突っ込んで、黒い革製のウエストポーチを取り出した。

「これ、プレゼントだ。ベルトが付いているから、腹に巻いておけ。そのポーチに手を突っ込んでみろ。」


 セリアは、ポーチを受け取ると、ボタンを外して開けると手を突っ込んだ。ズンズン入って行き、肩の手前まできて体勢的にそれ以上は、入らなくなった。

「なんで?なんでこんなに入るんですか?」


「空間魔法で空間を拡張しているんだ。それなら、異空間より入ると思うぞ。絶対に盗まれてはいけない物は異空間、普段の荷物はポーチに入れたら良い。

 そうだなぁ、大体、ここの訓練場位の物は入るぞ。俺のお手製だからな、大事にするんだぞ。あと、人にあんまり見せるなよ。ポーチ自体に価値があるからな、狙われる元だ。ただ、俺かセリアの魔力がないと、物は取り出せない様になっているからな。」


「そんなに凄い物をもらっちゃって良いんですか?」


「だから、体で払えと言ってるだろうが。」


 セリアは意を決した様に、飛び込んで来た。

「もう!抱いてくださーい。」


 セリアを受け止めて、尻を撫でながら言う。

「アホ、体で払うっていくらだと思っているんだ。それこそ億だぞ、それ。」

「じゃぁ、一生掛かっちゃいますね!」

 と、何故か嬉しそうだった。借金て嬉しくないよね?


「そう、話を戻すぞ。そのポーチにしても億だと言っただろ?そういう知識をタダで寄越せと言っているわけだ。容認出来ると思うか?」


「出来ません……ね。確かにそうですね。」


「だが、それは向こうも承知していると思うんだよ。王立なんだから実際の依頼主はサラビス王だろうしな。これは、真意を確認しに来いと言う事なのかもしれないなぁ……。セレスも絡んでいるし、無視する訳にもいかない……か。」


「うむ、ムラムラしてきた。制服プレイを所望する。」


「もう!好きにして下さい。」


「マジで?」


「私は、マサキ様の専属嬢になりました。」


「ぬ、受付が無くなったか、ならば遠慮なく。いっただっきまーす。」

 マサキは、セリアをお姫様抱っこして寝室へ消えていった。


 寝室から出て来た、マサキとセリアは何故か、スッキリした顔をしていたと言う。セリアもスッキリだったの?溜まってたんだねぇ。



 実況中継がないだろって?自主規制に決まってんだろ?連載が止まってしまったら困るだろ?そう思わないか諸君!!!




 セリアとリビングでイチャイチャしていたら、やっと桜とエルラーナが戻って来た。なんかエルラーナが泣いた様な?

「桜。エルラーナに何をしたんだ?」


「お話を少し、しただけですよ?」


「お話なんだな?O・HA・NA・SHIではないな?」


「はい。エルラーナ様が泣いてしまいまして……。」


「あの話しちゃったの?」


「ええ、エルラーナ様はある程度知ってますから、良いと思いまして。上様は色々ご自分の中で消化してしまいますから、少しは表に出しませんと。」


「まあ、桜がする事だから、大丈夫だとは思うが、線は引いておけよ。」


「承知しております。」



 エルラーナが申し訳なさそうな顔で、マサキに頭を下げようとした。が、

「謝罪は要らない。俺はエルラーナを信用している。」

とマサキが言った。


 エルラーナは大きく目を見開いて、マサキを見ると、

「私はを愛しています。」

とだけ言った。マサキには、充分だった。



 マサキは少し考え込んで、頭を上げた。

「エルラーナ、この依頼、どう思った?」


「正直、割に合わないと思っているわ。受けないかも、ともね。」


「でも、お前は持ってきた。」


「ええ、セレスティーナ様が絡んでいるし、勝手に断れないと思って。」


 マサキは、腕を組み考えた。

「あのサラビス王は予想以上に、デキル親父だな。」


 エルラーナは解らないと言う顔だ。

「どう言う事?」


「多分、金額的に見合わないから、受けない事は織り込み済みなんだよ、セレスを絡めている事で、エルラーナが単独で断れない事もね。その上で、真意を確認しに来いと言うメッセージなんだと思うぜ。外部に話せない何か、があるんだろう。

恐らく5億と言う金額にも気を遣っているんだぞ?」


「お願い、その金額の話、私に分かる様に説明して。」


「最初にエルラーナが言った金額、セレスが絡んでるのに5000万程度だったら、俺を敵に回す事になる。

 多すぎると気付いてもらえない。だから、護衛だけなら5億でも良い筈だが、授業を受け持てと指示していると言う事は、文句を言いに来いと言う事だ。」


「どうして、5000万だと敵に回す事になるの?自分の娘だから、とかにならないの?」


「セレスティーナの今の立場は、王女と言うより、婚約者なんだよ。俺の婚約者に5000万しか付けないのか?と言う話になるわけさ。

 エルラーナがいつも言う様に、Sランクは軽くないし、俺は主席なんだろ?」


「あ!!そうね。私も私の婚約者の護衛代が、1カ月5000万だったらキレてるわね。」


「その絶妙な所を、突いてきている所に、作為的な物を感じるだろ?だから、確認に来いと言う意味なんじゃないかと思う訳だ。」


「貴方の頭脳を分けて欲しいわ。これでもグランドマスターとして、それなりの経験も積んできて、上手くやってきたんだけど、貴方の前では自信なくすわ。」


「一緒にいれば、その内、分かる様になるさ。あと、セリアもエルラーナも依頼人の話は一言一句間違いなく伝えてくれ。

 人の話には、本音と建前と言うのがあるが、建前の言葉の裏に、色々な情報が隠されている事が多い。頼むぞ。そうじゃないと仕事が増えるんでな。」


「はい。承知しました。」

「分かったわ。正確に伝える様にするわね。」


「さて、サラビスんところ行って来るわ。」

 と言って、マサキは【ゲート】を開いた。


「何?それ?ゲート??」


「簡単に言うと転移門だ。それじゃ行って来る。王の執務室直行だがな。」




「いってらっしゃいませ。」

と言う桜の声に送られて、マサキは、ゲートに入って行った。














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