第1話 僕の願 3/3
「ちょ……ちょっと待って。超能力?今、超能力って言った?この街の人たちが超能力を使えるって?まさか超能力って手から炎が出たり、スーパーマン並みの怪力を持ったりする、『あの』超能力かい?」
すると
「そうだ。それ以外『超能力』って言葉の意味があると思うか?」
「待て、待て。でも、何で?なんでいきなり人間が超能力を使えるようになったの?」
「いきなりじゃない。もう30年ぐらいだ。突然人類はこの不思議な力に目覚めたんだ。けど、原因はまだ科学者たちが突き止めているらしい。」
「あ!あの新聞の表紙に乗っていたヒーローズ・デイって?」
新士は駐車場の中にいた時、足の下に挟まっていた一枚の新聞紙を思い出した。
「お、知っていたのか?それは俺らみたいな学生が集まって、年に二回行われるヒーロー校の入試試験みたいなもんだよ。俺も、お前も、リンネも今年初めて参加するために今日、町まで来たんだけど……そのトーナメントがこの事件のせいで中止になってさ……」
「リンネ……って誰?」
「リンネは俺らの友達さ。俺ら全員一緒だったんだけど……って、あれ?確かリンネは俺についてきたはずなんだが……」
赤人は急に顔色が白くなった。彼は焦りながら独り言をブツブツ呟き、考え事をする。
「やばい。彼女をあの場所に置いていったかも。」
「え?」
「彼女はメチャtueeから大丈夫だと思うが、一応を俺が探しに行く。新士、君はここで待機してろ。すぐ戻ってくる。いいか?」
「は?なんで?僕も連れてってよ。ポータルの中にもう一度入ってみたいし。」
「いいから、そこにいろ。俺の力は様々な限界があり、お前まで載せていく余裕がないのさ。そしてもしものことがお前にあったら、俺に責任がある。なので頼むからじっとしていてくれ。」
「は?なんで?」
「もういい。説明している暇はない。俺、行かないと。」
赤人は両手を前にして再び転送陣を開いた。紫色に輝く円が目の前でじわじわ現れた。円の周りには読めない文字が書いてあり、真ん中には星のような形が描かれていた。
「なぁ、赤人。最後にひとつだけ僕の質問を答えて。」
「なんだい?」
「君にこんな超能力があるとしたら、僕にも何かあるの?」
その途端、赤人は動きを止めた。
「ないと言ったら嘘になるが……」
「だったらそのぐらい教えてよ!」
「いや、ちょっと……帰ってからにしないか?」
「今聞いているの。」
「お前、聞いたらショック受けるから……」
「受けない」
「受けるさ」
「早く教えろよ!リンネっていう子が心配なんだろう?」
「ウー……」
赤人はうなった。
「実はお前は特殊な能力を持っている。」
「え!特殊?いいね。もっと詳しく教えて。」
「そしてその能力とは……」
「とは……?」
新士は目を輝かせながら赤人をじっと見つめる。すると赤人はボソボソ口元で呟いた。
「……記憶を消す能力だ。その上、自分にしか使えない。」
新士はそのまま突っ立って、約一分間何も返事をせずに赤人の言葉を理解しようとした。目が点になりながら赤人をじっと見つめた。そしてようやく脳が情報を処理した後、新士はやっと喋った。
「は?記憶を消す?自分だけに?冗談はよせよ。まさか、次に『僕の記憶喪失の原因はその力の所為だ』とか言っちゃったりして……?」
「そうだよ。おそらく。」
「嘘だ!」
「本当だ。これ以上嘘をついても俺にメリットがない。とにかく、俺はリンネのところに行ってくる。お前はそこでじっとしていろ。帰って来てからもっと詳しく話す。」
そう言って赤人はポータルの中に入って消え去った。新士はその場で立ったまま、ポータルが消える瞬間を見届けた。
「(嘘でしょ?記憶を忘れる力?何の役に立たないじゃん!むしろ、呪いじゃないか?いや、病気だろう!!!!)」
新士は自分がヒーローになった妄想を想像してみた。新士はヒーローのマントをつけて、敵の宇宙人と戦っていた。
『僕は正義のヒーローだ。あなたみたいな悪を許さないぞ!』
『フフフ、貴様、われの力を知ったうえで立ち向かうとはいい度胸だ!』
『クッ!いいだろう。では僕のとっておきの必殺技を見せてやる!』
『何!そんなものを隠していたのか!』
『くらえ!これが僕の記憶喪失の力だ!』
「(そんな馬鹿馬鹿しいセリフ、言えるかああああああ!!!恥ずかし、恥ずかし、恥ずかし、恥ずかし、恥ずかし、恥ずかし、恥ずかし、恥ずかし、恥ずかし!!!こんなふざけた力、ギャグ漫画のネタかよ!!!こんな能力なんてなかった方がマシなのに……)」
いきなり風が強く吹いて新士の背中を押す。するとその感覚が新士の脳に電流を走らせる。忘れていた記憶が一瞬にして脳の奥深くから浮かび上がる。
「(すべて思い出した。)」
新士は空を見上げて思った。
「(僕は……あの駐車場にいた前、空から落ちたんだ。風が僕の体を押すこの感覚。間違いない。落ちた時の感覚と同じだ。でも僕は自ら落ちたわけではない。橋の上で誰かに押されたんだ。その人の顔まで思い出せないけど、落ちる前にその人と会話を交わしたような…………)」
その時、新士は目を大きく開けた。まるで宝箱を開ける瞬間みたいに、新士の頭の中から黄金の光があふれる。忘れていた記憶が今になってやっと戻ってきた。
「願いだ!あいつは僕の願いを知りたかったんだ!確か僕はあいつに『僕は特別になりたい。僕だけにしかない何かが欲しい。そして他人に認められるほど、立派になりたい』と言ったはず。」
思わず考え事を声に出してしまった新士の顔は
「(思っていた願いと全く違った結果になってしまったが、まさか本当に僕の願いが叶ってしまったのかぁぁぁ?!)」
地面に膝をつき、両手で地べたを叩き、四つん
「って言うことは、この世界、この町、この人々、そしてこの能力はすべて僕が願ったことなのかぁぁ!」
新士の叫び声は雲の上を羽ばたく鳥たちに聞こえるほどうるさかった。
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