ゼロ距離の環世界中が何を失い、蛇が何を得たのか。
山川 湖
ゼロ距離の環世界中が何を失い、蛇が何を得たのか。
自己増殖するお米を開発しただけなのに、マクスウェルからこっ酷く叱られた。正しさを知りたい。
「ヘイ、ドス黒乳首、もっとヴァギナをサ・ラ・セ・ヨ!」
恋人のタクヤがスマホのカメラをこちらに向けて手淫している。ベッド上に仰臥する被写体を前に、彼の頬は真っ赤に上気していた。
「見ろヨ!見ろヨ! 世界中が見てるゼ見てるゼ! ギンギンギーン!」
カメラのバックグラウンドで動くアプリケーションによって、私の裸は全世界に生配信されている。彼との初めてのセックスで、その対価を支払っている。後悔は無い。彼から愛されるために最良の選択をしたと、今でも思っている。
「俺サマ、いいや、俺ハマと一緒にメス豚の菊門を見てる野郎共、カリで呼吸するマスかき猿共。興奮してたら賽銭投げてケロ!投ゲロ!賽銭投げながら、空中でオナニーシテケロ、ピヨ!」
狂喜乱舞する彼の陰茎はオリンポスのように巍然屹立、立々している。
鬼の蝋燭が暗闇の私を囲繞する。何にも明るく無い。誰の顔も見えない。ミエ・ナイ。
助平な面したのっぺらぼうが、のっぺらぼうの亀頭をずる剥いて、私でオナニーしてやがる。その代わり、カメラが回っている時だけ、私はタユカに愛される。
「タクマ、アタシを愛してる?」
タフマンは院毛を逆立てながら「ケキャキャ!」と鳴いた。
「ビジターズと同じくらい、オーバードース。ヒヒーン!」
「アタチも大好き」
ダスティンホフマンが、私のヴァギナに挿れた。思わず声を、声を少しだけ出したの......。
「ふぅうん」
両乳首の怒張。続くフルシチョフのきりもみ一物ボーリング。堪らず嬌声を上げ....ぁあああえあ! 彼の顔貌に狂気の皺々。
「ピーナッツが見えフ、ムフフフ。空中でセックスするか? 野郎共」
ハウスマヌカンが私のヴァギナ直前にカメラを向けた。今頃無数の視聴者が、私の性器にイチモツウルフを挿れている。
『女湯覗いてるみてえな興奮だ!!これは、女湯を!!覗いてる!!みてえな!!大興奮!!で、ワクワクが!!......ワクワクが!!止まらねぇんだが......??』
『ひゃーー!!稲妻みてえな急降下階段の下段から君を見上げてえんだが?? 新宿駅の前まで--うわぁ!この世界の根源悪が俺の家を突き止めてやがる。負けないぞ!俺は世界を救うんだ!!--来てケーロ!』
『分身して、分身して俺を奪い合うんだよーーーん。ちょんまげ食べてーーー!!』
無数の
「乳んぷいぷい。はっ!!!!」
世界が、--そうだ、安住の地を求め選ぶべき世界が、今や堅牢な肉檻に閉ざされたようとしている。終わらぬ夢がおま--ちゅりん--第二の性として生き絶えるピザマンボの、
バズーカマスターが、私のヴァギナを見て云っている。
「膣楽園のアダムです、俺は。パピヨン。鬼か?パプリカか? 随分と新鮮なオメコちゃうか? おめさ?年の頃ばかりか言ってミロ? おっ?」
「詩吟鳥が.....!! 巣を立つ熟したパイナップルの頃合いよ!! 文句あるなら......アタシをアタシを......舐めてーみーなーさーいー」
「甘酒みたいな味するファ! 三日月を餌にしろヒョ!」
「ギンギン......ギーーーーーーーーン......!!」
「肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉!!」
「カリ先から泡が出てきた。軟膏代わりにおめさの膣に塗りたくりンリン」
パールマッスルが陰茎の包皮を剥いた時、後方から銃弾が飛んできた。撃ち抜かれた後、頭部から飛散する血液に塗れ、私は発狂する。
「ちゃーーーー!!」
サムスターを撃ち抜いたのは、イケメンスナイパーだった。
「俺、イケスナなんだけどさ? お前を救いにきたよ」
怒りに震えるイケスナの頭部を、私は鈍器で
叩きのめす。
「てめえ! 【おにぎり】つけてやがるな!」
イケスナのズボンを引き摺り下ろすと、下半身にはコンドームが装着されていた。いけすかねえ野郎だったのさ。
誰の手元にもなくなったスマホを持ち上げ、私は叫ぶ。
「これより!!
生皮を剥き、蘇る。悠久の時を経て、蘇る。
名は、--。
一ヶ月もした頃、世界中から「パラダイスロスト」の名を冠した曲、小説、その他芸術作品が多発した。そして、これらの作品を発表をした後、アーティストたちは軒並み陰茎を宙吊りにして自殺した。この現象は、心理学に精通したフリをする芸能人パスタマヨによって「シンクロニシティ」などという月並みなオカルトの範疇に組み込まれた。
違うのさ。アタシの生配信を見た奴らが、一斉にカリ首を締めたのさ。ニャーー!!
ゼロ距離の環世界中が何を失い、蛇が何を得たのか。 山川 湖 @tomoyamkum
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