第182話 オシャレ戦争・その16
縫製店はフル稼働だ。
コバシガワ商会とミラーズも精力的に活動し、時間は過ぎていく。
商会の上のフロアが偶然空いたので、そこもすべて賃貸して印刷フロアにした。
一日の流れはこんな感じだ。
朝起きてランニングと稽古。
朝食後にコバシガワ商会へ行って指示出し。
エイミーの撮影を手伝い、ジョーのところへ顔を出して打ち合わせをし、取り込んだ縫製店へさらに営業をかけ、夕方頃に孤児院の子どもと遊ぶ。それが終わったらゴールデン家に帰って夕食を取り、腹ごなしに学校の勉強。稽古して風呂に入って就寝。
一日が早い。あっという間だ。
変わったことといえば、ミラーズの前でわざと露店を広げたり、防御力の低さを中傷したりする胡散臭い一団がいた。しかも、お客にまでちょっかいを出す始末。十中八九、サークレット家の嫌がらせだ。
もちろん、気兼ねなくおしおきした。
“
全員失神させて、警邏隊に突き出しておいたので、今頃お国に裁かれているだろう。
あと興奮したのは湖の国メソッドへ行ったサツキから、生地のサンプルが大量に送られてきたことだ。これで、生地の在庫がマイナスからプラスへ一気に転換した。
さすが着物っぽい服を着る文化がある国だけあって、単一柄の生地が非常にしっかりしており、こちらで加工しないでもすぐに新作に組み込めそうなものが多数あった。そのため、生地を活かした新作のデザインをしておいた。生地が店に届き次第、新しい洋服が生産される予定だ。
期待していたメソッド産の柄物類は、凄まじく色味がバラバラでファンキーすぎたため、使えなかった。
ボーダーとかチェックとか、そういった定番の柄は一切なく、絵の具を全部布にぶち撒けたような生地のみで、いや、どうなのよそれ、と思ったけど、どうやらそういった柄物の縁起がいいってのが向こうの文化らしい。
柄物は基本的に冠婚葬祭で着るので、日常ではお目にかかれないそうだ。旅の途中で見かけなかった理由が分かった。
メソッド産の柄物の布、期待していたのに残念だ。
しっかし、まだらのレインボー柄の洋服で冠婚葬祭とは、文化ってのは恐ろしい。
単一柄の生地が多く手に入っただけでもよしとしようぜ。
これで大手布屋『サナガーラ』から仕入れる予定だった量には達した。
メソッドの商人問題は、サツキに『コバシガワ商会・メソッド支部支部長代理』という長ったらしくそれっぽい役職をつけて回避した。向こうの要望は、大きな家と関わりを持ちたい、というものだったので、ヤナギハラ家の娘であるサツキと繋がりができて喜んでいるはずだ。
サツキ本人も喜んでいた。
彼女は俺達の仲間に入りたくて、声がかかるのを今か今かと待っていたらしい。自分から言ってこない感じが、彼女らしいところだな。
あとは、郵便配達員の代わりに、一度だけスルメを送り込んだ。
サツキとのやり取りはすべて手紙で行っている。
郵便配達員に手紙をお願いし、だいたい片道三日〜四日ほどで届く。それを春休みで暇なスルメに押し付け、サツキと会える機会を増やしてあげた。
「まぁまぁいいじゃないの! サツキに会いたいでしょ?」
「べ、別に、会いたくねえよ」
「贈り物はチョコがいいんじゃないかしら」
「行く方向で話進めんなよ?!」
スルメはしゃくれ顔を突き出してツッコミを入れてくる。
「甘いものはね、女子の気持ちを幸せにするのよ。大事なのは値段よりも包装ね。可愛い包装をしている店を知っているから今から行きましょう」
「は? 値段より包装? ただの包んである紙になんの意味があんだよ」
「はぁ〜。だからあなたはモテないのよ」
「うっせ! このふと……ってないんだよな、おめえ」
「元おデブね」
「いやー、痩せてまじで調子狂うわー」
「話を戻すわよ。あのね、女子は素敵で華やかな物が大好きなの。むき出しのチョコレートをもらうより、可愛い包装に包まれたプレゼントのほうが誠意を感じるし、私のこと考えてくれてたんだなぁって気持ちになるわけよ」
「そうなのか?」
「それが女性心理の一つよ」
「おお。そういうもんなんだな」
「そういうものよ」
スルメが腕を組み、感心してうなずく。
「ということで、今から買いに行くわよ。いくつかグレイフナーのいい店を教えておくから、しっかり憶えて今後活用しなさいよね」
「おうよ!」
あっさりその気になったスルメは、意気揚々とグレイフナー大通りへと足を向けた。
とまあ、こんなやり取りがあったわけだな。
ふっ、恋のキューピッドとはこの俺、スーパー営業小橋川のことだぜ。スルメよ、ありがたく思ってくれ。
◯
とまあ忙しい日々を過ごしていると三月も最終の週になり、そうこうしているうちにアリアナとパンジーがモデルとしてデビューする撮影日になった。
撮影場所はグレイフナーの高級レストランだ。
このレストラン、とにかくオシャレでグレイフナーでは前衛的な部類に入る。
天井からぶどうっぽい果実のついた植物が垂れており、室内の壁が全面ガラス張りになっていて中庭のテラスがすべて見える。おまけにテラス席には、背中から羽が生えているマルチーズに似た犬がその辺を散歩していて、めっちゃ癒される。
この犬、成長すると“
日本に持って帰りたいわ〜。帰る方法まだないけど〜。
テラス席での撮影はパンジーがする予定なので、俺達はVIPが使用する個室に集まっている。
俺、テンメイ、アリアナ、パンジー、エイミー、クラリス、アリアナの弟フランク。美容師一名、メイドが三名、商会の従業員が二名、テンメイのアシスタントが一名。総勢で十四人だ。
エリザベスは魔導研究所の仕事が押しているらしく、参加できない。「全然気にしてないわ!」と言ってたけど、めちゃくちゃこっちに来たそうだった。素直になれない彼女の性格がたまらなく可愛らしい。
「エリィ、どうすればいい?」
豪奢なソファにちょこんと座ったアリアナが上目遣いで見つめてきた。
彼女は普段通りの無表情だったが、狐耳が小刻みに震えていた。緊張している姿は初めて見るな。
「そうね。アリアナの場合は無理に笑わなくていいと思うわ。それより、睨みつける迫力がほしいわね」
「え? 睨んで…いいの?」
「そのほうがカッコ可愛くなるわ」
「こう…?」
無表情に、睨みをプラスするアリアナ。
長い睫毛が伏せられ、切れ長の瞳が鋭くこちらに飛び込んでくる。
ひかえめな鼻梁と薄いながらも女性的な唇が、全体の印象を柔らかいものへと融和させ、彼女をクールプリティガールへと変貌させた。
インナーは細身の白ブラウス。
アウターは薄色のデニムジャケット。
背を高く見せる効果がある膝上丈のスカートは、大きなプリーツが入った紺色。
靴は薄茶のチャッカブーツ。
そして頭には、今回の目玉である、獣人専用帽子の中折れ帽だ。
獣人の耳に合わせた穴をあけており、耳が痛くならないよう穴の内側にファーが入っている。アリアナいわく「これ、すごくいい…」とのことで、獣人の帽子に革命を起こす一品となっている。
あけた穴の種類別に販売するのもポイントだ。これによって他種族が同デザインの帽子を買うことができる。値段設定はちょっと高めにする予定だ。
「クールビューティィィッ! 初めてとは思えないな! まったくもって才能とは怖いものだっ」
脚立に乗ってカメラを構えるテンメイから賞賛の声が飛ぶ。
「ん…」
アリアナがどう反応していいのか分からず顔を伏せた。
「照明、もう少し右を照らして」
テンメイから指示が飛び、光魔法初歩“ライト”で室内を照らしていたメイドの二人が位置を調整する。
「そうそう、もうちょっと右。奥のメイドさん、魔力をもう少し下げて……オーケー。ではアリアナ嬢、椅子に深く座って背を付けてもらえるかな?」
「ん…?」
「いい! 素晴らしい! 少しだけ顔を上げて……そう! それだ!」
パシャリ、と魔道具のシャッター音が鳴る。
「次は傲岸不遜なイメージで! ここは私の家だ、入ってくるな、という気持ちでカメラを見て。そう! ここは私の場所だ! ここに入ってくるな! アリアナ嬢のプライベートな空間だ! いい! すごくいいぞ!」
「んん…」
再度、シャッター音が響き、カメラの横からA4サイズの写真が滑り落ちる。
写真が地面につく前に、テンメイのアシスタントが素早く回収し、背後に広げてある布へ並べた。
「では次はそのまま足を組んで。両手を肘掛けへのせて……おお! そのポーズ、いただきだ!」
「ん…」
室内にシャッター音とテンメイの声が響いた。
光魔法“ライト”が室内を明るく照らし、豪奢なソファに座っているおかげで小さなアリアナがよく目立つ。
アリアナは耳をぴくぴく動かし、何だかよく分からないままにポーズを取って、テンメイのオーダー通りに身体を動かしていく。彼女のすらりとした足がスカートから覗き、左右に入れ替わったり、椅子に乗せられたりする光景は関係者でよかったなぁとつい思ってしまう。
三十分ほど撮影し、軽い休憩を挟んだ。
今日初めてモデルをするアリアナとパンジーのためにと、エイミーが手本を見せてくれ、ソファに座ってポーズを取った。
これがまたね、だいぶ板についてるんだよね。
テンメイと写真の撮り方、写り方について相当研究したらしく、彼女はモデルとして成長していた。エリィも本格的にモデルデビューするなら、教わらないと取り残されるな。
エイミーの手本を見て緊張がほぐれてきたのか、アリアナが自分からポーズを取り始めた。
「おおっ!」
「アリアナさん、ステキですっ」
テンメイが驚きの声を上げ、パンジーが両手を胸に当ててくねくね身体を動かした。
「姉ちゃん、やっと緊張が取れた…」
弟のフランクがぼそりと言って、周囲から笑いが起きる。
和やかなムードになって、パシャリ、パシャリとシャッター音が鳴り、写真が次々にカメラの脇から出てくる。写真を落とさないアシスタントの動きが機敏だ。
「鞭を持ったらどうかしら?」
「そう…?」
思いつきでアリアナに鞭を手渡した。
すると彼女はソファへ横向きに座り、両足を手すりに乗せ、右手に鞭を持ったままだらりと地面に落とした。頭を逆側の手すりに乗せて、こちらをキリリと睨む。
退廃的な雰囲気を出しつつも、そこはかとなくエロカッコいい。
ハイブランドの雑誌にありそうなポーズッ。
アリアナがやると、正直なんでも可愛いな。ハットから出ている狐耳が野生っぽさを出していて、ぱくりと食べられそうだ。アリアナに食べられるなら喜んで立候補するぞ。音速で挙手するわ。
「ワイルドタァキィィッ!」
——パシャリ
挙手している俺の横で、ずんぐりした体型に似合わない素早い動きでテンメイがシャッターを切った。写真がカメラから印刷されてゆっくりと出てくる。アシスタントが手に取り、背後に並べた写真の横に置いた。
俺、エイミー、パンジー、フランクは顔を寄せて覗き込んだ。
ポラロイドカメラの写真用紙みたいに徐々に色味が付いてくる。
背景の黒色から浮かび上がり、ソファの赤、次にアリアナの姿が現れた。
「あら!」
「カッコいいね〜」
「アリアナさん可愛い!」
つい声を上げてしまうほど、彼女の写真はイケていた。
実際目に見えている景色と、写真で見る景色で、どうしてこんなにも印象が変わるのだろうか。どっちも同じものなのに、ほんと不思議だ。写真が芸術として扱われるのは、見え方の違いが起きるからに違いない。日本じゃ写真にはあまり興味なかったけど、ちょっと好奇心が湧いてきた。
◯
アリアナの写真撮影が無事終わり、次にエリィの個人撮影を行った。
テンメイの希望で白魔法を使っているシーンが選ばれ、撮影中に二十発ほど白魔法下級“
星屑がビシバシ出る、ど派手な“
光魔法は縁起がいいという文化が根づいており、グレイフナー王国の冠婚葬祭には欠かせない魔法になっている。その中でも浄化魔法は特別扱いで、金持ちしか使い手を呼べない。
なるほど。湖の国メソッドは奇抜な柄の服、グレイフナー王国は浄化魔法で験を担ぐ、って文化か。
これ、大っぴらに見せたら、エリィが“
パンジーの従姉妹、ビオラ・サウザンドは白魔法下級浄化魔法“
ごひゃくまんえんですよ、奥さん。
魔法一発で五百万。
リーマンの年収ですよ。
「ビオラ姉様は美人なの。でもエリィさんには負けちゃうな〜」
パンジーがほくほく顔でこんなことを言う。
ちょっくら俺も小遣い稼ぎに浄化魔法唱えてこようかな。
下級で五百万なら、中級の“
商会の資金稼ぎになるなー。
……と思ったが、こういう稼ぎ方はエリィが嫌がりそうだ。
エリィなら、きっと仲のいい人にだけ無償で唱えてあげるだろうよ。うん、ダメだな。却下だ。
でも……ねえ? 一回ぐらいはええんでない?
「さすがはエリィお嬢様! 我が心の妖精!」
そうこう考えているうちにテンメイから撮影終了の合図が送られた。
継続詠唱していた白魔法を切って、ほっと一息つく。
さすがに上位魔法の連続詠唱は疲れるし、魔力もかなり食う。
「エリィ、すごく綺麗だった…」
「ありがとう」
アリアナがトコトコとやってきて魔力ポーションを渡してくれる。彼女の狐耳を揉んでから、一気飲みした。
「わたくしは雑誌を百冊買います」
クラリスが陶然とした顔で言った。
他の人が買えなくなるから買い占めはやめてくれよ。バリーにも言い聞かせておかないと、リアルに買い占めをしそうだ。
それにしてもね、エリィが撮影を恥ずかしがらなくて助かった。
顔面真っ赤のトマトちゃんで撮影できません、ってのを想定していたから嬉しい誤算だ。案外、エリィは俺と同じタイプで、人前に出るのが大丈夫なのかもしれない。
ちなみに撮影に使用したエリィの服装は、レース袖の淡い水色ブラウス。
台形のラップスカートはネイビーで、白のチェック柄。
ツインテールはほどいて、湖の国メソッドから仕入れた奇抜な布をバンダナとして頭に巻いている。ヘアバンドと同じ役割になるよう、折ってから結ぶパターン。靴はタッセルローファーだ。
いやーあれよ。まじで可愛いよこれ。
鏡見てビビった。
こんな子が待ち合わせ場所にいたら、しばらく待っている姿を遠くで眺めてから合流するわ。エリィはエイミーみたいに顔のパーツが完璧な配置ではないが、瞳が綺麗で少し両目が離れており、見ていると優しい気持ちになる。
有り体に言えば美少女。よく見ると不思議顔。話せば他人に癒やしを与える。
彼女みたいな顔の持ち主は世界に一人もいないだろう。
少し休憩したあと、俺とアリアナは服を着替えた。
全員で別室に移動して、今度は二人でカメラの前に立った。
ポカじいと稽古をする前の準備運動風景がいいとテンメイが提案してきたので、二人でストレッチするところを撮ってもらう。途中、笑いも入ったりして、撮影はつつがなく終了した。
次にバーカウンターを使ってエイミーの撮影だ。
さすがエイミー、テンメイコンビ。あっという間に終わった。
ここまで撮影した写真をアシスタントにお願いして床一面に並べ、吟味して雑誌に掲載する分を選抜していく。どれもこれもいい写真なので、かなり迷うな。
アリアナの写真は、やはり鞭を手に持った退廃的エロカッコいい一枚がベストで、後半に撮ったちょっとふてくされた顔をしている写真も捨てがたい。
俺とエイミーの写真はどれもこれも見栄えがよくて五枚から絞りきれず、テンメイがあとで、雑誌デザイナーとして入社した小人族と相談して決めると言ってくれた。
ある程度話が落ち着いたので、昼食の時間となった。
撮影場所であるレストランの粋なはからいで、食事が豪華だ。
このレストランは貸し切りにする代わりにタイアップとして名前を雑誌に入れることになっている。チョビ髭の店長が大の雑誌ファンとのことで、その広告効果を知っていたため、すんなりと許可は取れた。給仕のスタッフがやたら張り切ってるのがちょっと可笑しかったな。
まあ、モデルが美人ぞろいだから張り切る気持ちは分かる。
◯
ランチを食べ終わると、ついにパンジーの撮影がスタートだ。
全員で中庭へ移動し、メイドとアシスタントが撮影準備を開始する。
「き……きんちょうします」
食事中、ずっとぎこちなく笑っていたパンジーが不安げな表情でこちらを見てきた。
「大丈夫。髪型、可愛いわよ」
「そっちのほうがいい…」
俺とアリアナはパンジーを褒める。
パンジーは一念発起して、撮影前日に前髪を切っていた。
思いきりいっちゃってくださいっ、と叫んだ彼女の願いに応えた美容師は、本当に何の躊躇もなくバツンと切った。あのときパンジーが漏らした「ふはわぁ」という何ともいえないため息は、万感の思いが詰まっていたように思える。
一大決心をして作った前髪は眉毛のあたりで一直線になっており、桃色のロングウエーブが彼女の本物の妖精みたいに見せていた。
ここにぃ! 原石はいたぁッ!
俺がスカウトマンなら腰に両拳を添え、足を限界まで開き、肺の中の空気がからっぽになるぐらい大声で叫んだだろう。それぐらい、パンジーが化けた。
前髪ぐらいでそんな変わるかぁ? と思うが、彼女自身の心構えが前向きな方向へと大きく前進したため、まとっているオーラまで変質している。元々明るい性格だったのか、桃色の髪の毛と相まって、彼女は見ている者を楽しい気分にさせた。
「はふぅん。はふぅん」
庭を散歩していたマルチーズっぽい犬が、テラス席に座るパンジーに擦り寄ってきた。犬の背についた小さな羽がぱたぱたと嬉しげに揺れている。
「きゃー! かわいーっ!」
パンジーは犬の愛らしさに緊張が吹っ飛んで、頭を撫で始めた。
「はふぅん……はふぅん……」
犬の鳴き声がまぬけで、見ているこっちも顔がニヤけてくる。可愛い系の動物は全然好きではないが、これは反則だと思うぞ。
「見て…」
アリアナがいつの間にか犬を捕獲して腕に抱き、もっふもっふしている。
弟も隣で無表情に犬を抱き、姉と同じようにもふもふと撫でていた。
「エリィ〜。ワンちゃん柔らかいよ〜」
エイミーが犬に頬ずりして、羽の付け根付近に顔を埋めた。
「はふぅん……はふぅん……」
犬、さっきから「はふぅん」しか言ってねえな。
しかもニワトリと一緒で羽がついてるくせに飛べねえし。
癒やし系アホ犬だ。
「撮影準備、できました!」
「パンジー嬢、こちらへお越しください」
メイドの一人と、クラリスから声が掛かる。
パンジーは一瞬、不安げに両目を開いて眉を寄せたが、うなずく俺の顔を見ると力強く首を縦に振り、用意された場所へと移動した。
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◯離反確実
(✖)『ウォーカー商会』
(✖)『サナガーラ』
(30%の商品が損失)
◯離反あやふや重要大型店
(◎)『ヒーホーぬいもの専門店』
(◎)『バグロック縫製』
(◎)『グレン・マイスター』
◯サウザンド家によって離反の可能性
中型縫製・十店舗
(◎)『シャーリー縫製』
(◎)『六芒星縫製』
(◎)『エブリデイホリデイ』
(✖)『ビッグダンディ』
(◎)『愛妻縫製』
(◎)『シューベーン』
(◎)『靴下工房』
(✖)『アイズワイズ』
(◎)『テラパラダイス』
(◎)『魔物び〜とる』
◯サークレット家によって離反の可能性
その他・七店舗
(☠)『ビビアンプライス(鞄)』
(◎)『天使の息吹(ジュエリー)』
(◎)『ソネェット(ジュエリー)
(◎)『KITSUNENE(帽子)』
(◎)『麦ワラ編み物(帽子)』
(◎)『レッグノーズ(靴)』
(◎)『オフトジェリコ(靴)』
契約継続→(◎)離反→(✖)未確定→(−)おしおき確定→(☠)
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